米国の著名投資家、スタンレー・ドラッケンミラー氏が率いる「ドュケーヌ・ファミリー・オフィス」は、11月中旬に米証券取引委員会(SEC)へ“Form 13F”を提出し、2024年9月末時点の上場株式ポートフォリオを明らかにしました。
今回の報告の対象期間である2024年の第3四半期(7〜9月)は、次期大統領選からのバイデン氏の撤退や、雇用情勢の悪化による株式相場の大きな下落などの波乱のなか、ドラッケンミラー氏は、同期間中にポートフォリオを大きく組み替えています。
かねてから絶賛していたAI関連銘柄のエヌビディア株を全て売却したことに加え、今後ともに重要視するであろう投資先について、同氏の発言をもとに考察します。
前四半期(2024年4-6月)のドラッケンミラー氏のForm13F解説記事はこちらです。
エヌビディア株の大躍進「売ってしまった心の傷を自分自身で癒している」
出所:“Search 13F Filings”からForm 13Fデータを抽出して作成
ドラッケンミラー氏は、今年5月に行われたCNBCのインタビューにて、3月下旬頃にエヌビディア株の保有ポジションを大きく減らしたことを明らかにし、株価が150ドルから900ドル(株式分割前の株価)に上がり、十分な成果を得たと自身を評価しました。
過去のForm 13Fの情報と合わせ、ドラッケンミラー氏がエヌビディア株を売買したタイミングを振り返ると、時系列で以下のようなイメージとなります。
出所:Tradingview.com
その後、相場は乱高下を繰り返しながらも大きく上昇し、ドラッケンミラー氏は、直近10月に行われたブルームバーグのインタビューにて、次のように語っています。
【引用・翻訳】
「私は投資家のキャリアの中で、多くの間違いをしてきました。その一つが、800〜950ドルあたりでエヌビディアを売ってしまったことです。それが今や1300ドルになっています。(中略)今は(エヌビディア株を)全く保有していません。すべて売ってしまったことは大きな間違いでした。(中略)今は売ってしまった心の傷を自分自身で癒しています。」
Boomberg Television: Stan Druckenmiller on Fed Policy, Election, Bonds, Nvidia
これに加え、ドラッケンミラー氏は、かつてポートフォリオの主要銘柄として売買していたマイクロソフト株についても、過去半年のうちに、ほぼ全てのポジションを解消しています。
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ドラッケンミラー氏が注目する投資先は?
ドラッケンミラー氏がエヌビディア株を売却して膨大な利益を得たことは明らかですが、これから将来的に買い向かう投資先には、どのような候補が考えられるでしょうか。
メディアでの発言や、直近の第3四半期で売買した銘柄などを参考に考察します。
まだAIでプレイする方法は沢山ある
ドラッケンミラー氏は、2022年の秋頃からエヌビディア株を買い始めるに至ったきっかけや、AI産業に対する長期的かつ幅広い期待をメディアのインタビューで明かしています。
【引用・翻訳】
「若いパートーナーが私に電話をしてきて、こう語りました。ブロックチェーンに対する熱狂はAI技術によってさらに大きくなると。そう言うので、彼にプレイする方法を尋ねると、エヌビディアを買うべきだと言ったのです。私はその会社名のスペルさえも知りませんでしたが、買いました。その1ヶ月後にChatGPTが登場し、私のような老人にさえも、それが何を意味するのか理解できましたので、私は買いポジションを大幅に増やしました。」
CNBC Exclusive: CNBC Transcript: Billionaire Investor Stanley Druckenmiller Speaks with CNBC’s “Squawk Box” Today
【引用・翻訳】
「私達はAIが長期的に大きく成長すると信じており、まだAIでプレイする方法は沢山あります。特に、必要な電力を支えるインフラです。それは本当にとても素晴らしい会社なので、株価が下がってきたところで、再度関わりたいと思います。」
Boomberg Television: Stan Druckenmiller on Fed Policy, Election, Bonds, Nvidia
ドラッケンミラー氏が言及しているインフラ企業が何を指しているのかは不明ですが、直近では、保有していた電力会社ビストラ社の株式の8割以上を売却処分していた点が気になるところです。
同時に、株価が下がれば再度買い向かうことも発言しており、今後ドラッケンミラー氏が、AIの成長に関連してどのセクターでプレイしていくのか、注目したいポイントです。
率直に言ってビットコインを持つべきである
ドラッケンミラー氏は、過去にビットコインを保有していたことがあるものの、2022年10月におこなわれたCNBCによるインタビューの時点では、中央銀行による金融引き締めの環境下で保有を解消していたことを明かしました。
さらに、2023年10月のロビンフッド財団の会合にて、次のように語っています。
【引用・翻訳】
「ビットコインの値上がりには驚いている。若い人達がビットコインを価値の貯蔵手段としてみているのは明らかであるし、その方がはるかに簡単な方法であるからだ。ビットコインの17年間は私にとってもブランドであり、5000年のブランドがある金も好きだが、私は両方とも好きだ。率直に言って、私自身はビットコインを持っていないが、持つべきだ。」
Robin Hood NYC 2023(Oct 30th)
この発言以降、ドラッケンミラー氏がビットコインを買っているか否かは定かではありませんが、大統領選挙ではトランプ氏が勝利し、暗号資産の市場にポジティブな材料となることが有力視されます。
「率直に言って持つべきだ」と語ったビットコインを買い向かっている可能性は十分にあるでしょう。
トランプ氏勝利を折り込んで銀行株が上昇
大統領選挙ではトランプ氏の勝利を折り込む形で相場が先行して動いており、暗号資産の他にも恩恵を受けたセクターの一つが銀行株です。
大統領選挙の数週間前におこなわれたブルームバーグのインタビューにて、ドラッケンミラー氏は次のように語りました。
【引用・翻訳】
市場の内部では、トランプ氏が勝利すると強く確信しているようです。それは、銀行株や仮想通貨、彼のSNS企業のDJTにも現れています。全体的には、規制緩和がおこなわれた場合に恩恵を受ける産業が他産業のパフォーマンスを上回っている情勢から、トランプ氏が有力であると推測します。
Boomberg Television: Stan Druckenmiller on Fed Policy, Election, Bonds, Nvidia
ドラッケンミラー氏は、直近の第3四半期(7〜9月)に、アメリカの地方銀行株で構成されるETF、SPDR S&P Regional Banking ETF (KRE)を新規で購入したほか、金融機関大手のシティグループ、地方銀行のU.S.バンコープ、ハンティントン・バンクシェアーズなどの株式を新たに取得しています。
実際にトランプ氏が大統領選挙で勝利した後、ドラッケンミラー氏が仕込んでおいたこれらの銀行株はどうなるのでしょうか。材料出尽くしで売られたのか、もしくは長期的なトレンドとして買い増しされるのか、第4四半期の続報で注目したいポイントです。
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そのほか、過去のForm 13F解説記事はこちら
https://burry.co.jp/tag/form13f/
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