Hyperliquidでの$PURRのスキャルピングで6,000ドルを15万5,000ドルに増やす クリプトトレーダー・AIポメラニアン氏 1/3

AIポメラニアン氏に、最近の取引などについて伺いました。

AIポメラニアン氏 プロフィール

美大出身で「いい絵」を描くことを目指す画家。2017年より国内のCEXを主戦場とし、主にスキャルピングで暗号資産を取引。

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取材実施日

2024年5月27日

CEX、DEXでスキャルピングで取引

ーー2023年5月に執筆された「仮想通貨で億トレになるポメラニアン」にて過去の取引について拝見しました。簡単な経歴や取引手法について教えてください。

大学卒業後の2017年に就職したくなくて投資をはじめ、暗号資産の取引を始めたのが最初です。

国内のCEXでスキャルピングをメインに取引しており、ビットコインの現物は法人アカウントで保有しています。

ポートフォリオは自分の家とビットコイン、株式が500万円ほどで、あとはすべて現金で保有しています。

自宅は絵を描くための広い部屋が欲しくてローンで購入したのですが、私が無職で信用がないので条件が厳しく、7割は頭金で支払いました。

現在は地方に住んでいます。

一日に2万円以上稼げれば取引し、それ以下もしくは負けるなら取引しない

ーー最近の取引について教えてください。

主戦場はCEXなので珍しくDEX、Hyperliquidを触っていますが、DEXだとスキャルピングするときに注文の反映が1、2秒遅くて、利益が出たと思っても損失になることが多いんですね。

なので最初は使えないなと思ったんですが、取引することで付与されるポイントが損失より大きいという試算ができたので仕方なく取引していました。

それである時、Hyperliquidでspotマーケットが登場しperpマーケットで動いていたマーケットメイクbotが稼働していませんでした。そうすると私の注文が一番早く成立するようになり、CEXで使っているいつもの手法が使えるようになって、勝ち続けられるようになりました。

「一日に2万円以上稼げれば取引し、それ以下もしくは負けるなら取引しない」というルールで取引しているのですが、今はまだHyperliquidで一日に2万円以上利益が出ているので取引は続けています。

ーーnoteを拝見する限り、一日2万円という閾値は低く感じました。

一日2万円というのは足切りラインなので、一日で100万円の利益が出ることもあります。

最近取引している$PURRは最初は一日で数万ドルほど利益が出ていたのですが、マーケットボリュームが下がると参加者が減って取引で得られる利益も減少してしまうため、最近は一日500ドル程度まで減ってきています。

$ELFも最初の一週間ほどはスキャルピングできていましたが、いまはゼロに近いです。

こんな感じで、一日2万円以上勝てるなら取引し、そうでなければやめて別の場所やコインを探すということを繰り返しながら取引しています。

マーケット参加者やbotのレベルが上がってきて取引の執行も早く、取引機会はあまりない

ーー2023年5月に執筆された「仮想通貨で億トレになるポメラニアン」では「マーケットでの自分の限界を感じている」と書かれていました。現在ではいかがですか。

大きく変わっていません。

結局、必ず勝てる状況は珍しいんですよ。

$NIDTの次に$ELF、Hyperliquidの$PURRが来てという感じで、私の取引手法だとどんな銘柄でも利益が出るわけではありません。

最近は日本国内の取引所にお金を入れる人がほとんどいなくて、取引できるタイミングがほとんどないんですね。

それで海外のCEX、例えばbybitとなるのですが、bybitはマーケットメイクbotがめちゃくちゃ強くて、普通に裁量でスキャルピングしたら絶対負けます。

スイングで時間をかけて1,000万円、2,000万円の利益というトレーダーもいるようですが、bybitでスキャで利益1億円というのは直近では聞いたことがありません。

昔はbitFlyerのLightning FXでも毎日10万円の利益が得られていましたが、マーケット参加者やbotのレベルが上がってきて、取引の執行も早く、今はもう無理です。

私が「この板にチャンスがある」と気付いて注文しても間に合いません。

そういう意味では、スキャルピングにチャンスがあるかというとほとんどなくなっているというのが現状だと思います。

ーー2017年ごろとは大きくマーケットの状況が変わってきたんですね。

2017年は例えばコインチェックでNEMがリストされていたじゃないですか。

当時はPoloniexやBitfinexの価格をコインチェックが自社の販売所の価格に反映し、その販売所の価格をZaifなどが参照して板を出していて、Poloniexの価格を最初に見ていればその後価格がどちらに動くかわかったんですね。

でも今はアービトラージのbotがいるので価格差が一秒ほどで解消されてしまいます。

昔は取引所間の価格差をとりやすくて、今よりはるかに鞘をとりやすかったです。

エアドロップは空から降ってくるお金ではなくリスクの対価になってきており、小口は成り上がるのが難しくなってきている印象

ーーその他の取引についてはいかがでしょうか。

コインチェックのIEOのブリリアンクリプトトークンは参加しました。

SolanaのSanctumも触りましたが、難しいですね。

トークンを預けるとエアドロップがもらえるといった仕組みだったのですが、大金を預けなければ大してもらえませんし、実際どれくらいもらえるかも不明なので、私からするとリスクが高くて今後は強く取り組みたいとは思えないですね。

ーー市場が効率的になって勝てる機会が減ってきているとのことですが、長期的に勝つために考えている戦略などはありますか。

ありません。

最近は純粋な裁量トレードよりもエアドロップなどで稼ぐ方が主流になってきていますし、取引所も推しがそこになってきていますよね。

昔みたいにコツコツと取引して1,000ドル、1万ドルの利益を得ましたとか、そういう世界ではなくなってきている。

実際、botterはまだいますがトレーダーは減っている印象で、昔のようにbitFlyerの損益グラフのスクショをとって「勝ちました」みたいな投稿は見かけなくなりました。

エアドロップは確かに一撃で数百万円など大金をもらえることもあるのですが、大きめの資金を動かす必要があり、Uniswapの時のような純粋な空から降ってくるお金ではなくリスクの対価になっていますし、小口は成り上がるのが難しくなってきている印象があります。

Hyperliquidでの$PURRの現物のスキャルピングで6,000ドルを15万5,000ドルに増やす

ーー印象的な取引について教えてください。

やっている取引はどれもあまり変わらないのですが、最近、Hyperliquidで$PURRの現物のスキャルピングで6,000ドルを15万5,000ドルに増やしたというのがあります。

ーーなぜ6,000ドルを15万5,000ドルに増やせたのでしょうか。

$PURRを取引する人たちがあまりトレードに慣れていないからですね。

「トレードで損してもエアドロップで利益が出ればいい」というマーケット参加者が増え、純粋にトレードだけで利益を出したいという生粋のスキャルピングトレーダーのような参加者が減っていて、相対的に競合が弱くなっているので利益が出せたということだと思います。

もう私みたいな取引をしている人はあまりいませんね。

2018年のbitbankで取引手数料が無料な上にキャンペーンで$XRPも付与されていたことをきっかけにスキャルピングを始める

ーーいつから現在のスキャルピングの手法に辿り着いたのでしょうか。

取引を始めた最初、2017年はアービトラージが主でした。

スキャを始めたのは2018年にbitbankの取引手数料0円に惹かれてアカウントを作ったときからですね。

当時のbitbankは手数料がかからないだけでなく、$XRPを取引すると$XRPが付与されるキャンペーンも行っていました。

当時は日本の取引所での価格が海外取引所の価格に遅れて収斂されていたので、海外の価格を見ながらbitbankで売買して、スキャの利益を得つつキャンペーンの$XRPをもらうということをやっていました。

▼当時の取引履歴。本人提供

株式の現物では一日に何回も取引するスキャルピングのような取引は禁止されているのですが、暗号資産は取引制限がありませんし、中でも当時のbitbankは手数料が無料な上にキャンペーンで$XRPも付与されて、こんなことができるんだと衝撃を受けました。

キャンペーンで、$XRPの出来高トップには一週間に最大10万円分の$XRPが配られるのですが、それで一位をとってスキャルピングの資金がどんどん増えていきました。

▼当時のbitbankの投稿

そのマーケットでしか取引されていないし、そのトークンの要因でしか動かないので板だけ見ていればいい

ーー現在も海外の取引所の価格を見てトレードされていますか。

昔はイナゴフライヤーが鳴ったら上がる、下がるということがあったんですが、最近はそれほど単純な動きではなくなってきています。

最近、私が取引していた$PURR、$NIDT、$ELFはあまりビットコインの値動きと連動していません。

外の金融情報、例えば米国で景気が悪くなったとか、そういった要因にこれらのトークンの値動きは左右されないんですね。

そのマーケットでしか取引されていませんし、そのトークンの要因でしか動かないので板だけ見ていればいいんです。

ビットコインのスキャだと様々な経済指標や取引所のデータを最速で取って動かしてる人がいて、私が見ているデータだけだとさすがに弱く、全く勝ち目がありません。

相手より自分の方が取引の注文、執行が遅いと勝てない

ーースキャルピングする上で重要な点や気をつけた方がいいことがあれば教えてください。

自分より強いプレイヤーがいるマーケットで戦ってはいけないということですね。

相手より自分の方が取引の注文、執行が遅いと勝てません。

例えば、たった数秒間の中で、ある板に対して、購入し、購入以上の価格で売ろうとするわけですが、その数秒間の判断がマーケットの向こう側にいる人より遅れてしまう人はスキャルピングをやめた方がいいです。

botは機械なのでそういった取引がめちゃくちゃ早いわけで、そういった相手と同等の早さ、精度がなければスキャでは負けてしまいますし、負けるのであれば取引をやめたほうがいい。

その手法自体がもう死んでいるということなので。

時間軸が長くなれば長くなるほど価格の動きがわからなくなるのでスキャルピングで取引する

ーーAIポメラニアンさんは実際はどの程度の時間軸でスキャルピングされているのでしょうか。

10から30秒です。

時間軸が長くなれば長くなるほどわからなくなるんですよ。

例えば、10秒後のビットコインの価格と1時間後のビットコインの価格では、1時間後の価格のほうがどちらに動いているか予想できません。

スイングトレーダーはそれがわかるから勝てるんでしょうが、私にはわからない。

例えば、今年の2024年1月にビットコインの現物ETFが承認されましたが、承認のニュースを最速で知って買えた人は必ず勝てるわけです。

その情報が自分に入ってくるのが遅い場合は勝てないのですが、例えば、承認されたというニュースが出て海外で広まっているのに、bitbankだけ少し上昇が遅れたりすることはあります。

それは、深夜の時間帯で板を出しっぱなしで寝ている人などがいるからで、そういった別の要因があれば初動が少し遅れても勝てる可能性はあります。

ただ、その後の判断が遅れて海外の価格にどんどん近づいている中で買うのは遅すぎます。早く判断しなければなりません。

「考えるシナリオの時間軸が短くて済む」というのがスキャルピングのメリット

ーースキャルピングは時間との戦いですね。

補足すれば、価格が乖離し海外の価格に日本のマーケットが追いつくと予測できても、価格差が縮まる前に海外の価格が反転してしまうと予想が外れ損失が出てしまいます。

そのため価格差が消えるのが早いか値動きが反転するのが早いのかを考えておかなければいけません。

「この程度の量の売り板であれば多分壁を崩して海外に追いつくだろう」「このニュースであれば海外の価格はしばらく落ちないだろう」など、予想の時間軸が短ければ短いほど当たりますよね。

実際に自分が売買した後に海外の価格に追いついたら利確すればいいし、海外の価格に追いつかないなら早めにクローズして諦めればいいわけです。

そのため、「考えるシナリオの時間軸が短くて済む」というのがスキャルピングのメリットなのですが、そこを無視して、「いや絶対追い付くはずだ」などと願望を言って粘ると損をします。

時間が長くなってしまうと、「あれは嘘でした」と別のニュースが流れるなど不確実性が高まります。

だから自分のシナリオをもとに数分間の時間軸で取引しなければ勝てないんです。

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全三回のAIポメラニアン氏のインタビュー、2記事目に続きます

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