Web5のプロダクト開発に取り組みteatwo氏に、Nostrに注目している理由や直近のイーサリアム、NFTに対する見解などについて伺いました。
インタビュー・編集・執筆:内田 誠也
teatwo氏 プロフィール
フリーランスエンジニア。2018年からNFT→DeFi→Bitcoinと、地表から一つ一つ降ってラビットホールの底に辿り着く。NFT/DeFi/取引所の開発に携わり、今はLightningNetworkやSSI(SelfSovereignIdentity)に関心を持っている。ビットコイナー反省会のジパング杯の出演はこちら。
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Lightning Networkで生じているコンフリクト解消の試みの場になっているNostr
ーー「Nostrは昨年末に某ジパング杯で語った『LNがWeb統合されマネーのインターネットプロトコルとしてのビットコインが本気出す』の具体行動のショーケースと見做せばOK」について教えてください。
Nostrを例に出しているのは、Lightning Networkのアプリのショーケースになっているからです。
資産として、インターネットで純粋なマネーとしてのビットコインが存在していますが、まだアプリと溝があります。その溝が埋まることによっていま私たちが日常利用しているWeb2サービスに組み込まれ、活用されていく道筋がついていくと考えています。
Nostrは正にそのショーケースとなっています。
現状だと、通常のアプリケーションにLNを組み込むという視点では、UXの面でも、デベロッパーエクスペリエンスの面でも、コンフリクトがあります。
その問題を滑らかにすることが課題となっていて、Nostrはその試みの場になっているんです。
同じようなことが、10年前にもスマートフォンでありました。
AppleがiPhoneを発売したとき、Webでリッチなアプリケーションを作る際のスタンダードであったFlashをやめて、代わりにHTML5を全面的にプッシュしました。
それを進めるにあたってAppleが組み込みのお手本を見せ、その後、多くのデベロッパーたちがそれを見て、自分たちのアプリを開発しました。
それと似たようなことが現在のライトニングネットワークでも必要であり、Nostrでも起こり始めているんじゃないかなと考えています。
ツイートの主旨はそういうことです。
参考:AppleがiPad/iPhoneでも見られるHTML5ショーケースを公開
分散SNSが取り組んでいるのはアイデンティティ方面での言論の自由
ーー分散SNSは今までにも存在していましたが、Nostrに特に興味があるのはLNが使われていることが理由でしょうか。
ビットコインの本質的な価値とは何かという議題がありますが、ビットコインは地域中立であり、ピュアなインターネットマネーと考えています。
そのため、法定通貨で裏付けされたトークンと異なり、特定の国家や地域に縛られず、活用することができるというのが特徴なのですが、この考え方はマネーだけじゃないと考えています。
「アセット」と捉えれば、金融商品という広げ方もできますし、アイデンティティ、個人情報資産というような捉え方もできます。
暗号資産の本質的な価値はインターネットにネイティブな資産レイヤーを作り、ひとりひとりがインターネット上での資産を誰の干渉もなく保持できるようにすることだと考えています。
分散SNSが取り組んでいるのは、アイデンティティ方面での言論の自由だと考えています。
そちらの意味でも関心はあります。
トランプ氏が Twitterを垢BANされたのがわかりやすい例です。
Facebookのケンブリッジ・アナリティカ事件でも、私たち自身の資産がFacebookに利用されていました。
そういったSNSでの検閲や言論の統制のような話です。
参考:世界最大級のプライバシー事件「ケンブリッジ・アナリティカ問題」とは何だったのか
ーー分散SNSから話は変わりますが、暗号資産の本質的な価値としては地域中立でピュアなインターネットマネーであることと考えているということですね。
そうです。
マネーをもう少し広げて、地域中立でピュアなインターネットのアセットというふうに枠を広げて捉えています。
より本質的に言うと、暗号資産というよりクリプトグラフィ、暗号の部分にフォーカスした形で、クリプトグラフィをつかって私たちがすべきことは何なんだろうと考えた時に、金融資産や個人情報資産になるのではと考えています。
同床異夢が顕著になりはじめているイーサリアム
ーーイーサリアムについてどのように考えていますか。
同床異夢が顕著になってきていて、舵取りが難しそうだと感じています。
イーサリアムのコアチームはサイファーパンクのような、私が言っているようなビットコインの好きな部分と同じような価値観を持つ人達で、パブリックグッズを打ち出しています。
一方で2021年のバブルから流れてきている新規の多数派層はイーサリアムをビジネスの機会として捉えています。
ビジネスの機会として捉えれば、当然ながら様々な法規制に対応しなければならないし、消費者保護を考慮する必要があります。
つまり現実世界とのすり合わせがメインになってきていて、それによりコアチームとの方向性がどんどん分かれている感覚があります。
例えば、イーサリアムで進行中のステルスアドレスという概念があります。
いま、イーサリアムのアカウントは、SNSのアカウントと同様に、誰のアカウントなのかが強調されるような仕組みになっています。
それにより、ポートフォリオサービスなどを活用し自分の取引履歴や現在の資産を示すことができ、別のSNSに活用することも可能です。
ステルスアドレスは、このアカウントを分からなくするような機能です。
取引の度にアドレスを生成し、毎回別のアドレスで取引するため、一つのアドレスにつき一回の取引しか記録されません。
これを行うとプライバシー保護が強くなりますが、ビジネスとしては消費者保護やアンチマネーロンダリングへの対応が難しくなり、イーサリアムを活用しにくくなります。
このように、コアチームと新規参入組では求めているものが異なり、バッティングするケースが増えていると考えています。
NFTはプロジェクトを突き詰めるほどブロックチェーンは不要という結論に行き着くケースが多い
ーーDeFiとNFTについての考えを教えてください。
DeFiは、今までのようなディセントライズ領域と、法規制に準拠したトラスト領域に分かれていくのではと考えています。
NFTはビジネス活用を考慮すると、ブロックチェーンからどんどん外れていくのではないでしょうか。
GameFiは、ビジネス特化のチェーンを進める推進力になっていくと思います。
メタバースはこれらのようなものがベースになって、それを応用するものと考えています。
ーー「NFTのビジネス活用を考えるとブロックチェーンから外れていく」とはどういうことでしょうか。
コモディティではなくノンファンジブルなので、ブロックチェーンで実現しているトラストレス性が必要ないと考えています。
Mintも、著作権や消費者保護などが必要になると考えられますし、一度発行されたNFTも、ビジネス価値を考慮すると、運営者がいつでも消去できるようにする必要が出てくるでしょう。
著作権侵害や児童ポルノのような画像がNFTとしてアップされた場合、運営はそれを放置できないはずです。
そうすると、ブロックチェーンで実現しているトラストレス性がどこで使われるかというと、NFTに関しては取引が執行される時のルールの自動執行になります。
それであれば、ブロックチェーンでなくても、もっと使いやすいものが作れるのではないでしょうか。特にいま、NFTの中でも取引機能をオフにしたものが出てきています。
SBT(ソウルバンドトーク)と呼ばれるようなもので、これは、今言ったようなトラストレス性が唯一活きるかもしれないという取引ルールの自動執行すら必要なくなってしまいます。
IPFSにトークンを置けばいいし、DIDで発行すればいいようなものだと考えています。
プロジェクトを突き詰めていけばいくほど、ブロックチェーンは不要という結論に行き着くと感じます。
必要なのは金融商品性を持った物だけに限定されていくのではと見ています。
フェイスブックがメタに変わった際に、メタバースのWeb3活用をマーク・ザッカーバーグが打ち出しました。
メタバース領域でやっていたOculusの方々、例えばOculusの元CTOのジョン・カーマック氏は、当時から「メタバースを安全な空間にするためにブロックチェーンは相性が悪い」ということを言っていました。
児童ポルノ、知的財産などに該当するものを取り締まらなければなりません。
参考:「抽象的なことより具体的な製品の改善」 Oculus顧問CTOが語ったメタバース実現の課題
ビットコインは、コモディティなので、ビットコイン自体は水や小麦と同じです。
テロリストがビットコインを利用している場合には問題になりますが、その場合はビットコインではなくテロリストにフォーカスがあたります。ビットコイン自体を取り締まる必要はありません。
包丁を使った殺人が起こったからといって、包丁職人が罪に問われないのと同じです。
しかし、NFTはアセットそのものが問題になります。
これは解決がむずかしい、非常に大きな問題であると考えています。
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