SECによる提訴は「起こるべくして起きた」がマーケットにとってはネガティブ Cygnos・三原 弘之氏

bitbank COOを経てCygnos Capitalを運営する三原 弘之氏に、SECによるバイナンスの提訴や最近のマーケットについて伺いました。

三原 弘之氏 プロフィール

早稲田大学を卒業後、楽天株式会社にエンジニアとして入社し、楽天市場の開発業務に従事。2014年、ビットバンク株式会社へ社員第一号として参画し、執行役員COOとして国内最大級の仮想通貨取引所へ成長させる。現在は海外クリプトヘッジファンドの戦略へ分散投資する日本初のファンド、Cygnos Crypto Fund を運営。Twitter:https://twitter.com/h3hara Cygnos:https://cygnos.capital/ https://overseas.cygnos.capital/

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取材実施日

2023年6月14日

SECによる提訴は「起こるべくして起きた」がマーケットにとってはネガティブ

ーーSECのバイナンスとコインベースへの訴訟についてどのように見ているか教えてください。

このタイミングに驚いた人も多いかもしれませんが、内容としてはそれほど予測外のものではないと言えます。

この問題は長年にわたり常に指摘されてきたもので、誰もがいつかはSECが動くと予測していました。

日本やシンガポールなど、規制が行われている国々も多数存在していますし、暗号資産取引所が一部でマネーロンダリングの温床になっているとの認識も一般的なものでしょう。

「起こるべくして起きた」というのが共通の見解だったと考えています。

ーー今回の提訴は今後の暗号資産のマーケットにどのように影響すると見ていますか。

米国における証券問題がより明確になってきた場合、米国居住者や米国系の企業、つまり米国の資金が全く流入しなくなるという状況になれば、それは暗号資産にとっては非常にネガティブでしょう。

その可能性を考えていなかった人が一定数いたということが私にとっては驚きです。

世界で最も富んでいる米国からの資金が明確に流入しなくなった場合、価格上昇の要素がひとつ消える

ーー具体的にはVCの資金が入らないことで新しいプロジェクトが出てこないということでしょうか。もしくは、コインベースのような上場企業にお金が入ってこなくなる、ということでしょうか。

全体的に価格が上昇しなくなるという意味です。

価格が上がる期待があれば投資したいというのが投資家の心理です。

しかし、世界で最も富んでいる米国からの資金が明確に流入しなくなった場合、価格上昇の要素がひとつ消えるわけです。

そのため、買う理由が減少します。

市場においてネガティブな影響があることは明白です。

ただ、新たなブームは常に変化しながら訪れるわけで、今回の事象が新たなムーブメントを生み出す可能性があると思います。

例えば、証券認定の定義によってはPoW型のプロジェクトが新たに隆盛する可能性もあるでしょう。

ちなみに、今回の話は、バイナンスのようないわゆる無国籍とされるが実際にはオフショアに本拠地を構える取引所の問題と、アルトコインの証券認定問題の二つですが、これらは全く別の問題です。

これらは分けて考える必要があります。

証券認定の定義によって今後隆盛するトークンも影響を受ける

ーー証券認定の定義に当てはまらないようなPoW型のトークンが出てくる可能性があるということですね。

はい、その通りです。

しかしながら、ビットコイン以外の全てを証券とするという見方もあると聞きます。

そのような厳格な制限が施行されれば、新たなものが生まれる可能性は低くなるでしょう。

ただし、私自身は法律家ではないので、その辺りの詳細な判断は難しいです。

また、実際にどこまでが証券とみなされるかは、誰も正確にはわかっていないのではないでしょうか。

PoW型が問題にならないかどうかも確定的なことは言えません。

ーーPoW型がもし仮に証券認定されないとする場合、極端には保有するだけで報酬が得られると言えるPoS型と、電気代など新たにリソースを負担する必要があるPoW型の違いが要因になるということでしょうか。

それだけでなく、プレマインの有無も大きいと考えています。

プレマインも存在しないPoW型の場合に、基本的にはHowey Testがベースになると理解してますが、どのような認定、評価になるのか現段階では私は明確には想像できません。

問題視される可能性もあると思いますが、問題ないとされる可能性も少なからずあると見ています。

個人投資家の資金が抜けた現在のマーケットは厳しい状況

ーー三原さんは2014年からビットコインやクリプトに携わられています。現在起きている事象の影響度や市場の雰囲気は過去の出来事と比較していかがでしょうか。

今回の出来事はかなり大きな影響を持つと感じています。

前述のとおり最も大きな資金の流入元となる米国が、今回の訴訟で明確に全てのアルトコインを否定する方向に動くと、流入する資金が減少し、これまでのような相場の形成が難しくなるためです。

ただし、証券の定義がはっきりとしない現状では、予想はむずかしいでしょう。

ーー最近の低迷したマーケットや今回の提訴で、クリプトファンドはどのような状況でしょうか。

クリプトファンドには、VCファンドとヘッジファンドの2つがありますが、ヘッジファンドについては、ファンドの戦略にもよりますが、現在の市場は厳しく、リテールの資金も入っていないため、状況は良好とは言えないでしょう。

ーー「リテールの資金も入っていない」について詳しく教えてください。

個人投資家の資金が市場に入ってきていないということです。

個人投資家の資金が流入しなければ、市場は活気を失い、リターンを出すのが難しくなります。

クリプト系のVCファンドについては、そのファンドがどのような契約を結んでいるのか、早期に売却が可能かなどによって変わると思います。

長期間保有が必要な契約の場合、マーケットが低迷しているため、そのパフォーマンスは良好とは言えないでしょう。

再度クリプトにバブルが訪れると仮定すると、何がそのきっかけとなるかを考えている

ーー最近のマーケットについてどのように見ていますか。

私たちはアービトラージの運用によるマーケットニュートラルなストラテジーを採用しています。

つまり、上昇や下落、レンジなどどのような相場であっても常に一定のリターンを得ることができる運用を行っており、そのためあえて相場の方向感に対して特定の見解を持つことも避けています。

参考:「マーケットニュートラルな戦略でのアービトラージのみで確実にリターンを出す」Cygnos・三原 弘之氏 1/3

しかし2024年に迎えるビットコインの半減期について、これまでのナラティブを今後も継承していくのか注目しています。

また、バイナンスについてはこれからポジティブなニュースが出てくることはなく、悪いニュースばかりで、それがマーケットの重荷になる可能性があります。

ただ、SECから警告を受けて既に資金を引き出した人もいるはずで、FTXショックのような大きな衝撃にはならないかもしれません。

ーーそのほか、現在の市場について考えていることはありますか。

再度クリプトにバブルが訪れると仮定すると、何がそのきっかけとなるかは常に考えています。

ただ、恐らくいま既にあるもの、いま予想として挙がっているものではないことは確かです。

マーケットがこれからどのように動こうとも良好な結果が得られるよう準備をしておくべき

ーークリプトのマーケット参加者が注意すべき点、このタイミングで行った方が良い行動などはありますか。

何かが起きたときに備えて、多くの選択肢を持っておくことが重要だと思います。

特定の取引を行いたいと考えたときに、その取引が実行できない状況は望ましくありません。

何かが起こったときに、直ちに対応できる準備を整えておくことが必要です。

それはおそらく誰にでもできることでしょう。

ーー相場がブルでもベアでもどちらに動いたとしても、良好な結果が得られるよう準備を進めておくべきということですね。

その通りです。

良い事態であろうと悪い事態であろうと、何らかのイベントがあってそれに連動して相場が動きが起きます。

それが利益を生み出す機会となることはほぼ確実で、その意味で、個々の投資家がそれぞれ準備を整えておくべきです。

以前の冬の相場と比較して現在のマーケットはまだ人が残っている

ーー三原さんは2014年からクリプトに携わられているので、クリプトのマーケットについては2回のサイクルを経験しています。現在のマーケットは過去の冬の相場と比較して共通点はありますか。

それほど共通点はありません。過去の閑散期と比べてまだ活発であると見ています。

値動きだけを見ると落ち着いているように見えるかもしれませんが、本当にマーケットが冷え込むときには事業者の数も減っていきます。

例えば、クリプトのイベントにはまだまだ個人も事業者も人が集まっています。

過去の閑散期では、こうしたイベントはほとんど実施されていませんでしたし、実施されても人が集まりませんでした。

マーケットにはまだ人々がたくさんいる印象があります。事業者については調達した資金がまだ残っているからかもしれません。

しかし「だからまだ今後も価格が下がる」と考えられるほどマーケットはシンプルではありませんのでそこは注意が必要です。

バンコクへの海外移住視察の募集

ーー読者にメッセージをお願いします。

話は少し変わりますが、何かが起きたときの準備の観点から、8月7日に移住者の視察を行う予定です。

すでに参加を希望する人がいて、開催は確定しています。

もし興味がある方がいたら、ぜひ応募してください。

ーー視察はどの地域でしょうか。

バンコクを予定しています。

朝10時から夕方6時頃まで物件を巡ったり、日系の会計事務所を訪れたりする予定です。

現地集合、現地解散となり、参加費は1人800ドルです。

もし興味がある方がいれば、ぜひ応募してください。

ーー参加人数の上限などはありますか。

現状では申し込み数はまだ定かではありませんが、もし増えた場合は再考します。

現在は3組程度の予定ですが、増やすことも可能です。

ーー海外移住に興味がある方向けの、移住を想定した物件の視察ということでしょうか。

その通りです。

バンコクに移住を検討している方々と一緒に物件を見たり、会計事務所の方から話を聞いたりする予定です。

ーーBVIや海外移住に真剣に取り組みたいのであれば、相場が盛り上がる前の今が良いタイミングかもしれません。

そうですね、準備をするという観点から考えれば、今が適切なタイミングだと考えています。

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