2024年はルールが変更されたNISA制度を利用して投資を始めた方がたくさんいらっしゃると思います。
そしてその多くの方が投資信託を利用しているでしょう。
非課税投資限度額が決められているので、金額を指定して投資できる投資信託の方が、使い勝手がいいのだと思います。
筆者も、つみたて投資枠はすべて、成長投資枠の一部で投資信託を利用しています。
読者の皆さんが、投資信託を選ぶときに念頭に置くことは何でしょうか。
投資信託の選び方を指南するような素材がたくさんあるように思います。
それらを読んで判断したならば、多くの方が念頭に置いたことは信託報酬率でしょうか。
これはいわゆる投資信託のコストで、値が低い方が投じる資金が有効に使われるものです。
「コスパ」を重視する方が増えてきた近年、当然と言えば当然でしょう。
筆者が投資信託を選ぶときは、もう少し踏み込んで信託報酬以外の要素にも着目します。
おせちーず氏 プロフィール
投資歴約32年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリスト、シンクタンク研究員を経て、現在大学講師。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies
ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/
メルマガ:https://www.mag2.com/m/0001697420
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純資産総額
投資信託を利用している方へ問います。
「純資産総額」という言葉を意識したことがありますか?
投資信託の純資産総額とは、投資家に帰属する資産の合計額のことを指します。
純資産総額は、投資信託の全体資産の中からすでに発生している運用費用などを差し引いて算出します。
純資産総額の大きさは、投資信託の規模を示すものです。
純資産総額が時間の経過とともに増え続けている投資信託は運用成績が伸びているか、もしくは新たな資金が入っていることになります。
こちらは、公募(誰でも買ったり売ったりできる)投資信託の純資産総額ランキングです。
大きいものは5兆円以上です。
誤解されることが時折あるので、敢えて申し上げておくと「純資産総額は大きければ大きいほど良い」わけでもありません。
十分な流動性と時価総額を有する対象に投資する投資信託であれば、新たな資金が入った時に投資対象資産にお金を入れることができますが、例えば中小型株で構成される投資信託の場合、投資対象である中小型株の流通株式が少なくなってくると、新たな資金でそれらを買うことが難しくなります。
このような場合、当該投資信託の新規買い注文受付を停める場合があります。
とはいえ、純資産総額ランキング上位の銘柄は多くがポピュラーな株式インデックスに連動する商品で、連動を目指すインデックス自身は適度な流動性が無ければ銘柄を採用しないものです。
5兆円超が純資産の規模として大きすぎるというわけでもないでしょう。
言い換えると、純資産残高の適正規模は投資対象資産に依存するとも言えます。
純資産総額を変化させる要素
では、純資産総額に変化をもたらす要素が何かを明らかにします。
5点あります。
1.資金の流入出
投資信託を買う人は投資信託にお金を流入させる人です。逆に売却する人は投資信託からお金を流出させる人です。買いと売りを相殺してプラスになれば、純資産は増加します。
投資家が日々の資金流入出を確認するのは容易ではありませんが、月次ベースでは可能です。
例えばYahoo! ファイナンスでは下の図のように表示されます。
コンスタントに資金が入り続ける商品が理想的です。
2.基準価額の変化
「きじゅんかがく」です。
「きじゅんかかく」ではありません。
投資信託の1口または1万口あたりの購入・換金などの取引時に基準となる価格のことです。
一般的に1万口あたりの価格が用いられます。
先ほど掲示した純資産総額ランキングに示されている基準価額も1万口あたりです。
基準価額は運用成果によって変動し、購入時と換金時の基準価額の差が投資家の損益となります。
3.分配金
分配金は、投資信託の資産から支払われています。
ですから、分配金を受け取るときには、純資産は減少しています。
分配金は決算によって支払われますが、決算の回数やタイミングは投資信託によって異なります。
銘柄によっては毎月決算のものもあります。
またどの程度の分配金を出すかも、商品によって大きく異なっているのです。
つまり、たくさん分配金を出すということは、純資産総額も減少しやすいということで「分配金を出す=収益性の高い投資信託」というわけではありません。
4.為替リスク
当該投資信託が海外の資産を投資対象としている場合、当該商品の純資産残高は、為替レートの変動リスクにさらされています。
米国株を投資対象としている場合、米国株式市場が軟調になり、同時に米ドルに対して円高になれば、株安と円高の影響を同時に受けることになります。
5.手数料
信託報酬率を意識する方が少なくないでしょう。
信託報酬は投資信託の純資産から支払われるので、純資産総額の変動要因です。
純資産は少ない方が問題あり
純資産総額は必ずしも多ければいいというものではありませんが、少ない場合は明らかに問題があります。
純資産総額と運用の安定度には、密接な関係があり、純資産総額の少ない状態が続いて運営がままならず、所定の運用期間満了前に償還してしまうことがあります。
「繰上償還」と言います。
投資信託は、投資家に書面で通知する等の手順を経て、繰上償還することができます。
「繰上償還」は自分の意志とは無関係に、保有していた商品を換金されます。
わかりやすくするために、1万口で基準価額10,000円の投資信託を所有していたとします。
分配金を含めずに考えると、利益を得るためには基準価額が10,000円以上になったタイミングで売却しなければなりません。
しかし基準価額が6,000円のときに繰上償還になってしまうと、4,000円の損失が強制的に確定します。
繰上償還を行うかどうかの判断は、運用会社が行います。
投資信託の商品ごとに繰上償還を行う際の条件が、あらかじめ定められており、もちろん目論見書に掲載されています。
「目論見書を読んだことない!」という方は、今からでも遅くないのでこっそり読んでください。
たとえば、三菱UFJアセットマネジメントが運用する、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の目論見書には以下のように掲載されています。
多くの投資信託が繰上償還の条件に「受益権口数が一定以下になったとき」を挙げています。
この受益権口数は、純資産総額よりも確認しづらいです。
運用報告書に掲載されているからです。
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の直近の運用報告書では14ページに載っていました。
1兆3,000億口程度あるようですので、10億口以下には当面ならないでしょう。
投資信託を純資産総額という側面から考察しました。
純資産が少なくなると、繰上償還というありがたくない事態に直面することがあることをご理解頂けたでしょうか。
次回は、繰上償還の実例を挙げて、投資家として知っておきたいことをご紹介しようと思います。
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