個人投資家のびっとぶりっと氏に、投資をはじめたきっかけや超低位株投資について伺いました。
びっとぶりっと氏 プロフィール
投資歴は株式20年、暗号資産8年、エンジニア歴は組込5年、web10年。2014年にMt.Gox事件でビットコインを知り暗号資産の世界へ。2021年にFIREしたが世の中のDX化の流れをもっと加速したいと思うことがよくあり株式会社Settlerを創業。趣味はポーカーやボドゲ。Twitter:https://twitter.com/yuma300
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取材実施日
2023年6月12日
個人と法人で株式と暗号資産を運用
ーーいま行っている投資について教えてください。
まず、個人と資産運用会社のゼロディバイドでおおよそ10:1の割合で資産を運用しています。
投資先は個別株と暗号資産のみで、キャッシュポジションも入れるとおおよそ2:1:1でいまは運用しています。
不動産は以前、中古の800万円ほどで買ったワンルームマンションを保有していたこともありました。
生活保護を受けているおばあさんが住んでいたのですが、暗号資産に興味を持ったタイミングで売却し暗号資産に変えました。
コモディティはロールオーバーの費用が高く長期保有に適していないと感じており、取引していません。
ーーなぜ資産管理会社より個人の方が運用額が大きいのでしょうか。
ゼロディバイドを設立したのは2016年ですが、その時点で暗号資産の価格が上昇してしまっており、個人で保有していた暗号資産を法人に移すと安くない税金が発生してしまうんですね。
それで個人から動かしていない資産があり、個人の運用額が大きくなってしまっています。
また、法人で暗号資産を保有すると期末で時価評価となってしまい、価格が上昇していれば取引していなくても税金が発生してしまいます。
そのような点もあり、10:1の比率になっています。
なぜ私の許可なく第三者によって勝手に私のお金の価値が薄められているのか
ーー暗号資産に興味を持ったきっかけについて教えてください。
たまたま冷やかしで行ったマウントゴックス直後のビットコイン関係の集まりがきっかけです。
元々、日本円がインフレーションによって価値が薄まるという事実に疑問を感じ、スキャムに近いと感じていました。
それに対して、発行枚数が2,100万枚で定められているビットコインの存在を知ったとき、これは素晴らしいと思ってそれからハマりました。
ーー日本円がスキャムだという考えを持ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
通貨の発行枚数が増えるとその価値が薄まるという事実を知ったのがきっかけですね。
「発行枚数を誰が決定しているのか」「なぜ私の許可なく第三者によって勝手に私のお金の価値が薄められているのか」という疑問があり、その問題から逃れる方法があればいいなと昔から考えていました。
それでビットコインを知った時にこれが答えだと確信しました。
ーービットバンクはどのようなきっかけで働くことになったのでしょうか。
法定通貨のように第三者に勝手に価値が希釈されないビットコインに魅力を感じた私は、日本のビットコイン関連の会社に投資をしたいと考えました。
その中でたまたまビットバンクという会社を見つけ、「ビットバンクに投資したい」という旨のメールをビットバンクに送りました。
それがきっかけです。
リーマンショックで利益を消失し、自身の取引手法に疑問を持つ
ーー株式への投資は個別株のみとのことですが、理由は何でしょうか。
まず根本の考え方として、私は「マーケット参加者が全員幸福になるということはありえない」という考えをとっています。
そのうえで、インデックスを担いでいる人たちからは「みんなで幸せになろう」という匂いを感じていて、それがすごく苦手なんです。
だからというわけでもないですが、そういったこともありインデックス投資は行っていません。
ーー投資をはじめたときのことについて教えてください。
高校生のときに個別株からはじめました。
マネージャパンという雑誌が好きで、そこでおすすめされたものを適当に買っていました。
その後FXもやって、個別株とFXでなんとか数十万円を増やしてというタイミングでリーマンショックが来て、それまでの利益がすべて消失しました。
約七年かけて得た数十万円のリターンが吹き飛んだことはショックだったのですが、それ以上に「私が行っていた取引はサステナブルに利益を生むものなのか」という疑問を持つようになりました。
それから取引手法を変え、配当や株主優待で安定的に期待できる株を中心に取引するようになりました。
その後、ビットバンクで一緒だった田中さんの「相場でみんな幸せになるなんてありえない」という考えに影響を受け、時価総額が低い、超低位株への投資を始めました。
機関投資家の取引に影響を受けることを避け、超低位株に投資
ーー超低位株投資に至った理由を教えてください。
一つは、機関投資家が参加しないマーケットであるということです。
まず前提として、ポーカーと同じように、投資は対人戦です。
ある銘柄が優れていると理解するだけでは不十分で、ほかのマーケット参加者がどのように動くのかも非常に重要なんですね。
私は、機関投資家のような、巨大な資金力を背景に市場を動かす人々を厄介に感じています。
そして彼らの資金による相場変動により、うまく自分の利益を最大化できないと感じていました。
機関投資家が利益を得るということは、必ずほかの誰かが損をするはずで、私はそういったマーケット参加者が存在しない市場で取引したいと考えました。
ーーマーケット全体で得られる利益はゼロサムで、ゼロサムである以上は機関投資家を相手にしたくない、と考えたということですね。
やや異なります。
マーケット全体はプラスサムだが、その利益を享受するための席は限られていてその席の奪い合いはゼロサムである、という考え方です。
例えば、「会社が順調に成長すれば、その会社の株の保有者は全員値上がり益や配当益を享受でき幸せになれる」という指摘もあるかと思います。
しかし、考えてみて下さい。
創業者でもなければその株はだれかから買っているはずで、買っているということは売っている人がいます。
売った人は売却時に利益が出ていたとしても、その後の値上がり益を享受できないわけですから機会損失が出るんですね。値上がり益を得られる席を譲ったわけですから。
そういったわけで、機関投資家のような資金が入って来ない、自分の利益を最大化できるマーケットを探し、そして行き着いたのが日本の超低位株への投資だったんです。
ーー超低位株とは具体的にどれくらいの時価総額を指しますか。
特に見ているのは時価総額が50億未満の銘柄です。
いま保有している銘柄で最も時価総額が低いのはのむら産業で、時価総額は約15億円です。
のむら産業は1959年設立で、お米を入れる袋を製造している会社です。30キロのお米をいれる袋などを作っています。
2023年の春頃からいまも買い続けています。
MBOやTOBによる価格上昇に期待
ーーのむら産業について、時価総額以外には何の指標を見て投資しましたか。
PERや配当も見ています。
PERは非常に割安で、業績がよく利益も出て配当利回りも約4.5%と高く魅力的でした。
また、社長の持ち株が少ないというのも大事な要素です。
ーー 一般的には、社長の持ち株の割合が高い方がモチベーションが高く業績に寄与するものだと考えられていますが、なぜ低いことが投資の理由になったのでしょうか。
おっしゃるとおりですが、のむら産業のように歴史が長く急激な成長が望めない企業の場合、MBOやTOBによる価格上昇に期待したほうが投資機会としては有益であると考えたためです。
高配当株は割高になりやすいか
ーー私個人の考えとして、高配当株は高配当株であるがゆえの買いを生み割高になりやすいと考えていますが、その点についてはいかがでしょうか。
確かに、そのような傾向もありますが、私は必ずしもすべての高配当株が割高にはならないと見ています。
例えば、コンテナ価格の一時的な急上昇により業績が大幅に成長し、配当利回りが二十%程度に達した海運株にもそれほど投資家は殺到しませんでした。
さまざま要因が考えられますが、投資家が海運株の業績はサステナブルではないと冷静に判断していたからだと私は考えています。
私の感覚では、単に高配当であるというだけではそれほど歪まず、会社や銘柄としての高い知名度が加わると割高になるという感覚があります。
のむら産業については知名度が低く、そういった歪みが発生しづらい銘柄だと思います。
超低位株投資の二つの出口戦略
ーー出口はどのような戦略でしょうか。
超低位株投資の出口戦略は二つです。
一つ目は、その銘柄が一時的に大きく価格が上がったとき、いわゆるイナゴタワーができた時に、一部または全てを売却することです。
ただその場合でも、将来性があると判断できれば保有し続けることもあります。
二つ目は、投資先の企業が他の企業によって買収されるときです。
M&Aの際にはその銘柄の株価が大きく上がることがあります。
今までで一番利益が出たのはイーモバイルで、ソフトバンクに3倍ほどの株価で買い取られました。
ただし、イーモバイルは超低位株投資とは別で、配当と将来性によって投資していた銘柄です。
超低位株投資のリスクと対策
ーー超低位株に投資するにあたって難しいことはありますか。
時価総額が低いゆえに流動性も低く、買い入れに一苦労することです。
そのため指値注文を複数出し、株価が下落してその注文が約定されるのを待つという戦略をとっています。
ーー流動性の問題により時価総額が低い銘柄はあえて選択肢から外すという投資家もいるので対照的だと思いました。
超低位株は流動性が低くリスクがあるから選択肢から外すというのはその通りだと思います。
私の超低位株投資はTOBが起きればリターンが大きく、その代わりに流動性も低くリスクが高いと言えます。
ただ、その分、ポートフォリオ全体で投資先は分散し、一つの投資のサイズも一定以下に抑えています。
また、キャッシュポジションを大きくし、更に配当や貸し株金利等でキャッシュフローを生み出すことで、全体でバランスをとっています。
リーマンショックですべての利益を溶かした経験があるため、大きな市場の揺れにも耐えられるよう、キャッシュポジションの割合やドローダウンのコントロールについては注意しています。
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インタビューの2記事目に続きます。
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