「コントラクトが公開されていないコードを読み、適切な戦略を取れることがエッジ」botter・mican氏 3/3

DeFi botterのmican氏に、今回のサイクルで注目している領域やご自身のエッジについて伺いました。

mican氏 プロフィール

2017年から暗号資産の取引を開始。2020年のDeFiバブルを迎えて独自のBot開発を通じ、Web3やSolidityの深い知識を習得。暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」のコアメンバー。

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取材実施日

2024年4月24日

ハッキングによるリスクを抑えるためにはプロジェクトの精査よりも非常口をどれだけ知っているかが大事

ーーハッキングのリスクが低いプロジェクトというのはあるのでしょうか。

個人的には、コードが公開済みで、Uniswapやdydxなど、大手DeFiのコピーであれば安心できます。

もちろん、そういったプロジェクトでもバックドアが仕掛けられていたりなどといったリスクはあるのですが、比較的安心はできますね。

逆に、ゼロから作られたプロジェクトはできるだけ避けています。

そのほか、どこのVCが入っているかも確認しますが、どのようなポジティブ要素があろうとも究極的にはどこに穴があるか分からないため、常にハッキングの恐れはあると考えた方が良いでしょう。

また、資金力のあるプロジェクトや取引所は、ハッキングされた場合、全額が返ってくるケースもあるため比較的安心です。

以前、KuCoinで大きなハッキングがあり、私も被害を受けましたが、KuCoin自体が保険ファンドを持っていたこともあって、KuCoinが全額補償してくれました。

一方、マイナーな草の中の草といったdappsの場合、ハッキングされたことすら誰も気づかず、自分の資産が静かに死んでいくこともあり得ます。

魔界みたいなdappsでは助けてくれる人もいませんが、大きめのdappsでハッキングが起きた場合、騒ぐ人が多数いますし、ホワイトハッカーが助けてくれる可能性が高く、大きいプロジェクトの方がリスクは低いと思いますね。

ーーハッキングされた際はどの程度損失が出ましたか。

DeFiを始めたころにPickle Financeがハッキングされ、私のポートフォリオの8割を全てハッキングで持っていかれました。

Pickle Financeはステーブルコインを預けてPickleCoinを掘るサイトだったのですが、大きめのステーブルコインを預けていたら全て抜かれましたね。

監査が入ったプロジェクトということもあり、たかをくくっていたのですが、このときは保険も加入しておらず、最終的に一割程度しか返ってきませんでした。

この数年で様々な経験をしましたが、監査が入っていても暗号資産の世界では安心できません。

非常口をどれだけ知っているか、その方が大事です。

アービトラージの機会を探すため、特定の領域にこだわらず新しい技術やチェーンは全て触る

ーー今回のサイクルで注目している領域やプロジェクトがあれば教えてください。

アービトラージは新しい技術や最新のチェーンが比較的リターンが出やすいのですが、今後どのチェーンが発達していくかは、見当がつかないですね。

個人的には、アービトラージの機会を探すため、特定の領域にこだわらず新しい技術やチェーンは全て触っていくようにしています。

ただ、アービトラージのメインの戦場はやはりイーサリアム系なので、今後はSoalnaや新しい言語を使いbotのトレードができるよう勉強していきたいと考えています。

そう思いつつ、中々始められないのですが、最近のSolanaではJUPのトークンセールのような、かつてのICOに似た流行があり、botトレードで1億円や2億円儲けたトレーダーも出てきていて、Soalnaの勉強はしていきたいと考えていますね。

Soalnaはエッジの塊だが学習コストが大きいので腰が重い

ーーイーサリアムを触っていた方でもやはりゼロからSoalnaを触ろうと思うと一定のハードルがあるのでしょうか。

言語がまったく違いますからね。EVMの知識も使えないため、イチから勉強しなければいけません。

EVMであれば、他のチェーンにも展開でき、汎用性も高いのですが、Soalnaではそれが期待できず、あまり勉強する気になれないのが正直な感想です。

もちろん、エッジの塊だとは思っていますが、Soalnaの勉強をしている間にEVMを採用した新しいチェーンが出てきた場合はそちらでアービトラージしなくてはならず、作業量が大幅に増えてしまいます。

そのため、腰が上がらないですね。

最近は10億円以上の資金を持つプレイヤーが0.5%の利鞘でも取りにくるため戦場が激化してきている

ーー最近はどのようなチェーンで取引していますか。

イーサリアムのようなメジャーなチェーンでは何十億円もの資金を持つプレイヤーや賄賂を渡すプレイヤー、botの効率性が非常に高くコードをSolidityではなくバイトコードで書くようなプロフェッショナルなプレイヤーも多く、そのような戦場では私は勝てないため、新しいチェーンをメインにアービトラージを行っています。

Blastは一ヶ月前に出てきたチェーンで二週間前は簡単に1、2%の利益が取れましたが最近はここも厳しくなりましたね。

ーー一ヶ月前に出てきたチェーンとのことですが、もう難しくなってきたのでしょうか。

最近は10億円以上の資金を持つプレイヤーがアービトラージしており、敵いません。

彼らは0.5%の利鞘でも取りにくるため、どんどん戦場が激化してきています。

また新しいチェーンを探しています。

プロフェッショナルなプレイヤーもハッキングリスクを恐れてマイナーなチェーンにはまだ参入してきていない

ーー「暗号資産全体でボラティリティが減っていく可能性が高いため今後は勝てなくなる」という意見もあれば、「草コインは無限に作られるため、ボラティリティがなくなることはない」という意見もあります。micanさんはどのように考えていますか。

何年先を考えるかで答えは変わると思います。

アービトラージが十年先も通用するかは分かりませんが、これからの二年間、半減期から始まるブル相場に関しては、新しいチェーンや草コインも生まれ続けているため、大きな規制が入らない限りは大丈夫でしょう。

全てのチェーンにプロフェッショナルなプレイヤーが参入してしまうと厳しいですが、今のところ、彼らもマイナーなチェーンにはハッキングの恐れもあるため参入して来ません。

結果的に、現在はまだプレイヤーの棲み分けができており、儲かるチャンスはまだまだあると考えています。

コントラクトが公開されていないコードを読み、適切な戦略を取れることがエッジ

ーーmicanさんはマーケット参加者としてのご自身のエッジについてどのようにお考えですか。

verifyされていないコードが読めることですね。

コントラクトが公開されていないコードを読み、適切な戦略を取れることが私のエッジだと思います。

最近ではBlastでSuper Sushi Samuraiのトークンがverifyされていなかったため、それを読んで上場戦に挑みました。

結果としては、スナイプ用コードの変数初期化ミスといった初歩的な失敗をしてしまいましたが、成功すれば数億円単位の利益が得られるトレードでした。

失敗したとはいえ、このような可能性があったのもverifyされていないコードを読み上場戦に控えることができたからです。

Blastの中で私と同じような戦略をとっている人は私一人だけだったため、これが私にとってのエッジだと感じています。

ーーverifyされていないコードが読めることはbotterの中でも珍しいのでしょうか。

珍しいと思いますね。

読めると言う人は何人か知っていますが、少なくともSuper Sushi Samuraiの上場戦では私しかいなかったため、数としてはかなり少ないと思います。

読める人の多くは、おそらくイーサリアムやBSCなどの大手チェーンでチームを組みながら開発に携わっているのだと思いますが、彼らは魔界のチェーンには興味がないため、魔界の中では限られた存在になっているのだと思います。

botterとしてリターンを出し続けるためには、難しいコードを読みながら儲かりそうなプロジェクトを見つけ出し、戦略を練ることも必要です。

私も2020年から様々な魔界プロジェクトのローンチを見てきましたが、最近はある程度、魔界の世界も成熟しつつあるため、パターンが見えてきました。

トークンを見て、最初の動きを予測し戦略を考えられなければ、botterで成功するのは厳しいかもしれないですね。

ーーverifyされていないコードが読める人は、なぜ少ないのですか。

verifyされていないコードは機械語に近く、変数の名前も含めて人間にとってかなり読みづらいため、専門知識がないとかなり難しいと思います。

私は工業高校出身でアセンブラやC言語を授業で習ったため、基礎知識もあることが大きいと思いますね。

将来必ず訪れるであろう簡単な相場に備え、平時から準備しておくことが大切

ーーDeFiの取引で成功するために、何が重要だと思いますか。

退場せずにやり続けることです。

相場がベアのときはどんなにプログラムを頑張って書こうが何をしようが、成果が出づらく、実際、私も2022年は負けてしまいました。

しかし、退場せずにやり続ければ、簡単な相場は必ず訪れます。

将来必ず訪れるであろう簡単な相場に備え、報われないと感じつつも、Solidityを勉強したり、1ドルでも儲かるようなアービトラージを自動化したり、平時からコツコツ準備しておくことが大切だと思います。

botはすぐに結果が出ない世界ですが、我慢しつつ、1ドルでも儲かる体験を積んでいけば、絶対に大きな成功に巡り会うときが来るでしょう。

私自身、ICOでボコボコに負けても、必死に色々な草コインを調べ、マイニングで儲かる手法に辿り着きました。

勝つまで続けることが大事だと思います。

株式の市場は成熟していて勝つのは大変だが、暗号資産にはまだエッジがたくさん残されていて誰にでもチャンスがある世界

ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

このインタビューで紹介したナイスハッシュのハッシュパワーを利用したアービトラージの戦略は今でも使えます。

今回のビットコインの半減期でも、その戦略をとればかなり儲かったでしょう。

株式の市場は成熟しており、機関投資家も多く、勝つのは大変だと思いますが、暗号資産にはまだエッジがたくさん残されています。

エアドロップはクジラが札束で殴るような世界になってしまっていますが、そこから離れて、自分しか知らないような鞘を見つけて戦って利益を出すというのはまだ余地があると思います。

鞘の見つけ方は難しいですが、私自身はEthscanやDebankをずっと眺めたり、他の人のプレーを見たりして、勉強してきました。

宝探しの感覚で10ドルくらいから始め、儲かるようなルートを見つけて成功体験を積んでいけば、どんどん楽しくなってくると思います。

今botで全然儲からなくてやめたいと思っている人でも、一度、大きな成功体験を経験すれば没頭すると思いますし、誰にでもチャンスがある楽しい世界なので、諦めない方が良いですね。

もし、botを作るときに相談したいことがあれば、XでDMをもらえればできる限りアドバイスをします。

興味のある方は、メッセージをいただけたら嬉しいです。

また、私が所属しているkudasaiJPでも、ビギナーズ部屋があるため、ハッキングなど困ったことがあれば、僕をメンションして投稿してくれたら対応します。

気になる方は、加入も受け付けています。

いつでも遊びに来てほしいですね。

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