「暗号資産はお金を増やしてくれる装置だが1秒も保有したくない」アービトラージ botter QASH氏 3/4

暗号資産取引所の間の取引レートの差を取るアービトラージで、約1億円の利益を上げたQASH氏。絶対に負けない取引を追求し、勉強や試行錯誤の結果、現在の手法にたどりついた。そんなQASH氏に成功談や失敗談、勉強や情報取集の方法などを聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

QASH氏 プロフィール

2017年よりアービトラージを主体とした取引を行うBotter。大学院在学時に後輩からビットコインの存在を教えてもらい、QuoinexでビットコインではなくQASHという仮想通貨を購入、2ヶ月で原資5000円を1000万円以上にする。2021年ごろからbotを用いたアービトラージを主体として取引を初め、2022年に累計利益1億円達成。メジャーなチェーンからマイナーなチェーンまで至る所でBOTを動かし、利益を追い求めている。
Twitter:https://twitter.com/qash_NFT
ブログ:https://qash-tit.hatenablog.com
Note:https://note.com/qash

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暗号資産は1秒も持ちたくない

――取引の中で印象的な成功はありますか。

botのアービトラージはまだ1年程度ですし、基本的は取れるか取れないかの勝負なので、一回の取引で大きな利益を上げたというような成功談はありません。

強いて言えば、今の取引手法にたどりついたのが成功だといえるかもしれません。取引所によってレートの乖離があることに気付いたのが始まりですから。

たまたまQASHという暗号資産を選んで、5日で5,000円を4万円にして、そこからもっと利益を上げる方法はないかと考えて、取引レートの乖離に気付いた。

それがなければ、今のような取引はしていなかったでしょうね。

――暗号資産を始めたのは17年末から18年始めということでしたが、当時の暴落で全くダメージは受けなかったのですか。

アービトラージの取り引き自体に、通貨が上がった、下がったというのは関係ありません。

むしろ暴落するとボラティリティーが高まり、投げ売りする人も出てくるので、乖離も生じやすくなる。なので逆に利益をあげやすかったと言えますね。

本当にガス代以外は、暗号資産を1秒も持ちたくない。暗号資産を持たないから、暴落しても関係ないんです。

――当時、周囲で同じようにアービトラ―ジをやっていた人はいましたか。

私が知る限り、いませんでした。後輩は売買をしていましたし、私が儲かったという話を聞いて、暗号資産を買ったという人も何人かいたようです。

彼らはかなりのダメージを受けたのではないかと思いますが、今も持っていれば値上がりしているはずですよね。実際、どうしたかまでは聞いていませんが。

暗号資産はお金を増やしてくれる装置のようなもの

――暗号資産は持ちたくないと思いながら、取引していたというわけですよね。そのとき、暗号資産についてどのようなものだと思っていたのですか。

お金を増やしてくれる装置みたいなものですかね。頭を使えば、どんどんお金を増やせるので、リスクを取るなんて馬鹿らしい。

「暗号資産の将来はどうなのか」などという議論もありましたが、こちらは「明るければいいね」と思うくらいで。

あんまり言うと、暗号資産に真面目に取り組んでいる人に怒られそうなんですが、円やドルなどの法定通貨の世界が崩壊しない限り、暗号資産はどうなってもいいというのが基本的なスタンスです。

――botのアービトラージ以外の取引や運用は行われていないのでしょうか。

botを使わない取引であれば、Ethereumのファンディングレートを狙った運用は一時期やっていました。

Ethereumの先物のショートポジションを取っておいて、同額のEthereumを現物で持っておく。すると、Ethereumの価格変動の影響を受けずに毎日ファンディングレート分の金利を受け取れる。

Ethereumを証拠金として入れておけば、清算されるリスクのない取引所があるので、そんな運用もしていましたね。

これはバブル時期でなければ利益が低い手法なんですが、時には年利30%くらいになることもあります。だから、2,000万円くらい入れていた時期もありました。

利率はそんなに高くないのですが、毎日、確実に金利分が手に入る。毎月、給付金をもらっているような状態でした。

この取引は、ファンディングレートさえチェックしておけば、取引所の信頼性のほかにリスクはないので、一喜一憂することもなく金利だけもらえます。まあ、おいしい運用ですよね。

急激な円安で先行きを見誤り、利益分の運用に失敗

――失敗した経験で記憶に残るものはありますか。

アービトラージ自体での失敗はほとんどありませんが、得た利益の運用で失敗したことはあります。

ソーシャルレンディングという融資型のクラウドファンディングがあって、個人投資家から出資を募って、企業に融資するという会社があるんですね。

欧米や中国では結構盛んで、アメリカでは数千億円規模になっていると言われています。

投資する側のメリットとしては、高利回りで今は5-10%くらいあるのですが、貸し倒れリスクも高い。就職して忙しくなったので、院生時代に稼いだ分をそこに投資しました。当時は利回りが8%くらいだったのですが、その会社が経営破綻してしまったんです。

――投資したお金はどうなったんですか。

裁判をしてなんとか9割ほどは取り返しました。弁護士代がもったいないので、自分で膨大な資料を集めて、訴状や準備書面を用意して、裁判所にも通って。

大変でしたけど、なんとか有利な条件で和解にまでこぎつけました。詳しい裁判の中身については話せないのですが。

――暗号資産で得た利益を、安全にどう運用するのかは問題ですね。

はい、実は為替でも失敗してしまったんです。

暗号資産を比較的安全なステーブルコインのUSDCかBUSDで持つようにしているのですが、それでは米ドルの資産が増えてしまう。私としては、為替変動のない日本円で持っていたいんです。

そこで、限りなく為替変動リスクを抑えるため、米ドルショートでポジションを取っていました。

そのとき、1ドル112円だったのですが、今は140円後半から150円ですよね。38円前後も上がって、800万円ほどの含み損を抱えています。

ヘッジを掛けて、なんとか損を抑えようと思ったはずが、これだけでも相当なマイナスです。

――これほど急激な円安になるとは思っていなかった。

まさか世界がこんなことになるとは思ってもいなかったので。高い勉強代になりました。もっと米ドルを信用すべきだったと反省しています。

それと日本の税法上、FXの損益は雑所得と合算できないんですよ。FX内の損益は3年間繰り越して、差し引けるのですが、今年の分はどうにもならない。

途中でそのことに気付いたのですが、そこからドルが急上昇していったので手の打ちようがありませんでした。

これまで取った利益が全て吹き飛ぶというわけではないので、諦めるしかないというところですね。

botter同士でつながるための努力も欠かせない

――情報収集はどのようにやっているのですか

Webサイトの専門記事を読むのが中心です。HushHubの記事などはよく読みますね。

どんなプロトコルがあるのか、DEXやレンディングに関するもの、今熱いチェーンはどこなのかなど、最新の情報とまでは言えませんが、その分、ある程度まとめられたものを読める。マーケットのトレンドを知るのにおすすめできるサイトだと思います。

参照:個別のファンダメンタルズからマクロまで、暗号資産のディープな情報を網羅的に提供 HashHub Research 平野氏・城戸氏 1/4

こうしたサイトは、自分の思いもしなかった情報を得られる可能性がありますよね。何か新たな気づきを得られるのではないかという期待をもって、いつも読んでいます。

――botについての勉強はネットが中心ですか。

暗号資産のトレードで本があまり役に立つとは思えないですね。実際にやっている人のTwitterやブログ、Noteを読んだほうがいいと思います。

「botterとは」という基本的な部分から説明してくれる記事もあって、始めた頃はとても勉強になりました。そこから、手法とか考え方に関する記事を読んで、自分なりに取り入れていったというスタイルで学んでいきました。

▼QASH氏の作業環境

――botter同士はTwitterなどでつながって、情報交換をすることもあるのですか。

DiscordやTwitterで結構つながっていますね。

ただ、Noteやブログで記事をアップしたことがない時期にずさんな対応をされたこともありました。何も発信していない人がいきなりやってきても、「どこの馬の骨だ?」みたいなことになるのは、どの世界でも同じだと思いますけど。

ですから、TwitterやNote、ブログでそれなりの記事やコメントを定期的にアップして認知してもらうのは大事で、記事を書く労力も投資の一つだと思います。それで、クローズドなDiscordなどで自分より熟練した人とつながれたこともありますし。

実際に、私も助けてもらったことがあります。とあるチェーンがラグってしまって、裏付けの資産が全部なくなったときに、「このルートだけはいける」みたいなことを教えてもらえました。そうしたつながりの中でしか得られない情報があるので、記事を書いていて良かったと思っています。

▼QASH氏の執筆記事例

5月の損益と再現性のあるアビトラで5000円を1億円にした話

――アービトラージをしているbotterの共通点はありますか。

安定を求めている人が多いような気がします。「1回のトレードで1,000万負けました」みたいな話はあまり好きじゃない。

botは取引を始めるまでの準備が大変で、そもそも高いプログラミング能力が必要ですし、ノードを建ててクラウド代がペイできるチェーンを探すだけでも大変です。

botの運用を始めた後も、運営が突然アップグレードしたり、ロジックを変えたりするので、メンテナンスも欠かせません。この間はいきなりハードフォークが起きたので、びっくりしましたが、そうした対応に手間が取られる。

地道な努力ができないと、性格的に向かないかもしれませんね。

相場の動きによっては瞬発力を求められる裁量トレードに比べて、事前の準備や日ごろのメンテナンスが欠かせないbotによるアービトラージ。次回はQASH氏のトレードに対する考え方やbotに興味のある人へのメッセージなどを聞きます。

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