0.75%利上げ、米経済マイナス0.9%成長、9月以降の利上げペースは今後の経済データ次第

1.7月FOMCで0.75%の利上げを発表

 7月27日に行われたFOMCでは0.75%の利上げが発表され、政策金利(FFレート)は2.25~2.50%となりました。一時期は1.0%の大幅利上げを警戒する動きもありましたが、概ね市場の予測通りとなったことで、株式市場にとって一旦は安心材料となりました。

 FOMC後の記者会見で、FRBパウエル議長が利上げペース減速の可能性に触れたことが市場参加者に好感され、27日のS&P500指数は前日比で2.62%の上昇となりました。

(出典)Tradingview.com

【解説】

 中央銀行は政策金利やマネーサプライの調整を通じ、完全雇用と物価の安定を目指して金融政策の舵取りを行っています。昨今のように、(供給サイドの問題もありますが)経済が加熱して高インフレが起きている時は、金利を上げて市場の出回るお金の量を減らし、加熱した消費を冷やして価格の上昇圧力を抑えます。一方で、景気が低迷している時には、低金利でお金を借りやすく、市場に出回るお金の量を増やし、企業が新たな事業や生産設備への投資を行いやすい経済環境を作ることで雇用増加を図ります。

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2.FRBは完全雇用達成を目指しつつ、インフレ率2%の物価安定目標達成にコミットする

 FOMC後のFRBの公式プレスリリースでは、インフレ率の高止まりによって経済が軟調になりつつあるとしながらも、好調な労働市場を背景に『FRBは完全雇用と安定的なインフレ率2%両方の達成に向けて取り組む』と述べられており、『FRBはインフレ率2%の物価安定目標達成に強くコミットする』という強い宣言で締め括られています。

 また、現在進行している金融引き締め・利上げは適切に行われており、バランスシート縮小についても継続するとして、これまでのインフレ退治への取り組みに対する自信がうかがえます。

(参照)The Federal Reserve System

3.9月以降の利上げペースは今後の経済データ次第である

 7/27FOMC開催後に行われた、FRBパウエル議長による定例記者会見での冒頭発表より、今後の金融引き締めペースに関するヒントが伺えますので紹介します。

【発言】

 “Over coming month, we will be lookng for compelling evidence that inflation is moving down consistent with inflation returning to 2%. We anticipate that ongoing increases in the target range for the federal funds rate will be appropriate. The pace of those increases will continue to depend on the incoming data and evolving outlook for the economy.”

【翻訳】

 ”今後数ヶ月間、我々はインフレ率が2%に向けて着実に下がってくるという説得力ある証拠(データ)を模索していくことになるだろう。我々はこれまで進行してきた利上げは適切な水準であると予測している。(しかし)今後の利上げのペースは、これから先に発表される経済データや将来見通しに左右され続けるだろう。

 9月以降の利上げペースの減速については直接明言されませんでしたが、利上げの水準は適切であり、(やがて)着実にインフレは収束していくという予測をしています。一方で、利上げペースの決定・判断は今後の経済データ次第であるという趣旨の発言でした。

4.動向を注視すべき代表的な経済データ

2022年度・第2四半期GDP成長率

 7月28日に米GDP成長率の速報値が発表されました。結果は”マイナス0.9%”となり、第1四半期に続いて2四半期連続でマイナスとなりました。一般的には、GDP成長率が2四半期連続でマイナス成長でリセッション入りの可能性が高まると言われていますが、実際には全米経済研究所のエコノミスト達が様々な経済データを用いて分析し、さらに米政府の見解も合わせて総合的に判断されるため一概には言えません。しかしながら経済活動が半年もの間、停滞し縮小を続けていることには変わりなく、リセッション判定に当たって、一応は考慮される指標と思われます。

【解説】

 米国のGDP発表は、速報値(Advance Estimate)→改定値(Second Estimate)→確報値(Third Estimate)と、速報値の発表から約1ヶ月毎に2度修正されます。(市場参加者には速報値が最も重視されます。)

(参照)U.S Department of Commerce Bureau of Economic Analysis / 米国商務省経済分析局

消費者物価指数 / CPI (Consumer Price Index)

 CPIは、消費者が物やサービスを購入する際の物価を測る指標として最も重視されます。前回は6月CPIが+9.1%となり、40数年ぶりの高インフレを記録しました。今後、FRBが自信を持って利上げペースを緩めるためには、インフレの鈍化がトレンド化する必要があり、まずはこの先3ヶ月間(7~9月)連続で下落しつつ、11月のFOMCを迎えることが条件となると思われます。尚、次回は8月10日に7月CPIが発表される予定です。

(参照)U.S Bureau of Labor Statistics/アメリカ合衆国労働統計局

雇用統計

 昨今の高いインフレ率の影響で経済活動が軟調になりつつあるとしながらも、過去50年をみても失業率はかなりの低水準にあります。しかしながら、Googleやテスラなどの巨大メガテック企業でも業績の低迷や先行きの不透明さが影響し、新規の採用を抑制・凍結する動きも出てきています。今度の雇用情勢は少なくとも緩やかに悪化していく可能性があり、高インフレよりも失業者増の方が経済に与えるダメージが大きいと判断されれば、やがて利上げペース鈍化の方向に圧力がかかることになります。次回の雇用統計発表は8月5日の予定です。

(参照)U.S Bureau of Labor Statistics/アメリカ合衆国労働統計局

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