金利が下がると本当に株価は上がるのか。過去60年のチャートを用いて検証

FRBの金利政策が相場を大きく変動させる状況が昨年から続いています。

米国はインフレ対応で急ピッチで政策金利を引き上げており、2023年1月現在、米国の政策金利は4.25~4.50%と2022年当初では多くの市場参加者が想定していなかった水準にまで引き上げられました。

かつ、2023年2月のFOMCでは0.25%の利上げ予測が76.7%、0.5%の利上げ予測が23.3%予測となっており、少なくとも4.50~4.75%まで金利が引き上げられることが確実です。

ただ、インフレが鈍化する傾向が各経済指標で示されており、市場は早くも今年後半からの利下げを折り込むような動きも見られています。

利上げで株安、利下げで株高といった単純な図式を意識する声も多く見かけますが、実際過去の利上げ・利下げ時にはどのように株価は反応したのでしょうか。

結論から言うと過去の金利引き下げ局面では必ずしも株高となったわけではありません。

この記事では、過去の利下げ局面で株価がどう動いたのか、チャートを用いて検証を行います。

米国政策金利の推移

出典:tradingview.com

これは米国の政策金利であるFF金利の推移です。政策金利は上下を繰り返しながら推移しています。

リーマンショック以降、10年弱、金利が下がった状態が続いていましたが、それ以前はもっと短い期間で金利の調整が行われていたことがわかります。

この過去60年間における金利のチャートから金利引き下げ局面でそれぞれ株価がどのように推移したのか次章より見ていきます。

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金利引き下げ局面での株価推移の検証

出典:tradingview.com

過去60年のデータで、金利が引き下げられた局面は上記の12回です。

これを時期と金利水準と変動幅についてまとめたのが以下です。

期間金利の変化金利の変動幅株価の変動幅
2019年7月~2020年3月2.5% → 0.25%-2.25%-19%
2006年7月~2008年12月5.25% → 0.25%-4.0%-29%
2000年11月~2003年7月6.5% → 1.0%-5.5%-12%
1989年4月~1992年12月9.8% → 2.9%-6.9%+36%
1984年8月~1986年9月11.6% → 5.9%-5.7%+44%
1981年6月~1983年1月19.1% → 8.7%-10.4%+12%
1980年4月~1980年7月17.6% → 9%-8.6%+14%
1974年7月~1975年4月12.9% → 5.5%-7.4%+2%
1970年1月~1971年2月9% → 3.7%-5.3%+21%
1966年11月~1967年7月5.8% → 3.8%-2.0%+14%
1960年4月~1960年12月3.9% → 2.0%-1.9%+3%
1957年10月~1958年5月3.5% → 0.6%-2.9%+2%

※2000年以前のデータについては金利目標誘導レンジではなく実際のFF金利

それぞれについて株価の動きを見ていきましょう。

株価には米国の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均指数を用いています。

2006年7月~2008年12月と2019年7月~2020年3月は利下げ局面で株価は下落(しかしコロナショックの影響あり)

2006年7月~2008年12月と2019年7月~2020年3月の利下げでは株価は下落しました。

しかし2019年7月~2020年3月は利下げ当初は株高になっており、2022年3月はコロナショックのために下げています。そのため利下げ自体の影響としては株高に転じています。

2000年11月~2003年7月は利下げ局面で株価は下落

2000年11月~2003年7月の利下げでも株価は下落しました。

こちらについては低金利状態が続いた後も、株価が上昇に転じるまで1年以上を要しています。

1989年4月~1992年12月は利下げ局面で株価は上昇

1989年4月~1992年12月の利下げでは株価は上昇しました。

数年かけて金利を引き下げたケースですが、金利が下がるのに反比例するように株価は右肩上がりに上昇しています。

1980年4月~1980年7月と1981年6月~1983年1月、1984年8月~1986年9月は利下げで株価は上昇

1980年4月~1980年7月と1981年6月~1983年1月、1984年8月~1986年9月の3回の利下げでは株価は上昇しました。

1980年代はじめはインフレに苦しめられており、10%を優に超える高金利状態となっていた時期です。

グラフを見てわかるように、政策金利の推移も上下変動が激しいものになっています。

ただ、株価に関しては上下はありながらも右肩上がりで推移しました。

1966年11月~1967年7月と1970年1月~1971年2月、1974年7月~1975年4月は利下げで株価は上昇

1966年11月~1967年7月と1970年1月~1971年2月、1974年7月~1975年4月の3つの利下げでは株価は上昇しました。

しかし1970年代はオイルショックなどが起き、インフレが急速に進んだ時期です。株価は上昇していますがインフレ率を加味すると、上昇幅は弱いものとなっています。

1957年10月~1958年5月と1960年4月~1960年12月は利下げで株価は上昇

1957年10月~1958年5月と1960年4月~1960年12月は株価は上昇しました。

この時期は金利が高い時期で4%ほどとなっていますので、現在の金利に近い水準です。

金利が引き下げられた途端に株価は上昇するといった動きではありませんが、緩やかに株価が上昇していることが確認できます。

利下げは必ずしも株高を約束しない、因果関係は複雑なため単純な図式化はリスクがある

過去の歴史上、利下げが必ずしも株高を約束するものではないことがわかりました。

また、2020年は利下げの中でもコロナショックがあり、1970年代は株価は上昇していますが並行して高いインフレ率が発生していたりと、単純に金利の変動とそれに伴う株価の変動を見るだけでは正確に評価できないこともわかりました。

「利下げ=株高」と単純な図式を受け入れるのではなく、その時時点の複雑な経済事象をつぶさに観察しつつ、取引に臨む姿勢が必要です。

そして2023年、もし仮に利下げが訪れた場合に、株価はどのように動くのでしょうか。また、株価と連動した動きを見せるビットコインはどのように推移するのでしょうか。

答え合わせは早くて数ヶ月後です。

▼再掲:各利下げ時における株価の推移

期間金利の変化金利の変動幅株価の変動幅
2019年7月~2020年3月2.5% → 0.25%-2.25%-19%
2006年7月~2008年12月5.25% → 0.25%-4.0%-29%
2000年11月~2003年7月6.5% → 1.0%-5.5%-12%
1989年4月~1992年12月9.8% → 2.9%-6.9%+36%
1984年8月~1986年9月11.6% → 5.9%-5.7%+44%
1981年6月~1983年1月19.1% → 8.7%-10.4%+12%
1980年4月~1980年7月17.6% → 9%-8.6%+14%
1974年7月~1975年4月12.9% → 5.5%-7.4%+2%
1970年1月~1971年2月9% → 3.7%-5.3%+21%
1966年11月~1967年7月5.8% → 3.8%-2.0%+14%
1960年4月~1960年12月3.9% → 2.0%-1.9%+3%
1957年10月~1958年5月3.5% → 0.6%-2.9%+2%