東証が企業の資本コストや株価への意識を高める中、株主や機関投資家の圧力が増しています。
この流れに乗り、割安株の水準訂正やMBOなど、株主価値向上に向けた動きが活発化しています。
一方で、小型株に関しては調査や資金面での課題もありますが、株主還元や買収の対象として注目され始めています。
本記事では、そんな中で気になるネットキャッシュが高く、買収の可能性が高い割安小型株をピックアップしてみました。
似た条件でのスクリーニングは2回目となります。
参照: https://tdnet-search.appspot.com/
ネットキャッシュの定義は人によって様々ですが、今回は清原達郎氏が定義する「現金および預金+受取手形及び売掛金+有価証券+投資有価証券×0.7-負債」とし、予想PERが正の数値かつ20倍以下、時価総額100億円以下という条件でスクリーニングしてみました。(データは2024年7月5日時点)
1.キクカワエンタープライズ(6346)
東証スタンダード 時価総額61億円 ネットキャッシュ比率 1.373
キクカワエンタープライズは、製材・木工機械などの大手メーカーです。そのほか、自動車・航空機・家電向けの工作機械などを手がけています。
過去の売上高は概ね40~50億円で安定しています。営業利益率が10%台とそれなりに高い点も評価できます。
今期2025年3月期は売上高が0.2%減の55億円、営業利益は20%減の6億2,000万円を見込んでいます。
コロナ禍で木材価格が急騰するウッドショックは一巡したものの、環境配慮などで海外からの木材の輸入は低迷しています。
こうした中国産材の活用の動きが広がり、住宅だけでなく公共建築や店舗などにも用いられて、木工機械の需要増加につながっています。
一方で工作機械はEV向けや再生エネルギー向けなどで需要が落ち込んでいます。
今期の1株当たり配当は前期と同額の125円を見込んでおり、予想利回りは3.44%と比較的高めです。
自己資本比率は81%と財務も強固で1株当たり純資産は9,696円と直近の株価は解散価値を大きく下回っています。
2.日和産業(2055)
東証スタンダード 時価総額66億円 ネットキャッシュ比率 1.252
日和産業は畜水産用の配合飼料メーカーです。神戸が創業の地であることもあり西日本を中心に事業を展開しています。
近年期円安が進行したことにより、主原料などのとうもろこしのコストが上昇していました。
しかし中国の需要減少や米国での作付けが順調となり、価格が落ち着き始めています。
また、国内の牛肉はインバウンド需要の拡大などにより、消費量が伸びています。
こうした中、同社は2023年に需給調整のため飼料価格を3度にわたり、値下げしましたが24年1~3月期に値上げに転じました。
24年3月期の連結営業利益は9億円の黒字転換となりました。
今期の予想配当利回りは、1.89%です。今期の予想配当性向は36%、純資産配当率は 0.8%と1株当たり純資産は18,164円と純資産からみた配当拡大の余地が見込まれます。
3.セレスポ(9625)
東証スタンダード 時価総額57億円 ネットキャッシュ比率 0.954
セレスポは式典や展示会、株主総会、市民祭など様々なジャンルのイベントを企画・運営しています。
コロナ禍では自粛ムードにより、業績か悪化しましたがその後の立ち直りも早く東京オリンピック、パラリンピックの特需により2022年3月期に売上高が270億円、営業利益が66億円とそれぞれ過去最高を更新しました。
その後は反動減もありましたが、今期2025年3月期は売上高が51%増の135億円、営業利益は6億7,000万円の黒字転換を予想しています。
業績の変動率が高いのですが、自己資本比率は80%、自己資本に占める現金比率は50%兆、有利子負債倍率は0.06%と財務面での心配はありません。
2023年2月に東京オリンピックでの入札談合を巡る容疑から独占禁止法違反があったとして電通や同社、テレビ番組制作会社が入札停止が発表され業績は低下しました。
株価も上値の重い展開が続きましたが、9カ月間の指名停止期間を過ぎたこともあり、不祥事を嫌気した売りは一巡したとみられます。
株価も中長期のチャートでは2023年12月の安値805円を底にして下値を切り上げています。予想配当利回りは2.4%、PBRは0.54倍と指標面で割安さを評価した買いも期待できそうです。
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