ドラッケンミラー氏、エヌビディア株とマイクロソフト株を大量売り・大きな利益は4〜5年後かもしれない【Form 13F 2024年第2四半期】

近年の株式市場を牽引するAI関連銘柄に熱い視線を送ってきた著名投資家、スタンレー・ドラッケンミラー氏について、2024年前半(1月〜6月)までの注目すべき売買動向を解説します。

ドラッケンミラー氏は、2023年6月のブルームバーグのインタビューで「AIはインターネットのような巨大な変革をもたらすと信じている」と語り、エヌビディアを絶賛する発言も注目を集めました。

米国の機関投資家が規制当局への提出を義務付けられているフォーマット「Form 13F」のデータによると、同氏が強く力を入れていたAI関連の主力2銘柄が、2024年前半で大量に売却されていたことが明らかになっています。

出所:“Search 13F Filings”からForm 13Fデータを抽出して作成

Form 13F 2024年第2四半期の最新記事は下記をご覧ください。

エヌビディア株の強気買いから約1年後、ほぼ全て売却していた

「エヌビディア株を保有するのは10ヶ月程度ではなく、少なくとも2~3年、もっと長期間かもしれない。」

YouTube / Bloomberg Live / Druckenmiller on How AI is Dominating His Long Portfolio

ドラッケンミラー氏は、昨年6月のブルームバーグのインタビューでこのように発言していましたが、実際には10ヶ月程度で大半を売却、わずか約1年で9割以上を売却していたことが明らかになりました。

ドラッケンミラー氏が最も多くのエヌビディア株を保有していたのは、2023年6月末時点の約95万株であったのに対し、ちょうど1年後にあたる2024年6月末時点では、わずか2万株程度(6月10日に株式10分割を実施する前の株数に換算)を残すのみとなりました。

ドラッケンミラー氏は、今年の第1四半期に決行したエヌビディア株の売却について、5月に行われたCNBCのインタビューで、以下のように語っています。

「エヌビディアの株価が150から900に上昇した時、私はウォーレン・バフェットではないので、10年や20年も保有し続けることはない。ウォーレン・バフェットであれば良かったとも思うが、150から900に上昇したので、3月末にポジションを縮小した。素晴らしい成果を上げ、少し休息する必要があった。」

CNBC Exclusive: CNBC Transcript: Billionaire Investor Stanley Druckenmiller Speaks with CNBC’s “Squawk Box” Today

2〜3年は保有すると発言しておいて実際には1年で売却してしまうにしても、十分すぎる成果といえるでしょう。

出典:tradingview.com

────────────────────

「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。

サービス紹介ページはこちら

────────────────────

マイクロソフト株も4〜6月に大量売却、トップ銘柄から外れる

ドラッケンミラー氏の保有する、もう一つの代表的な主力銘柄の一つがマイクロソフト株です。

エヌビディア株については早々と売り抜けた一方、今年の3月末時点まではマイクロソフト株を売却する動きは見られませんでしたが、直近の第2四半期(4~6月)に一転し、保有株数を6割以上売却していたのです。

【関連記事】
おすすめのネット証券10社を紹介|初心者が気にすべきポイントは?

ドラッケンミラー氏が、2017年頃から一貫してポートフォリオの主力銘柄に据えてきたマイクロソフト株ですが、かつて、2022年の弱気相場でポジションを全て解消していたこともあります。

2022年当時、市況が悪化するごとに、マイクロソフト株の保有を減らしていきましたが、驚くべきことに、2023年の初頭には大きく買い戻し、強気相場の波に乗るようにポジションを再拡大させていきました。

出典:tradingview.com

マクロ経済に精通し、経済環境・景気の波を適格にとらえた見事な取引であり、今後のドラッケンミラー氏がマイクロソフト株を買い戻すのか、もしくは、さらに売却するのか、引き続き注目する必要がありそうです。

ドットコムバブルの教訓「感情的になり熱狂してはならない」

ドラッケンミラー氏が莫大な含み益をもってエヌビディア株を大量に売却した背景として、彼の冷静な投資態度も垣間見ることができます。

「ドットコムバブルから学べることは確実にある。感情的になり熱狂してはならないということである。」

YouTube / Bloomberg Live / Druckenmiller on How AI is Dominating His Long Portfolio

エヌビディア株の怒涛の上昇トレンドは今年に入ってから早々に始まり、わずか半年で株価が3倍近くも急騰した背景には、投資家の間に熱狂が渦巻いていたことは否めません。

想定以上に含み益が大きくなったために一旦ポジションを手仕舞った一方で、再度買い向かうことも示唆しています。

「大きな利益は4〜5年後になるかもしれない。」

「今はAIが過度に宣伝されているのかもしれないが、長期的には過小評価されている可能性がある。」

「もし私が今後10年間、エヌビディアを(買い戻して)保有していないとしたら驚きだ。」

CNBC Exclusive: CNBC Transcript: Billionaire Investor Stanley Druckenmiller Speaks with CNBC’s “Squawk Box” Today

ドラッケンミラー氏の売買動向について、今後のアップデートに注目しましょう。

主力AI株の保有を縮小する中での新たな投資先

2024年に入ってからのドラッケンミラー氏の新規投資先について、比較的投資規模の大きなもので、4〜6月に買われた銘柄を中心にピックアップしました。

●コヒーレント・コーポレーション(COHR)

光技術と半導体製品を扱う会社。1〜3月に新規で約252万株、4〜6月に追加で約106万株を取得し、直近6月末時点でポートフォリオ全体のトップ銘柄。

●フィリップモリス(PM)

世界最大のたばこメーカー。4〜6月に約89万株の現物株に加え、約96万株分のコールオプションを保有。オプションを合わせると、ポートフォリオ全体でトップ5入り。

●キンダー・モルガン(KMI)

アメリカのエネルギーインフラを扱う企業。1〜3月に新規で約388万株、4〜6月に追加で約287万株を取得し、2四半期連続での買いとなった。

●ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュニティーズ(MAA)

アメリカの不動産投資信託。4〜6月に約64万株を取得。

●メルカドリブレ(MELI)

アルゼンチンに本社を置き、中南米向けにオンライン取引サービスを提供する企業。ドラッケンミラー氏は、メディアのインタビューでアルゼンチン企業への投資にも言及しており、この銘柄以外にも、同国の金融機関や国営石油会社の株式などを取得しています。

●スプリングワークス・セラピューティクス(SWTX)

アメリカのバイオ製薬企業。4〜6月に新規で102万株を取得。

これらはほんの一例になりますが、今年のドラッケンミラー氏のポートフォリオは、過去数年と比較して早いペースで銘柄の入れ替えを進めており、今年1月〜6月末まで半年の間に、60以上の銘柄で保有ポジションを解消し、50近くもの銘柄に新規で投資しています。

景気後退局面でも選好されやすいフィリップモリスのような一般消費財のほか、医療・ヘルスケア銘柄の買い増しも目立つようになり、ディフェンシブセクターへのローテーションが意識される時期なのかもしれません。

────────────────────

「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。

サービス紹介ページはこちら

────────────────────

そのほか、過去のForm 13F解説記事はこちら

https://burry.co.jp/tag/form13f/

この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです