チューリンガム株式会社(Turingum)・代表取締役CTOの田原 弘貴氏(なまはげ)氏に、リスク管理において考慮すべきことなどについて伺いました。
田原 弘貴(なまはげ)氏 プロフィール
東京大学文科一類入学後、在学中に中小企業診断士に合格。東京大学大学院学際情報学部在籍中にチューリンガム株式会社を設立。ブロックチェーンエンジニア及びリサーチャーとして技術部門を統括し、2023年5月より代表取締役に就任。親会社クシム取締役CTOを兼務。
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取材実施日
2024年5月25日
手間を考慮しても暗号資産はハードウェアウォレットで管理すべき
ーーリスク管理について具体的に気をつけている方法論などがあれば教えてください。
ハードウェアウォレットで資産を管理した方が良いですね。
パスフレーズをセットすることがハードルではありますが、一度慣れてしまえば暗号資産の管理はハードウェアウォレットを使えば難しくありません。
弊社もnoteで以前解説しています。
手間が面倒でまだハードウェアウォレットを使えていない人もいますが、ハッキングされてからでは遅いので面倒でもちゃんと使った方がいいと思います。
参考:鍵管理の極意 ~安全にハードウェアウォレットを使おう~ 後編:「信用しないため」の処方箋|チューリンガム株式会社
次のGOXのフロンティアはリステーキングやLST
ーーリスクが過小評価されていると感じるプロジェクトなどがあれば教えてください。
EigenLayer、Babylonですね。
以前、ビットコイナー反省会で暗号資産のレンディングをGOXのフロンティアだと言いましたが、次のGOXのフロンティアはリステーキングやLSTだと思っています。
EigenLayerは技術的には面白いですし、弊社としてもプロダクトを開発していきたいと考えてはいますが、市場の資金がEigenLayerに集中してしまうとGOXのフロンティアになってしまう恐れがあり、リスクを分散しながら発展してほしいと思っています。
イーサリアムのステーキングについて、一般的にリスクがゼロと見なされていますし、私自身もあまりリスクを感じていませんが、Lidoのようなリキッドステーキングに預けて行うステーキングは、当然、イーサリアムで直接ステーキングすることと比較すればLidoに対するトラストの分だけ、よりリスクが生じます。
さらに、そこからリステーキングとなると、リステーキングのコントラクトのバグ、リステーキングを受け負うオペレーターによる悪意など、様々な箇所でリスクが積み上がります。
特にLidoのようにLSTを使ったリステーキングは、LidoとEigenLayerのスマートコントラクト、AVSとAVSに対して行動を起こすオペレーター、リスクが少なくとも4層に積み上がっており、どこか一つでも悪意のある行動が行われるとGOXする可能性があります。
かつてGemini Earnがレンディング業者であるジェネシス・グローバル・キャピタルに資金を運用させていたところジェネシス・グローバル・キャピタルが潰れてしまい、Gemini、Geminiユーザーに資金が返済されない事態が生じました。
2024年5月にGeminiユーザーは資金を取り戻しましたが、同じようにリスクが積み増しされている構造がEigenLayerにも見られ、注意深く見る必要があると思います。
EigenLayerは個人的にも好きなプロダクトですが、調べれば調べるほどハイリスクだと感じますし、その新しい技術のリスクをまだ誰も検証していません。
EigenLayerが加熱し切ったときが、バブルの終わりかもしれませんね。
ーーEigenLayerは技術的に面白いとのことですが、具体的にはどのような点が技術的に面白いのでしょうか。
これまではステーキングによってセキュリティを保っていましたが、イーサリアムを用いてあらゆるタスクを一定信頼して任せられるようにするという発想が好きですね。
ステーキングされた資金を使って、例えばLinuxのようなコンピューターを動かしたり秘密計算をさせたりすることも将来的には可能となるでしょう。
EigenLayerはVMの枷をとっぱらう、これまでのブロックチェーンの限界を引き上げるようなプロダクトだと思っています。そういう意味でEigenLayerには期待しています。
そんな思いから、TuringumではEigenLayerをはじめとした、Web3の最新技術の研究開発を行う「Turingum Labs」も発足しました。
「Turingum Labs」公式HP:https://labs.turingum.com
お金で遊んだり、お金に対して新しい解釈を加えることができるのがミームコインの魅力
ーーEigenLayerの他に面白いと感じるプロダクトがあれば教えてください。
ミームコインが代表だと思うのですが、お金を神聖な存在として見ている一般常識を、ある意味、小馬鹿にしているコインが面白いと感じています。
お金の歴史を辿ると、通貨は最初、貸し借りの尺度でした。
その貸し借りをどう捉えるか、本質的にどう捉えてどのように扱うかというのは自由なはずで、極端には絵画でもミームコインでも貸し借りの尺度になりえます。
尺度として、度量衡として使うのであれば、マネーレゴと呼ばれているように色々組み合わせて、新しい投資手段にしたりゲームで報酬を与えたりしても、別にお金の本質から外れているわけではありません。
けしからんと怒る人もいるかもしれませんが、お金で遊んだり、お金に対して新しい解釈を加えたりできるところは、ミームコインの魅力だと思っています。
ただ、概念は好きですが、ミームコインは売り方について疑問を感じる点もあるので、投資する気にはなれませんね。
ミームコインのようにお金を斜めに見ることは、株式や債権、証券にはできないことだと思います。
資産としての価値はビットコインの方が高いが、新しいエッジを探すものとしてはイーサリアム以上の暗号資産はない
ーー田原さんはビットコインとイーサリアムを保有されているということで、イーサリアムの魅力についてどのようにお考えか教えてください。
イーサリアムはビットコインのようにまだ完成形に至っていない点が魅力だと思っています。
よく指摘されている通り、強権的な力がイーサリアムに働くことも確かですが、暗号資産におけるブームはイーサリアムからしか出てきていません。
先ほどのリステーキングもイーサリアムから出てきていますよね。
未完成ながら、完成に向かってきちんと進歩しているからこそ、様々なエッジが生まれて、プロダクトとしても面白くなっていく。
私がこの世界に入ったときから現在までビットコインの技術はあまり変わっていません。
変わらないところが良いところではあるのですが、イーサリアムに比べると面白いエッジは中々見当たらない。
資産としての価値はビットコインの方が高いと思いますが、新しいエッジを探すものとしてはイーサリアム以上の暗号資産はないと思います。
しいて言えば、Solanaにそういう萌芽が見えますね。
イーサリアムに飽きてきた人は次はSolanaに行けばいいと思います。
現時点で将来性がある、熱量があると言えるプロダクトはSolanaしか見当たらない
ーーSolanaはFTXショック直後はかなり悲観されていましたが、その後価格も上昇し、コアなユーザーも多い印象です。
ビットコイナーがイーサリアムに対して思っていることと同じことを、イーサリアムの保有者はSolanaに対して思っている印象です。
全然完成していないし、分散していないと思いつつも、何か面白そうな事やっているな、と。
Solanaが今後イーサリアムと同じように新しいムーブメントを起こすようなチェーンになったり、運営できるかどうかはよく見ていく必要があります。
Solanaが今後絶対伸びていくとまでは言いませんが、現時点で将来性がある、熱量があると言えるプロダクトはSolanaぐらいしか見当たりません。
イーサリアムがEVMというオリジナルのマシンで新しいムーブメントを起こしていますが、Solanaも同じようにSVMというステートレスのマシンを引っ提げており、Solana自体の面白さは元々ありました。
これまではFTXの傘に隠れて見えづらかったのですが、FTXがなくなったことでSolanaの良さが出てきて、カルチャーとしても期待できるようになったと思います。
そういう意味では、以前よりも私は断然今のSolanaの方が好きですね。
企業からは売上向上の活路として新しい業界を見出したい、新規事業として少し参加してみたいといった要望が多い
ーー田原さんは仕事柄、暗号資産ネイティブではない一般の企業とも取引があると思います。一般企業の暗号資産への関心について特徴的な変化はありますか。
暗号資産に対する一般企業の印象が大きく変わったとは思いませんが、変わるかもしれない予感はあります。
最近増えているのは、売上向上の活路として新しい業界を見出したい、新規事業として少し参加してみたい、といった要望ですね。
暗号資産の発行というよりは、NFTなどに関心を持たれている企業様が多く見受けられます。
暗号資産が日本の市民権を得るのはもう少し先だとは思いますが、逆に事業のタイミングとしては今は凄くエッジが効くタイミングだと考えています。
ーーTuringumは今後もコンサルティングをメイン事業として取り組んでいくのでしょうか。もしくは自社のプロダクト開発なども検討されていますか。
両方ですね。
技術から離れてしまうと腕も錆びついてしまうため、我々のプロダクトも積極的に作っていきたいですね。
一方、弊社の強みはNFTの発行や上場など、暗号資産全般における経験値が厚く、コネクションを有している点です。
企業様とのプロジェクトも引き続き活発に行っていきますが、トークンの発行、上場に興味を持つ企業様へ、我々の知見を提供していきたいとも考えています。
Turingumでは無料相談を行っていますので、ぜひWeb3プロジェクトを検討されている事業者の方はお気軽にご連絡ください!
Turingum 無料相談 https://turingum.com/contact-us/
ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。
今年の8月末に「WebX 2024」というイベントがあり、Turingumはタイトルスポンサーです。
私もブースにおりますので、ぜひお気軽にお声がけいただけると嬉しいです。
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全二回の田原氏のインタビュー、前編はこちら
田原氏やTuringumのHPなどはこちら。
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