「自分のトレード結果は毎日3時間かけて振り返りする」グローバル・マクロ トレーダー平田氏 3/4

大きな利益を上げるよりも「損をしない」ことを考え、絶対に勝てるという確信が持てるタイミングでしか、エントリーしないという個人投資家の平田氏。

仮想通貨の相場を見始めてから、1年以上取引せずに相場の理解に時間を費やしたと言うように、「石橋をたたいて渡る」慎重なトレード姿勢が特徴だ。

しかし、「確信がある」といっても、思い通りには動かないのが相場。

予期せぬ動きをする相場にどのように対応するのか、トレードをするうえでのリスク管理や投資への向き合い方などを平田氏に聞いた。

平田氏プロフィール
インベストデイズ合同会社 代表
国内理系大学院(物理系)卒業後、国内大手金融機関(IT戦略部門、投資銀行部門)に勤め、その後、独立した個人投資家。勤めの間で個人でトレードを勉強し、独立後、2020年の暗号通貨のバブル相場で数千万円のリターンを得る。
大手証券会社行の経験を活かし、経済歴史の書物や調査分析レポートなどを中心に情報収集し、世界各国の中央銀行、中央政府、大企業の戦略を読み解くのが得意。現在は暗号資産、株式、コモディティ、為替、国債など広くトレード。
中長期のロングポジションと短期の売買を行い、常にどのような相場でもリスクを限定し利益を出すようなトレードを得意とする。
記事はこちら。https://burry.co.jp/articles/tag/hirata/
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

いつ暴落しても、どれだけ急騰が続いても問題ないポジションをとる

――短期と長期の売買を組み合わせながら売買しているとのことですが、どのように使い分けているのですか。

短期の取引としては、適宜上がりきったところで利益を確定した後、落ちてくるのを待って、下がったところで買って、上がったところで売るというのを繰り返して、利益を積みあげていきます。

そうやって利回りを確保しつつ、大きく動いたときのために長期用として持っておくという感じですね。

長期は、上がってくれれば、ピークを迎えるまで持っています。もし、下がっても、いずれは戻ってくるはずなので、売りのタイミングを待ちます。

それに、下落するといっても、一直線で下がることはまずなくて、戻りを繰り返して下がっていくので、そこは短期で利益を出しながら、長期は気長に売るチャンスを待つというやり方です。

基本的な考え方としては、いつ暴落しても、どれだけ急騰が続いても大丈夫なようにしておくということです。どんなに好調なときも、浮かれずに最悪のことを想定する、という感じですね。

浮かれて強気になってしまい、損失を出してしまうことも多いので。トレードがうまくいったときは、浮かれていなかったことが多いですね。

――下落局面で、利益を出すというのは、短期でショートから入るということですか。それとも、下がったところで買って反発を待つということですか。

両方ですね。ただ、基本的にショートからはあまり入りません。部分的に、ヘッジとしてショートをかけるというのはありますけど。

例えば、長期で持っていて、短期でも買ったときに、ここで下げられたらちょっと厳しいな、と思ったら、CFDで売りを入れてヘッジしておくという感じです。

下落しても大丈夫なように、別枠を作って、その中で運用していく。その組み合わせで、最終的な利回りを取るというやり方です。

ただ長い目で見れば、長期保有のほうが、結局は利回りが良かったりしますけど。

――長期保有分と短期分は、だいたいどれぐらいの比率ですか。

短期の売買で浮いた利益を、短期で再投資しつつ、長期にも入れていくという形なので、割合はどんどん変わるのですが、長期が7割から6割、短期が3割から4割というのが基本ですね。

長期の割合を高くしています。

相場が大きく下がっているときは長期が7割に近くなって、相場全体が盛り上がってきたときには長期の比率を下げて短期で上昇分を稼いでいくという感じです。

大きく上がったときには、短期は一旦全部売ってしまいますね。

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下がったときに買って、上がったら売るという単調なトレードでは、自分が思う通りに値が上下してくれないと、すべて損失になってしまい、リスクが高すぎる

――仮想通貨で取引するのはビットコインですか

ビットコインは持っていません。ビットコインは時価総額が既に大きいので期待値が小さいんですよね。

もちろん、ファンダメンタルズからいえば、ビットコインは安心できるんですが、どうしても利回りが小さくなってしまう。

今は、ビットコインが急騰したといっても、せいぜい5倍くらいですよね。でも、もっと安いアルトコインで取引すれば10倍も狙えます。

結局、ビットコインもアルトコインも、マーケット全体の中で同じような動きをするので。だったら断然、大きな利益を狙えるほうがいいです。

でも、ビットコインの値動きは指標として見ています。

株式市場の日経平均のような感じですね。ビットコインの上昇率に対して、アルトコインがどの程度、上昇しているのかとか。

「いつもなら、もう少し上がるはずなのに、ビットコインに比べて意外と上がってないな」とか。

――長期と短期で運用を分けたり、CFDでヘッジしたりといったトレード手法は、どうやって身に付けていったのですか。

自分で考えながら今の形に落ち着いたというところですが、これが正しいのかは分かりません。

トータルでは資金を増やしていますが、いつもうまくいっているわけではないので。

結局、利益を回収するタイミングをバラバラにしようとした結果、こうなったということです。

どんな事業でもそうだと思うんです。

自営業の人でもサラリーマンでも、余剰資金ができれば、不動産投資などをして、別の収入口を確保しようとしますよね。

それは、本業が落ち込んでも、別の収入があれば、その間なんとかしのげるという考えもあると思うのですが、それと同じです。

長期がダメなときでも、短期で利益を確保できれば、運用利回りを確保でき、相場の回復を待てる。最悪でも損失面をカバーできます。

そうやって利益を回収するタイミングをバラバラにすれば、そう簡単にはやられない。

上昇したときに利益を出すだけではなく、下落したときにも利益が出る方法と組み合わせておく、いうのが私の考えです。

もちろん、ショートを入れた後にさらに上昇して、逆に損失を出してしまうこともあるのですが、常に利益だけは出せる状況を作っておくことが大事だと思っています。

たぶん、事業をしている人は、みなさん、同じようなことを考えていると思うのですが。

――回収タイミングをバラバラにするという考えも、トレードの中で行き着いた考えですか。

下がったときに買って、上がったら売るという単調なトレードでは、自分が思う通りに値が上下してくれないと、すべて損失になってしまい、リスクが高すぎるんですよね。

だから、下がったときに利益が出るやり方を組み合わせておくことが必要なのですが、それは、もともと証券会社にいたから、そういうやり方を知っていたということだと思います。

株式投資などでは、ノックイン債などさまざまなものを組み合わせてリスクを回避しています。でも、仮想通貨の場合は、手法が限られています。

プロは仮想通貨でも、さまざまな手法を組み合わせているのかもしれませんが、仮想通貨はまだ出来高も少ないですし、売買の中で、利益確定のタイミングをバラバラにしたほうがリスクを抑えられるのではないか、と考えています。

投資は自分が勝てるパターンを見つけて、それだけをやっていくゲーム

――トレードの際にシグナルにしている指標などはありますか。

移動平均線はよく見ていますね。結局、相場の値動きって、いつも同じなんですよ。

長期間に渡って見ていない人はピンとこないと思うんですが、証券会社に勤めている人はみんな言いますね。常識みたいなもので、ずっと同じチャートを繰り返しているんです。

だいたいボリンジャーバンドの3σとか4σのあたりにくっついてるものは、いずれ剥がれるので、剥がれ始めたところでエントリーする。

移動平均線は、当たる前に利益確定してしまいます。移動平均はみんなが見ているので、見ている人たちが動く手前で利益を確定しておかないと怖いですね。

確実にエントリーできるところで買って、確実に利益を取れるところで売る。それを繰り返して利益を積み上げていくので、自然と自分がよく知っているチャートの形で売り買いすることになるんですよね。

だから基本は、自分が知っている形の中で取引することなのですが、自分が知っている形ができたら、すぐに入るわけではなくて、私の場合は、そこからさらに下がらないとエントリーしません。

ひょっとすると、判断が間違っているかもしれないので。そこで反転して上にいってしまえば、それはそれで仕方がない。

――取引したときの指標やチャートの動きは、毎回確認するのですか。

取引所の約定履歴は毎回見ます。

どうして利益を出せたのか、どうして損失を出してしまったのか、全ての取引を確認します。すると、自分が大きく利益を出しているトレードのパターンが見えてくる。

大きく勝ったときは、たいてい同じパターンなんですよ。

投資というのは、自分が勝てるパターンを見つけて、それだけをやっていく。そして勝てるパターンを増やしていくというゲームだと思うんです。

だから、取引データを自分で引っ張ってきて、1日の終わりに2時間なり3時間なりかけて、今朝はこういう気持ちで、こんな狙いを持って、あんな取引をしたけれど、結果はどうだったか、といったことを振り返ることが重要です。

それをするかしないかで、大きな差が生まれると思います。

平田氏が振り返りに使っているトレード結果1 出典:自身のトレード結果をどのように振り返り・分析すればよいか
平田氏が振り返りに使っているトレード結果2 出典:自身のトレード結果をどのように振り返り・分析すればよいか
平田氏が振り返りに使っているトレード結果3 出典:自身のトレード結果をどのように振り返り・分析すればよいか

トレードがうまくいかないと言っている人は、自分のトレードを見返していないのが、理由だと思います。

みんな勉強していない。ほとんどの人が勉強していないので、大きく勝つ人と大負けする人の差が出るのだと思います。

とんでもない損失を出すトレードは明確に数字やチャートに現れるんです。だから、こういうチャートのときに、こういうトレードしたら、これだけ損失を出したというデータを自分で集めておく。

もちろん勝ったときも。それが大切だと思います。

――結局、自分で勉強するしかないんですよね

トレードの本や記事を読む人は、「こうすれば儲かる」という話を見つけるとうれしくなるんでしょうが、実際はそんなうまい話はない。そうではない世界なので。

一度見たり、聞いたりして、次の日からすぐにうまくいくなんてことはなくて、つらい作業もしなければならない。

誰だって、チャートなんて見たくなんですよ。

みんなもっと楽して儲けたいと思っているはずで、積み立てNISAに入れておけばいつの間にか儲かるというのが理想なんでしょうが、現実はそうではないんです。

利益を上げようと思えば1年ぐらいチャートを見続けたり勉強したりする時間が必要で、やはり投資は難しいんですよ。

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