「お削りは手間も時間もかかるため、クジラが参入してこず個人が勝ちやすい戦場となっている」botter・mican氏 2/3

DeFi botterのmican氏に、印象的な取引やお削りの取り組みについて伺いました。

mican氏 プロフィール

2017年から暗号資産の取引を開始。2020年のDeFiバブルを迎えて独自のBot開発を通じ、Web3やSolidityの深い知識を習得。暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」のコアメンバー。

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mintして即売れば利益が出るコイン

ーーそのほか、印象的な取引について教えてください。

金額ベースで言えば、2020年の取引ですね。

当時、ヴィタリック氏が推していた、「コントラクトがverifyされておらず内部の仕組みがわからない、とあるコイン」がありました。

価格がなぜか右肩上がりに綺麗に上昇していたので調査してみたところ、このコインをmintして即売れば利益が出るということがわかりました。

mintをするためにはverifyされていないコントラクトを読み、コントラクトに合わせたインプットデータを作ってアップする必要がありましたが、その作業が大変で実際に実行する人がほとんどいなかったんですね。

また、mintするためのパラメータがブロックごとに変化するということもあり、手動では難しかったのでbotを作って計算しアービトラージを行いました。

当時これをやっていたのは、自分含め3、4人でしたね。

ただ、多くのユーザーはMEVに利益を盗まれ撤退していきました。

市場が大きく、50イーサリアムを売っても全然価格が下がらなくて、寝る間も惜しんでアービトラージしました。

ーーそれは最終的にmintして売却したということですか。

そうですね。

この事例は、当時まだ一般的でなかったMEVで自分のトレードをコピーされた最初の体験でもありました。

MEVにはサンドイッチアタックなど、いくつかの戦略があるのですが、今回のケースはイーサリアムのメモリープール(mempool)で利益が出る取引をしている人を見つけてコピーし、マイナーに賄賂を渡して自分のトランザクションを優先させ利益を出すといったものでした。

これで初めてMEVについて知り、単体のトランザクションでは利益が出ないよう工夫をして運用していました。

アービトラージで利益を出して裁量トレードで溶かすことが多い

ーー失敗した取引についても教えてください。

ICOだけでなくNFTも失敗しましたし、失敗はたくさんありますね。

絵画が好きということもあり、2021年のNFTバブルでMurakami.FlowersやCloneXのNFTを購入しましたが、全て10分の1まで価格が下落しました。 

当時、Binanceに上場しているコインは、50%以上価格が下落したら再度上昇するということが多く、LUNAも上がると思ってLUNAの無限に増え続ける仕組みを理解しないままロングし、周囲が利益を出す中、私だけ損をしました。

全体的に、アービトラージで利益を出して裁量トレードで溶かすことが多く、裁量は向いてないんだなと思いますね。

2020年にパチンコで稼いだお金を元手にトレードを再開

ーーナイスハッシュを使ったマイニングの後の取引について教えてください。

2019年は会社員生活が忙しく、マーケットがベアだったこともあり、暗号資産から離れていました。

その間、パチンコで稼ぎ、少しずつビットコインを購入していましたね。

2020年にCompoundを知ってDeFiが本格的に盛り上がる気配を感じ、SushiSwapがローンチされたときにパチンコで稼いだお金を元手にトレードを再開しました。

最初はDeFiについて何も知らなかったため、Uniswapから始めて、ステーブルコインや草プロジェクトまで幅広く触りました。

ーー「触った」というのは具体的に何を行っていたのでしょうか。

ビットコインであれば買ってホールドすれば良いのですが、DeFiは保有だけでは儲からないケースが多くて、ファーミングや独自のアルゴリズム型のステーブルコインをmintするなどいろいろやっていましたね。

アルゴステーブルはドルペグと言われていますが、多くの場合は1,000ドルや2,000ドルといったプレミアム価格が付いており、これをうまく利用し利益を出していました。

kudasaiJPに入ったことでDeFiの情報を広く集めることができ、2020年はほぼ損することなくうまく取引できました。

ニッチな領域でアービトラージすることがエッジ

ーー具体的にはどのような取引を行ったのでしょうか。

Lienというカナゴールド氏が紹介していた分散型のデリバティブ取引を提供するプラットフォームでアービトラージを行っていました。

システムにバグが見つかり全損リスクを抱えるなど危ういときもあったのですが、結果的にはバグもパラダイムのサムに修正され、アービトラージもうまくいって順調にリターンを出すことができました。

Lienは2つのトークンが発行され、それぞれに保有者がいるなど、最終的にユーザーにイーサリアムが還元されるまでもかなり複雑なルートを辿るためあまり手を出す人がいませんでした。

しかし、むしろそのようなニッチな領域でアービトラージすることが私にとってエッジになるかもしれないとこの時の成功体験で感じましたね。

ーーその後もアービトラージは続けましたか。

アービトラージも行ってはいましたが、2021年は上場後すぐに価格が10倍、20倍に上昇するコインが多々あり、botを使って格安の価格で購入し、価格が高騰したら売却するという取引を行っていました。

最近だとこういった値動きはたまにしかありませんが、当時はほぼ毎日、そういったコインがありましたからね。

最近は、アービトラージをメインにお金を集めつつ、様々なプロジェクトで「お削り」を頑張っています。

お削り」は手間も時間もかかるため、クジラが参入してこず、個人が勝ちやすい戦場となってい

ーー「お削り」について教えてください。

DeFiを触ってプロジェクトにお金を落として、各プロジェクトのポイントを稼ぐことを指します。

例えば、Blast上のdappsでトレードしたり、NFTを買ったりすると、ゴールドと呼ばれるポイントが得られます。

ゴールドは将来Blastトークンになるであろうポイントで、この将来のリターンを期待してお金を減らしてでもdapps上でトレードしてゴールドを得る、というのが「お削り」です。

ゴールドの配布はdappsごとにルールがあり、取引回数や投資額、テストネットのユーザーに配るなど、様々なケースがあります。

最近はポイントマーケットが活発で、私自身もトレードフィーを払ったり、流動性を提供することによってポイントを貯めながら常に効率の良い稼ぎ方を探っていますね。

ーーエアドロップに似ていますね。

似てはいますが、お削りはコストがかかるものがほとんどで、無料でもらえるエアドロップとは違いますね。

ーー直接お金を入れるICOや労力のみを投下するエアドロップともまた違う形態ですね。

そうですね。

ICOではクジラが何億円もお金を入れてしまい個人投資家は勝てない戦場となることもありましたが、お削りは手間も時間もかかるため、クジラが参入してこず、個人が勝ちやすい戦場となっています。

ただ、下手をするとコスパの悪いお削りをしてしまうため、注意が必要です。

戦略を練り、効率の良いお削りを見つければ、貯めたポイントをWhales Marketを活用し、先に利確することも可能です。

Whales Marketはポイントマーケットで一番有名なプロダクトで、先物取引のような仕組みを利用しポイントの売買を可能にしています。

「効率が良いお削り」とはなにか

ーー効率の良いお削りには、どのようなものがあるのでしょうか。

今はないエッジですが、あるBlast上のDEXで、マイナーな取引所がありました。

そのDEXではトレードボリュームが多い人ほど多くのゴールドが配分されるのですが、トレードによって発生した手数料はLP提供者に渡る仕組みになっていました。

そこで、私はLP提供者に回りつつトレーダーとしてお削りも行い、お削りで費用を落としつつその一部をLP提供者として受け取り、効率よくお削りすることにしました。

ーーどのようにしてその取引機会に気づいたのでしょうか。

そのDEXのドキュメントを見ると、トレードフィーの半分以上が運営側に入り、残りの手数料がLP提供者に入ると書かれてありました。

しかし、実際試してみると、トレードフィーの大部分がLP提供者に渡り、運営に対しては全く渡っていないことがわかったんですね。

そこで、自分でLPを提供しつつ、別アカウントでお削りをしたところ、私のお削りによる手数料の大部分が私のLP提供のアカウントに入ってくることがわかりました。

私以外のLP提供者もいるため全ての手数料が私に入るわけではありませんが、プール全体の50%を占めることができれば約半分の手数料でお削りができるため、効率よくお削りすることができます。

手数料が運営に渡っていなかったのは恐らくバグで、運営側が気がついたのは、キャンペーンが終わったあとでしたね。

こういったものが「効率の良いお削り」です。

ーー元々は何がきっかけで気がついたのですか。

そのDEXでトレードしている人にトレードボリュームの比例配分でゴールドが配られると聞いて、それを聞いた瞬間に、「間違いなくLP提供者が儲かる」と考えたのがきっかけです。

1万ドル以上を握りしめながらお削りしないとまともなエアロドップを貰えない、とても労力が必要な市場になった

ーーDeFiの取引において気をつけた方が良いことについて教えてください。

20万円程度の資金でDeFiを始めようと考えているのであれば、レバレッジをかけてポイントを得られるプロダクトを使わなければ難しいと思います。

今のDeFiはポイントマーケットが盛んですが、自分でポイントを稼ぐのではなく、様々なプロダクトを活用しポイントを買いに行くという戦略の方が、少ない資金でも戦えると思いますね。

今、Pendleが人気の理由もそのような手法が可能だからです。

レバレッジをかけてうまくポイントを獲得することができれば、本来100イーサリアムがなければ獲得できないポイントを、100倍のレバレッジを用いることで1イーサリアムを元手にポイントを獲得することが可能です。

他にも、近い間にアイゲンレイヤーで盛り上がっているRenzoが上場する予定です(*)が、これらもある意味、お削りをした人にボーナスがもらえるものです。

今後は、レバレッジをかけてエアドロップを取りに行かなければ、ガス代で損する可能性が高いでしょう。

以前は100、200ドルの資金でこつこつトレードを行えば、10,000ドル以上を簡単に儲けられる世界でしたが、最近は10,000ドル以上の資金を握りしめながらお削りしないとまともなエアロドップを貰えない、とても労力が必要な市場になりました。

少ない資金ではもらえるエアドロも相対的に少なくなり、ガス代で赤字になるパターンも多々あると思います。

そのため、無理にクジラ達と同じ戦略を取るのではなく、レバレッジを掛ける方法を探したほうが良いと思います。

(*)…取材後、2024年4月30日に上場された。

参考:Renzo(REZ)がKuCoinに上場!世界初!|KUCOIN

チェーンがハッキングされた場合にどこのブリッジを使えばすぐに脱けることができるのか、事前に調べておかなければならない

ーーDeFiのリスクとそのリスクのヘッジ方法についてどのように取り組まれているか教えてください。

最も大きなリスクはハッキングだと思います。

私も過去に三回ほど被害に遭ったため、DeFiが流行りだした頃はSushiSwapやUniswapでLP提供を行ったときは、DeFiの保険に加入しました。

DeFiの保険に加入していた場合、加入していたプロダクトがハッキングされても保険に掛けている金額分は保証されます。

しかし、今は保険マーケットがあまり盛んではなく、ヘッジできないものが大半です。

保険を提供していたプロダクトがハッキングされた事例もあり、どんどんと廃れていきました。

そのため、ハッキングに関するSlowMistPeckShieldなどのXのアカウントは全て通知設定し、すぐに対応できるようにしています。

また、万が一、ハッキングされたときに備えて、損失を最小限に抑えるためのルートを先に見つけておくことも大事ですね。

例えば、チェーンがハッキングされた場合はどこのブリッジを使えばすぐに脱けることができるのか、事前に調べておくことで、損失額を半額から2割程度まで大幅に抑えられるでしょう。

必ず、非常口を把握することが大事です。

Blastにも出口がたくさんあります。

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全三回のmican氏のインタビュー、最後の3記事目に続きます

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