ビットコイナーでLightning Networkのルーティングにも取り組む赤かぶと氏に、ルーティングでの失敗談などについて伺いました。
赤かぶと氏 プロフィール
2016年参入のビットコイナー。2021年からはLightning Networkのルーティングにも取り組む。古参ではありません。
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エイリアス名の変更作業で間違えてノードを壊す
ーールーティングに関する失敗談があれば教えてください。
誤ってノードを壊したことがあります。
LNのノードはエイリアス名で名前をつけられるんですが、私は”RedBear”という名前をつけていました。
ノードのエイリアス名とは別にノードを操作するUmbrelのダッシュボードの名前があるのですが、それをもっとオシャレな名前に変えたくて、ググって見つけた方法通りに実行したつもりだったんです。
参考:Umbrelのダッシュボードに表示される名前を変更する方法
ただ、名前を変えるためのファイル(user.json)が、大事なデータがたくさん入っている場所にあったんですね。
大事なデータが入っているのに、コマンドを打つ画面が小さすぎて、どこにあるのかわからず、デリートボタンをずっと押し続けてしまったんですよ。
結果としてパスワードなど全て消してしまって、真ん中に”yakiniku”と打ち込んだんですよね。
これで、自分のノードの名前が”yakiniku”で世界デビューできると思って上書き保存して再起動したら、そこから何も進まなくなってしまいました。何が起きたのか全然わからなくて。
それで、もう一度その画面に入って、参考にした方の画面と比べてみたら、参考にした人の画面にはたくさんの文字列があったのに、自分の画面には”yakiniku”しか残っていない。
やらかした、と思いました。心臓がばくばくしましたね。
ーーノードを壊したらどうなるのでしょうか。
ノードを壊しても、オンチェーンのビットコイン自体はブルーウォレットにニーモニックワードを入力することで簡単に復元させることができます。
ただ、LN上にあるビットコインを回収するためには、自分でチャネルを閉じなければならない。そして、チャネルを閉じるためにはノード自体が動いていなければならないんですね。
ただ、私の場合はノードを削除してしまったものの、ログインするためのパスワードを失っただけで、LNはずっと動いていました。なので、何らかの方法でLNに接続できれば、チャネルを自分で手動で閉じることができる。
そこで、テレグラムでTanakeiさんという方にダイレクトメールでアドバイスを求めたんです。Tanakeiさんは私の状況を聞いて、自分のUmbrelを使って同じ状況を再現してくれました。
そして、新しく作ったノードのシークレットワードをコピーして、自分のノードに書き足して復活させると動いたことを教えてくれたんです。
ーーそれでその方法で解決したのでしょうか。
いいえ、解決できませんでした。
ーーではLN上のビットコインはどうなったのでしょうか。
諦めかけていたところ、ZAPというアプリのウォレットがまだ繋がっていたことに気づきました。もしかしてと思いチャネルを閉められるか試してみたところ、無事閉めることができました。
LN上のチャネルを閉めるとアウトバウンドの数に合わせてオンチェーンに戻ってきます。それでそのオンチェーンに戻ったビットコインをどのように回収するか迷いましたが、ZAPウォレットから数回に分けて自分の別のLNのノードに送って回収することにしました。
0.5ビットコインほど失う可能性がありましたね。
Diamond Handsコミュニティのおかげでエンジニアリングの経験がなくてもルーティングをやり続けられている
ーー今回の件はバグなどではなく、デリートボタンを誤って押してノードを削除したということでしょうか。
はい、そうです。Diamond Handsコミュニティの方々からは「普通じゃやらない」「ありえないことをやっている」とお褒めの言葉をいただきました。
コミュニティの他の方でもノードを壊した方がいますが、皆んなが助け合うので、誰1人として取り残された人はいないと思います。
特にTanakeiさんが毎回一番早くに問題を見つけてくるのですが、本当にあの方の力はすごいです。
ただ答えを提示してくれるのではなくこちらに考えさせてくれる提案をしてくれるので、私もかなり上達した実感があります。
私みたいなエンジニアの視点がない人間が今でもルーティングをやり続けられているのはコミュニティのおかげだと思っています。
現状はLNのルーティングで大きなリターンを得るのは難しい
ーー収支の話に戻ります。2021年後半からサウスエクスチェンジのルートを見つけてリターンが出たとのことですが、その方法が使えなくなった後の収支について教えてください。(前記事を参照:「SouthXChangeを活用しLNのルーティングで年利8%を実現」ビットコイナー・赤かぶと氏 2/3)
現在、私がLN上に保有しているビットコインは、アウトバウンドの量として約1ビットコインです。この1ビットコインで、2023年の1ヶ月では約1万satsのプラスになっています。
リバランスを行うとその分だけ収益が減ってしまうため、基本的にはリバランスを行わず、ルーティングで得た報酬の全てが収益となっています。
ただ、1satsが0.004円程度なので、1万satsでは大した利益にはなりません。最近では、ルーティングで大きなリターンを得るというのは難しいと感じています。
大手のノードならルーティングだけでもかなり稼げるかもしれませんが、個人の場合はあまり期待しない方が良いでしょう。50ビットコインなど量を投下しない限り、ルーティングだけで生計は立てられません。
LOOPのような高手数料体系になれば状況は変わるかもしれませんが、それでは送金手数料が上がってしまうので私は同意しません。
また、まだLN上のサービスがそれほど増えていないため、供給過剰になる可能性もあると考えています。
ーールーティングを行う際のコストについて教えてください。
コストについてはラズパイを使うと非常に安く済みます。ラズパイは少し前までは7千円程度でしたが、最近は高くなって2万円程度です。
それに加えて、1テラのSSDを1万円弱で用意すれば良いので初期投資はそれほど大きくはありません。
また、月に1万satsくらいなら何もしなくても稼げるんですが、それくらいだと電気代もそれほどかからないので毎月1万sats稼げれば収益はプラスになります。
なので、私の場合はLNのインフラに自分が参加しているという意識で、あまり収益を気にせず取り組んでいます。
ただ、ラズパイではなくノートパソコンを使うと一気に電気代が跳ね上がるので注意が必要です。
10万の送金を1円の手数料でルーティングする爽快感を味わってほしい
ーーこの記事を読んでルーティングに興味を持った読者にアドバイスやメッセージをお願いします。
初めてルーティングを発生させるまでには1,2ヶ月かかることが多いです。以前よりルーティングのハードルは下がったと思いますが、それでもその最初の時期を一人で乗り越えるのは大変です。
そのためまずはDiamond Handsのコミュニティに参加するのをおすすめします。
必ずしも積極的に質問を投稿する必要はなく、ただ参加してやりとりを観察するだけでもためになるでしょう。
また、Twitterでつぶやくと多くの人が反応してくれます。
そのほか、最初から大きな収益を狙うのは避けた方が良いです。ルーティングに大きな利益を期待して始める人もいますが、純粋にリターンだけを求めるならDeFiやDEXを使った方が手っ取り早いです。
それよりも、LNのインフラの仕組みを理解するチャンスと捉えることが大切です。
「10万円の送金を1円の手数料でルーティングする」という、ルーティングの爽快感をぜひ味わってみてください。
ーールーティングには経済的なリターン以外にそのような醍醐味もあるのですね。
その時々のキャパシティのバランスにも依存しますが、手数料率0.0001%の世界です。VISAやMasterの決済手数料3%というのは、言ってる意味がわからないレベルですね。
儲けよりも、「とてつもなく安い金額でこのサイズの金額を通した」という爽快感がルーティングにはあります。こんなに大きな金額をほぼタダで通してやったぞ、みたいな。
アルトコイナーからはあまり理解されないとは思うんですが、ビットコイナーの素養がある人はこの爽快感をわかっていただけると思います。
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前のインタビュー記事はこちら
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