ロシアやラオスでのビットコインのマイニングはなにが難しいのか? ビットコインマイナー弁護士・小峰氏 1/3

小峰 孝史氏に、ロシアやラオスでのマイニング事情について伺いました。

小峰 孝史氏 プロフィール

米系法律事務所Sidley Austinの東京オフィス・香港オフィスに勤務、TMI総合法律事務所所属時に香港駐在。2018年より現職。主として日本の富裕層向けに香港やその他の海外の税制上のメリットを生かす投資スキーム作り・移住をサポートしている。
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取材実施日

2023年4月21日

ロシアとラオスでビットコインのマイニングに取り組む

ーー小峰さんが実施している、ロシアやラオスでのビットコインのマイニングについて教えてください。

主にビットメイン社製のASICを自社で所有するとともに、顧客が所有しているものを弊社で預かり、ロシアやラオスの割安な電気を利用してマイニングを行っています。

ただ、まだまだ完成形にはほど遠いです。

コストがそれなりに発生するうえ、異国での展開というのは困難も多く、大規模なマイニングは実施できておらず、発展途上段階です。

マイニング運営のリソースについて、私は可能な限り現地のリソースを活用するようにしていますが、一方で、ロシア人やラオス人とビジネスを組むのは、実際にはかなり難易度が高いです。

弊社は、香港やシンガポールなど金融ハブでのビジネスは以前から行っていましたし、中国やベトナムの人々とも仕事をする機会が頻繁にありましたので、新興国・途上国でのビジネスは多少なりとも経験していたつもりです。

しかし、それらと比べても、ロシアやラオスとのビジネスは難易度が高いのです。

ロシアでのビジネス、マイニングにはどのような難しさがあるか

ーー特にどういった点において難易度が高いのでしょうか。

ロシアについては、二つあります。

一つは、ロシアでは先進国の人々が普通にできることが、意外と難しいということです。

例えば、マイニングに関するパーツを香港や中国から送るとします。

10個のパーツを送ったと伝えても、届いた数が足りないことがあります。郵便物が届かないという問題です。

単純な作業のはずですが、何故かうまくいかないことがあるのです。

私の印象ですが、大目標のために中目標さらに小目標とある、日本であれば小目標を扱う末端の職員も中目標や大目標を意識しながら仕事をしているのですが、ロシアでは自分の言われた職務を越えたことは全く意識していないという印象を受けることがあります。

これがロシアでのビジネスの難易度が高いことの一つ目です。

もう一つ、先ほどとは逆の問題ですが、細部まで厳格な要求が求められることがあるというのが二つ目です。

先ほども申し上げたビットメインというマイニング機器のメーカーがありますが、ビットメイン社のマシンには中国製とマレーシア製の二つが存在します。

もし、マレーシア製のマシンを誤って中国製と記載し輸出しようとした場合、製造の国が異なるというただそれだけで再度手続きを行う必要が出てきます。

そのほか、マシンのシリアルナンバーを一つ間違えただけですべての商品が送り返されて、全作業を再度やり直さなければならなかったこともあります。

海外への送金に関する契約書について、英語だけではなく、ロシア語併記の契約書も必要、といったルールも存在します。

このように、細部まで厳格にチェックされるというのが、ロシアでのビジネスで困難な点の二つ目です。

つまり、ロシアでのビジネスには、一見簡単に見える仕事が進められないゆるさと、ルールが異常に厳格という相反する二つの力学が内在し、そのバランスが非常に難しいのです。

ウクライナ戦争のロシアでのマイニングへの影響

ーーロシアについて、ウクライナ戦争の影響はいかがでしょうか。

シベリアに関しては現時点でウクライナとの戦争の影響はあまり見られません。

そのため、既に設置してあるマシンはそのまま稼働し続けています。

ただし、物流が停止する可能性があり、SWIFTからの送金も停止されてしまったため、戦争が始まってから、ロシアでのマイニング管理の受託を新規に受け付けるのは停止しました。

実際、私がロシアを訪れたとき、一部のインド系の銀行で出金できたので全てダメということはないのですが、多くの大手銀行のATMでは私が持っている香港発行のカードで現金を引き出すことができませんでした。

ーー現金は引き出せなかったとのことで、クレジットカードはいかがでしたでしょうか。

私が2022年6月末にロシアを訪れた際には、航空券やホテル代など、香港や日本から発行されたクレジットカードは使用できませんでした。

そのため、現金で支払う以外の選択肢はなく、多くの困難が伴いました。

さらに、ロシア国内では法律でルーブル決済しか認められていません。

そのため、ロシア外にグループ会社を持つ会社と取引する際には、ロシア外でUSDTまたはUSドルで支払うなど、ロシア外で取引を完結させる工夫をとることがあります。

純粋なロシア人との取引は難しい

ーー総合的に見て、ロシアでの取引、ロシアでのマイニングについて小峰さんはどのように見ていますか。

日本生まれ日本育ち、日本企業や日系企業でのみ勤務経験がある人々を「純ジャパ」と言うことがありますが、「純ロシア」との取引だと難しいでしょう。

ロシア人でも、海外での生活や外資系企業で働いた経験、海外との取引の経験がある方であれば、取引は可能だと思います。

2022年の戦争以降、ロシアへの新規マシンの搬入は行っていませんでしたが、ロシアへの送金・新規マシンの搬入をするルートが確立できたので、弊社も新規のマシンのロシアへの搬入を開始する予定です。

これまでも弊社にマイニング機器の管理委託をしている投資家さん、これからマイニング機器の管理委託をしようと考えている方々の現地視察をしていました。

2022年の戦争開始以降、ストップしていましたが、再開を検討しています。

ただ、些細な部分ですがまだ面倒は残っているんです。クレジットカードが使えないので、大量の現金を持参する必要があります。

まあ、面倒はそれくらいとも言えます。

2022年6月、モスクワのボリショイ劇場前。戦争中の国であるとは感じられない。小峰氏提供。

ラオスは社会主義的な規制が存在し取引が困難なため中国人のパートナーと組んでいる

ーーラオスはいかがでしょうか。

「純ジャパ」ならぬ「純ラオス」と取引することは非常に難しいです。

今でも社会主義国であるラオスでは、新規の取引を始めようと提案しても、クロスボーダー取引や資本主義的なディスカッションが難しいです。

社会主義的な規制が存在し、「これだけお金を積んでいただかないとあなたは投資できません」といった規則が敷かれています。

たとえば、「このままでは投資として割に合わない。だから、この方法では私は参加しない」と反論しても、相手はルールを繰り返すばかりです。

そのような状況では、弊社だけでなく、他の投資家も投資を避けるでしょう。これが、とても難しい点なのです。

一方で、私がラオスでのビジネスをする際に一緒に取り組んでいるのは、中国人です。

中国人はラオスに限らず、どこへ行っても商売がうまい。新しいビジネスを開拓する際に中国人と協力すると、迅速に事業を展開できます。

中国人はクロスボーダー取引に長けてビジネスパートナーとして優れている

ーーそれはマイニングに限らずということでしょうか。

私はクリプト以外の分野でもさまざまなクロスボーダーの案件に取り組んでいますが、中国人パートナーの能力には常に感心しています。

彼らは海外とのクロスボーダー取引に長けており、新規投資やビジネス立ち上げでも素晴らしいアイディアを生み出し、必要な人脈を見つける能力を持ち合わせています。

結果としてどんな状況でもうまく事を運んでしまうのです。

中国人パートナーに対して不安を抱いている人も少なくないと思いますが、私はその不安を考慮しても、仕事ができる人と組む重要性を強く感じています。

例えば、ロシア人やラオス人は素朴な人かもしれませんが、仕事がスムーズに進みません。

一方で、多少の悪知恵は働くかもしれませんが、中国人はクレバーです。どちらと組むのが最善か、一考の余地があると感じています。

中国でマイニングが盛んだった理由

ーー中国では一時期高いシェアを誇るほどマイニングが盛んで、一方で2021年にマイニングが禁止されましたが、小峰さんはどのように見ていますか。

ご指摘いただいたとおり、禁止措置が施行される前、ケンブリッジ大学の公開資料を参照するとビットコインのマイニングの7割以上が中国で行われていました。

なぜ中国人がマイニングの7割以上を採掘していたのか、これは考察すべき重要なポイントです。

中国人が海外投資に長けているのは確かですが、マイニングの比率において中国が突出していた背後には理由が存在します。

参考:中国人民銀、仮想通貨を全面禁止 「違法」と位置付け | ロイター
参考:中国でマイニングは止まっていなかった | コインデスク・ジャパン

ーーなぜ中国ではマイニングが盛んだったのでしょうか。

中国本土で投資を行っている人々は、国内で大きな利益を上げて資産を増やしていますが、その利益を元にした人民元を国外に持ち出すことは困難です。

中国にも中国共産党を信用できないと感じている人々が少なからずいらっしゃって、彼らは中国本土から資金を移動させ、海外で金融商品を買ったり、イギリスや日本など海外で不動産を購入したいと考えています。

しかし、中国政府は資金の国外流出を防ぐためのさまざまな手段を講じており、お金を国外に持ち出すのは容易ではありません。

例えば、深圳から香港へ移動する際にハンドキャリーで現金を持ち出す人もいますが、人民元の最大額面は100元で日本円で約2,000円相当。大量の現金を持ち出すのは非常に難しいです。

そういった中で、ビットコインのマイニングが非常に役立ちます。

ーーどういうことでしょうか。

国内で増やした人民元を海外に移したい彼らは、ビットコインのマイニングマシンや電気代を人民元で支払い、マイニング報酬をビットコインで受け取ります。

これにより、事実上、人民元からビットコインへの換金が可能となります。

ビットコインに変換されれば、中国本土を離れた海外で不動産や株式の購入が可能になります。

中国人がビットコインのマイニングに積極的に取り組んだ主要な理由の一つは、この点にあると考えられます。

もちろん、ビットコインが高いリターンをもたらす可能性があり、その魅力に引き寄せられる人々も多いでしょう。

しかし、人民元を国外へ持ち出すための方法として、ビットコインマイニングが利用されていた割合は決して少なくないと思います。

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インタビューの2記事目では、日本人が海外でマイニングすることの魅力などについて伺います。

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