富士通は「第2の日立」になれるのか 株式投資家・おせちーず

おせちーず氏 プロフィール

投資歴約32年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリスト、シンクタンク研究員を経て、現在大学講師。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
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富士通ゼネラルは非公開化される見込み

2025年1月6日、株式会社パロマ・リームホールディングス(非上場;以下パロマ・リームHD)が富士通ゼネラル(東証プライム:6755)株式を公開買付け予定であることを公表しました。

株式会社パロマ・リームホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に係る賛同の意見表明及び応募推奨に関するお知らせ
出典:富士通ゼネラル IR情報

富士通ゼネラルは同社の株主に対して公開買付けが開始された場合には公開買付けに応募することを推奨しています。

社名から容易に想像できるように、富士通ゼネラルは発行済株式数の44.06%を富士通(東プ:6702)に所有される企業です。

富士通は富士通ゼネラルの筆頭株主であり、持分法適用関連会社です。

その富士通は、富士通ゼネラル株を公開買付けには応募しないものの、手続きを踏んで最終的にはパロマ・リームHDが富士通ゼネラルを完全子会社化するよう公表しています。

つまり、富士通ゼネラルは非公開化される見込みです。

富士通のプレスリリース(*1)に寄れば、富士通ゼネラルは、1936年1月に蓄音器・電気製品等の仕入・販売を主な事業とする株式会社八欧商店として設立された企業です。

その後ラジオ・無線機・拡声装置の製造・販売に事業を拡大するため、1942年8月に八欧電機株式会社に商号変更し、1947年11月に有限会社八欧無線電機製作所を吸収合併しました。

1966年11月に株式会社ゼネラルに商号変更し、その後、1984年9月に富士通と資本提携および業務提携を行い、1985年10月に富士通ゼネラルへ商号変更しています。

富士通の祖業は電話交換装置、電話機等の製造販売ですから、富士通ゼネラルの祖業と通じる点はあったのでしょう。

しかし、現在の富士通ゼネラルの主力事業は空調機の製造販売です。

富士通は2020年に「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを定め、以来、このパーパスを起点に、今後の社会の変化を見据えながらグローバルに事業を展開するテクノロジー企業としてのあるべき姿を描き、従来の「ICT企業」から、デジタル技術とデータを駆使してイノベーションを生む「デジタルトランスフォーメーション(DX)企業」となるための変革を進めている(*1) 途上です。

その途上で、空調機事業を営む「富士通ゼネラルの重要性、親和性が低くなった」(*1)ため、「富士通ゼネラル株式の一部又は全部を売却することを含めてこれら株式をどのように扱うべきかを検討して」(*1)きた結果が今回の公開買付け開始見込みに至った経緯のようです。

富士通ゼネラルは富士通のノンコア事業の一つとして位置づけ

2022年10月に実施された富士通の2023年3月期第2四半期決算説明会においても、「目指すべき事業ポートフォリオに向けた取り組み」として、富士通ゼネラルは富士通のノンコア事業の一つとして位置づけられ、当社の企業価値向上に繋がるカーブアウト/資本・業務提携等を具体的に検討中である旨を対外的に公表していました。

手っ取り早く言えば、富士通にとっての富士通ゼネラルはいずれ手放すつもりの子会社だったということになるでしょうか。

*1:出典:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2025/01/6.pdf

富士通は2022年にも100%出資子会社のPFU(非上場)株の80%をリコー(東プ:7752)に840億円で譲渡しています。

PFUと言われてもピンとこないかもしれませんがHappy Hacking Keyboardと言われればIT系に詳しい方ならご存知でしょうか。

他には個人用のスキャナなどもよく知られたPFU製品です。

また、上場子会社である新光電気工業(東プ:6967)も株式会社産業革新投資機構の完全子会社であるJICキャピタル株式会社が発行済株式の全てを所有するJICC-04株式会社による公開買付けが予定されています。

このような経緯を踏まえて筆者は富士通は事業の選択と集中に少しずつ着手してきているんだなと感じています。

そしてその姿がある企業に重なります。

日立(東プ:6501)です。

こちらは日立株の20年チャートです。

緑で囲んだ時期に起きたのがリーマン・ショックでした。

リーマン・ショックとは2008年9月、アメリカの有力投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻し、それを契機として広がった世界的な株価下落、金融不安(危機)、同時不況を総称します。

米国発の金融危機が引き金でしたが、その影響は世界各地に飛び火し、日本製造業も大きくあおりを受けました。

日立製作所の株価チャート
出典:日経スマートチャートプラス

日立が上場子会社の整理に着手したのが2009年です。

同年3月期決算で日本の製造業として当時過去最大の赤字である7,873億円の最終赤字を計上しました。

当時証券アナリストだった筆者は、決算集計をしていて日立だけではなく多くの企業が計上した巨額の赤字にため息をついていたものです。

当時、日立は上場子会社を22社抱えていました。

会長兼社長に就任した川村氏が経営の軸と位置付けるIT事業と社会インフラ事業との相乗効果を基準とし、グループの事業の入れ替えに着手したのです。

日立電線は2013年に日立金属によって吸収合併されました。

日立化成は2020年に昭和電工に買収されました。

日立金属は、米ベインキャピタル、日本産業パートナーズなど日米投資ファンド連合よって公開買付けされ、日立は保有株式をすべて手放しています。

日立建機は上場を維持していますが、保有株式の半分以上を伊藤忠商事と日本産業パートナーズの折半出資会社に売却しました。

2022年秋でこの「整理作業」は区切りがつきました。

2009年時点で22社あった上場子会社のうち、日立グループからの離脱組は半数以上の12社。残る10社が完全子会社化・合併、あるいは持ち分法適用関連会社としてグループに残留しています。

2023年以降株価が大きく上昇した理由の一つは、事業の選択と集中の結果ではないかと考えています。

ITサービスや送配電など高収益事業で稼げる収益構造になりました。

富士通の状況

翻って富士通です。

富士通の5年チャートを日立と比較しました。紺色が富士通です。

2023年以降日立に水を開けられた形です。

富士通と日立のチャート比較
出典:日経スマートチャートプラス

富士通の上場子会社でまだ何も動きが見えないのがFDK(東プ:6955)です。

富士通が発行済株式の約59%を保有する電池・電子部品メーカーです。

先ほどのチャートにFDKをピンクで加えてみました。

FDKは足下はやや回復しているものの、2023年以降軟調です。

富士通・日立・FDKのチャート比較
出典:日経スマートチャートプラス

筆者は富士通が第2の日立になるなら富士通に投資妙味があるなぁと考えていたのですが、いずれ何らかの形でFDKが非公開化あるいはM&Aされるなら、軟調に推移しているFDKの方が投資妙味があるのかなぁと考えたりもします。

 FDKは時価総額が230億円程度のスタンダード市場上場銘柄です。大型株を主戦場とする筆者にとってFDK株を買うのはばくちに近いような気もします。

かつて、親子上場解消をテーマに上場子会社投資を試したことがありました。

これはうまくいくこともあればいかないこともあり、勝敗としては五分五分と言ったところです。

筆者がこの原稿を執筆している時点でFDKのPERは約65倍、無配予想です。

資金を入れるにはリスクは大きそうに感じます。

とはいえ100株で7万円弱であることを考えると、ゼロになっても7万円のロスで済むならば、ばくちの価値があるのかもしれない。

そんなことを悶々と考える新年です。

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