投資歴31年、証券アナリストの経験もある株式投資家のおせちーず氏に、パロアルトと東レへの投資背景について伺いました。
インタビュー・執筆・編集:内田 誠也
おせちーず氏 プロフィール
投資歴約31年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリストを経て、現在は企業に勤めながら大学で非常勤講師にも従事。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies
ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/
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ITの導入が進むほどセキュリティの需要は高まり、セキュリティの需要が高まる中でファイアーウォールの需要も高まるはず
――現在保有されている、パロアルトネットワークス(以下、パロアルトと記載)について教えてください。
興味を持ち始めたのは2022年の春ごろで、購入したのはその夏です。投資に関する書籍の執筆協力をした際に取り上げられた銘柄で、それから興味を持ちました。
調べているうちに、パロアルトが取り扱っているファイアーウォールなどのコンピューターセキュリティの需要は今後も成長し続けるはずだと考え、投資するにいたりました。
ーーおせちーずさんは投資をする際に必ずストーリーを考えているとのことですが、パロアルトについてはどのようなストーリーを描いているのでしょうか。
ファイアーウォールに限らずソフトウェアは一般的にそうですが、一度導入するとほかのソフトに切り替えるのは面倒くさい。つまり顧客に継続性がある。Macを愛した人がMacから切り替えられないのと同じです。
DXが叫ばれていますが、ITの導入が進めば進むほどセキュリティの需要は高まり、セキュリティの需要が高まる中でファイアーウォールの需要、依存度は高まるはず。
コンピューターネットワークが今後広がることはあっても狭くなることは絶対にない。少なくともパロアルトの製品を導入した会社が他社に乗り換えることは簡単ではないはず。
これがパロアルトに投資するにあたって私が考えたメインストーリーです。
パロアルトはS&P500への採用とそのインデックスの買いが期待できる
ーーメインストーリー以外にも想定しているストーリーがあれば教えてください。
もう一つは、パロアルトがS&P500へ採用されることでの価格上昇、というストーリーです。
S&P500に採用されるためには時価総額や株式の流動性、浮動株の比率などいくつか基準があるんですが、パロアルトは黒字以外の基準を既に満たしていると思われる。
もしS&P500に採用されたらインデックスの買いが生じ価格の上昇が見込めます。
例えば、かつてはテスラも赤字を計上している時期があり、S&P500の採用銘柄ではありませんでしたが、黒字に転換しその後採用され価格が急騰しました。
パロアルトも決算が黒字になればS&P500になれる可能性を秘めた銘柄なのです。
これがパロアルトへの投資に関する二つ目のストーリーです。
ーーパロアルトはいつ頃黒字転換するだろうという見立てはあるのでしょうか。
パロアルトの日本で言うところの有価証券報告書を見ると、当面赤字続く旨が記載されています。その手の記載は、裏を返すと、当分S&P500に入らないと想定しておいてほしいという市場に対するメッセージとも見えなくはない。
なので、大前提として見立てはないのですが、時間はかかると予想しています。
だからこそ、いま買いだとも思っているんですが。
ーーパロアルトはどういった理由によって現在赤字なのでしょうか。
マーケティング費用捻出の旨が記載されていたので、その費用によって赤字であるというのが一つの理由のようです。
――パロアルトに投資するあたって、アナリストのレポートは読まれましたか。
読まずに自分で判断しました。
メインのストーリーは「ファイアウォールの需要は減らない」であり、アナリストの意見によってそのストーリーが変わることはないので意図して読みませんでした。
インフレが起きようともセキュリティ対策の需要は今後も成長するはず
――見立てどおりにいかなかったときのストーリーについてどのように考えていますか。
考えていません。そもそもファイアーウォールの需要は減らないと予想しているので。
もし仮にファイアーウォール自体の需要が減る自体になったら、そのときはパロアルトに限らずIT株はひどい状態になっていると思います。
ーーファイアーウォールよりも優れた別のセキュアな製品が登場しストーリーが崩れる可能性についてはどのように考えていますか。
それはおそらく次世代ファイアウォールと呼ばれていると思いますし、パロアルトが作っているものもそれです。
ファイアーウォール自体は30年以上前からある概念で、常にイノベーションされているものです。珍しいものでも何でもありません。
防火壁がないとセキュリティホールを作ってしまったり、個人情報の漏洩などが起こりかねない。ユーザー、特に企業は使わざるを得ないわけです。
ーー2022年2月現在、インフレやそれに伴う利上げや利下げがマーケットのテーマになっていますが、パロアルトへの投資はどのような影響を受けると考えていますか。
影響は一切考えていません。
なぜなら、インフレが起きようとも、先ほど説明したようなITやネットワークの普及に伴うセキュリティ対策の需要は今後も成長するはずで、少なくともいまより縮小するはずはないと判断したためです。
むしろ、個人情報の漏洩などのニュースが出ると追い風になる。
なのでインフレや金利の変動に伴うパロアルトへの株価に対するネガティブな影響は特に考慮していません。
海水淡水化技術をきっかけに東レに興味を持つ
ーー東レ株式会社(以下、東レと記載)に投資されたときのことを教えてください。
いわゆる素材のメーカーなんですが、どのように利益を出しているかというと、いまは炭素繊維が主です。
▼編集者注:東レの「第3四半期決算説明会 説明資料」の8頁。「23年3月期第3四半期」における事業利益の上位は「繊維」「機能化成品」「炭素製品複合材料」となっている。
はじめて興味を持ったのは2011年ごろで私がまだアナリストをやっていた頃です。
水をテーマにレポーティングした際に、東レの、海水を飲み水にする海水淡水化技術について知り、今後世界で相当のシェアを占めるのでは、と投資先の銘柄としてポジティブに見るようになりました。
日本にいるとインフラが整っていて水道水を飲めるというのは当たり前で誰も意識しないんですが、グローバルで見るとレアな環境なのです。特に中東、アフリカでは砂漠なのでそもそも水自体が少ないです。
なので、海水淡水化技術は絶対に来ると考えました。
(編集者注)東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、サウジアラビア王国のラービグ3海水淡水化プラント向けに、逆浸透(RO)膜を受注しました。ラービグ3海水淡水化プラントは、60万m3/日の造水量を誇り、RO膜法としてはサウジアラビア王国で最大であり、世界でも上位に入る大規模プラントです。
参考:東レの逆浸透(RO)膜がサウジアラビア王国の海水淡水化プラント向けに受注 2022.05.10
ただ、そのときはアナリストだったので自由に売買ができず、レポートを書いて終わりました。
その後、アナリストをやめて晴れて自由に売買できる状況にはなったのですが、東レの株価が上下したり、コロナ禍では需要が減ってしまったりで、なかなか買いに向かえなかった。
それから単元株式数が1,000株から100株に変更になって買いやすくなったりもあり、2021年から2022年ごろにようやく買えました。
ーーコロナ禍で東レの需要が減ったのはなぜでしょうか。
炭素繊維、カーボンファイバーは飛行機に使われるんですが、東レのカーボンファイバーはボーイング787に採用されてました。しかしコロナ禍で航空機需要が減ってしまい、東レはコロナ禍では苦戦していました。
参考:ボーイングはなぜ東レと炭素繊維の独占供給契約を結んだのか――デルタモデルで検証する
ーー日本国内もインフレ率が上昇し、企業の業績にも今後影響が出ると予想されますが、東レについてはどのように考えていますか。
東レはほかの企業に比べると影響は小さいと考えています。それは東レがBtoB事業であるためです。
インフレ禍では適切に価格転嫁ができる企業が勝つマーケットだと考えていて、一番価格転嫁しにくい相手が一般消費者です。
東レはボーイング社や海水淡水化プラントを手がける企業などBtoBの取引が多く、原材料の価格転嫁をやりやすくtoCの企業に比べてインフレの影響は小さいと考えています。
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インタビューの続きはこちら。
おせちーず氏の経歴やこれまでの投資の考え方などのロングインタビューはこちら。
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