「勝てるようになったのは市場の構造を利用できるようになってから」佐々木徹氏 3/4

相場の値動きからレンジの幅を読み取り、指値を入れて利益を上げるというトレード手法で、決して無理な勝負はしないという個人投資家の佐々木徹氏。リスクのある取引にのめり込みすぎると、自分に都合のよい情報しか目に入らなくなり、大きな失敗につながるという。佐々木氏の忘れられない失敗談や成功するための考え方などを聞いた。

佐々木徹氏 プロフィール
40代から自由な時間と収益を作るトレード教育を行っています。ビットコイン / ゴールド / 原油 / 外国為替 の取引方法が学べる「ココスタ」運営(受講生4,800名)。現役トレーダー / 米CMT検定1級保有 / ビットコイン研究所ライター / 株式会社ファム代表取締役。
https://twitter.com/CocostaGeekend
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インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

市場の構造を利用して利益を上げる

――個人トレーダーを目指す人の参考になる成功談があれば、お聞きしたいです。

基本的に成功体験って忘れるようにしているんですよ。ただ、成功するというか、勝てるようになったのは、市場の構造を利用できるようになってからですね。

例えば、一般の人たちが普段目にしている物の値段というのは、数多くある値段のうちの一つなんです。金属でも、原油でも。

BTCの例を挙げると、今のBTCでもいろんな値段があって、今現在の値段と、月末の値段と、来月の値段、再来月の値段はみんな違っていて、先物市場では違う時間のBTCが、それぞれの価格で取引されているわけです。

それは金利とか、経済指標とか、それに対する市場の反応などで変化していきます。そして基本的には、今の値段よりも将来の値段のほうが高い。9月よりも10月、10月よりも11月という感じで。

でも、突然の暴落でマーケットがクラッシュすると、その構造が変化して、逆に将来の価格のほうが低くなることがある。

これは、異常事態なんで、いずれは是正されるはずなんです。だから、是正されることを見込んで、近い月の高いほうを売って、安くなっている遠い月のものを買う。

そうしておくて、正常な形に戻ったときに、ポジションを解消して、差額を稼ぐことができる。

BTCを例に出しましたけど、こうした市場の構造を利用した取引を、ビットコインの市場以外のところでやっています。

こういう市場の構造というか、値動きというのは、金融市場の歴史の中で何回も繰り返されてきているので、まあ、再現性が高いというか、ある程度確実なんですね。

こういうやり方をすると、証拠金もあまり高くなくて済むという部分もあるのですが。

――そうした、いわば「市場の異常事態」が起こるのを待つという感じですか。

そうですね。板の前に張り付いて「底でうまく捕まえて、高値で売り抜けました」みたいなドンピシャでハマったという話もありますけど、そんなことばかりを狙っていてもね。それこそ、ギャンブルみたいで恐ろしいので。

だから、異常事態の中でリアルタイムに取引するのではなく、先を見越して指値を入れておく。

そういうやり方だと、勝ったとしても、いつの間にか指値が刺さって利確までしていたという感じで、あまり思い出には残らないですね。

長い市場の歴史の中では、よくある動きの一つで、別に珍しいわけではありませんから。うまく指値に刺さって、その上、利確までしていただき、ありがとうございます、という感じです。

いつでもあるチャンスではないので、そういった異常事態が起きるまで待たないといけないというのが、手間っていえば手間です。それに、いつもうまくいくとは限らない。思っていたような値動きにならなくて、やられてしまうことだって当然ありますから。

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業者選びも面倒がらずに丁寧に行うことが重要

――こうしたトレード手法は、他の投資家から教わったりしたんですか。

ビットコインの取引を通じて、いろいろな人と知り合い、教わったこともありますけど、彼らは一から十まで全部は教えてくれないんです。

ある程度は教えてくれるけど「後は自分で考えて」みたいな感じで。それで自分なりに考えて、成功や失敗を繰り返しながら、ということです。それに、トレードの手法は人それぞれですから。

そういえば、これはトレードの手法ではないのですが、結構大事なことが一つあります。みなさん、勝てる方法とか、自分にあった方法とかを一生懸命考えると思うのですが、それよりもまともなブローカーを探す方が大事です。

――肝心なのは業者選びから、ですか。

そうです。例えば今、話したような市場の構造を使って取引しようと思ったら、どのブローカーでもいい、というわけにはいかないんですよ。注文方法やシステムが業者によって違うので、そうした取引ができない業者もあります。

だから、最初は手間がかかりますけど、複雑で高度な取引ができる業者を選ばないといけない。

海外の業者で口座を開設するためには、英語が読めないといけないとか、きっちりとした証券会社ほど、提出しなければならない書類が多くて面倒だとか。最低預け金を用意しなければならないとか、誰でも気軽に、というわけにはいかなくなるんです。

単純にいえば、2way取引か板取引かというだけ全然違いますからね。板取引だといろんな取引ができるわけで、2wayというだけで、もうハンディがある。だから、どの業者を選ぶのかというのは非常に大きい。

――暗号資産だと販売所と取引のどちらを選ぶかとか

暗号資産を取引するには、販売所と取引所があるわけですけど、その違いを分からずにトレードをしている人も実際にいます。

でも、そうすると高い手数料を払わされているのに、気づいていない可能性もある。それではいけなくて、業者についてもよく調べることが大切です。

やはり、中には悪質だなあと思う業者もありますよ。初級者などを相手に「自動で積み立てていきますよ」といって誘い、実際、蓋を開けてみたら高いスプレッドを設定している、なんてことが実際にあるわけです。それは、完全に客を食い物にしてるだろうって感じですよね。

だから、自分が業者の言いなりになって取引をさせられているのか、自分で主体的に取り引きできているのか、それだけで全然違うので、業者選びはおろそかにしてはいけないと思います。

パチンコで勝つには、どの台でどう打つかより、どの店を選ぶかで決まるなんて言うじゃないですか。お店選びから勝負は始まっているわけで、それと同じですよね。

業者の話に戻りますが、やはり板取引ができるかどうかで、コストの差は歴然ですし、注文のシステムによっては、先ほど言ったマーケットの構造が使えたり使えなかったりするんです。

トレードにのめり込まない、準備を怠らない

――記憶に残っている失敗談はありますか

失敗なんて、だれでもたくさんあって、私だって痛い思いを何度もしているし、今でもやられてしまうことがあります。

どうして、失敗してしまうのだろうと考えると、逆説的なんですが、稼ごうとするからだと思うんです。トレードだけで一発逆転を狙おうとしてしまうとか。

誰でも負けたくないんですけど、無制限に勝ち続けようとする、すると逆にそれが足かせになってしまって、自分にとって都合のいい情報しか見えなくなってしまう。

結果的に、つらい状況に追い込まれてしまうということだと思いますね。

具体的なエピソードを挙げると、まだ海外にいてFXのトレードを始めたばかりの頃のことですね。

少額で取引をして、ちょこちょこうまく利益を上げていたんです。それで、あるとき1日休みができたんで、1日使ってデイトレードをやってみようかと思って、朝から晩までパソコンの前に張り付いてやってみたんです。

最初は利益を上げていたんですが、売って買って、買って売ってと延々とやっていたらですね、だんだん疲れて集中力も落ちてくるんでしょうね、だんだん損ばかりするようになって、最後の最後にドスンと下落して終わり。結局1日のトータルはマイナスでした。

――1日数時間のトレードでいくらか稼げていたから、1日やれば大儲けできるだろうと。

そうです。そういう考えを持っていました。

最後、トレードを終えたのが午前3時くらいでした。「俺はこの24時間で何をしていたんだ」と。負けたことより、24時間を無駄に費やしたことが空しかったですね。

家族をどこかへ連れて行く、本を読む、自分に何か投資をするとか、そうしたことができたはずの24時間を、パソコンの画面の前で過ごし、そして、何も得られなかった。

時給に換算したら、超マイナスですよ。あのときのことは、今も印象に残っていますね。

そのときに失敗した理由は、オーバートレードで、むやみに稼ごうとしたこと、無制限に勝とうとしたことですよね。要は、一発逆転でそれまでのマイナスを全部解消しようと考えていたことが、すべて裏目に出た。

――いくら長時間トレードしても、チャンスがこなければ稼げないということですか。

チャンスと言えば、準備を怠ったためにチャンスを逃したという経験もあります。コロナショックの最中の2020年3月ですよね。ビットコインが暴落して、3,000ドルまで急落したことがあったのですが、そのとき家族で旅行に出かけていたんですよ。

3,000ドルですよ。絶対に買うチャンスですよね。でも、手元には端末はないし、つながったところで取引所にも現金は用意していない。

取引所に現金を送金しようとしても、すぐに送金できるような資金はない。何の備えもなかったんですね。これは本当に歯がゆくて、情けなくなりましたね。それからは、いつでも取引できるように常に資金を用意しています。

――トレードで成功するにはどうすればいいのでしょう。

成功って、はっきり言えば運もあれば、タイミングもあると思うんです。人との出会いできっかけをつかむということもあるだろうし、トレードへの適性とかマーケットとの相性とか。運が悪くて、なかなかうまくいかないということもあるでしょう。

だから私が心がけているのは「失敗しない」ということです。

具体的には、収入をトレードだけにまとめないということですね。トレードにはリスクがありますから、成功もあれば失敗もある。

多少失敗してもいいや、と思ってやらないとトレードにのめり込まざるを得なくなる。すると、人は自分にとって都合のいい情報しか探さなくなり、冷静な判断ができなくなるんです。

だから、私の場合はブログや教育コンテンツなどによる収入を確保して、不動産投資でも収入を得られるようにしている。トレードで成功するのは、心に余裕を持ってやること。これが一番だと思います。

次回は、トレードを始めたい人や、もっと上手になりたい人へのアドバイスをお聞きします。

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