円安と日経平均の関連性
円安の功罪については、「円安=株高」または「円安=株安」と、専門家の中でも意見が分かれています。
下図は、2000年〜2022年までの日経平均株価と米ドル/円の月足チャートです。
2つを比べてみると、相関関係は以下の表のようになります。
2000〜2002 | 2003〜2005 | 2006〜2007 | 2008〜2012 | 2013〜2022 | |
日経平均 | 株安 | 株高 | 株高 | 株安 | 株高 |
米ドル/円 | 円安 | 円高 | 円安 | 円高 | 円安 |
2000年〜2005年までは逆転していますが、2006年以降はおおむね「円安=株高」と言えます。
最近の傾向がこれからも続くとは言い切れませんが、この傾向がもし今後も継続するのであれば、これからについては「円安=株高」になる可能性が高いです。
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円安は日本株にとってプラス材料と言えるのか
知りたいのは、これから日本株がどのような推移をしていくかです。まずは、「そもそも株価が何を基準に動くのか」を考えていきます。
株価は、「企業収益」に影響を受けます。端的に言えば「業績」です。つまり、「円安と企業収益の関連性」について考えることで、一定今後の日本株の価格を予想できるのではと考えることができます。
結論から言うと、企業収益で考えれば、円安は大きなプラス材料です。ただし、これには1つ条件があります。それは、米国の景気が好調であることです。なぜなら、米国の景気が好調であれば、米国からの大きな収益を見込めるからです。トヨタ自動車(7203)をはじめ、日経平均株価は海外収益に大きく依存しています。
であるならば、考えるべきは「米国の景気は今後どのように推移していくのか」という話になります。それを示す指標が円安です。
円安(ドル高)時には、米国の景気が好調であるとことが多いです。よって、円安である限り、日本株についてはプラスに傾向があります。しかし、一つだけ懸念点があります。それは、輸入原材料の高騰です。当然、これは企業収益を圧迫させるため、日本株の株価にとってはマイナスに働きます。
最近の輸入原材料の高騰は円安だけが原因ではありません。ウクライナ情勢が大きく影響していることは確かです。コロナウイルス感染拡大も影響しているでしょう。それでも、企業収益として考えると、単純に圧迫する事態にはなりません。
なぜなら、資源高により商品が値上がりせざるを得ないことで、結果的に企業収益の増加につながるからです。日本は商品の価格が安すぎることで、本来得られるはずの企業収益を逃してきたと言われています。失われた20年、もしくは30年とも言われています。それが、今回の資源高によってある程度適正化され、将来的にもいい結果を生むと期待されています。
円安と貿易収支の関連性
企業収益を大きく表す指標として、貿易収支があります。下図からも分かるように、貿易収支は2021年から赤字が続いています。
なぜ日本の貿易収支が赤字なのか、原因は大きく分けて3つあります。
1つ目は、原子力発電所が停止したことによる電力不足です。原発が停止したことにより、やむなくLNGの輸入に頼らざるを得なくなりました。さらに、そこに原油価格の上昇が加わったことで、エネルギー分野はかなり赤字を拡大させる状況になりました。
2つ目は、半導体不足による自動車の輸出の減少です。日本の主要輸出産業と言えば自動車産業です。この減少により、貿易黒字が大幅に縮小しました。よって、貿易赤字の拡大に拍車がかかりました。
3つ目は、コロナウイルス感染拡大によるインバウンド需要の減少です。以前は「爆買」として注目されたことがありますが、今日ではあまり聞かなくなりました。これに関しては、日本政府が観光客を積極的に受け入れることでかなり解決するはずです。せっかくの円安効果を無駄にするのはもったいないと思います。原発稼働と併せて、早急に対策すべきことだと言えます。
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これからの日本株の動き
日本株は、おおむね米国株に連動して動きます。これは、多くの投資家が知っている事実です。
よって、日本株の動きは米国株の動き次第とも言えます。つまり、米国でこれからどのようなイベントがあるのかを知っておく必要があります。直近は、中間選挙だと思います。
実施日は11月8日です。現在、バイデン政権の支持率は低迷しています。「何事もなく順調に通過する」とは言い切れない状況です。それでも、株式市場が大波乱になるほどの状況にはならないと思います。
なぜなら、過去の傾向から選挙後は上昇しているからです。下図からも十分理解できると思います。
過去の傾向が必ずしも当てはまるとは言い切れませんが、それでもそうなる可能性が高いと言えます。よって、下落している米国株も中間選挙に向けて上昇に転じると言えます。つまり、日本株も連動して上昇すると言えます。
まとめ
様々なデータを元に、「円安の中で日本株はこれからどのような影響を受けるのか」について考えてきました。株式市場は、円相場だけで動くほど単純ではないため、あらゆる視点から考える必要があります。それでも、円安が続いている限り、日本株の下値は限定されると思います。ですが、これには米国の景気が好調であることが条件です。
それに関しては、円安(ドル高)が米国の景気の好調さを表しています。故に、日本企業にとって円安は、海外収益が大きく見込める材料となります。以上のことから、「円安は日本株にとっていい影響を与える」とまとめることができます。ですが、投資家にとっては難しい判断を迫られるでしょう。
今後の相場は、比較的リスクが高いと思います。円安は、どこまで進むのか。利上げによる米国の景気は、どこまで好調でいられるのか。ウクライナ情勢は、いつ収束するのか。
コロナウイルス感染拡大による経済損失は、いつ改善するのか。無数の要素があります。それでも、チャンスを見つけたら積極的に取引すべきです。冒頭にも書きましたが、最終的に投資は自身で判断しなければなりません。投資判断をするにあたってまずは、多くの情報に触れることが重要です。
そして、その中から自身で整理し、考えを深める必要があります。その後、実際に取引を重ねることで、経験が身につきます。投資家は、なかなか利益に結びつかない難しい職業だと言えます。ですが、利益の上限はありません。この事実は、ワクワクするものです。