初期ビットコイナーのbigstone氏に長期的な時間軸でのビットコインの普及予想などについて伺いました。
bigstone氏 プロフィール
ビットコインに2013年から投資。海外居住。自由主義者。
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「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
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取材実施日
2024年6月6日
全く新しい産業は莫大に大きくなるのでアナロジーでは正確に予測できない
ーーインターネットの黎明期を経験しているからこそビットコインにデジャブを感じたとのことですが、具体的にビットコインのどのような点に可能性を感じましたか。
具体的な何かというのは難しいのですが、おそらくマーケットは今後すごく大きくなるだろう、今は黎明期にいるだろうという感覚ですね。
そういった感覚、どの程度マーケットが大きくなるかの確信がない人は、初期にビットコインを買えても、2017年など価格が大きく上昇したタイミングで売ってしまいます。
インターネットのような、持続的にイノベーションを発生させ莫大に大きくなっていく産業がごく稀に生まれますが、そういった大きな産業は未知のこれまでに存在しない産業なので、多くの人が市場規模を見誤ります。
成長性があるとは知りつつも、一度バブルがはじけたり、100倍になるともう伸びしろはないと考えてしまいます。
「既存の市場を代替してこの程度の市場規模になる」とアナロジー的に予想したりしますが、全く新しい産業は莫大に大きくなるのでアナロジーでは正確に予測できないんですね。
そういった、それ以前の経験値があって、ビットコインの可能性を直感的に理解できるかどうかが重要です。
実際、2017年のバブルではビットコインの価格が160万円を超え、私の買値からするととんでもない上昇をしましたが、最初に描いた市場規模には至らなかったので売りませんでした。
これからまた100倍になって、100倍の100倍で1万倍になる、まだ全然伸びると考えていました。
なので、伸びしろがどこまであるかを考える力が重要ですし、私がそう考えられたのはインターネット黎明期を経験し、ビットコインをデジャブと感じられたことが大きいです。
インターネットもこれほど大きな産業になるとは誰も思わなかったと言いますね。
同じことを繰り返しているわけです。
個人の財産やお金の自由がどんどん狭まっていく中でのカウンターとしてビットコインの需要はより増していく
ーービットコインはLightning Networkの開発が進み、ETFも承認されましたが、長期的にはどこまで普及していくと考えていますか。
当初よく言われていた、決済として使う、例えばパンやコーヒーを買うためにビットコインを使う未来というのは、私は考えていません。
もしかしたらそういった未来もあるのかも知れませんが、そうならなくても十分だとは思います。
最終的にどこまで到達するかですが、世の中がより混沌としていくと国家が発行するお金はどんどん価値を失い、規制も厳しくなり、個人の財産やお金の自由がどんどん狭まります。
そういった中でのカウンターとしてビットコインはより需要が増していくだろうと思います。
今は一部の人がようやくビットコインが本物で需要があることに気づき始めたところで、まだ序の口ですね。
インターネットで言うとスマートフォンが発明されたぐらい、スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したときがちょうどビットコインの現物ETFが始まったタイミングでしょうか。
なので、ここから信じがたいほど本物のお金として拡大していく、まだほんの序章だと思いますね。
▼2024年7月28日に米国でトランプ元大統領による演説が行われた日のbigstone氏の投稿
カストディされているものはあくまでブリッジであってLayer2ではない
ーーRGBなど、注目しているビットコイン系のプロジェクトがあれば教えてください。
RGBはだいぶ前に投資しましたね。
創業者の一人がウクライナの人なのですが、戦争で大変なことになってしまいました。
LNはステーブルコインが動けば面白いことになると思います。
ビットコインのLayer2は最近話題になっていますが多くはミームコインを作るためのテクノロジーでしかなく、Layer2とは言いがたいものばかりです。
カストディされているものはあくまでブリッジであって、Layer2ではありませんからね。
サイドチェーン、ブリッジと本当は表現すべきですが、今は何でもLayer2と言っています。
ちゃんとしたニーズに答えるものが出てくればいいですね。
見直されて発展していくことを期待しています。
「昔は金とドルは固定だったのに今や金はドルに対して1,000倍ほど値上がりしている。貨幣は価値を失ってきた」
ーー2014年のマウントゴックス事件、2021年のエルサルバドルの法定通貨化など約10年の中でさまざまなできごとがあったと思いますが、ビットコインにおいて最も印象的だった出来事について教えてください。
個人的に印象深かったエピソードは二つあります。
まず一つ目は、初めてビットコインのミートアップに訪れた時のことです。
六本木で行われていて、ロジャー・バーと外国人コミュニティが中心で、日本人はほとんどいませんでした。
その中でミートアップを主催していた宍戸健さんが新しく来た人を丁寧に対応されていて、「私はコインを収集している」と、ある古いコインを見せてくれました。
「これが19世紀の1ドル銀貨。1オンスの銀そのもの。これが本来1ドルということだった」
次にドル紙幣を2つ見せてくれて
「これが昔の1ドル札で、裏になんて書いてある?紙幣の持参人に対してゴールドと交換すると書かれている兌換紙幣なんだ。」
「今の1ドル札には単に連邦銀行券と書いてある。つまり、何の裏付けもない紙のおもちゃ」
「昔は金とドルは固定だったのに、今や金はドルに対して1,000倍ほど値上がりしている。貨幣は価値を失ってきた」という話で、すごく説得力があり、時代を超えて価値を持ち続けることが非常に重要であると感じました。
それで私も価値の保存としてのビットコインに初期から注目していました。
ブロックサイズ戦争で初めてビットコインの可能性に懸念を感じる
ーー印象的な出来事の二つ目について教えてください。
二つ目はビットコインキャッシュとのブロックサイズ戦争で、この時はビットコインの関係者が真っ二つに分かれました。
一方は、コーヒーの購入にビットコインが使用されるような、日々使えるお金としてのビットコインを目指すビッグブロック派、現在のBCH派。
もう一方は、ビットコインのファーストレイヤーでのスケーラビリティは追求せず、セカンドレイヤーでスケーラビリティを追求しようというスモールブロック派、現在のビットコイン派です。
もし戦いに負けてビッグブロック派が開発を主導する事態になればビットコインは失敗してしまう、その時は保有しているビットコインを全て売らざるをえない。
黎明期に投資し、これまで順調に成長、今後も莫大なマーケットになっていくという人生最大のチャンスを掴んだつもりだったのに、これでビットコインが消えてなくなってしまうかもしれないと、この時初めて私はビットコインの可能性に懸念を感じました。
次第に、ビットコインのミートアップでも二つの派閥で議論がかみ合わず、険悪な雰囲気になっていきました。
それまでの日本のビットコインのミートアップはBCH派のロジャー・バー氏が主導していて、古いビットコイナーや当時大きなハッシュパワーを持っていた大手マイナーのジハン・ウーなどほとんどがBCHを推していましたが、こちらも負けていられません。
本間さんが中心となってスモールブロック派で日本在住のニコラ・ドリエ、ビックブロッカーをTwitterで激しく攻撃していたサムソン・モウなどを東京に呼んで、スモールブロック派のロゴが入った帽子を配って、「みんなで頑張ろう」とやるわけです。
ブロックサイズ戦争直後にBCHを安く買って高く売るトレード
ーービッグブロック派とスモールブロック派では根本のところで考えが異なったのでしょうか。
ビックブロック派は壮大なビジョンで人々惹きつけましたが、技術的な裏付なく危ない橋を勢いで渡るようなスタートアップ的なスタンス、スモールブロック派は技術的な裏付けを持って石橋を叩く番人みたいな感じです。
マイナーがどちらを推そうが、最終的に選ぶのはユーザーであり、自分たちでノードを走らせて自分でどちらのビットコインをビットコインとして受け入れるのか選択するのが重要だという話をしました。
私は悲観的でもしかしたら駄目かもと考えていましたが、最終的にはBCH派がハードフォークで出ていくという結論に落ち着き、破滅的な結末を回避できました。
また、余談ですが、ハードフォーク後にBCHをトレードして、これが私のベストトレードになったというのがあります。
ハードフォークで取得したBCHをいつ売ろうかと考えていたのですが、当時BCHが持て囃され、いずれビットコインを逆転する(フリップ)とまで言われていた時期が短いながらありました。
トレーダーの田中さんと、一瞬1BCH=0.5BTCくらいまで値上がりするのではないかと考え、ハードフォークで付与された分のBCHに加え、1BCH=0.16BTCでBCHを大量に買い増しました。
その1ヶ月後に1BCH=0.4から0.5BTCほどのピークですべてBTCに売り抜けることができました。
ブロックサイズ戦争が勃発した時には心配しましたが、BCHの取引でビットコインの枚数も増やすことができ、結果的にはいい取引ができましたね。
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全三回のbigstone氏のインタビュー、最後の3記事目に続きます。
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