「Lightning Networkは決済や国際送金で実用が進んでいる」Web5エンジニア・teatwo氏 1/3

Web5のプロダクト開発に取り組むteatwo氏に、Lightning Networkの最新の活用事例などについて伺いました。

インタビュー・編集・執筆:内田 誠也

teatwo氏 プロフィール

フリーランスエンジニア。2018年からNFT→DeFi→Bitcoinと、地表から一つ一つ降ってラビットホールの底に辿り着く。NFT/DeFi/取引所の開発に携わり、今はLightningNetworkやSSI(SelfSovereignIdentity)に関心を持っている。ビットコイナー反省会のジパング杯の出演はこちら

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NFTで興味を持ち、DeFiサマーで熱中し、DeFiを突き詰めてビットコインに行き着く

ーーご経歴について教えてください。

大学卒業後、SIerに就職し、主にCRM/コールセンターの領域で航空券やコンサートの予約販売システムの開発に従事していました。

いろんなプロジェクトに携わる中でコンシューマー分野に興味を持ち、受託開発ではなくプロダクトドリブンでの開発に携わりたいと思い、ソーシャルゲームの世界に移りました。

その後、6年前にフリーランスになり、現在に至ります。

暗号資産については2018年から業界に身を置き、もともとはNFTに興味を持って入り、それからDeFi、ビットコインと関心が移りました。

ーー最初にNFTに興味を持った理由は何でしょうか。

「インターネット上で唯一性を持ったグローバルなステートをつくれるようになった」

「ビットコインがお金であるのに対して、NFTは様々なデジタルアイテムを作ることができる」

このあたりがきっかけです。

ーーNFTからDeFiやビットコインへとどのように興味が移っていったのでしょうか。

DeFiは2020年のDeFiサマーあたりから興味を持ち始めました。

私はWeb系のエンジニアで、クリプトに触れるまでは金融や経済について全く造詣がなかった。しかし、クリプトに入ると金融や経済の知識がないとプロジェクトについて正確に理解、評価できないことを痛感しました。

かつ、2020年にはコロナでパンデミックも発生し、社会の仕組みや経済について目を向けるきっかけになりました。

そういったこともあり、金融や経済について1から勉強していく中で、Uniswapのような分散型の取引所、Compoundのようなレンディングなど、DeFiが実際に実現しつつあるということ、分散型金融の仕組みやおもしろさが理解できるようになりました。

そこにDeFiサマーが起こり、熱中し、さらにDeFiを突き詰めていく中で、最終的にはビットコインに行き着きました。

本当に核になるもの、最後に守るべき資産はビットコインである

ーーDeFiを突き詰めてビットコインに行き着いた理由を教えてください。

ビジネスを考えればDeFiには少し無理があると思ったためです。商売として企業が行うのであれば分散することは難しいのではないでしょうか。

金融というのは、マーケット参加者の時間選好に応じてとられたリスクやリスクプレミアムの「交換」だと考えていますが、インターネット金融を実現する上で最も重要なことは、その中心となる「お金」が地域に中立で、インターネットネイティブな新しいアセットが実現されているということだと思いました。

そしてその「お金」「アセット」というのはビットコインが最も適していて核になる、これさえあればDeFiもできると考え、DeFiからビットコインに移りました。

ーーDeFiに取り組んでからビットコインに移るまでについて詳しく教えてください。

DeFiにハマった2021年はバブルに熱中していて、エアドロップも積極的に取りに行っていました。DeFiのコンポーザビリティ、マネーレゴなどと言いますが、ガチガチに組んで運用していました。

その中でいろいろなからくりがわかってきて、現状と将来についてのギャップが見えてきたちょうどそのタイミングで「ビットコインスタンダード」が出版されました。

「ビットコインスタンダード」の内容は私にとってインパクトが大きく、DeFiとビットコインの両方を見るようになりました。

参考:ビットコイン・スタンダード:お金が変わると世界が変わる

それが2021年後半ですが、2022年初頭にはウクライナ戦争も起こり地政学リスクが現実に考えられるようになってきて、本当に核になるもの、最後に守るべき資産はビットコインであると考えるようになりました。

ーービットコインスタンダードの中で特に興味を持った部分はどこでしょうか。

ハードマネーの概念です。私は初めて知りました。

これまでの歴史で社会や経済システムの変遷がありましたが、それを踏まえてもハードマネーの考え方というのは、これからの道しるべになるものであると考えています。

(編集者注)生産が困難で生産コストも高い貨幣はハードマネー(硬貨),生産が容易で生産コストも安い貨幣はイージーマネー(軟貨)と呼ばれる。

出典:S・アモウズ. ビットコイン・スタンダード

(編集者注)ハードマネーであれば,ストックに対するフローが少ないため,増産による供給量の増加は価格にほとんど影響しない。一方,財のストック・フロー比率が低い,すなわち,イージーマネーの場合,供給量の増加は価格下落に直結する。結果,貨幣価値が下がり,貨幣保有者の資産も減少,財は期間の市場性を失う。

出典:S・アモウズ. ビットコイン・スタンダード

それに付随して登場する時間選好という概念にも影響を受けました。

将来得られるリターンに対して割引されてでも現在のリターンを優先するのは「時間選好が高い」、反対に将来のリターンを優先するのは「時間選好が低い」という考え方です。

これもライフプランを考える上でも非常に示唆をもらいました。

Lightning Networkとウェブアプリケーションの断絶を滑らかにするためのプロジェクトを模索

ーー今までDeFiやビットコインなどに様々な方面で関わっていらっしゃいますが、現在はどのような取り組みをされているのでしょうか。

フリーランスのエンジニアとしてクリプト系のプロジェクトに参加させていただきつつ、LNとDIDの二つを合わせたWeb5と呼ばれている領域に取り組んでいます。

リサーチに近いフェーズでエントリーポイントを探しており、徐々にプロダクトを起こしていこうと考えています。

コンシューマーのエンドユーザーが使うようなプロジェクトではなく、開発者がそのプロダクトに使うためのツール、ライブラリの領域でエントリーの構想を練っているところです。

決済や国際送金で実用が進むLightning Network

ーービットコインのLayer2(以下、L2と記載)が盛り上がってきていますが、盛り上がっているのにまだ認知されていないテーマなどがあれば教えてください。

ビットコインのL2が盛り上がってきているというのは、実用が始まってきたというのが大きいと思います。特にライトニングネットワークの実地適用がいろいろなところで始まっています。

目に見えやすいコンシューマー領域は特にブロック社とストライク社の二社が強いのですが、ストライクは実店舗で会計するときに使うPOSレジにLNを組み込むということを米国のシェアナンバーワン企業と組んで開発中です。

参考:POS端末展開のClover「ビットコインのLightning決済」を試験導入|StrikeとFiservが提携

国際送金の領域も進んでいます。

国境をまたいだ送金部分だけLNを使い、各提携銀行が変換しエンドユーザーには法定通貨が着金する、というプロジェクトも始まっています。

米国とナイジェリアを例にとってみましょう。

1. 米国のユーザーAはドルで指定し、アフリカのユーザーBを送金対象にします。

2. ストライクが米国でユーザーAのドルをビットコインに変換し、LNにコンバージョン、そして米国のチャネルからナイジェリアのチャネルにビットコインを送金します。

3. LNで着金したビットコインは現地で提携している銀行がナイジェリアの法定通貨に交換し、ユーザーBの口座に振り込みます。

ユーザーは暗号資産を意識せず法定通貨を操作するだけ、時間はわずか数秒から数分で手数料も安い、その上で各国ごとの法規制に準拠しているということで、大変注目されています。

参考:Send GloballyがUKとヨーロッパでも利用可能に

ーーストライクは自社だけで完結せず、各国の銀行と提携して取り組んでいるのですね。

そうです、各国ごとにカストディアンがいて、ビットコインと銀行の間を交換所のような役割を担う事業者が介在しています。

例えば、日本もビットコインと円を交換するためには交換業の免許が必要ですよね。

ストライクがナイジェリア、フィリピンなど各国の交換業免許を取得している取引所と提携して、各国でのビットコインと法定通貨の交換業務はその取引所が行っている、というイメージです。

暗号資産の操作が不要ということでUXも素晴らしいですし、LNを使うことで格安で送金することが可能です。今後の普及が期待できます。

ビットコインのL2はそれぞれが実現したいフィーチャーに合わせてユニークなアーキテクチャを取っている点が特徴

ーーteatwoさんはエンジニアですが、技術的におもしろいと感じていることはありますか。

ビットコインのL2は、L1チェーンのコピーじゃないんですね。

イーサリアムのL2はL1と同じことをL2に移し、L1のトラフィックを下げ手数料を安くするということをやっている。それに対してビットコインのL2は、それぞれが求めているフィーチャーに合わせて独自のアーキテクチャを取っています。

例えばLNは全く純粋なピアツーピアです。ブロックがチェーンしていないんです。

私のノードは私自身のトランザクション記録しか保有しておらず、他のユーザーのトランザクションはわかりません。他のユーザーもみんなそうで、自分のトランザクションしかわからない。

それがピアツーピアで繋がっているという非常にピュアな世界です。

ほかにはWeb5で主要なコンポーネントとしてピックされているIONというアイデンティティネットワークがあります。ビットコインのL1に対してアイデンティティの検証に用いる情報だけを記録するプロジェクトですが、ブロックチェーンとは全く関係ないアーキテクチャを取っています。

参考:Microsoft:ビットコイン基盤の分散型IDネットワーク「ION」を正式稼働

RGBは、送金はLNプロトコルを活用して、トラストレスなルール執行にフォーカスしたアカウントレスなスマートコントラクトを作ろうとしています。

こういった、それぞれが実現したいフィーチャーに合わせてユニークなアーキテクチャを取っているというところに、ビットコインのL2の特徴が出ていて面白いなと感じています。

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teatwo氏のインタビュー、2記事目では「代行業者が介在することで20年後にはすべての企業がLNの決済を使用している」「ビットコインとICPとの統合により、イーサリアムで展開されているようなプロダクト展開も可能になる」などについて伺います。

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