botterのよしそ氏に、botの運用手法やbotをはじめた経緯などについて伺いました。
よしそ氏 プロフィール
2017年から仮想通貨に参入。Deep Learningを始めとした機械学習モデルを活用して価格変動を予測し、低リスク高リターンな運用を行っているBotter。仮想通貨・株・為替と幅広く手掛ける。2021年には1万ドルを原資に5%以上のドローダウンを出さずに8ヵ月で1,000倍のリターンを上げる。
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取材実施日
2023年9月29日
botの運用により8ヶ月で1万ドルを1,000倍に
ーーまずはご経歴について教えてください。
大学は経済系で、3年生で起業に興味を持ち、並行してエンジニアリングの学習も始めました。卒業後はエンジニアとして就職し、スタートアップでCTOを務めたり、米国で証券会社の設立に携わるなどしていました。
2021年の後半からは専業トレーダーとして活動しています。
ーーbotの運用を始めたのはいつからでしょうか。
2017年から暗号資産で始めたのが最初で、少額ですが数十倍のリターンが出ました。2019年以降はボラティリティが小さく機会も減ったため、距離を置いていましたね。
2021年の頭にマーケットが活況になったことで再び参戦し、8ヶ月で1万ドルを1,000倍にしました。
ーー2021年はボラティリティが大きく環境が良かったとはいえ、一度離れた状態から8ヶ月で1,000倍のリターンというのは驚きです。
2017年頃に利用していたモデルを基盤として再利用し、再学習させる形で再起動したのが大きいと思います。
ーー暗号資産以外もトレードされていましたか。
為替も戦略の研究やモデルの開発も行っていましたね。米国株もある程度は触っていましたが、暗号資産ほど集中して運用していたわけではありません。
ーー現在の取引は暗号資産が主でしょうか。
はい、収益の約90%が暗号資産の取引です。
最近では株式関連のモデルの開発も始め、そこでの収益も少しずつ出始めています。
ーー2021年には100万円の元手が1,000倍になったとのことですが、その時はどういった心境でしたか。
経済的にある程度自由になるので、やりたかったデータのリサーチなどそれまで以上に多くの研究が手がけられるようになったのは喜ばしいことではあります。ただ、日々の生活スタイルが大きく変わることはなく、全体としての生活に大きな変化はありませんね。
一回の取引あたりの確率、期待値は低いけれども取引回数を積み上げ、利益と高いシャープレシオを実現する
ーーbotの中でもどういった手法で取引しているか教えてください。
各種データを分析し、統計的な価格変動パターンを発見してbotで取引し利益を出すという手法です。
具体的には、価格、ボリューム、OIなどを分析し、パターンを抽出します。その上で、これらのデータを機械学習のモデルに学習させ、アセットの将来価格がどれほど上昇または下落するかの期待値を計算します。そして、その期待値に従ってbotが取引を実施する、という方法です。
裁量トレーダーの方々は一度のトレードに重みを置いて取引されていると思います。私の場合は一回の取引あたりの確率、期待値は低いけれどもbotで取引回数を積み上げ、利益と高いシャープレシオを実現する、というやり方です。
また、多くのトレーダーやbotterが期待収益率や利益最大化を重視してモデリングするのに対し、私はリスクをプロファイリングしつつ、リスクとドローダウンを低く抑え、一定のリターンを持つモデルを開発して取引します。
低リスクでドローダウンが小さい戦略が好みでそういうモデルを作る様にしていますね。
ーー各取引でのリターンが小さくても、botを用いた取引を大量に行うことでトータルでは大きなリターンを実現できるということでしょうか。
その通りです。
仮に各取引の勝率が約51%だとしても、1,000回繰り返せば大数の法則でほぼ確実に収支はプラスに転じる、そして利益も大きいというのが私のアプローチです。
ーー51%というのは例えだと思いますが、実際にはどれほどでしょうか。
各取引あたりの勝率については計算していませんが、日次では60%程度、週次では80%超、月次だと2023年は勝率100%です。
2021年のようなバブル期では、日次の勝率は85%〜90%だったかと記憶しています。
ロバストにモデルを学習させ、パラメータのズレもあらかじめ計算に織り込んでいれば、期待値として安定したものが出力されるはず
ーーモデルの戦略は日々学習、変更されていくのでしょうか。
いいえ、固定的なパターンが多いですね。日々変わっていくとしたらそれはモデルが安定していない、ロバスト(堅牢)じゃないということを意味していると思います。
ロバストにモデルを学習させ、パラメータのズレもあらかじめ計算に織り込んでいれば、期待値として安定したものが出力されるはずなんですね。
手動でパラメータを頻繁に変えるというのは、期待値が適切に計算に取り入れられていない、トレード時の閾値がズレるためだと私は解釈しています。適切にモデルを学習させられているなら、そのような都度の手動の対応は必要ないはずです。
ただ、当然、相場の環境が変わり、使用しているアルファが機能しなくなる、あるいは市場が大きくシフトするなどの場合はモデルの学習やデータ分析を再度行います。
そういったイレギュラーなスポットでの対応を除けば、基本的には同じモデルをずっと使い続けることが多いです。
ーー複数のモデルを同時に稼働させているのでしょうか、それとも一つだけでしょうか。
いくつかのモデルを平行して稼働させています。
ただし、メインで利益を生むモデルは一つか二つで、それが主軸となっています。
平均するとリサーチが6割、新しいデータの探索やその他の作業が4割
ーーよしそさんの作業はモデルを作る、作ったモデルを確認する、調整する、でしょうか。
はい、その認識で合っています。
ーーその中でもどのような作業に最も時間を割いていますか。
新しいモデル開発のためのリサーチです。
新しい論文を読む、その論文の内容を実装して再現してみる、新しいデータで使えるものがないか探す、それを評価してみる、ということをずっとやっていますね。
時期によって変動しますが平均するとリサーチが6割、新しいデータの探索やその他の作業が残りの4割だと思います。
ーー今の取引手法は以前の会社員としての仕事の内容も関係していますか。
はい、以前に働いていた金融系の会社ではモデリングを行っていたので、基本的なマーケットやモデリングについての知識は共通する概念として活用しています。
一方、暗号資産市場は独自のパターンを持ちマーケット特有のデータもあるので、そのあたりは金融系の知識とミックスしていますね。
ディープラーニングと金融を掛け合わせた分野の実践でbotの開発にたどり着く
ーー現在の運用手法はbotの運用を始めた当初からのものでしょうか。
最初にbotを開発したのは2017年ですが、当初は移動平均から離れた銘柄を購入するという非常にシンプルな手法で、そのbotでも一定の利益は出ていました。
その後、機械学習の要素を取り入れるなど、徐々に複雑化していきました。
ーー分岐点となるような手法の開発があれば教えてください。
ディープラーニングモデルの導入ですね。
元々、bot以前にディープラーニングの技術が好きで継続的にディープラーニングと金融を掛け合わせた分野でリサーチを行ってきました。
それでこの技術を暗号資産のマーケットに適用したところ、大きなパフォーマンスが確認でき、いま振り返れば大きな転換点になっています。
ーーbotの運用を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
元々、AIや機械学習に強い興味があり、これを何らかの形で実践的に適用してみたいと考え、それでマーケットの予測を選びました。
ーーなぜマーケットの予測を選んだのでしょうか。
難しい問題に挑戦するのが好きで、それで始めたのが理由ですね。
常に環境が変化し続けますし、50%以上の勝率を出すのも簡単ではなく、マーケットの予測というのはおそらく世界で最も難しい問題の一つだと思うので。
botの開発を始めて最初の1年間は目に見える成果に繋がらず悩んだ
ーー取引における印象的な成功はありますか。
成功については、特に印象的なものはないですね。
モデリングしている中でバックテスト上で得られた期待値がフォワードで、ライブで再現しているのを眺めているだけなので、この取引で大きく利益が出た、というのはあまり印象にありません。
暗号資産の大きめのイベントではどれも大きめの利益を出す結果とはなっていますが、その中でも印象に残っているイベントというものも特にはありません。
ーー特に結果が改善されたモデルはありますか。
2021年のバブル期から使っているモデルですね。このモデルを開発してからは以降の運用はこのモデルを擦っているだけで大きな改善はしていないほどです。
それ以前だと、botの運用初期にディープラーニングを組み込んで成果が出たときは嬉しくて印象に残っています。
私が本格的に勉強を始めたのは2015年ごろですが、開始から約1年間は目に見える成果に繋がらず悩んでいました。リサーチしてモデルを作って、作っては成果が出ない、というのをずっと繰り返していましたね。
ーーそのような状況からどのようにして脱け出したのでしょうか。
最終的にはとある機械学習に関する論文から参照した戦略が大きく当たりパフォーマンスが改善されました。
それまでの1年間はずっと成果が出なかったのが報われて嬉しかったですね。GPUもクラウドで借りていて、研究に使ったクラウド代、GPU代で年次100万円のマイナス、という状況だったので。
ーー1年間成果が出ないというのは苦しいですね。
はい、厳しい時期ではあったのですが、この時期に学んだことは多く、それ自体が楽しい時間でもありました。
かけた時間も、たとえトレードで直接的な回収ができなくても、エンジニアリングや技術力の向上という点でいずれは必ず回収できると見込んでいたので。
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全3回のよしそ氏のインタビュー、2記事目に続きます。
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