AndGo・代表の原利英氏に、ビットコインを知ったきっかけなどについて伺いました。
原 利英氏 プロフィール
情報科学で博士 (理学)取得後、東京理科大学理工学部情報科学科助教として、ゲノム解析・創薬、カオス尺度、暗号理論に関する数理面の研究を手がける。2017年4月、株式会社AndGoを創業。現在は独自の秘匿暗号、ブロックチェーンセキュリティ、ウォレットについて研究開発を行っている。
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取材実施日
2024年4月27日
ハードウェアウォレットはユーザーが多く資本力のあるメーカーの製品が望ましい
ーーおすすめのハードウェアウォレットなどがもしあれば教えてください。
具体的な商品名は控えさせていただきますが、できればユーザーが多く、資本力のあるメーカーの製品を選んでいただいたほうがよいと思います。
ユーザーが多いということはそれだけトラブルシュートに関する情報にリーチしやすくなります。トラブルが起きた際に原因を把握し、解決できる可能性が高くなります。
万が一、なにか大きなインシデントがあっても、資本力があるメーカーであれば持ちこたえてウォレットサービスを継続できる可能性が高くなります。
MetaMask経由でハードウェアウォレットを操作している方は特に注意が必要
ーー改めてハードウェアウォレットについて気をつけるべき点やリスクについて教えてください。
ハードウェアウォレットに限らず、全てのウォレットに共通するリスクはフィッシング詐欺です。
最近では、ウォレットメーカーを名乗り、ファームウェアのアップデートを騙ったメールを送ってくるケースもあります。
メールの本文内のリンクをクリックし、リカバリーフレーズを入力すると資産が抜かれる仕組みになっており、かなり精巧に作られています。
しかし、怪しいと判断できる点はいくつかあり、そこに気がつくことができれば事前に危険を回避できるのでここで紹介させていただきます。
1つ目は「ファームウェアにセキュリティの問題が発覚したため、緊急のアップデートを行う必要がある」と危機感を煽る内容だったこと。
2つ目は「緊急性が高いため通常とは異なるフローでアップデートを行う」と説明されていたこと。
3つ目は、ニーモニックと呼ばれるリカバリーフレーズをパソコン側で入力するフローになっていたことです。
3つ目については、ハードウェアウォレットを利用している場合、たとえリカバリーフレーズを入力する緊急性の高いシチュエーションであったとしても、デバイス側に入力するフローとなります。そのため、パソコンやスマートフォンから入れることはなく、その知識があれば、事前に詐欺だと気づくことができます。
また、MetaMask経由でハードウェアウォレットを操作している方は特に注意していただきたいです。
DeFiやエアードロップに関するプロジェクトのユーザーの方で特に上級者の方の中には、MetaMaskを通してハードウェアウォレットを利用されている場合もあるかと思います。
MetaMaskは操作がイージーではあるのですが、裏での処理は複雑だったりします。
プロジェクトによっては、どんな指示を行うトランザクションに署名しているのかが非常に見えにくいです。結果としてフィッシング詐欺と相性のよい構造になってしまっています。
最近では、相手に言われるがままDiscordにログインしたところ、事前にやりとりしていた相手とは異なるBotがDiscordで待っており、本来とは異なる虚偽のフローと共にウォレットに繋げる指示が案内され、そのことに気付かぬまま虚偽の内容に署名してしまい、資産が抜かれてしまったというケースも見聞きします。
MetaMaskはフローが見えにくい分、より慎重に確認を行ってください。
暗号資産は伝統的金融と比較するとよりカジュアルな世界で、詐欺に近い商品が多々紛れ込んでいる
ーー資金運用において、基本的かつ重要な考え方があれば教えてください。
暗号資産といわず、あらゆる資産の運用をする上で、ご自身が投資する商品についてきちんと理解することが非常に重要です。
「よくわからないけど有名な人が勧めていたから買ってみよう」ではなく、きちんとその中身を理解し、その商品がどういう仕組みで成り立っているのか、目論見書やホワイトペーパーを読み、十分に腹落ちした上で投資すべきだと思います。
というのも、暗号資産は既存の伝統的金融と比較するとよりカジュアルな世界で、詐欺に近い商品が多々紛れ込んでいます。
そのような詐欺的商品を有名人や有名取引所がアピールしていることも多く、情報を鵜呑みにせずあくまでご自身で中身を調べ、十分に腹落ちすることが重要だと思います。
「まず社会実装して問題があれば後から修正する」というビットコインの壮大な社会実験の進め方に刺激を受けた
ーーここからは原さんご自身について伺いたいと思います。どのような経緯でビットコインについて知り、株式会社AndGoを設立されたのでしょうか。
ビットコインとの最初の出会いは、大学で情報科学の研究を行っていた2012年頃です。
当時は、ゲノム解析のアルゴリズムで学位を取り、助教として大学の研究室に勤めている時で、同僚から「ビットコインという、よく分からないが暗号技術を使ったプロダクトがある」と紹介され、ホワイトペーパーを研究室で読んだのが最初です。
ホワイトペーパーは10ページほどのコンパクトな論文で、1つ1つの要素は理解できたのですが、このプロダクトがどのようにすごいのかは当時はピンと来なかったんですね。
その後、2017年にビットコインが大きく盛り上がった際に再度調べ直す機会がありました。
慎重な検証を10年もかけて行い、標準化を経てはじめて実用化されるといったこれまでの暗号の世界の常識に対して、「まず社会実装して、問題があれば後から修正する」というビットコインの壮大な社会実験の進め方に刺激を受けました。
そういった経緯もあり、先進的な暗号技術をもっと早く社会に届けたいという想いから2017年に現在の株式会社AndGoを設立しました。
ビットコインは報酬体系までがプロトコル設計に含まれている非常に美しい設計
ーー原さんは特にどのような点にビットコインの魅力、価値を感じていますか。
分散処理システムですね。
例えば、インターネットを支えているコンピュータの仕組みですが、サーバーという会社が管理してるマシンがあり、クライアントというブラウザがある。
ビットコインはそのような既存の仕組みとは異なり、全て対等なノードでネットワークが組まれています。
そのネットワークの管理者は個人でも企業でも誰でも良く、ネットワークに入りノードを管理することで管理に対する報酬を得ています。
報酬体系までがプロトコル設計に含まれている、非常に美しい設計なんですね。
多くの人が報酬欲しさにネットワークの維持に参加することで自立分散的にネットワークが大きくなり安全になっていく仕組みは、本当にすごいことだと思います。
人々の経済的インセンティブを得たいという欲求までもプロトコルの設計に組み込まれ、十年以上にわたってネットワークが広がり続け利用されているビットコインの仕組みは、発想がワンランク上というか、枠が一つ広がっていると感じますね。
また、私は元々SFが好きで、『風の谷のナウシカ』のような仕組みの理解が失われたテクノロジーが世界の片隅にあって世の中に影響を与えている世界観が好きなんです。
サトシ・ナカモトという正体不明の人物が作ったテクノロジーが世の中で一定の支持を受け、多くの人が恩恵を受けているという事実に非常に面白さを感じています。
この仕組みは世の中を支えるインフラ技術として確実に根付いていくと感じており、これからもビットコインや暗号資産技術の身近にいたいと考えています。
現在の社会と衝突するのではなく、ビットコインが受け入れられる土壌を意識的に作っていく必要がある
ーー原さんは今後ビットコインがより普及するためには何が重要だと思いますか。
ビットコインが普及していくことが人の世にとって良いことであるという前提で回答をさせていただくと、ビットコインが普及していくための課題は社会を回す仕組みに適切に受け入れられることだと思います。
現在の社会を動かしている仕組みは、これまで人類が培ってきた経験が凝縮された結晶であり、それは国や規範、法律などで成り立っています。
そのような世界にうまく溶け込んでいくためには、それらと衝突するのではなく、受け入れられる土壌を意識的に作っていく必要があるでしょう。
具体的には、法律面の整備は非常に重要な取り組みの一つだと考えています。
人間社会は様々な考え方を持つ人々の集合体です。そこには、社会を動かす強い権利が集中している場所もあります(利権を持つ人がいる)。
その構造的なしがらみを変えていくのは大変だと思いますが、歩み寄り、体勢に飛び込んでいく努力をすべきだと思います。
暗号資産の基礎知識や理解を深めていただくためのセミナーも開催
ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。
ビットコインといった暗号資産は、デジタルで場所を取らず、他人に預ける必要がない、自分で自分の資産を守ることができる特殊な存在です。
この特殊な存在を自分ごととして触っていただき、これまでにない新しい技術や考え方が世の中に根付き始めていることを、ぜひ体感していただきたいと思います。
ご自身のウォレットにアクセスできなくなった際、頭が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなることもあると思いますが、資産を失う可能性があるわけですからそれは当然の反応です。
そんなときに、プロの我々を利用していただけたら、解決の糸口が見つかるかもしれません。
弊社では、暗号資産の基礎知識や理解を深めていただくためのセミナーも開催しております。
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