日本からタイに移住したビットコイン(暗号資産)投資家・jin_777氏に、タイの物価や食事、気候などの事情について伺いました。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司
jin_777氏 プロフィール
大学在学中に暗号資産関連会社の立ち上げを経験。主に金融機関を中心に法人営業や採用を中心に業務を行い、その後米国公認会計士試験に全科目合格し、その後ライセンス(Inactive)を取得。現在は、タイランドエリートビザを取得し、タイに移住。主にDeFi分野においてHashHub Researchで寄稿も多数実施。
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前提
当該記事は専門家による具体的に個別の制度を詳細に解説する記事ではございません。各読者が個別にリサーチ・専門家への確認をとることを推奨します。
タイ語を話せない移住者もさほど不便を感じない
――現在住んでいるのは、タイのどのような地区ですか。
バンコクにはBTSという高架鉄道が走っているのですが、そのBTS沿線から近いコンドミニアムに住んでいます。日本人が多く住んでいる地域も近いですね。
僕が住んでいるのは、2ベッドルームというLDKに寝室が2つある部屋で、3万バーツくらいから借りられます。日本風に言えば、2LDKで12万円というところです。
1ベッドルームだと1万5000バーツくらいからあります。日本と比べても、それほど高くもなく安くもないという感じですね。
▼バンコクの街並み。jin_777氏、提供。
――日本人がタイに移住するにあたって、不動産選びは難しくないのでしょうか。
英語やタイ語が話せれば、スムーズに見つかるでしょう。頑張ればすぐに入居できます。契約時にその月の家賃のほか、デポジットとして家賃2カ月分を払えば手続きは完了です。
日本だと、外国人が家を借りようとしても家主から敬遠されがちだという話もありますが、タイではそんなことはありません。
外国人だから物件を探しにくい、契約しにくいといったことはないでしょう。
日本語しか話せない人は日本人エージェントを介して探すことになりますが、そうした人も珍しくはないので、そんなに困ることもないと思います。
――英語やタイ語を話せなくても生活できるのですか。
英語については、日本と同じですね。日本でも街のコンビニやスーパーで従業員と英語が通じるかどうかはその従業員によって異なりますよね。あとタイ人はそれほどうまく話せなくても、勢いとノリで話す人が多いという印象です。
バンコクで日本人の多いエリアで暮らしていれば、日本語だけで済ませることもできます。病院でも日本語で診察や治療が受けられる病院がありますし、不動産業者のように日本人エージェントもいます。
ただ、バンコクやプーケットなど都市部や観光客が多い地域以外は、ほとんどの会話がタイ語なので、そうした地域に住んだり、仕事で出かけたりするという人はタイ語が必要でしょうね。
僕はタイに行く前に少し勉強しましたが、友達に合わせて片言で話すくらいです。
インフレ傾向だがリーズナブルなものも多い
――暮らしやすさで言うと、物価などはどうなんでしょうか。
食事は日本とそれほど変わらないと思います。
タイでも日本料理が人気で寿司も食べられるし、日本酒も飲める。お任せで5,000バーツから8,000バーツ。日本円で2万円から3万円くらいで、10万円くらいの高級店もあります。
一方でリーズナブルな店もあって、日本人だけでなく、タイ人もよく食べに来ています。
タイ料理の屋台でカオマンガイ、ガパオなどを食べるなら60バーツで250円ほど。お酒を飲むなら、高層ビルの屋上の高級バーで1杯400バーツで1,600円くらい。
普通のコンビニでタイビールを買ったら100バーツで400くらいですから、お酒の場合は日本と比べると、だいたい同じくらいか、少し日本のほうが安い感じでしょうか。
――世界的にインフレ傾向が続いていますが、タイはどうなんでしょうか。
タイも物価が上がりつつありますね。ただ、日本の生活と比べると、全体的に物価が安いので都会だとそれほど厳しいという感じはしませんね。
庶民派系のマッサージなどは1時間で200バーツが相場だったんですが最近は250バーツになっています。最安値の1時間100バーツマッサージというのもあったんですが、それも120バーツに上がっていました。タクシー料金も値上げすると聞きますし。
10%から20%くらいは上がっているかもしれませんね。
参考:1月の消費者物価上昇率は5.02%、9カ月ぶりの低い上昇率(タイ)
現地の料理なら屋台。リーズナブルでおいしい日本料理、韓国料理の店も
――食事の話がでましたが、普段はどのようなものを食べているんでしょうか。
僕は日本料理と韓国料理をよく食べます。バンコクにもコリアンタウンがあるんです。韓国より安く食べられる店もありますし、デリバリーも可能です。味は日本で食べる韓国料理と変わりません。
ほかには、タイ料理ですね。週に2、3回食べますが、カオマンガイとかガパオとか、日本でも知られるポピュラーな料理なら120バーツくらいです。僕も問題なく食べられるので、日本人でも人によっては抵抗なく食べられるのではないでしょうか。
1ヶ月の食費は、日本にいるときとあまり変わらないと思いますね。
日本食の店も味は日本と変わりせんし、外国だから高いということもない。ドバイだと日本のラーメンを食べて3、4000円取られたなんて話を聞きますが、タイではそんなことはありません。
――ウーバーのような配達サービスはあるのですか。
東南アジアで展開しているGrabというサービスがあります。タクシーやバイクタクシーの配車アプリですが、出前や買い物代行みたいなことも頼めます。近いところからであれば買い物代行も日本円で40円くらいですね。
配車サービスでは、ヨーロッパのBoltがタイでサービスを開始して、Grabより安く配車しています。ほかには、日本ではコミュケーションアプリで有名なLINEが、バンコクでLINE MANというフードデリバリーやコンビニ宅配のサービスを行っています。
僕はこの3つを用途に合わせて使い分けています。バンコクはもともとデリバリーが盛んで、こうしたサービスも一般に普及しているようですね。
参考:コロナで盛況、タイの宅配サービスはなぜ「格安」で利用できるのか
猛暑の季節を除けば過ごしやすいタイの気候
――タイの気候は暮らしやすいのですか。
日本のような四季はありませんが、僕は過ごしやすいと感じています。
タイは1年を通して乾期と暑期、雨期の3シーズンに分けられます。一番過ごしやすいのは乾期で11月から翌年の3月くらいです。日本で言うと、秋の頃のような気候ですね。
気温は28度くらいで、湿気がなくて涼しい。乾期の間はほとんど雨が降らないので、毎日のようにカラッとした晴天が続きます。
4月、5月は暑期で、日本でいえば8月の猛暑日が毎日続くような季節です。日本よりも暑いかもしれない。日中は暑くて外を歩けないですね。
6月から10月が雨期ですが、日本の梅雨とはイメージが違います。1年で最も雨の多い季節なんですが、毎日1、2時間、激しいスコールがあって、その後は晴れて涼しくなる。
朝に雨が降ると、後は晴れて1日過ごしやすい日になります。ただし、外出中にスコールに遭うと大変です。タクシーもつかまらないので、どこかで雨が通り過ぎるのを待たなくてはなりません。
外国人移住者にも好意的でフレンドリー
――現地の人たちは、外国人移住者に対してどのような印象を持っているのでしょう。
これはバンコクでの印象ですが、特に現地の人との間に壁のようなものは感じないし、好意的に受け入れてくれますね。優しくて友好的な人が多いと思います。クラブへ飲みに行って現地の人と友達になることもありますね。
ただ、タイは超格差社会で、貧富の差が世界一大きい国と言われます。ですから一部の富裕層は自分達のコミュニティーがあり、そこに入り込むには難しい場合もあるかと思います。
あとはLGBTの人が多く、日本に比べて開放的だという印象があります。僕も男性から告白されたことがありますよ。会ったときから優しくしてくれるので、親切な人だと思っていたら求愛されて、そのあたりは日本とは感覚が少し違うように感じました。
でも、そうしたところもタイの面白いところですね。
――治安はどうなのでしょうか。
バンコクの中心部であれば、心配はないと思います。女性が夜、1人でも歩けるくらいで、日本より安心な部分はあると思います。
日本だと電車で不機嫌そうな人を見かけることがありますが、タイの電車内でそうした人を見たことはありません。
もちろん、そうしたところばかりではなく、物騒なエリアもあります。
タイではゴーゴーバーというナイトクラブが有名ですが、ナナプラザなどゴーゴーバーが集まる歓楽街があります。その中には大麻の匂いが充満しているような近寄りがたい雰囲気の店もありますね。
ちなみに、タイで娯楽目的の大麻の吸引は違法ですが、医療用や健康用に限って2022年に大麻が合法化されています。
参考:大麻に関するタイの試みと世界潮流 | 株式会社共同通信社
住みやすい国だが、医療や教育面は事前に情報収集を
――タイへの移住に向いているのは、どのような人でしょうか。
難しいですね。日本語しか話せない人には不便かなと思ったのですが、よく考えてみれば、日本人コミュニティの中だけで生活できるし、そこから出なければ日本語だけで十分生活できます。
海外生活で日本が恋しくなったり、孤独を感じたりしなければ、どのような方でもタイの移住に困らないのではないでしょうか。
強いて言えば、医療費が高いので、若くて健康な人が向いているかもしれません。
健康保険制度のある日本のほうが医療費の負担は軽いし、医療の平均的な質も日本は高い。タイ語が話せるのならともかく、日本語で対応してもらうには、より費用がかさむでしょう。
一応、サミティベート病院という、海外の患者を積極的に受け入れている病院があって、そこでは日本人専用の窓口や通訳サービスもあります。ちなみに僕は、病気やけがに備えて、民間の医療保険に入っています。
参考:日本国外で最も多く日本人が来院する病院 サミティベート病院
――教育費も高いのですか。
タイ人富裕層やエクスパッド関係なくコネクションづくりという観点でインターナショナルスクールに通わせている人が多くいます。
タイのインターナショナルスクールの良いところは、生徒の多様性ですね。多くの国から入学しているので、そのほかのスクールより、より多様な民族や人種と交流できるのではないでしょうか。
僕が住んでいるコンドミニアムでもロシア人やアメリカ人、カザフスタン人、スーダン人、インド人の友人が住んでいます。多様性を重視するなら、タイがいいかもしれません。それぞれの家庭の教育方針だと思いますが。
――タイへの移住を考えている人にアドバイスをお願いします。
1度タイを訪れて、現地の雰囲気や生活を体験することですね。旅行でもいいので、そのときに自分に合うのかどうかを判断すればいいと思います。
日本からそれほど遠いわけでもありませんし、費用的にも海外旅行としては気軽にできるほうだと思います。
▼東京・羽田発バンコク行きの航空券の往復金額の目安。時期によっては4万円弱で往復することが可能。画像引用元:スカイスキャナー
とにかく暮らしやすい国なので、街の雰囲気や現地の人の人柄が気に入れば、問題はないと思います。ただ、タイも日本人の移住者がかなり増えて来て、僕自身としては、これ以上増えないでほしいなとも思っているのですが。
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