効率化を重視する米国株企業が陥る可能性のある低成長性について

マクロ環境悪化懸念による企業投資の変化

FRBが2021年末から高いインフレ率を理由に金融引き締めを開始した影響で、2022年以降マクロ環境悪化を懸念する企業が増えました。

その結果、企業が投資を減らすことを予想し、営業担当をレイオフしたり、設備投資から自社株買いや増配に使い道を変えたりする企業が増加しました。

しかし、大規模金融緩和の余波や銀行危機によって開始されたFRBの緊急融資プログラム(BTFP)による金余り、2022年末から始まったAI投資ブームによる企業投資の増加により、景気後退観測は大きく後退しました。

一部のAI関連企業は2024年から営業担当を増やすなど売上高増加に投資を行うものの、多くの企業は事業拡大の投資は減らし続けています。

この状況が将来の成長性を低下させる可能性を示唆しています。

────────────────────

「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。

サービス紹介ページはこちら

────────────────────

2024年6月現在の米国株相場

参照:https://advantage.factset.com/hubfs/Website/Resources Section/Research Desk/Earnings Insight/EarningsInsight_060724.pdf

4月から始まった2Q決算は6/7時点でS&P500に含まれる99%の企業が決算発表を終えました。

その内、アナリスト予想を超えた割合はEPSで79%、売上高で61%でした。

例年と比べるとEPSは平均的で、売上高は大幅に悪い結果です。

なぜ、この様な偏った結果になっているのでしょうか?

その理由は、企業のお金の使い道が変わったからです。

EPSに重点を置き過ぎる危険性

EPSは一株当たり利益を表す指標で、「純利益÷発行済み株式数」で求められます。

EPSは、割高、割安を示す最もメジャーなPERという評価に用いられます。

PERは「株価÷EPS」で求められ、数字が大きいほど割高の可能性があります。

投資家はPERを見ながら投資する傾向があるため、企業やアナリストはEPSの変化に注目しています。

EPSを上げる方法は、
①純利益を伸ばす
②発行済み株式数を減らす
の二つが挙げられます。

純利益の主な伸ばし方は、「経費を削減する」又は「売上高を伸ばす」です。

発行済み株式数を減らす方法は、「自社株買い」です。

先述の様に、企業の投資は売上高を伸ばす事から経費削減及び自社株買いに転じています。

投資家はEPSの上昇率に注目して株式を買う傾向が続いていますが、これには危険性があります。

経費削減は最初ほど余剰要員を削除できるため大きく動きますが、段々と先細りしていきます。

また、自社株買いも事業で稼いだお金をEPS向上のために使っているに過ぎません。

つまり、事業の成長性を上げる行動にお金を使っていない事を示しています。

企業は稼いだお金を効率よく使いたいため、不況時に効率の悪い営業や設備投資に資金を割り振りたくない事は理解できます。

しかし、長期にわたってEPS向上への投資を優先した場合、新規投資に対する人員不足等の問題が発生しやすくなりますし、経費削減主導のEPSの上昇もいずれ限界が来ます。

また、今回の様なEPS上昇はあくまで一時的に効率化したものに過ぎません。

再び売上高を伸ばしていく局面では、人員の補充や設備投資などにより利益率は低下する事が予想されます。

その場合、EPSが低下しPERは高く見える様になっていくため、EPSで評価する投資家にとって割高感が演出されます。

現在のS&P500のPER

S&P500の向こう12カ月PERは20.7倍です。

過去5年平均が19.2倍、10年平均が17.8倍と比較しても歴史的に最も割高な水準にあります。(この平均には大規模金融緩和期間も含まれています。)

現在と類似するPER水準は2020〜2021年であり、当時は低金利環境かつCovid-19ワクチン普及に伴う景気回復期待で多くの企業が成長を遂げていました。

しかし、現在は金融引締の過渡期におり、マクロ環境も不安定で景気後退観測が見え隠れする時期に差し掛かってきています。

EPSを牽引する成長性がどこまで続くかを観察し、その後売上高を伴なう成長へ移行できるかに注目が集まります。

多くの企業が業績を振るわない中で、EPSに重点を置きながらも歴史的な割高感がある米国株は新高値を更新していますが、この様なリスクにも注意を払う必要があるでしょう。

────────────────────

「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。

サービス紹介ページはこちら

────────────────────

この記事を読んだ方は、こちらの記事もおすすめです