「暇でずっとマーケットを見れることがエッジ」クリプトトレーダー・AIポメラニアン氏 2/3

AIポメラニアン氏に、失敗した取引などについて伺いました。

AIポメラニアン氏 プロフィール

美大出身で「いい絵」を描くことを目指す画家。2017年より国内のCEXを主戦場とし、主にスキャルピングで暗号資産を取引。

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取材実施日

2024年5月27日

自分が優位に立てる、マーケット参加者が弱いマイナーな市場を探す

ーー「自分より強いプレイヤーがいるマーケットで戦ってはいけない」というのはアービトラージのbotterの方も同じことをおっしゃっていました。

botも自分より早いプレイヤーが同じマーケットにいたら勝てないはずなのでおっしゃるとおり同じだと思います。

なので、自分より強いプレイヤーがいないマーケットにどんどん避難していかなければいけないのですが、その「自分より強いプレイヤーがいないマーケット」はCEXにほとんどないので、noteで書いていた「マーケットでの自分の限界を感じている限界を感じている」に繋がります。

参考:仮想通貨で億トレになるポメラニアン|AIポメラニアン

ーーbotterはEthereumのようなメジャーなチェーンには強いbotterがいるのでAstarなど勝てるところに行くとおっしゃっていましたが、スキャルピングも同じですね。

はい、同じだと思います。

例えば、わざわざロジックを考えて、$ELFトークン取引のためのbotを稼働させる人なんていないわけです。

「日本の$NIDTを取引するために海外からCoinbookに登録してそこで勝負する」なんて人は世界中でもほとんどいません。

そういったマイナーな市場ではマーケット参加者が弱いので私は優位に動けますが、Binanceやbybit、ビットコインのような世界中から資金が集まるようなマーケットやトークンでスキャルピングすると勝つのはかなり難しくなってしまいます。

ーー相対するマーケット参加者の強さなど、様々な要素を考慮した結果、現在はHyperliquid$PURRを取引しているということですね。

はい、その通りで、今は$PURRがたまたま条件が揃っているので勝てています。

ただ、それもしばらくしたら終わりますし、終わったらやめるというだけです。

鞘を人力でとるかbotでとるかの差でしかないので、スキャルパーもbotterも根本の考えは似ている

ーー裁量トレーダーには「資金が少ない初期はスキャルピングで増やし、資金が増えたらスイングなど取引の時間軸を伸ばす」という方が多い印象です。AIポメラニアンさんは資金が一定増えてもスキャルピングを続けているのが印象的です。

時間軸が長くなるほど価格がどちらに動くかわかりませんし、例えば株なんかでは指標や四季報など、そういった経済の勉強をしているわけではないので中長期で確実に勝てる気がしません。

それに、私は暗号資産をあまり信じてはいません。

ビットコインだけは多くの人が勧めてくれ、何となく自分でも納得できているので保有してはいますが、よくわからないアルトコインを100万円分買って長期で保有するというのは怖くてできないんですね。

ーーそういった考えもアービトラージのbotterの方に似ていますね。

アビトラも損しない、小さな利益を積み重ねていくことを軸として取引していますよね。

結局、鞘を人力でとるか、botでとるかの差でしかないので、スキャルパーもbotterも根本の考えは似ているのだと思います。

スキャルピングは負けるリスクを極限まで減らしてトレードできる

ーースキャルピングの特徴とAIポメラニアンさんの性格的な特徴がうまくマッチしている印象です。

スイングだと1,000万円の資金を入れたら1,000万円が無くなる可能性もゼロではないですよね。

スキャルピングは秒で取引する世界で、1秒間で1,000万失うということはまずありません。負けるリスクを極限まで減らしてトレードできるわけです。

例えレバレッジ50倍でポジションをとって価格が逆に動いたとしても、1分間で受ける損失は大きくても数百ドル程度で、それほど資金が要るわけでもありません。

5,000ドル程度あれば十分増やせます。

ーー現在は時間的にはどの程度取引されていますか。

$PURRの取引を始めてからの2週間は多いときで一日で十時間以上取引していて、起きている間はずっと取引していますね。

現在のような一日で数万ドルを稼げるチャンスはそうそうないので、ほぼ不眠不休で取引しています。

大きく利益を得られる機会がもう多くは残っていないので今のうちに頑張って稼いでいる

ーーかなり取引時間が長いときもあるようですが、取引しているときは楽しいのでしょうか。

最初の頃は楽しかったですね。

一回の取引で100万円のリターンを得てこんなに増えるんだって喜ぶこともありましたが、最近は全然楽しくなくて、とにかく早く終わって欲しいと思いながら取引しています。

取引しないで済むのであればそうしたいくらいです。

ーーそれだけ勝てているのに、意外です。

私の手法では大きく利益を得られる機会はもう多くは残されていないので、楽しくなくても今のうちに頑張って稼いでおくか、と仕方なく取引しているだけです。

実際、2023年は勝てそうな機会がなかったのでほとんど取引していません。ずっとダラダラしていました。

こういった、機会がある時期とない時期が明確に分かれるような手法で取引しているので、例えば会社員だと無理なんですね。

機会があるからといって、仕事を休んでずっとスキャルピングするわけにもいかないので。

逆にいうと、暇になることができればこういったチャンスもあるということです。

じわじわ上がっていくような値動きであれば価格が大きく価格が上昇しても取引機会はあまりない

ーー2023年は勝てるような取引機会がなかったとのことですが、ビットコインの価格は年始から年末にかけて大きく上昇しました。ボラティリティも一定程度、生じた年だと思いますが、スキャルピングの機会はなかったのでしょうか。

価格が上昇したからといって取引機会が生まれるかといったらそんなことはないんですね。

価格が上がっていくと言っても2023年はじわじわ上がっていくような上がり方で、昔とは違いますから。

そうではなくて、例えばリップルが裁判に勝った日に急変動が起きてbotが壊れたような動きをしたのですが、スキャ勢としてはそういったときのほうが鞘が落ちていて勝てます。

自分より優れている人たちのbotが止まっているときはチャンスなので。

そういうときにスポットで100万円勝てたりしますが、そういったチャンスはあまりありません。

bitbankとbitmexでの$XRPの価格乖離を狙ってショートし失敗

ーー印象的な取引の失敗について教えてください。

2018年にリップルでSwellというイベントがあったのですが、それでbitbankとbitmexで$XRPの価格が大きく乖離しました。

当時、ちょうどbitmexで1BTCほどの証拠金を持っていたので、乖離の縮小に賭けてbitmexで$XRPをレバレッジ3倍でショートしました。

すると価格の乖離は縮小せず、逆に動いてどんどんロスカットが連鎖し、最終的に想定以上の乖離が出て私のショートもロスカットされてしまいました。

▼当時の他のトレーダーの投稿

証拠金を積み増そうとbitmexにビットコインを送ろうとしましたが間に合いませんでした。

価格が異常に乖離したから大丈夫だろうとレバレッジショートしましたが、リスクの見積もりの甘さがでてしまいました。普段の取引ではしないリスクの取り方だったので反省しています。

当時の1btcはそれほど大きい金額でもありませんが、これが人生最大の損失です。

参考:21日に前日比一時100%高、仮想通貨リップル(XRP)の価格急騰と反落の背景

ーー乖離していた理由は何だったのでしょうか。

閑散銘柄故に起きたロスカットだと思います。

XRP/BTCはそこまで多くの人が参加してた印象がありませんでした。そのため最初に誰かがロスカットされ、連鎖して価格が乖離していく中で、これだけの乖離は縮小するだろうと思ってポジションをとったら私も巻き込まれました。

それから$XRPのことがすごく嫌いになりました。

シナリオと違う動きがあったのにシナリオ通りに戻ると考えて取引を続けてしまったのが失敗

ーーこの取引から得られた教訓はありますか。

レバレッジが1倍ならロスカットされるほどではなかったわけで、レバをかけるべきでなかった、リスクの取り方が普段の比ではなくなってしまっていた、ということですね。

自分の判断を超えている何かが起きていて、シナリオと違う動きがありました。それでもシナリオ通りに戻ると考えてしまい、諦めて損切りしなければならなかったのに、取引を続けてしまった。

ーーそれ以降、レバレッジをかけた取引はされていますか。

いいえ、もともとレバレッジをかけた取引は好きではなかったというのもあり、これ以降、レバレッジをかけた取引は行っていないですね。

暇で、ずっとマーケットを見ることができるのがエッジ

ーーマーケット参加者としてのご自身のエッジについてどのようにお考えですか。

暇で、ずっとマーケットを見ることができるというのはエッジだと思っています。

「IEOがあるから今日からしばらくは板に張りつきたい」「Hyperliquidで取引機会があるから丸々1ヶ月、取引に集中したい」というときに、時間がない人は参加できませんが、それはトレーダーとしては致命的なんですね。

朝から晩まで取引したら数万ドルが手に入るかもしれないのに、普通の人は学校や会社に行かなければならない。

忙しい人は取引自体に参加できないか、参加できても「忙しいからとりあえず値ごろで売ってしまおう」と、雑に取引するしかなくなります。

ニュースが転がってきたときにすぐに動ける、夜中にイベントがあっても仕事がないのでその日寝ずに参加できるとか、そういうところにチャンスが転がっています

私は意識的に暇な時間を作ることでそういったチャンスに参加することができ、これが他のマーケット参加者と比較した際のエッジになっていると思っています。

ーー関連して「利益が出たから専業になるというプロセスはあまりうまくいかなくて、専業になったら利益が出たみたいなほうが実は多いんじゃないか」という投稿も拝見しました。

はい、これも似た様な話ですが、「利益が出るから専業になるのではなく、専業で相場に集中できる環境があるからこそマーケットの歪みを見つけやすくなる」というのはあると思います。

兼業で専業になっても食っていけるだけの利益を出せる様になることを目指す人がいますが、最初から専業になってしまってうまくいかなければトレードを辞めるというのも一つの手です。

専業になってもダメならば兼業ではもっと難しいので見切りをつけて投資信託とかでコツコツ給料を回していくという選択肢もいいのかなと思います。

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全三回のAIポメラニアン氏のインタビュー、最後の3記事目に続きます

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