ビットコインは裏付けも使い道もないという批判は妥当か?

前提

この記事は、ビットコイナー反省会の動画を書き起こし・要約した記事です。掲載はビットコイナー反省会様に許可をいただいております。書き起こしについて快くご許可をいただきました運営様にこの場を借りて改めてお礼申し上げます。

ビットコイナー反省会とは

ビットコインを中心に、仮想通貨、ブロックチェーン関係の専門的なトピックを黎明期から多分日本では最も深く議論しているチャンネルです。 日本国内の黎明期からビットコイン、ブロックチェーン業界の豪華ゲストを呼びつつ、楽しく、真面目に話しています。

ホスト

Koji Higashi。ビットコインのポテンシャルに魅了され、2014年からフルタイムで関連事業に取り組む。日本のビットコイン業界の草分け的存在の一人。ビットコイン、ブロックチェーン業界においてプロダクトマネジャー、コンテンツクリエイター、マーケターなど多角的に活動しており、国内外で認知されている。Twitterアカウント: https://twitter.com/Coin_and_Peace

参照動画

米FRBパウエル議長、ビットコインに厳しい見解示す(2021/03/22)

アメリカの連邦銀行のパウエル議長がビットコインは価格変動が激しくて裏付けもユースケースもないただの投機的アセットでゴールドの代替みたいなものであるみたいな、そういう発言がありました。

果たしてその発言が妥当なのか。このニュースは本当に重要なのか、の話をしようと思っています。

参照:米FRBパウエル議長、ビットコインに厳しい見解示す(2021/03/23)

この発言が直接的な原因かどうかわからないですが、ビットコインの価格もここ2日ほどで10%くらい落ちています。

自分は直接的な関係はないと思ってるんですけど、今、市場にも若干影響を与えてる可能性はあるみたいな話です。

今回よくあるビットコインへの批判の代表例ということで、サクッと話をしようと思います。

パウエル議長の発言はポジショントーク

結論から言うと、この発言はパウエル議長の名前だから話題になってるだけで、今更今何か新しいことを言ったわけでもないですし、新規性、重要性もないポジショントークみたいなものだと自分は認識しています。

一部真相を含む部分は確かにあると思うんですけど、別にそんなに気にする必要もないです。

パウエル議長の発言をまとめるとこんな感じです。

ビットコインは価格変動が激しいのが問題の一つ。裏付けがない。使い道もない。そしてドルの代替にはならない。どちらかというとゴールドのような投機性の高いアセットでしかない。という比較的ネガティブ批判的な発言をしたということですね。

価格変動が激しいからビットコインは使い物にならないという批判はユースケース次第

まず1個目、価格変動ですね。よくある批判です。ビットコインは価格変動が激しくて日常の決済に使えないっていうようなやつですね。

自分は間違ってないと思います。少なくとも今の時点ではそうですし、特に日常の店舗決済とかで使うには税制とかも含めて問題が多すぎて、ユースケースではあまり機能してないですよね。

一方、ビットコインの価格変動の幅ていうのは年々減少傾向にあるという考察だったりもあります。

仮に価格変動が今と変わらなかったとしても、少なくともビットコインを今買っている保有者からすると、元々fiat通貨のドルや円などのインフレーションに対するヘッジとしてビットコインを買っている人が多い限りは、ビットコインの日常的な価格が変動したとしても、中長期で見たときに円などに対して価格がどんどん上がっていっている限りは、何の問題でもないんですよね。

少なくとも今の時点では、日常決済で使うために買ってるわけではないので。

なので、価格変動が激しいから使い物にならないって話はよく聞くんですけど、これは本当にユースケース次第だと思っています。

店舗決済とかでは今も日常的にビットコイン使える場所はないですし、まだまだそれは価格変動以外の要因とかもあって難しいっていうのは間違いないですよね。

ただ同時に法定通貨が価格が安定してるから、店舗決済とかいわゆる日常決済に向くしいいよねって話も実はこれ大部分が正しいとは自分は思ってないです。

例えば最近でもトルコのトルコリラが1日で17%下がったりみたいなこともあったり、むしろ法定通貨でも価格が安定している国の方が少ないぐらいで。

いわゆる発展途上国と呼ばれる国だったりとか、そういうところではよく法定通貨が価格が下落して崩壊したりてのはよくあること。

要は法定通貨だから価格が安定し安心して使え、決済に向いてるというわけではなくて、単純に法定通貨は政府が国民に使用を強制させるから決済に使われているだけな気がします。

あとは店舗決済とか価格変動が激しくて使えないという批判はまあわからなくはないんですけど。

大量発行とかの要因もあってだと思うんですけど、ビットコインの価格が上がってるっていうかどんどんfiat通貨の相対的な価格が落ちてるわけじゃないですか。毀損されてるわけですよね。

本来は中長期で価格がどんどん下がっている通貨を日常的に強制させて使わせてる、草コインを強制させて使わされてるみたいなていうのは、むしろそっちの方がおかしいような気も同時にしています。

別に法定通貨の価格が安定しているからこっちの方が優れているというわけでは必ずしもないですし、中長期で見たときに、インフレヘッジとして買われているビットコインみたいなものに対して、fiat通貨は下落しているのでタイムスパンをどこに置くかっていうのと、どっちの視点から見るかっていうことかなと。

中央機関に頼らない信頼の最小化や希少性の実現や送付、それら全体の仕組みが機能していることがビットコインの価値の裏付け

次、ビットコインは価値の裏付けがない、ですね。

これもめちゃくちゃよく言うことの一つで、パウエル議長ではなく一般の人でもこういうことを言う人多いです。

裏付けがないって言うんですけど、自分が聞きたいのはじゃあ裏づけは何ですかっていう話で。大抵の人は政府が認めてるからとか、政府が裏付けになってますよっていうようなことを言う人が多いですね。

厳密に話をすると何で円とかドルとかfiat通貨に価値があるのかって話は非常に実は深い話だと思っています。

お金の歴史をさかのぼると政府の存在が貨幣として選ばれることに必須ではないのと、法定通貨の仕組みもそれほど長い歴史があるわけではないので。

ビットコインは裏付けがないけど、例えばドルは裏付けがあるから安心で大丈夫で信頼できるっていう考え方をすること自体が自分はとよくわかんないんですよね。

ビットコインの裏づけが何かってので自分が考えているのは、デジタル情報で第三者だったり中央機関に頼らなくても信頼をできるだけ最小化した形で、デジタル上の希少性を保てる。

また、そのデジタル上の希少性が保たれているアセットを送りたいときに送りたい相手に送れる、そういう仕組みが機能しているっていうのがビットコインの価値の裏付けになってるんじゃないのかなと自分は思っています。

逆に言うとこの希少性を守る部分がうまくいかなかったり、送金したいときにうまく送金できなくなったりとか、要は手数料の仕組みとかが機能しなくなったりすることになったら確かに裏付けがないというか、仕組みとして破綻しているので信頼に足りるものではないなとは思います。

でも大部分の仮想通貨は実質的にはもう既にこうなってるんですけどね。

例えば供給量を変えられたりとか、信頼が発生して動いてるものであればfiatと基本的に変わらないのでfiatでいいじゃないかと。

別にわざわざビットコインのような仕組みを使って動かす必要がないというか、そもそも存在意義がない仮想通貨が大部分なので、ビットコイン以外の大部分の通貨にはこの批判は結構有効なんじゃないのかなと思います。

パウエル議長はそれをわかったうえでポジショントークしている

ちなみに、当然この話を連邦銀行のパウエル議長がわかってないはずないです。

彼個人の意見がどんなものであったとしても、ポジショントークしなくてはいけない立場にあるので。

逆に言うと、中央銀行なんて政治の権化みたいなもので、それもあってか彼の発言はただのポジトークだなと思わざるを得ないところが多いですね。

ビットコインの具体的なユースケース例は国際送金

最後、使い道がない、これもよく聞きます。

主に店舗で使えないとかっていうことだと思うんですよ。日常決済とかお店に行ったときにビットコインで何か買えますかとかっていうことで言ってる人が多いと思うんですけど。

使い道あるんですよね。少なくとも自分は日常的に使ってます。

例えば国際送金。海外のプロジェクト、関係企業と仕事をするときに、例えば海外の開発者に外注するときに支払い方法としてビットコインを使いますとか、そういうので自分はもう何年も使ってます。

銀行で国際送金しますっていうのはやる気が全くしないので、国境、特にまた間送金をするときはビットコインってのは既に機能してます。

ICOとかある種その一つで、国境とか関係なくいろんな国から簡単にお金を集められるよっていうことのユースケースていうのもあって、ICOがいいかどうかってのは全く別の話なんですけど。

こういう機能は普通に便利ですし使ってますよね。これユースケースですよね完全に。

だって銀行でやったら国によっては送れない国とかもありますし、時間かかったりお金がかかったりするんで。面倒くさいとかやり方わかんないとか、ビットコインであれば相手が日本にいようが海外にいようが関係ないんでそれは非常に大きなユースケースです。

ライトニングネットワークを使ったマイクロペイメントがインフレヘッジを超えたビットコインのユースケースになる

あとはマイクロペイメントですね。ライトニングネットワークとかここしばらく主にやってますけど、今はあんまり大きな市場にはなってなくて課題もまだ多いんですが。

ライトニングネットワークみたいにビットコインを使ったマイクロペイメントができるようになると、店舗決済だけじゃなく例えばIoT、機器同士のセンサーのデータを交換して、それをマイクロペイメントで1円とかそれ以下の金額で売買したりだったりとか、アプリケーションをまたいでリアルタイムでやり取りをするとき。個人情報とかまた別のものかもしれないですし。

APIのコール、例えば他のアプリケーションがデータをもらうときとか。逆に他のアプリケーションに何かをしてくださいとお願いするときとかにマイクロペイメントがあることで新しいデータの使用が生まれたりするんじゃないのかとか、そういう意見もあります。

マイクロペイメントだったりとかっていうのはもう既に一部機能し始めてますし、多分2、3年後くらいに、単純なインフレヘッジとかを超えたビットコインのユースケースとして出てくる仕様なのではと思ってます。

既に自分も比較的小さな金額なども全部ライトニングでやってるので、特に高速即時かつ低手数料のマイクロペイメントていうのはユースケースとして非常に強力ですし、これからそういうユースケースは増えていくと思います。

インフレヘッジは十分にビットコインのユースケースである

最後に、インフレヘッジですよね。

法定通貨、円、ドルとかの価格の下落であったり、価値の毀損に対しての対策として、もしくは自分を守る手段としてビットコインを買うっていうこと、これは自分は普通にユースケースだと思うんですよね。

例えばドルの価値、円の価値がやばいんじゃないかっていうときに、ゴールドを買ったり不動産を買ったりする人はいると思うんですけど、それに対しては安全資産を買ってるとかユースケースとして認められてるようなところがあると思うんです。

ただビットコインで同じことをやると、これは投機だと言われてるような気がしていてパウエルさん自身もビットコインはゴールドみたいなものって発言があったんですけど、だから自分で認めちゃってるというか。

もしインフレヘッジだったりとか安全資産として買うっていうのを一つのユースケースは重要だとして捉えるのであれば、今ビットコインにお金が移ってるっていうのもこれ立派な使い道だと思います。

ゴールドはそれは使い道として認めるけど、ビットコインは認めないってのは矛盾してるような気がします。

そもそもそのゴールドのインフレヘッジだったりとか何かあったときには有事のときの安全資産としての機能、側面、役割みたいなものを中央銀行がある意味一番わかっていて、中央銀行がゴールド買い入れているってのは結構有名な話です。

法定通貨の価値の裏付けとして、世界的に認められているゴールドというアセットを持っておこうとか、逆に自国の法定通貨の価値が落ちちゃったときに有事のときに国としてゴールドを持ってこうみたいなことでゴールドのユースケースとしてそういう使い方を中央銀行自身がしてると思うんですけど。

今同じ理由で中央銀行がビットコインを買ったりっていうのは自分は全然今後あり得ると思いますし、早ければ今年とかに一部の小さい国の中央銀行が全く同じ理由でビットコインを買い始める可能性はあると思っています。

もしそれが始まったら、中央銀行のパウエルさんがビットコインは使い道がないって言うんですけど、ただゴールドと似たようなものと自分で言ってしまっていて、デジタルゴールドとしてビットコインがどんどん認められて心も増しているので、そういう使い道で中央銀行がビットコインを買うっていうことはあり得るんじゃないのかなと思います。

まとめ

パウエル議長の発言は別にそんないきなり新しいことを言い始めたわけでもないですし、そもそも彼の立場を考えると彼自身が個人的にどう思ってるかは別としてそういう発言をするしかないわけじゃないですか。

間違ってもドルは大量発行によって価値が毀損されていて、そこから自分の資産を守るためにビットコインを買うべき、それがユースケースだ、使い道だなんて言うはずがなくてですね。

なのでその点でもポジショントークであって前から言ってることですし、変わらないし、まあ参考にする必要性もあまりないんじゃないのかなとは思いますね。

仮に彼の発言で短期的にビットコインの価格が落ちているとししたら、中長期的にはこれ何の意味もないというか、別に何か変わったわけではないので、それだけの話っていうことです。

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