マイケル・バーリ氏、アリババなど低迷する中国株の逆張り投資を強化【Form 13F 2024年第2四半期】

「世紀の空売り」で一躍有名になった著名投資家のマイケル・バーリ氏が、近年低迷する中国株への投資を加速させています。

バーリ氏は、2024年6月末時点で、それまで保有していた米国株など大半を手仕舞っていた一方、株価が低迷する中でも、ADR(米国預託証券)を通じて中国銘柄の買い付けを強化し、ポートフォリオの約半分を占めるまでにシェアを拡大しました。

近年の中国市場は低迷が続いており、今後の投資に積極的な姿勢を示さない著名投資家もいる中、相場のトレンド転換を狙うバーリ氏の逆張りの投資スタイルにも注目が集まります。

出所:“Search 13F Filings”からForm 13Fデータを抽出して作成

2023年第4四半期(10-12月)のマイケル・バーリ氏のForm 13F解説記事はこちらです。

アリババ株、バイドゥ株など強気のナンピン買い

 バーリ氏が直近で、ADRを通じてアリババ株(BABA)に新規で投資したのは、2023年の第1四半期(1〜3月)、その直後となる第2四半期(4〜6月)に一旦売却を経て、第3四半期(7〜9月)に再度買い戻しています。

比較的短期間で様々な銘柄を売買するパターンの多いバーリ氏ですが、アリババ株に関しては、直近の4四半期連続での買いを継続しており、株価が低迷する中での強気の買い増しは着目すべき点です。

アリババ株は、2020年10月に最高値を付けた後、ベア相場からの長期停滞局面が続いていますが、現在は200日移動平均線を挟む展開で下げ止まっているようにも見え、今後のバーリ氏の売買動向にも、いっそう注目が集まるでしょう。

出典:TradingView.com

 アリババに並ぶ中国の巨大テック企業であるバイドゥ(BIDU)への新規投資についても同様で、バーリ氏がバイドゥ株に新規で投資したのは2024年の第1四半期、続く第2四半期も強気に買い向かっていますが、株価はいまだ停滞を続けています。

バイドゥの株価は、2021年の前半に最高値を付けた後、アリババ株と同様に長期で下落トレンドが続いており、現在は200日移動平均線を下回ったまま、2022年後半に付けた安値を試す展開となっています。

出典:TradingView.com

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中国への投資に積極的ではない著名投資家

 バーリ氏が中国を代表する巨大テック企業への投資を加速させる一方、中国への投資について他の大物投資家はどのように考えているのか、ウォーレン・バフェット氏、スタンレー・ドラッケンミラー氏の2名を例に紹介します。

バフェット氏「アメリカ以外の国で投資を行うことはほとんど無いだろう」

 バフェット氏は、中国の大手EVメーカーBYDの株式を早くから取得しており、近年著しい勢いでシェアを拡大させた同社の成長により恩恵を受けています。

BYDが急成長を遂げる中、香港証券取引所への届け出によると、バフェット氏は2022年8月から徐々にBYD株の売却を続けており、当初は20%程度あった保有比率は5%を下回ったことから、今後の規制当局に対する大量保有報告の義務は無くなっています。

2024年5月、バフェット氏が会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイの年次株主総会にて、参加者からの中国への投資に関する質問に対して、以下のように語りました。

質問者
「EVメーカーのBYD以外で、今後どのような状況下になれば、香港や中国企業への投資を再検討されますか?」

バフェット氏
「我々の主要な投資先は、常にアメリカにあります。<中略>BYDへの投資もですが、5年前に日本への投資を決めたのは、圧倒的に魅力的だったからです。<中略>私たちは他の企業を通じて世界経済に参加していますが、アメリカ以外で多くの投資を行うことはほとんど無いでしょう。<中略>完全に除外するわけではありませんが、アメリカ以外のほとんどの国で大規模な投資を行う可能性は低いと思います。(それでも)日本株の保有には非常に満足しており、その立場を長く維持することになるでしょう。」

YouTube “Berkshire’s 2024 annual shareholder meeting: Watch the full morning session”

BYDへの投資に限らず、日本の5大商社への投資についても満足していると述べつつ、今後アメリカ以外の国に、大きな投資を実行する可能性は低い旨を繰り返し語りました。

参照:Bloomberg “バフェット氏のバークシャー、BYD株さらに売却ー保有比率5%割れ”

ドラッケンミラー氏「現状と変わらない限り中国に投資することはないだろう」

 ドラッケンミラー氏は、2018年にADRを通じてアリババに投資して以降、売買を繰り返して保有株数を大きく増減させながら、株価が最高値を付けた2020年の下旬頃まで、主力銘柄の一つとして保有していた実績があります。

「(今後は)いつ中国に投資するのか?」

2024年5月に行われたCNBCのインタビューでこのように問われ、ドラッケンミラー氏は以下のように答えています。

「リーダーが現状と変わらない限り、中国に投資することはないでしょう。“二度としない”とは言い切れないのは、もしリーダーシップに変化があれば、その状況を少なくとも再検討するかもしれないからです。」

CNBC Exclusive: CNBC Transcript: Billionaire Investor Stanley Druckenmiller Speaks with CNBC’s “Squawk Box” Today

「売れと言ったのは間違いだった」昨年の逆張りは空振りか

 2023年のバーリ氏には、度々相場の下落を示唆するような言動や取引動向がみられ、投資家達の注目を集めました。

●2023年第1四半期(1〜3月)

1月下旬、自身のX(旧ツイッター)アカウントにて「Sell.(売れ)」という謎めいた一言を投稿した後、3月下旬に一転「売れと言ったのは間違いだった」として、自身の相場観を改めています。

●2023年第2四半期(4〜6月)

米国の主要株価指数の下落に賭ける大規模なボジションを保有したことが話題になりました。具体的には、S&P500指数に連動するETF(SPY)、ナスダック100指数に連動するETF(QQQ)に対し、合計16億ドル分もの巨額のプットオプションを保有したのです。

●2023年第3四半期(7〜9月)

前四半期で保有していたSPYおよびQQQの売りポジションは解消した一方、新たに半導体セクターETF(SOXX)のプットオプションを4700万ドル分保有しました。

2023年のマーケットは、夏から秋にかけて一時的な調整局面はあったものの、おおむね好調な相場環境であったことから、これら昨年の逆張りが大当たりしたわけではないと思われます。

しかしながら、昨今は2024年秋相場を目前にして、米国では経済の景気後退の可能性が高まりつつあり、大統領選挙も控えています。

市場のボラティリティが高まりうるイベントを控え、ベア相場への転換も警戒されることから、近い将来、かつての世紀の空売りで起きたような歴史的な出来事が再来してもなんら不思議ではないのかもしれません。

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そのほか、過去のForm 13F解説記事はこちら

https://burry.co.jp/tag/form13f/

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