「難しいモデルを作ることよりも、自分のモデルのバックテストにきちんと向き合うことが大切になってくる」Coin Newsの中の人 後編

Coin Newsの中の人に、ご自身のトレーダーとしてのエッジなどについて伺いました。

Coin Newsの中の人 プロフィール

Coin Newsを運営。暗号資産を中心に取引。いわゆるプログラム取引も行う。

取材実施日

2023年11月17日

マーケットがまだ未熟で非効率ゆえに、エッジがなくとも儲かるロジックさえあればリターンを出すことができる

ーー他のマーケット参加者と比較して何がエッジになっている、長けていると感じますか。

特に海外のトレーダーがそうですが、ほかのトレーダーと比較して自分が優れているとはまったく思っていません。

日本では統計的手法を用いて投資するヘッジファンドのような取引主体はあまり馴染みのない方も多いと思いますが、そういったファンドのトレーダーは総じて優秀で年間数億、数十億もリターンを出します。

定性的な取引においてもウォーレン・バフェットなど伝説的な投資家がいます。

世界には凄い人がたくさんいて、私が特段優れているとは考えたことがないです。

ーーそういった突出したトレーダーと比較すれば長けてはいないかもしれませんが、市場で平均以上の利益を得ている以上、マーケット全体の平均的なトレーダーと比較して何かしらのエッジ、強みがあるはずですがそれについてはいかがでしょうか。

海外のトラディショナルな投資主体は未だに暗号資産に参入しておらず、そういった意味で幸運にもまだマーケットに残されているエッジによりリターンが得られているという側面はあると思います。

また、現在の暗号資産の市場は非効率な取引をするマーケット参加者が多く、市場全体としてもまだまだ未熟です。そのような非効率な市場ゆえに、特にエッジがなくとも儲かるロジックさえあればリターンを出すことができる、という解釈もあると思います。

また、戦場選びも大切です。例えば、メジャーなチェーンでのアビトラは本当に優秀な上位数名しか勝てませんが、彼らに勝てなくともマイナーなチェーンで勝負すれば良いわけです。

リターンを出すためには知識や手法も重要ですが、勝てる戦場を見つける、見極める能力も非常に重要な要素だと思います。

トラディショナルな投資主体が選ばない戦場をいまから見つけておかなければならない

ーー暗号資産の市場はまだ非効率的な部分が多いとのことですが、2017年ごろと比較すると現在でも効率化が進んでいると言われています。いかがでしょうか。

元々、暗号資産の市場は参加者のほとんどが個人投資家でしたが、2020年ごろから機関投資家の参入が増えて、アービトラージを集団で行うグループも出てきました。それにより、以前はイーサリアムのようなメジャーチェーンですら儲ける機会がありましたが、今は儲けるチェーンを探すことも難しいです。

そういったこともあり、おっしゃるとおり市場の効率化は進んでいると思います。

ーー今後、ETFの承認などでさらにトラディショナルな投資主体が参加し、市場の効率化が進み、簡単に儲かる取引がなくなってしまう印象です。

ご指摘のとおり、ETF承認でトラディショナルな資金が入ってくることは暗号資産にとって大きな影響を及ぼすでしょう。暗号資産系のファンドも増えると思います。

その際にいまあるエッジが消えてしまうことは十分に想定できるわけで、いまからそのようなマーケット参加者が選ばない戦場を見つけておかなければならないと思います。

ある特定のストラテジーで稼げなくなることがあったとしてもまた別のストラテジーで勝負すればいい

ーー今後、Coin Newsさんが勝てなくなるシナリオがあるとした場合、どのようなシナリオが考えられますか。

株式の場合、単一の市場のためいまあるエッジがなくなって途端にリターンが出なくなるという可能性が十分にあり得えますが、暗号資産は様々なプロダクト、チェーンがあるわけで、その分、多様なストラテジーがありえます。

そのため、ある特定のストラテジーで稼げなくなることがあったとしても、また別のストラテジーで勝負すればいいと思います。

ーー現在のエッジを維持し続ける、もしくは新しいエッジを発見するために何か取り組んでいることはありますか。

エッジの性質にもよりますが、永遠に儲けられるエッジはあまりありません。

機械学習で取引する人は永遠に使えるようなエッジを求めてしまいがちですが、そのようなエッジを見つけるのは非常に難しいです。そういったことも踏まえて、私はいま使っているエッジがなくなることを前提に、常に新しいエッジを探し続けています。

もっと言うと、エッジに頼るというよりは、自分の中にあるロジックに頼ることを大事にしていますね。

ーーエッジ探しで気をつけていること、注意していることがあれば教えてください。

たまたまそのエッジがうまくいっているのか、あるいは別の要素が介在してそれに引っ張られているだけなのか、他の要因と相関関係があるのか、エッジの評価は注意して行うようにしています。

難しいモデルを作ることよりも、自分のモデルのバックテストにきちんと向き合うことが大切になってくる

ーー取引する上でなにが最も難しいでしょうか。また、モデルを作る秘訣があれば教えてください。

裁量取引からトレードをスタートした人がbotを作る場合、リターンにだけ注目してモデルを組んでしまう傾向がありますが、シャープレシオにも目を向けることが重要です。

これまでの暗号資産マーケットでは、リターンが右肩上がりの曲線になるようなBotを作ることも可能でした。しかし、今後、市場がより効率化してきた場合に、果たしてそのモデルは本当に儲かると言えるのかどうか評価が難しくなると思います。

そのような状況では、さらにバックテストの重要性が増します。シャープレシオにも様々な種類がありますし、他にもバックテストで有益な統計手法も様々あります。こういったものを上手く活用することが大切です。

そのため、難しいモデルを作るよりも、自分のモデルのバックテストにきちんと向き合うことが大切になってくると思います。

botはあくまで儲ける手段であり、モデルの組み方や技術よりもリターンを出すためにどうすべきかにフォーカスすべき

ーーこれからbotや裁量トレードを始めようとしている人、いまbotや裁量トレードで結果が出せない人はなにに着手することが大事でしょうか。

まず最初は儲かるロジックを見つけることではないでしょうか。

無作為に変数を並べて、機械学習に適用し上から下まで予測するというのをやってもリターンを出すのは難しく、仮にリターンが出るモデルになったとしても、持続可能性さはないと思います。

また、難しいモデルは落とし穴も多く、そういう意味でもまずは簡単なロジックを見つけることから始めるべきだと思います。

最初は、「日本時間の9時になると暴落する傾向がある」くらい単純なロジックを追求した方がいいです。

botはあくまで儲ける手段であり、botのモデルの組み方や技術よりも、リターンを出すためにどうすべきか、にフォーカスすべきです。

利下げは想定してはいるがそこにかけたトレードも行っていないし、考えてもいない

ーー現在のマーケットについてどのように見ていますか。

金利市場を中心に今のマーケットはとても面白く、注視しています。

コロナが収束してインフレになった2021年、一番初めに利上げした主要な銀行はBOEで2021年12月でした。FRBの対応は遅れて利上げ開始は2022年3月、出だしが悪くてFRBはインフレに負けるのではないかと危惧されていました。

しかし、現在時点で米国債10年利回りは4%を超えていますが、CPIはそれなりに落ち着いてきていて、その上で米国経済は当初懸念されていたようなハードランディングは起こらず、健闘しています。

昔のインフレ対応の際には、FRBの引き締めによる経済へのダメージは大きいものでした。例えば、1970年代の強いインフレ期では、当時のFRB議長のポール・ボルカー氏は強烈な利上げを実施し、インフレを抑えられたものの経済は大きなダメージを受けてしまいました。

▼1970年代の金利とS&500の価格の推移

2000年のITバブルの際も引き締めでもS&P500は半分まで下がりました。

▼ITバブル前後の金利とS&500の価格の推移

しかし、今これだけ利上げを実施し、IT企業でレイオフもあったものの、それほど景気が悪くなっていない。嬉しい展開だと思いますが、逆に割を食っている面もあります。

強い金融引き締めの中でもこれだけ米国経済が強いのは、ドルがそれだけ強いからです。逆に、相対的に通貨が弱いトルコやアルゼンチンはインフレが大変なことになっています。

日本円は比較的強いのでまだマシですが、それでもスタグフレーションにより18ヶ月連続でマイナス賃金となり、望ましくない状況です。

これだけ利上げしても景気がそれほど落ち込まない米国経済というのは珍しく、特に注目して見ています。

参考:9月の実質賃金2.4%減 18カ月連続でマイナス|日本経済新聞

ーー米国の今後の利下げについてどのように見ていますか。

利下げはいつかはあると思いますが、具体的な時期を予測するのは難しいです。なので、利下げは想定しているものの、そこにかけたトレードも行っていませんし、考えてもいません。

この程度の利上げ幅にもかかわらず、インフレ率が落ち着いてきた原因は、マクロ環境に由来するものなのかもしれません。コロナショック以前に根強くあったデフレーションに再び悩まされることになる可能性もあるでしょう。

ーー取引に関して、おすすめの書籍があれば教えてください。
bottterであれば、有名な本ですが『ファイナンス機械学習』は面白いですし勉強になると思います。

ヘッジファンド 1投資家たちの野望と興亡(1)』もおもしろいと思います。

暗号資産のコミュニティとも今後はもう少し携わっていきたい

ーー最後に、読者にメッセージをお願いします。

私が運営するCoin Newsをぜひご利用いただけると嬉しいです。

まだサービス開始から2ヶ月と暗号資産のコミュニティとはあまりコミュニケーションをとれていなかったのですが、今後はもう少し携わっていきたいと考えています。

ぜひTwitterで絡んでいただけると嬉しいです。

そのほか、暗号資産の界隈では色んな知識を持っている人がいて、示唆に富んだツイートも多いのですが、それらの情報が埋もれてしまっていることを残念に思っており、何か形にして残していきたいと考えています。

クリプトの世界は分野の裾野も広く、完全に下位互換という関係はなくて、「自分はbotに優れているけれどもDeFiではAさんが詳しい」「リニアのネットワークに関してはBさんの方が知識や経験がある」といった関係性があると思うんです。

暗号資産は様々な分野があり、ニッチな分野に特化している人が多数いらっしゃいます。

ネットで検索しても得られない良質な知識を持っている方がたくさんいらっしゃいますし、ニッチな知識を埋もれさせるのは勿体無いです。

Coin Newsは投稿機能もありますので、ぜひそちらも利用いただけると嬉しいです。

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