最近は株主提案などが活発になっており、投資ファンドや機関投資家の大量保有報告が個別銘柄の買い材料となるケースが増えています。
こうした大量保有報告には、短期筋の思惑的な買い(いわゆるイナゴ投資)が集まり売買が膨らむことも少なくありません。
そこで今回は投資家としての側面も持っている光通信 <9435> の大量保有報告を狙ったイナゴ投資に焦点をあて、実際のリターンを検証してみたいと思います。
大量保有報告とは
大量保有報告制度とは、上場企業の発行済み株式数の5%を保有した株主が、実際の保有日から5営業日以内に内閣総理大臣(財務局)に届け出を提出する義務がある制度で、「5%ルール」とも呼ばれます。
5%保有を報告するのが「大量保有報告書」です。
大量保有報告書には、「純投資」「成長や株主還元強化の提言」など保有目的を載せなければなりません。
また、5%以上を保有した株主はその後持ち株の割合が1%変動するごとに「変更報告書」を提出することになっています。
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
なぜ光通信なのか
今回光通信にフォーカスしたのはなぜでしょうか?
光通信は、携帯電話回線の販売やミネラルウォーター、新電力サービスなど強みである営業力を活かして様々な商材を販売しています。
さらに事業規模の拡大のためのM&Aを進めるとともに、純投資として様々な割安(バリュー)に投資する投資家としての側面も持っています。
2024年3月期末時点では、627社に投資しており、投資先の簿価が約6,000億円に対して時価は約1兆円と4,000億円超の含み益があります。
前期は事業利益1,000億円に対して、投資による利益が約400億円と収益の柱の1つとなっているのです。
ちなみに投資運用を手がける光通信株式会社とグループの親会社の株式会社光通信は別会社です。
ややこしいので光通信株式会社とグループ企業による共同保有も含めて本稿では、すべて「光通信」として統一して表記します。
2024年の光通信イナゴ投資の検証
2024年の光通信の大量保有報告を利用したイナゴ投資を検証してみました。
件数が多いので今回は大量保有報告書の提出に焦点をあて、短期(3営業日)と1カ月でのリターンを計算しています。
光通信の大量保有報告書は15時東証の大引け以降に提出されます。
大量保有報告書が提出された銘柄を翌営業日の寄り付きで買ったと仮定してその日を含む3営業日間の高値、安値でリターンを計算しました。
さらに1カ月後の終値でもリターンを計算しました。
該当する銘柄は20銘柄でした。
発表後の3日間の高値リターンの平均は3.8%となり、安値リターンの▲2.5%を上回りました。
短期で最も上昇したのはレジル
発表後3日間で最も高値リターンが高かったのは、レジル <176A>でした。
マンション向け一括電力販売や再生エネルギーの運用サービスなどを手がけており、4月に東証グロース市場にIPOしたばかりの新電力企業です。
6月5日に光通信がレジル株の保有比率が5.1%に達したと報告しました。
レジル株は翌6日の寄り付きは1,516円で始まり、同日に高値1,740円と14.8%高まで上昇しました。
IPOしたばかりの銘柄で個人投資家などの注目度も高く、出来高は前日の2倍超となる434万株と商いが膨らみました。
翌7日と10日は急騰の反動で出来高も減り、10日には一時1,448円まで下落しました。
翻訳サービスのインバウンドテックは3日間の高値リターンが10.5%と良好
翻訳サービスのインバウンドテック <7031、東証グロース> は3日間の高値リターンが10.5%と良好な結果となりました。
2月22日に光通信と共同保有者の保有割合が19.60%に達したと報告しました。
これを受けて翌26日の寄り付き1,177円から1,300円まで上昇しました。
光通信はバリュー投資を主眼としているのでリストの20銘柄のうち、スタンダード市場の銘柄は9銘柄、グロース市場が6銘柄、プライム市場が5銘柄とスタンダード市場の割合がもっとも高くなっています。
これは、スタンダード市場加重平均の予想PERが14.2倍、グロース市場が52.1倍、プライム市場が16.3倍とスタンダード市場が相対的に割安な銘柄が多いことに起因しています。
東証の市場改革で資本政策や株主還元強化を明言し、プライム市場を中心に株価が上昇する銘柄が多い中、未開拓のバリュー株がスタンダード市場に多い裏返しとも言えるでしょう。
ただ前述のレジルとインバウンドテックは東証グロース市場の銘柄ですが、予想PERが約16倍、インバウンドテックは約13倍程度と割安感もあるため、選別されたとみられます。
短期パフォーマンスが悪かったのはフリュー、オートサーバー
逆に短期のパフォーマンスが悪かったのはフリュー <6238、東証プライム>です。
プリントシール機などを手がけています。
5月7日に光通信が保有比率が5.05%になったと発表。
しかし株価は翌8日寄り付きの1,250円から下落し、3日間の安値リターンは▲3.8%と冴えない結果となりました。
その後14日に発表した2025年3月期の業績予想は、売上高が前期比0.5%増、営業利益が前期比20%減と厳しい見通しでした。
円安によるコスト増やゲームアプリの開発費の増加などが響いています。
株価もその後下落トレンドが続き1カ月リターンも▲13.9%と振るいませんでした。
オートサーバーも3日間安値リターンが▲2.5%、1カ月リターンが▲16.8%とワースト
1月16日に大量保有報告したオートサーバー <5589、東証スタンダード> も3日間安値リターンが▲2.5%、1カ月リターンが▲16.8%とワーストでした。
中古車のオークション代行サービスを手がけています。
大量保有報告を受けて翌17日の寄り付きは1,950円と前日終値から4.2%上昇して始まり、2,009円まで上昇したもののその後は下落に転じました。
大量保有報告を材料とした買いは入ったもののイナゴ投資としては今ひとつな値動きに終わっています。
2月に安値1,603円まで下落して以降は株価も持ち直し5月に2,054円まで上昇した点を念のため補足しておきます。
1カ月後リターンはリログループがトップ
1カ月後のリターンが良好だったのはリログループ <8876、東証プライム> です。
社宅管理など企業の福利厚生事業代行を展開しています。
4月17日に光通信が5.13%を保有したと報告。
翌18日寄り付きの1,357円から3日間の高値は1,378円までと小動きに終わりました。
しかし5月10日に2025年3月期の業績見通しが6%増収、純利益が330億円の黒字と前期の278億円の赤字から黒字転換かつ最高益になりそうだとして、さらに増配も発表し株価は大きく上昇しました。
結果、1カ月リターンは20.4%と高いものになりました。
建築確認検査の大手のERIホールディングス <6083、東証スタンダード> の1カ月リターンと良好でした。
4月8日に光通信が5.3%の保有報告を提出、その後3回も買い増しを報告し、株価はじり高基調が続いたこともあり1カ月で10.4%上昇しました。
大量保有報告のタイムラグには注意すべき点も
大量保有報告制度は大口投資家の手口を推測できる便利なものですが、あくまで5%ルールなどの報告は義務発生日から5営業日以内とタイムラグがある点には注意が必要です。
暗号資産関連事業などのクシム <2345、東証スタンダード> の例で説明します。
2022年1月20日引け後に光通信はクシム株の5%、467,600株を取得したと発表しました。
20日の終値は401円でした。
光通信の大量保有報告を受け、株価は21日寄り付きから急騰しストップ高の481円まで上昇し高値引けとなりました。
その後も上昇が続き、1月24日には561円を付けました。
しかし、28日に光通信が提出した変更報告書(短期大量譲渡)では、21日の急騰で保有していた467,000株をすべて売却していたことが判明しました。
結局株価は29日に安値355円まで下落しました。
上記の例でわかるように大量保有報告はあくまで事後の報告なので、投資家によっては報告後売り抜けていることもある点には留意が必要です。
光通信の最近では大量保有報告や買い増しの変更報告書の比率が多くなっていますが、ごくたまに変更報告書(短期大量譲渡)も提出しています。
まとめ
光通信のイナゴ投資のリターンを検証してみました。
イナゴ投資だけでなく投資家の大量保有報告は、投資タイミングやスタンスを知るのに良いツールと言えます。
もし興味がありましたら、別の投資家についても調べてみてはいかがでしょうか。
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
この記事を読んだ方は、こちらの記事もおすすめです