前回の記事で、筆者が投資信託を選ぶ際の要素の一つとして「純資産総額」を確認していることを書きました。
純資産総額は必ずしも多ければいいというものではありませんが、少ない場合は明らかに問題があります。
純資産総額と運用の安定度には、密接な関係があり、純資産総額の少ない状態が続いて運営がままならず、所定の運用期間満了前に償還してしまう「繰上償還」が発生する可能性があることに触れています。
少しおさらいしましょう。
「繰上償還」は自分の意志とは無関係に、保有していた商品を強制的に換金されることを言います。
投資信託やETFは、投資家に書面で通知する等の手順を経て、繰上償還することができます。
繰上償還を行うかどうかの判断は、運用会社が行います。
投資信託の商品ごとに繰上償還を行う際の条件が、あらかじめ定められており、もちろん目論見書に掲載されています。
たとえば、三菱UFJアセットマネジメントが運用する、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の目論見書には以下のように掲載されています。
あくまでも一例です。
多くの投資信託が繰上償還の条件に「受益権口数が一定以下になったとき」を挙げています。
この受益権口数は、純資産総額よりも確認しづらいです。
運用報告書に掲載されているからです。
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の直近の運用報告書では14ページに載っていました。
1兆3,000億口程度あるようですので、10億口以下には当面ならないと思われます。
こんな運用報告書を見ると、繰上償還なんてそうそう頻繁に起きないだろうと思ってしまうかもしれませんが、実はそうでもないのです。
投信資料館によれば2024年8月だけでもETFを含めて21本が繰上償還されているそうです。
そのうち16本は残高の減少により商品性を維持することや効率的な運用を行うことが困難な状況になったことが理由と説明されています。
それなりの資産規模を維持できないと、商品として維持していくことが難しくなるということでしょう。
おせちーず氏 プロフィール
投資歴約32年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリスト、シンクタンク研究員を経て、現在大学講師。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies
ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/
メルマガ:https://www.mag2.com/m/0001697420
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
運用会社が事業を終了することもある
2024年10月11日、PayPayアセットマネジメント株式会社は2025年9月末を目途に事業の終了を予定すると発表しました。
PayPayアセットマネジメントは主に個人投資家向けの投資信託及び機関投資家向けの運用商品を提供してきたものの、運用資産の拡大が計画通りには進んでいませんでした。
同社の株主であるZフィナンシャル株式会社とアセットマネジメントOne株式会社は、PayPayアセットマネジメントの業績回復に向けて最大限の検討を行ったものの、顧客に最良の資産運用サービスを持続的に提供することが難しいと判断しPayPayアセットマネジメントの事業を終了することを合意したとのことです。
その結果、同社が運用していた公募投資信託(誰でも取引できる投資信託のこと)は以下の通りに扱われることがアナウンスされています。
8本は、アセットマネジメントOneが運用を継続しますが、4本は繰上償還される見通しです。
繰上償還が発表されてから1か月以上経過していますので、すでに解約しているホルダーがいたと思いますが、原稿執筆時点で、繰上償還される4本の純資産総額はどれも30億円未満です。
繰上償還されるとわかっている商品に新たに資金を入れる投資家はいないでしょうから、今後の資金流入も見込めません。
出典:PayPayアセットマネジメント株式会社 website
注:日経225インデックスは運用会社変更対象
特に個人投資家は時間を味方に資産を増やせる存在ですが、繰上償還はその機会を奪ってしまいます。
できれば避けたいです。
繰上償還を避けるために
繰上償還を可能な限り避けるために、買う前に考慮しておきたい点を挙げます。
1.「テーマ型」は避ける
投資対象を特定のテーマ・業種に絞り込んだ商品があります。
話題になっているので売りやすいのでしょう。
しかしそのような商品は、運用成績が市場動向に左右されやすく、ブームが過ぎるとパフォーマンスが向上せず、残高も減少することが珍しくありません。
「タイムリーすぎる」テーマに沿ったものは避けたほうが無難です。
2.設定されてから日が浅い商品を避ける
設定とは投資信託の船出です。
どんな投資信託も船出の時には残高はありません。
相対的に優れた商品には、船出以降にも資金が入ります。
よって、設定日から時間が経過している商品の方がbetterでしょう。
設定日の確認はYahoo! ファイナンスが便利です。
3.純資産が右肩上がりで増えている
純資産総額がコンスタントに増えているものが理想です。
こちらの図でいえば、薄いグレーの部分が純資産総額の変化です。
いい増え方だと思います。
4.コンスタントな資金流入が見受けられる
新たな資金がコンスタントに入ってきているかどうかも確認したいところです。
こちらについては前回も述べました。
個別株でいうなら、売買高を確認することとに近いかもしれません。
5.純資産総額はできれば100億円以上
純資産総額の目安は30億円以上という人、50億円以上という人など、人によって様々なようです。
筆者は100億円を目安にしています。
大きすぎると思う方もいらっしゃるでしょうか。
筆者は多くの資産を個別株で運用していて、ETFや投資信託はNISAでしか利用していないため、とりわけ長期運用にはこだわり、償還を避けるために、この水準を独自に設定しています。
ちなみにYahoo! ファイナンスの投資信託で、「純資産総額>=100億円、信託報酬<=0.25%」を指定して選択したところ250本余りが該当するのみでした。
公募投資信託は東証に上場する銘柄より多いのですが、たった2つの条件でものすごく絞り込まれます。
これに、資金流入を確認すれば、おのずと残るものが少なくなるでしょう。
ぜひ試してみてください。
投資信託は自由度が高い商品故、選びにくさも伴うと思います。
選びにくいなと思ったら、NISAのつみたて投資枠に該当するものから、純資産や信託報酬率を確認して選ぶといいでしょう。
ただし、分配金を得ることを投資目的にする場合は、つみたて投資枠商品には少ないですし、分配実績等を確認するためにやや手間が必要になることを念頭においてください。
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです