「Star AtlasのNFTの取引では数分で数万ドルの利益が上がり、脳汁がドバドバ出て楽しかった」botter・くりぷとべあー氏 1/3

botterのくりぷとべあー氏に、トレードを始めたきっかけなどについて伺いました。

くりぷとべあー氏 プロフィール

機械学習エンジニアを本業として行う兼業アービトラージトレーダー。プログラミングを始めたきっかけは大学での研究だった。価格の上下を予測しなくても収益を上げられるトレードをメインに行っている。

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取材実施日

2024年7月3日

仕事で利用することが多いサービスの株式を中心に購入し投資を始めた

ーーまずはご経歴について教えてください。

現在はWebサービスの運営企業で機械学習エンジニアとして働いています。プログラミングを学んだのは大学の研究がきっかけでした。

仕事では機械学習を使っていますが、暗号資産のトレードではほとんど使わないですね。

暗号資産のトレードを本格的に行うようになったのは2021年です。

最近は、価格の上昇と下落を予測しなくても収益を上げられるトレードをメインに行っています。

ーー現在までの取引について教えてください。

暗号資産の取引を行う前は株式の取引を細々と行っていました。

仕事がIT系だったので、仕事で利用することが多いサービスの株式を中心に購入していました。

「Webサービスの集客にはGoogleの有料広告が不可欠だからGoogleの株を買おう」「クラウド化にはAmazonのAWSが非常に使いやすいからAmazonの株を買おう」といった感じでした。

そのような流れでGoogle、Amazon、NVIDIA、TeslaなどのITハイテク株をかなり早い時期から保有していたため、ある程度の利益を得ることができました。

2017年にビットコインを購入したものの2018年のバブル終焉で興味を失う

ーー暗号資産の取引についても教えてください。

2017年に友人からビットコインを教えてもらい、興味が湧いてCoincheckのアプリからビットコインを購入してみたのが最初です。

しかし、よくわからないままCoincheckの取引所で売買すると結構な手数料を取られて、最初は損した気分になりました。

そのまま少しトレードしていたのですが、大して儲からなかったということもあり、2018年のバブルの終焉とともに完全に興味を失ってしまいました。

その後、2021年1月に友人からのヨーロピアンさんnoteを教えてもらったことをきっかけに、もう一度暗号資産のトレードを再開することにしました。

「現物と先物の鞘取りをすることで値動きに関係なくほぼ確実に利益を上げられる」という考えや方法論に興味を持った

ーー当時、ヨーロピアンさんのnoteのどこに特に関心を持ったのでしょうか。

「現物と先物の鞘取りをすることで値動きに関係なくほぼ確実に利益を上げられる」という考えや方法論に強く興味を持ちましたね。

それで普段は会社員なのでチャートに張り付くことができないのですが、これならできるかもと思い、株式の取引で得たお金を資金にトレードを再開しました。

参考:ビットコイン ・ 仮想通貨で稼ぐってどうやるの総まとめ(2021年版)

ーーそれからどのような取引を行ったのでしょうか。

確かヨーロピアンさんのnoteを読んだのが2021年1月で、翌月の2月頃にはFTXで現物と先物のFR取り (FR = Funding Rate) を始めていました。

当時はバブル全盛期だったため、BNBなどの大型銘柄でも年率200%以上のリターンを得られる環境で、運良く好調なスタートを切ることができました。

ーーその後について教えてください。

別のヨーロピアンさんのnoteでDEGさんを知り、当時はFTXのコミュニティとして運営されていたDEG鯖に参加しました。

そこでFTXと関係が深かったSolanaのことを初めて知り、DEXでのトレードも始めましたね。

有識者との情報交換は非常に楽しく、暗号資産のトレードの魅力にハマりはじめ、暗号資産トレードに割く時間が増えていきました。

手動で鞘を取りきれなくなったことをきっかけにbotの開発に着手

ーーbotの運用を始めたのはいつからでしょうか。

FTXのFR取りを最初は手動で行っていたのですが、徐々に手では取りきれなくなってきてbot化したのが最初です。

Solanaも昔は今以上にボラティリティが大きくて、長い間、手動で鞘を取っていたのですが、こちらもSolanaが盛り上がるにつれて手で取りきれなくなってしまい、かなり勉強してからbotでのトレードに移行しました。

Solanaのbotは今でも主力botの一つです。

ーーくりぷとべあーさんは本業がエンジニアなので、botの開発、運用も最初からスムーズに行えたのでしょうか。

FTXやBinanceと言った主要取引所 (CEX) のbotはccxtというライブラリを使うことで比較的簡単にbotを開発することができました。

これは各取引所のAPIの差異を吸収し、統一的なインターフェースで取引を可能にしてくれるライブラリなのですが、Solanaにはそのような便利なライブラリは存在しておらず、botの開発には長い時間がかかりました。

本業がエンジニアということもあり、botを動かすサーバー等の準備はスムーズに行えましたが、「そもそもトランザクションて何?」など基本的なところから勉強をする必要があり時間がかかりましたね。

ただ、エンジニア未経験の完全な初心者よりは勉強することが少なくて済んだとは思います。

最近だと、ChatGPTやClaudeなどの生成AIがDEXのこともかなり教えてくれるので始めやすい環境になってきているとは思います。

お金というスコアを増やすゲームをトレーダー仲間と一緒にやっている感覚

ーー普段は会社員としてエンジニアの業務に従事し、プライベートではbotを作ってトレードしてとなると毎日かなりお忙しいかと思います。何がモチベーションなのでしょうか。

お金というスコアを増やすゲームをトレーダー仲間と一緒にやっている感覚ですね。

DeFiの仕組みも知れば知るほど面白く、これまで生きてきた中で目にしたものとはまったく異なる仕組みに惹かれました。

「自分のお金をブロックチェーンの上に置くと自動的にトレードフィーで稼げる」というのは、冷静に考えたら不思議なことが起こっていますよね。

そういう意味では知的好奇心でもあります。

うまくいけばローリスクでお金が増えるゲームだと思いましたし、今でもこの感覚で取引していますね。

トレードを再開した初期にたまたまDEG鯖に入れたことは幸運

ーー暗号資産の取引を再開した初期にDEG鯖で勉強できたことも今の成功に繋がっている印象です。

その通りだと思います。

もしDEG鯖がスキャム系のコミュニティでゴミみたいな暗号通貨を最初に触っていたら、暗号通貨のトレードはもうやってないだろうと思います。

私は比較的慎重な性格なので完全なスキャムに騙されることはなかったと思いますが、「暗号資産=詐欺」だと思い込んでしまったと思います。

現在でもDEG鯖とKudasaiJPは暗号資産の優良な二大コミュニティだと思っていて、そのうちの一つにたまたま初期に入れたことは幸運以外の何者でもないと思います。

ーーその後、2022年の取引はいかがでしたか。

私自身がbotの運用などに慣れたということもあり、2022年も好調でした。

ベテラントレーダーの多くは2021年1月、2月の方がリターンが大きかったと思いますが、私はその頃まだ勉強中で、それほど利益を出せなかったのですが、2022年は自分のトレードの型ができて徐々にうまくいきはじめた年になりました。

ーー2023年はいかがでしたか。

2023年は6月に相場が盛り下がったため退屈でしたね。

9月にはXに「引退しようかな」と投稿するほど退屈だったのを覚えています。

botの改善を繰り返してもあまり利益が増えなくて、「ひと休みしようか」という気持ちも芽生えていました。

BOBAのエアドロップで大きなリターンを得て、これまでとは異なる勝ち方を知る

ーー取引における印象的な成功について教えてください。

2021年の秋に、OMGの保有を条件にBOBAというトークンがエアドロップされるかなり大きなイベントがありました。

簡単に説明すると、OMGをアカウントに保有していると、同数の新しいトークン (BOBA) が付与されるというものです。

このようなパターンでは、どこかからOMGを借りてきて、新しいトークンを獲得した後に、OMGを返すことで、OMGを借りる際の金利負担と新しいトークンの売却益の差額が儲けとなります。

私はBinanceからOMGを借りて参加し、結果的に大きな利益を上げることができたのですが、利益の額もさることながら「暗号通貨トレードではこういう勝ち方もあるんだ」と自信を持つことに繋がりましたね。

ただ、もちろんノーリスクだったわけではありません。

同様の戦略を考えたトレーダーがBinanceのローンに殺到したためかエアドロップの権利確定日にはBinanceのローン金利が日利100%近くまで上がってしまいました。

それ以上金利が上昇すれば利益が出ないので撤退せざるを得ないと覚悟しましたが、結果的にはそれ以上の金利上昇はなく、無事に最後までOMG戦に参加して利益を上げることができました。

Star AtlasのNFT取引は数分で数万ドルの利益が上がり、脳汁がドバドバ出て本当に楽しかった

ーーそのほかの印象的な取引の成功について教えてください。

Star Atlasというゲームの中で利用されるNFTアイテム (通称: 戦艦) のトレードも非常に印象的でした。

当時、Star AtlasはFTXの後押しもあって非常に注目されていたゲームで、ゲームで使用されるNFTアイテムのセールが頻繁に開催されていたんですね。

それで普通のユーザーはStar Atlasの公式サイトでNFTアイテムを購入するのですが、その売買のシステムにはSolana上で板取引が行えるDEXであるSerumというものが使われていました。

結果、そのことを理解していたDEG鯖の有志たちで以下のような取引を行い、大きな利益を上げることができました。

  1. NFTアイテムの初期販売価格や販売開始時間をメタデータなどから割り出す
  2. 販売開始直前にSerumで買い板を初期販売価格の周辺に出す
  3. 運営がSerumにNFTアイテムの売りを出すとすぐに約定する
  4. 約定したらすぐにSerumに売り板を出して公式サイトから購入するユーザーの成り行き買いにぶつける

NFTアイテムのセールは何度もあったので徐々に利益の金額が減っていったものの、初期のセールではものの数分で数万ドルの利益が上がることもあり、脳汁がドバドバ出て本当に楽しかったですね。

この頃が一番楽しかったと今でも思っています。

GMTをCEXからDEXへとせっせと運び続けた結果、12日間で十万ドルを超える利益を得

ーーbotの運用だけでなくそういった取引もあるんですね。ほかにもありますか。

2022年4月にSTEPNがガバナンストークンであるGMTのBuy Back & Burnキャンペーンを行っていたのですが、$26mもの予算を原資として相場からGMTを無限に買い戻すという太っ腹な企画でした。

そこで、BinanceでGMTを借りれるだけ借りてSolanaに置いておき、STEPNがDEXで成行買いし(相場を無視して買い付け)たらそれを検知して反対売買する、という取引を行ったんですね。

DEXではGMTを売却、CEXではGMTを購入するという取引で、キャンペーン開始後、裁定取引の参加者は数名しかおらず、約1分に1回の頻度で買われたGMTに対してひたすら売りをぶつけていました。

STEPN運営から出されるわんこそば(GMT)をひたすら食べてる感じでしたね。

途中から競合も増え、鞘も薄くなり、旨みも減っていきましたが、4月末はSTEPNブームもあって市場の買いが強く、GMTは史上最高値の4ドルまで上がりました。

4月中旬から月末まで昼夜を問わずGMTをCEXからDEXへとせっせと運び続けた結果、12日間で十万ドルを超える利益を得られて嬉しかったです。

リターンは大きかったものの、行ったことは「SolanaのDEXのひとつであるORCAのプールを監視し、運営の買い付けを検知したらJupiter AggregatorでSwapを実行する」という単純なアビトラで、技術的には工夫した点は特にありません。

強いていえばBinanceのSolanaネットワークの入出金が非常に不安定だったためOKXを母艦として使ったという程度です。

また、STEPNブームを狙ってbotを作ってたわけではなく、Solanaで自分がいた場所にチャンスがたまたま降ってきただけだったので幸運でした。

積極的に行動しているとたまたまチャンスが降ってくる、というのは暗号通貨ではよくあるパターンだと思っていて、手数を増やすことは大切だなといつも思っています。

Solanaの複数のレンディングプロトコルからUSTを借り、アービトラージの玉としてさまざまな取引所に送金したトレード

ーー積極的にレンディングを利用しているようですが、他にもレンディングで成功した取引はありますか。

アルゴリズム型ステーブルコインのTerraUSD (UST) が数日で99%下落するというテラショックが2022年5月にありました。

2022年5月には莫大な市場規模に膨れ上がっていた USTが短期間で崩壊したことでCEX、DEX問わず大きな乖離が発生したので、そこに目を付けました。

Solanaの複数のレンディングプロトコルからUSTを借り、アービトラージの玉としてさまざまな取引所に送金してトレードを行ったのですが、鞘が生まれるたびに収益が発生し、3日間で数十万ドルの利益を得ることができました。

このときは、LUNAではなくUSTを限界までヘッジしたのが良かったと思っています。

ーーどういうことでしょうか。

USTは原理的にはステーブルコインなので1ドル以上になることはほぼなく、限界のレバレッジで借りても清算される可能性が極めて低いんですね。

金利も非常に高かったのですが、UST払いの金利だったので、USTが崩壊したら返すべき金利もタダ同然だろうと考え、思い切りつっこんでいました。

ただ、結果的に利益は出たものの、今思い返すと危険な取引をしていたなと思います。

市場がパニック状態の時はオンチェーン上のレンディングが参照する価格 (オラクル価格) に異常が生じる場合があります。

その際にはレンディングサービスに不良債権が発生することもあり、担保として預けた資産が毀損する可能性もあります。

現に、FTX崩壊の際にはSolana上のレンディングサービスに不良債権が発生しました。今の自分であればオンチェーンのレンディングサービスではなくCEXの無期限先物などでヘッジすると思います。

今から考えれば当時はまだリスクを過小評価していて、無事故で終わったのはラッキーでしたね。

ーーFTXショックやTerraUSDなど価格が短期間で大きく変動するときにこそアービトラージの機会があるということですね。

そうですね、なので私の収益曲線は階段みたいにガタガタですね。

あるタイミングでどかっと利益を得て、それがしばらく続いて、またあるタイミングでどかっと利益を得るということの繰り返しです。

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全三回のくりぷとべあー氏のインタビュー、2記事目に続きます

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