「個人として重要なのは有事に備えてすぐに移住できる選択肢を持っておくこと」Cygnos・三原 弘之氏 3/3

bitbank COOを経てCygnos Capitalを運営する三原 弘之氏に、現在の地政学的リスクや今後のCygnosの展開について伺いました。

インタビュー・執筆・編集:内田 誠也

三原 弘之氏 プロフィール

早稲田大学を卒業後、楽天株式会社にエンジニアとして入社し、楽天市場の開発業務に従事。2014年、ビットバンク株式会社へ社員第一号として参画し、執行役員COOとして国内最大級の仮想通貨取引所へ成長させる。現在は海外クリプトヘッジファンドの戦略へ分散投資する日本初のファンド、Cygnos Crypto Fund を運営。Twitter:https://twitter.com/h3hara Cygnos:https://fund.cygn.com/ https://oversea.cygn.com/

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日本人のブラジル移住者に感銘を受け、海外での起業を志す

ーー過去にフィリピン、マレーシアで起業し、現在もシンガポールでCygnosを運営されていますが、もともと海外志向だったのでしょうか。

そうですね、これは少し時間を遡ってお話させていただきます。

大学4年生の夏休みにバックパッカー的な感じで南米を一周する中で、サンパウロの日本移民史料館を訪れました。

そこで現地の日系人の方々によくしてもらい、昔の話を聞いて博物館を見たりして感動しちゃったんですね。

戦前や前後に家族で船に乗って、片道切符で数ヶ月かけて地球の裏側まで移住した。当時日本の経済はひどい状況で仕事もなく、良くなる見込みもなかった。私は山口県の出身ですが、特に西日本からは移住した人が多かった。

参考:データベース『えひめの記憶』|生涯学習情報提供システム

そういった話を聞いて感銘を受け、僕ら世代は海外で人生をやり直すぐらいの覚悟で産業を立ち上げていかないと駄目だなって思ったんですね。

当時の移民船の写真。ブラジル日本移民史料館 – Bunkyo より引用

それで日本に帰ってきて、実際自分になにができるんだろうと調べる中で、加藤順彦さんの記事を見つけました。

海外から日本を刺激することで日本を成長に向かわせるといった主旨で、そのとき自分がイメージしていたこととちょうど合致したのが印象的でした。

それから加藤さんに連絡をしてお会いさせていただき、ラングリッチをご紹介いただきフィリピン現地のマネジメントを担当することになりました。加藤さんには後にビットバンクもご紹介いただいて、Cygnosのファンドにも出資をいただいたりと長くお世話になっています。

そういったブラジルでの体験や東南アジアから日本に刺激を送る加藤さんに影響を受けたこともあり、海外で事業をやるというのを大学生から考えていました。

個人として重要なのは海外移住の選択肢を持っておくこと

――そういった海外との縁が深く現在ファンドを運営する三原さんは、ロシア・ウクライナ戦争や台湾有事など地政学リスクをどのように見ていますか。

さまざまなイシューがありますが、重要なのは一個人として何ができるかということだと考えており、そこに絞った話をします。

仮に第三次世界大戦が起きたとして、日本が参戦するかはわからないですし、参戦したとして日本の本土が戦場になるかどうかいま時点ではわかりません。そのような中でいまのうちから個人が準備、取り得る手段としては海外移住しかないと考えています。

大事なのは可能性の程度を予測することよりも、そのシチュエーションを迎えた際にさまざまな選択肢をとれる準備をしておくこと、だと考えています。

私がおもしろいと思ったのは、中華系、ヨーロッパでは、家族の中で国籍のポートフォリオが組まれていることが多いことです。詳しくヒアリングしたわけではありませんが、おそらく戦略的にそうしている。

長男はアメリカ、次男はカナダ、長女はシンガポール、と家族の中でポートフォリオを形成する。すると何かあったときに家族でその国に行ける。

実際、日本人の方がシンガポールの国籍を取得しようとした際に、家族に止められた話を聞いたことがあります。君がいれば何かあったときに日本に移動できるからと。

また、こういった海外移住の話でよくあるのが、いま移住しなくてはいけないと思い込んでしまうことです。

大事なのはいますぐ移住することではなく、何かあったときにすぐに移住できる選択肢を持てているかどうかです。

ビットコインは個人をエンパワメントするためのツールですが、海外移住も同様に「移動の自由」を実現するツールの一つであり、行使可能な人権の一つなわけです。

ビザだけでも持っておけば、何かあったときすぐに海外に出ることができます。なにもないうちからビザを取得しておくというのはとても合理的な判断だと思います。

タイ、ドバイ、シンガポールへの移住について

――ビザの取得以外でやっておくと移住しやすいことには何がありますか。また、各国のビザの取りやすさや費用などについて教えてください。

お金で取得できるという意味では、タイが一番簡単で、二番目がドバイ、三番目にシンガポールでしょう。

タイは個人で5年間のビザだと200-300万円、20年では400万ほどでタイランドエリートというビザが買えます。犯罪歴など特定の項目で該当しない限りは、お金を払うことで取得が可能です。

※編集者注:当該記事は専門家による具体的に個別の制度を詳細に解説する記事ではございません。各読者が個別にリサーチ・専門家への確認をとることを推奨します。

参考:タイ長期滞在 タイランドエリート | H.I.S.タイランド

ドバイはお金で買えるビザよりも、現地法人を自分で作り、その法人から自分に対してビザを発行して移住している人が多いです。

ほとんどの日本人にとっては、生活面でドバイよりもタイのバンコクの方が快適でしょう。そういった意味でドバイの方が少しハードルが高いと思います。

あくまで私個人の印象ですが、資産が10億円ほどあればシンガポールへの移住は現実的だと思います。資産1億円、2億円程度であればタイのほうが住みやすいのではないでしょうか。

出国税についてよく質問を受けますが、株式を保有している場合はもちろん課税となります。しかし少なくともいま時点では、暗号資産は適用されません。

暗号資産の投資家で移住が多いのは、この出国税が適用されないというのも一つの要因だと思います。

何かが起こる前からビザを取得し準備しておく

――そのほか移住について留意点などがあれば教えてください。

いまはこのような移住の制度も存在していますが、実際に何か問題が起きたときには制度自体がなくなっている可能性が高いです。新規での受付停止もあり得るでしょう。

手元のキャッシュに余裕がある人であれば、何かが起こる前からビザを取得して準備しておくというのは悪くない選択肢だと思います。

ビザを取得して銀行口座を保有し家を借り、一年に一度だけ訪れるという人もいらっしゃいます。

――暗号資産の投資家の移住についてもよく受ける相談について教えてください。

信頼できる取引所がわからない、銀行口座を止められたらどうしようという相談です。

日本は恵まれていて、国内で信頼できる取引所が多い。これは規制と内需のおかげです。海外で信頼できる取引所は多くない。

取引所から米ドルやタイバーツにして、自分の銀行口座に送金処理した際に、金額が大きいと銀行口座を止められたり、凍結されることが多々あります。

こういった問題に関する対応方法などもファンドのお客様には情報として提供しています。

総合的にビットコイン、暗号資産を保有する人たちが抱える課題を解決していきたい

――今後の活動について教えてください。

私は本質的にはCygnosの価値はファンドではなくプライベートバンク的な要素であると考えていて、将来的にはライセンスの取得、コラボレーティブカストディの提供なども視野に入れています。

プライベートバンクはドルを預かってそのドルを安全に運用しお客様の抱えてる問題を解決することが使命なのですが、既存のプライベートバンクがビットコイン建てでビットコインを増やすというのはむずかしいと思います。

そのためビットコインやクリプトサイドが取り組んで既存側に近寄っていくほうが現実的です。

例えば、暗号資産の領域でこれから間違いなく起きるのが遺産相続の問題で、そういった問題を解決できるサービスのコラボレーティブカストディも併せて提供することで改めて価値が出せます。

このように、総合的にビットコイン、暗号資産を保有する人たちが抱える課題を解決するサービスを提供していきたいと考えています。

関連して、タイやドバイ、シンガポールなどへの投資家の移住のご相談も多数いただいております。ご興味ある方がいらっしゃいましたら各地域の専門家と繋がっておりますので、信頼できる方をご紹介できます。

ぜひお気軽にご連絡ください。

Twitter:https://twitter.com/h3hara
Cygnos:https://fund.cygn.com/ https://oversea.cygn.com/

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