FIRE済みの投資家であるSGee氏に、FIRE資金を得るまでの投資などについて伺いました。
SGee氏 プロフィール
名前の読み方は「えすじー」。 FIRE済みの元サラリーマン投資家。米国個別株、各種インデックス中心に運用。太陽光やクリプトも少し。海外でグローバル企業勤務→日本。40代。お金の話も絡めつつ放言系。
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取材実施日
2024年5月17日
外資系企業数社を経て、40代でリタイア、現在三年目
ーーご経歴について教えてください。
地方生まれ、地方育ちで、大学から上京。
大学卒業後は外資系数社で勤務、その後、2021年、40代でリタイアしていま三年目ですね。
会社は全て米国系の企業で、シンガポールでの駐在も経験しました。
ーーシンガポールでの生活については賛否ありますが、いかがでしたか。
監視社会という指摘もありますが、私は気になりませんでした。住みやすく、税金も安い、いいところですね。
現在は日本に住んでいますが、税金面など生活環境が悪化してきたらシンガポールへの移住も検討するかもしれません(笑)。
日本との時差も一時間しかありませんし、多民族国家で外国人も多いため、外国人が嫌な思いをすることもない印象です。
その上、条件を満たせば相続税もなく、キャピタルゲインが非課税なのも魅力だと思います。
ITバブル時にブームに乗って投資を開始
ーー投資を始めたきっかけを教えてください。
2000年の少し前に社会人になったのですが、ちょうど世間は株ブームで、それに乗って何となく始めたというのが最初です。
ライブドアも当時勢いがあって私も買いましたし、その後紙くずになるという経験もしました。
当時は社会人歴が短く、入金額も小さかったので損失額もたかが知れていますが、買った株が紙くずになるという非常にいい経験ができたなと思っています。
ーー楽天やサイバーエージェントなど現在残っている会社もありますが、当時から保有しているものはありますか。
ありません。当時持っていたものは全て手放してますね。
ーーその後の投資について教えてください。
NTTドコモの携帯、当時よく服を買っていたユナイテッドアローズなど、自分の生活と関わりがある会社の株を買っていました。
入金額が小さかったので株価が上昇してもそれほど大きくは伸びず、勝ったり損したりというのを繰り返していたところ、2008年のリーマンショックを迎えました。
私が保有していた銘柄も目も当てられないほど下がってしまって、セオリー的には初期に損切りだったと思うのですが、何もできませんでした。
塩漬けでしばらく冬眠状態になりましたね。
ショック時に早期に売って下で買い戻すというのは現実的にはかなり難しい
ーーリーマンショックは日本株もダメージが大きかったのでしょうか。
あれ以上の衝撃はあとにも先にもなかったというか。
コロナショックも大きく下げましたが、一年ぐらいで回復しましたよね。
リーマンショックは激しく下落して、その後も長く低迷しましたから。
2000年のITバブル崩壊も経験しましたが、それとも格が違う大規模な暴落で全銘柄がガンガンに下がっていましたね。
一気に下がると動けなくなるんだなというのがよくわかりました。
ーーいまの知識や経験を得た状態で当時に戻ったとしたらなにができると思いますか。
当時と比較すれば今のほうが暴落を事前に察知できるとは思いますが、今は資産額が大きくなってしまって全て売るだけでも一苦労なので、結局当時とやることはあまり変わらないと思います。
コロナショックのときも、投資信託を残し、個別株を全て売って一部下落を回避できましたが、底で買い直すことはできなくて、後々計算してみると、何もしなかった方が資産が増えていた計算だったんですよね。
なので、コロナショックだけで言えば、早期に売って下で買い戻すか、そもそもなにもしないというのが正解だったんですが、これを実際にやりきるのはかなり難しいというのが実感です。
いまから当時に戻ってもできる気がしません。
ーー売って買い戻すのは難しいとして、保有のまま買い増しすればよかったとは思いませんか。
もちろん結果論としてはそう思いますが、当時、どれだけ下落が続くのかわからず、恐怖が強くて、買い増しすら難しかったですね。
今の経験のまま当時に戻れても難しいと思いますし、そのため感情が介入しない積み立て投資が私にとってはベストなソリューションだと思っています。
インデックス投資の「市場全体を買う」「資本主義を買う」という考え方に目から鱗が落ちた
ーーリーマンショック後について教えてください。
それまでは個別株にしか投資していなかったのですが、日本で言うと三菱UFJアセットマネジメントが提供しているeMAXISという投資信託がリーマンショックの少し後から認知されてきていて、私もその頃にインデックス投資を知りました。
結果的には当時から現在までインデックスへの積み立てを継続することになり、これが私の転機になりました。
ーーインデックス投資について、どのように知って、特にどのような点に惹かれたのでしょうか。
ネットサーフィンをしていてたまたま見つけたのですが、「市場全体を買う」「資本主義を買う」という考え方に目から鱗が落ちました。
「個別の銘柄は上がったり、下がったり、時には解散もするが、総体としての市場は成長し続けるはず」という考え方ですね。
人類の欲望に限りはなく、自己増殖する性質も持っていて、今なら宇宙にまで進出しようとしていますし、技術さえ許せば火星にも住むのでしょう。
そういった、人間の内なる衝動、膨張しようとする性質は今後も続くはずで、インデックスに投資するということはそれを買える、人類そのものに投資するということですよね。
そういった考え方、仕組みに対して一定の信任を置いている、ということです。
適切なタイミングは読めない、読めたところでその通りに体は動いてくれないという前提で機械的にお金を入れる
ーーSGeeさんが行っているインデックス投資はドルコスト平均法での資金投下でしょうか。
はい、そうですね。
リーマンショックなどの経験から、適切なタイミングは読めない、読めたところでその通りに体が動いてくれないという考えに至り、自分の感情、意思をできるだけ排除し、機械的に投資したくてドルコスト平均法で投資していますね。
自分ができることは非常に少ないと割り切っています。
ーー具体的にはどのようなインデックスに投資されていたのでしょうか。
株式、債券、REIT、それぞれに先進国、新興国のインデックスがあったので、3×2の六つのマトリックスにして、先進国の株式をメインに、それぞれ分散して資金を入れていました。
入金力と株式への投資の二つでFIREの資金を得る
ーードルコスト平均法でのインデックス投資を2010年ごろから最近まで行っていたとのことですが、結果はいかがでしたか。
すごくよかったです。
特に株式のパフォーマンスがよくて、結果論ですが株式一本でやればよかったと思うほどです。
ーー2000年の少し前に投資を始めて、インデックス投資を始める2010年ごろまでは特に資産は増えなかったとお聞きしました。2021年にFIREされていますが、FIREの資金は2010年からの約10年間で貯められたのでしょうか。
2010年頃までは株式投資で資産を大きく増やすには至れず、一方で、現預金は2-3,000万円程度は積み上がっていたんですね。
また、その頃には仕事で成果を出して給与が上がり、入金力がそれなりに上がっていました。
それらを原資に、インデックス積立投資を中心に並行してサブで米国個別株にも投資を始め、これらのパフォーマンスが高くFIREの資金を貯められたというのが大きいです。
また、給与が上がってもそれに連動して生活レベルを大きくは上げなかったというのも寄与度としては大きいですね。
給与所得の上昇幅に対し生活レベルの上昇を抑えることで、より多くの余剰資金を生み出し、それをインデックスや個別株に投資、結果的に、雪だるま式に資産を増やすことができました。
あと、2012年からアベノミクスが始まり、タイミングがよかったというのもあります。
日本株も上がり始めましたし、ドル高円安が進んだことでドル建ての資産も円建てで増えました。アベノミクスで完全に潮目が変わりましたね。
▼2000年ごろから現在までのドル円、NI225、S&P500のチャート。2010年ごろから現在まで大きく上昇している。
参考:「アベノミクス」を振り返る ~日本で初めて施行された世界標準のマクロ経済政策~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究
外資系企業の日本法人は日本の法律や商習慣の内側にいる
ーー2010年というとSGeeさんは社会人歴10年目ごろだと思います。キャリア的にちょうど年収が上がってきたタイミングでもあったのでしょうか。
はい、それはそうですね。
あまりお金が使えない若手の時にITバブル崩壊やライブドアショック、リーマンショックと痛い思いを経験し、一定収入が上がって入金力が上がった頃に、いいタイミングで米国株や日本株のインデックス投資、米国個別株投資を本格的に始めることができました。
そういう意味では運がよかったとも言えると思います。
ーー外資系企業は給与が高い印象です。どれほど入金していましたか。また、実際、解雇のリスクは高いのでしょうか。
最後の頃は毎月100万円ほどを入金してインデックスを買っていました。
日本企業よりは解雇のリスクは高いと思いますが、あくまで私が在籍していたのは外資系企業の日本法人であり、日本の法律や商習慣の内側にいるんですね。
労働基準法もありますし、例えば、明日から解雇、というのはできません。
逆に成果を上げたから給与が一気に上がるということもありませんし、外資系と言っても、本場の外資系企業と日本企業のちょうど中間のようなイメージでしょうか。
外資系金融機関のような皆さんが想像するいわゆるバリバリの外資系企業はまた別かもしれません。
ーー外資系の会社を数社経験されているとのことで、日本の会社より合っていたからでしょうか。
はい、本場の外資系企業と日本企業の中間と言っても、同じ業務でも日本企業よりは給与が高く、ルールが厳しくないというか、自由で合っていたと思います。
投資はどう考えても入金力、種銭がモノをいう勝負
ーー過去の別の方のインタビューでも「投資で成功したければ入金力を上げた方が早い」というお話がありました。SGeeさんのご経験はまさにそういった例だと思いました。
「投資で成功したければ入金力を上げた方が早い」という意見については、私も完全に同意です。
10万円を天才的なトレードで10倍にしても100万円にしかなりませんが、10億円なら1%の運用益で1,000万円のリターンになります。
だから投資はどう考えても入金力、種銭がモノをいう勝負なんです。
それでどう入金力を作るかというのは私のような庶民は仕事を頑張るしかなくて、実際、そうしてきました。
ーー入金力を上げるために外資系の企業に転職するのも一つの選択肢だと思いますが、SGeeさんから見ていかがでしょうか。
はい、私個人としても入金力を上げるために外資系企業へ転職するというのはお勧めできます。
また、同じ仕事に取り組んでももらえる報酬が変わるので、儲かっている会社、儲かっている業界で仕事をするというのも大事な考え方だと思います。
景気がいい業界、人材にお金を払う気がある企業、外資であること以外にもそういった考慮すべき要素はいくつかあるでしょう。
また、会社として独自のポジションがとれていればその会社の余裕に繋がり、その余裕によって追加投資をしてさらに盤石な地位を築けるという側面もあるので、「何らかで世界一である会社」というのも意識して転職していましたね。
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全三回のSGee氏のインタビュー、2記事目に続きます
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