Coin Newsの中の人に、botterの初心者がよく犯すミスなどについて伺いました。
Coin Newsの中の人 プロフィール
Coin Newsを運営。暗号資産を中心に取引。いわゆるプログラム取引も行う。
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取材実施日
2023年11月17日
なぜCoin Newsを運営しているのか
ーーまずは「Coin News DAO」の運営の背景について教えてください。
Web3領域ではメディアが分散しており、特化したサイトを作りたいと思ったのがまず一つ目の理由です。
また、最近は専門的な知識を書くことの価値が以前と比べて低くなってしまったことでそのような良質なコンテンツが減少傾向にあると感じており、Web3の力を使って解決したいと思ったのが二つ目の理由です。
ビットコインに関する深い洞察よりも草コインのバラマキのツイートが何千回もシェアされてしまうような、本当に欲しい情報や質の高い情報が埋もれてしまうのが現在のウェブの問題で、その問題をWeb3の力を使って解決できたらと思ってCoin Newsを始めました。
金利マーケットでは数百億円、数千億円を扱い、金額が大きいためミスが許されずシビアな世界だった
ーートレーダーとしてのご経歴について教えてください。
最初は株や為替を取引し、その後は金利マーケットでトレーダーとして働いていました。暗号資産は2013年にビットコインの取引から始めたのが最初ですね。
ーー金利マーケットでのトレードについて詳しく教えてください。
日本国債や米国債を中心に、固定金利と変動金利を交換する金利スワップというデリバティブ取引をよくトレードしていました。
例えば、日本国債を買うと半年ごとにクーポンが得られますが、そのクーポンが固定金利であれば、今のようなインフレ下ではキャッシュフローの価値が低くなってしまいます。
そのため、固定金利を支払う代わりに変動金利をもらう取引を行い、日本国債を買って金利が変動したときに生じる損益をヘッジします。
金利マーケットでは取り扱う金額が大きく、一回の取引で数十から数百億円、時には数千億円を扱い、一日に何回も取引して利益を出す、ということをやっていました。金額が大きいためミスが許されずシビアな世界でした。
ーー現在はどのような取引をされていますか。
為替や株などのシステムトレードに土地勘があるということもあり、為替や株式はよく取引しています。botもアービトラージだけでなく統計や機械学習を用いた取引も行っていますし、裁量取引や裁量取引と統計を組み合わせた取引などもやっています。
裁量はスキャルピングをやっていた時期もありますが、最近は2、3日は持つことが多いです。
成功を強く追い求めない取引スタイルの方が持続性があって最終的に儲けられる取引になる
ーー成功、失敗した取引について教えてください。
botは数十円、数百円の小さな利益を積み上げる運用なので、特別に成功した取引というのはありません。
そもそも裁量トレードで何千万円もの含み損を出したくないのでbotを運用しているというのもあり、一回の取引で一億円稼いだ、みたいなものはあまりありません。
なので印象的な失敗も特にありませんね。
私の場合は、あらかじめ利益率を大方予測した上でBotを動かすので、同様に印象的な失敗も多く無いです。
ーー印象的な成功、失敗の取引はないとのことですが、利益が大きく出た時期というのはありますか。
マーケットがクラッシュしているときは利益が出やすいです。直近だと、コロナショックやFTXショック、LUNAショックがそうです。
マーケットがクラッシュした際には誰でも利益が取れるような歪みが出て機会も多いため、そういった場面に向けて普段から備えておくことは大切なことだと思います。
ーーbotに限らずマーケットのクラッシュに備えておくことは大切ですね。
botの良い点は下落を想定したモデルであれば暴落時でも利益を出せる点で、普通のマーケットでは利益が出ないけど暴落時に大きく利益を得られるモデルというのもあります
成功を強く追い求めない取引スタイルの方が、持続性があって最終的に儲けられる取引になると感じます。
プロとアマチュアのトレーダーの違いはリスクに対する向き合い方
ーーマーケットのクラッシュに対して具体的にどのように備えておけばいいでしょうか。
リスクを綺麗にしておくことですね。例えば、金利デリバティブ取引ではリスク管理も複雑で、一見フラットに見えるポジションであっても、実はリスクが存在するということもあります。
私が金利の世界で働いていたときは、扱う額も大きかったのでリスク管理は難しく、勝負どころでないと判断した際には、常にリスクをフラットにしていました。
自分がリスクに対応できていると思っていたポジションでも想定外の動きでポートフォリオが毀損してしまうこともあるので、究極までポートフォリオのリスクを把握しておくことが大事だと思います。
ーーリスクを把握しておくために何か気をつけていることはありますか。
銘柄間の関係性のような複雑な領域まで把握しようとすると、定性的なアプローチでは難しくなってしまうため、私の場合は裁量やbotに限らず、モデルの力に頼ることが多いです。
また、個人的には、プロとアマチュアのそれぞれのトレーダーの違いは、リスクに対する向き合い方であると感じています。
アマチュアのトレーダーは、自分のリスク許容度内であれば何倍もレバレッジをかけられますが、プロのトレーダーは取れるリスクの範囲が事前に決められていて、その範囲内でしかポジションが取れません。
そのため、常にリスクを最小化するスタンスになりやすく、私自身も、現在でもそのスタンスが抜けていません。良くも悪くもこの差は大きいと感じます。
売買のロジックを言語化する癖を身につけることが重要
ーーbotや裁量に限らず、取引に向いてる人、向かない人はどのような人でしょうか。
論理的思考ができる人は向いていると思います。
「この出来事があったから、この銘柄が値上がりした」「時系列で考えるとこういった性質があるからこのようなモデルのbotを作る」など、ロジックを見つけたり、ロジックが本当に正しいか判断をしたりする上で、論理的思考は最も重要だと思います。
また、因果関係を明確にしないままのトレードは避けた方が良いでしょう。「最近のCPIの直後は3回連続で下がっているから今回も下げると予想してショートしよう」というのは何もロジックがありません。
値動きに対して因果関係を自分の中で言語化し適切に昇華できなければ、一時的にリターンを出すことができたとしても、安定的な成果には繋がりません。
「なんとなく値上がりしそうだから買う」といったフィーリングに頼った手法では、相場環境が変わった際に対応できませんし、自分のメンタルに左右されやすくもなります。売買のロジックを言語化する癖を身につけることが重要だと思います。
一見、感覚的な取引で安定して勝てているように見える人でも、実際にはロジックに基づいた勝つためのルールを裏側で持っている人が多い印象です。
初心者のbotterは難しいモデルを追い求めてしまう傾向
ーー初心者がよく犯すミス、誤解について教えてください。
botに限った話では、モデルに傾倒しがちな印象があります。
botは稼ぐためのひとつの手段でしかないので、手動でアビトラできるのであればbotを組む必要はありませんし、価格が上がる理由を明確に理解できていれば難しい機械学習のモデルを作る必要もありません。
初心者の方はそういった基本を無視して難しいモデルを追い求めてしまう傾向が見受けられます。初めからモデルありきではなく、アイデアベースで考えることが大切です。
最近ではグラフィカルラッソを用いたペアトレードに関する記事を書いたのですが、これも初めから「グラフィカルラッソをトレードに活かしたい」と思ってモデルの開発をする訳ではありません。
異常度の検知にはカルバック・ライブラー距離が適しているので、そこで初めてグラフィカルラッソとカルバック・ライブラー距離を組み合わせたモデルを作ります。
つまり、初めからグラフィカルラッソを用いたモデルの開発から入るわけではないのです。
まず目的からスタートし、その目的を達成するためにはbotが必要だと考え、その上でどのようなモデルを作るべきなのかを考える、そういうプロセスが大事だと思います。
ーー「難しいモデル」とはロジックが複雑という意味でしょうか。もしくは用いている変数が多いという意味でしょうか。
どちらもです。変数の数が多ければ結果の信頼性が損なわれることもありますし、数学的に複雑であれば解そのものが不安定になってしまうこともあります。
ただ、難しいモデルを求めるのであれば、一定の知識が必要です。何もないところから特徴量だけを適当に取り出して機械学習させるというのは、テクニックも必要ですし、落とし穴も多く難易度が高いです。
一方、勝てるロジックが一つ見つかれば、Excelでも作れるようなプログラム知識しかなくても儲かることはあるんですね。
もし難しいモデルを求めるのであれば、落とし穴に気づける知識も必要です。知識がないのであれば単純なモデルに注力するのが賢明でしょう。
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全2回のCoin Newsの中の人のインタビュー、後編に続きます
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