2024年6月のWWDCでAI戦略を発表し、それに伴い株価が急上昇したApple。
さらに、同社は日本市場で空間コンピューティング製品『Vision Pro』の販売を開始しました。
これらの最新動向を踏まえ、Appleの適正株価を評価しました。
1. Appleのビジネス概要:市場ポジションと事業モデル
Appleは、その革新的な製品ラインと多角化したビジネス戦略により、世界的なリーダーシップを誇っています。
2023年の時点ではiPhoneがハイエンドスマートフォン市場での強力な地位を確立しており、売上全体の約50%を占めています。
また、Appleの成長において重要な役割を果たしているのがサービス部門です。
2019年の売上の18%から、2023年には22%に上昇し、収益の多角化が進んでいます。
App Store、Apple Music、Apple Payなどのサービスが、消費者と企業の両方に広く受け入れられています。

Appleの強みは、ソフトウェアとハードウェアの相乗効果を生む能力にあります。
iOSなどの優れたオペレーティングシステムとApp Store、それらのシームレスな連携によって、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、長期的な顧客ロイヤリティを築いています。
製品ラインにおいては、iPhone、Apple Watch、AirPodsが各セグメントでシェア1位を維持していますが、PC、ストリーミングサービス、スマートスピーカーではApple独自の強みが発揮できておらず、市場での苦戦を強いられています。

2. 財務分析:収益性、成長率、負債構造の詳細な検討
Appleは過去5年間で安定した成長を遂げており、製品部門の売上は年率8.7%、サービス部門の売上は年率16.5%成長しています。
これにより、売上全体では年率10.2%の成長を実現していますが、2021年以降はコロナ需要の影響で売上がほぼ横ばい状態にあります。

利益面では、製品部門の粗利益率が30%以上、サービス部門の粗利益率が70%前後と、非常に高い利益率を誇ります。

また、Appleは年率約4%で自社株買いを実施しており、これにより一株当たりの利益を向上させ、積極的な株主還元を行っています。

Appleの財務分析から見ると、安定した成長と高い収益性、そして効果的な資本配分戦略により、投資家にとって魅力的な投資先となっています。
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3. 競争力の源泉
Appleは長年にわたり、強力な競争力を築き上げてきました。
その成功の鍵となっている重要な要素として、以下の点が挙げられます。
強力なエコシステムの構築
AppleはiPhoneを中心にした広範なエコシステムを展開しています。
現在、iPhoneのActive Userは13億3,400万人に達し、この基盤を活用してApp Storeでの消費支出が893億ドルに達するなど、巨大な経済的な力を持っています。
App Storeは世界で最も収益性の高いアプリストアの一つであり、アプリ開発者にとっても重要な収益源です。
このエコシステムは、ユーザー、開発者、そしてApple自体にとって相互に利益を生む仕組みとなっています。
垂直統合による競争優位性
Appleは半導体の内製化から始まり、デザイン性の高いハードウェアと強力なソフトウェアを統合することで独自のエコシステムを築いてきました。
この垂直統合により、製品の品質管理を徹底し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。
例えば、iOSやmacOSといった操作システムは、統合されたApple製品の特長であり、これらが顧客の満足度を高め、ブランドの価値を確固たるものにしています。
4. 将来の業績予測と適正株価予測:Apple株のポテンシャルを評価
Appleは2021年以降、売上の横ばいが続いていましたが、2024年6月に開催されたWWDCにて、Appleの生成AI戦略、Apple IntelligenceがiPhone、iPad、Macに搭載されることが決定されました。
これにより、iPhoneの販売にスーパーサイクルが訪れ、大幅に成長することが期待されています。
Apple Intelligenceの搭載は、iPhoneの機能性と利便性を大幅に向上させるものと予想されています。
これにより、消費者は新機能に魅了され、既存ユーザーもアップグレードを促される可能性があります。
AIの進化がもたらす革新的な体験が、iPhoneの売上増を牽引すると期待されています。
さらに、Appleが空間コンピューティングと称する新製品「Vision Pro」の登場も注目されています。
この製品は、Appleの強力なハードウェアとApp Storeを中心としたソフトウェアの相乗効果を利用し、新たな市場を開拓する可能性を秘めています。
ハードウェアの進化と価格の低下、キラーアプリの創出が、このセグメントの成長の鍵となりますが、市場創出のオポチュニティは非常に大きいと言えるでしょう。
売上・フリーキャッシュフローの予測
これらを踏まえて、過去の売上成長率や経費の割合から、モンテカルロ・シミュレーションを用いて、今後10年の売上、およびフリーキャッシュフローの予測を行いました。
製品部門の売上成長率の予測値は、年率3.1%から12.5%の範囲にあります。
またサービス部門の売上予測は、年率9.8%から13.6%の範囲にあります。
特に製品部門の広いレンジは、新製品の市場シェアの変化に応じて変動する可能性があるためです。


また、フリーキャッシュフロー成長率も年率8.1%から12.0%と予測しており、収益性の向上が見込まれています。

適正株価の予測
将来予測に基づいたディスカウント・キャッシュフロー法による適正株価の中央値は、$205と算出されました。
この評価は、将来のフリーキャッシュフローの現在価値を基にしており、Appleの持つ高い競争力を反映しています(前提条件:割引率 10%、2034年以降の成長率 3%)。

5. Apple株の投資判断
Appleは、テクノロジー業界において常に先駆的な存在としての地位を確立しています。
そのビジネスモデルは、高いブランド・ロイヤリティ、強力なエコシステム、そして垂直統合による競争力、革新的な製品開発力に支えられています。
これらの要素から、Appleは今後も順調に成長していくことが期待されます。
一方で、Appleの株価は2024年7月時点で$200を超えており、投資家はApple Intelligence搭載に伴うiPhoneのスーパーサイクルが、既に価格に織り込まれている可能性を考慮する必要があります。
市場は常に将来の成長期待を反映しており、すでに期待された成長が実現しない場合、株価はリスクにさらされる可能性があります。
したがって、新たにApple株の購入を検討する際には、セーフティ・マージンを考慮したエントリーが重要です。
適正株価の中央値が$206であるとすると、その80%相当の$170以下の価格まで株価が下落した場合に、リスクとリターンのバランスがより良いと考えられます。
Appleは革新的な技術と強力な市場ポジションを持つ企業ですが、投資に際してはリスク管理が鍵となります。
市場の変動や競争の激化に対するリスクへの対応を含め、バランスの取れたポートフォリオを構築することが、投資家にとって賢明な選択となるでしょう。
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