「本格的なブル相場のためには短期保有アドレス数が伸びなければならないが数字は横ばい」ビットバンク アナリスト・長谷川友哉氏

ビットバンク社でマーケット・アナリストを務める長谷川友哉氏に、現在のマーケットについてどのように見ているのか伺いました。

長谷川友哉氏 プロフィール

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と暗号資産市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。

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取材実施日

2023年12月14日

市場は2024年末時点で4.0%の金利と3回の利下げを織り込んでいるがやや織り込みすぎな印象

ーー昨日のFOMCではハト派寄りの声明が出ていましたが、現在の金利の値動きについてはどのように見ていますか。

市場が利下げを織り込み過ぎな印象です。

今回のFOMCにおける2024年の見通しで2024年末は4.75%での着地となっていますが、市場は4.0%での着地を予想しており、織り込みすぎと感じています。

今後のインフレ率の進捗によってこの利下げ3回分の差分がどのように埋まるのか決まるはずで、特に2024年の第1四半期は注視しておかなければならないと思います。

ーー直近のビットコインの価格についてどのように見ていますか。

4万5,000ドルの上抜けに失敗して、12月11日週の頭に大きめの調整が起こったところで、FOMCの内容では予想外にハト派に寄ったことで反発しています。

12月11日の下落でテクニカル的な過熱感は弱まっており、トレンドのテクニカルはまだ強いため、年末までにもう一段上に行くこともあり得ると考えています。

しかしその場合でも、テクニカル的にはまた過熱感が強くなってしまいますので、4万8,000ドルまで上昇したとしてもまた売られる局面だろうとは見ています。

ーー「12月11日の下落でテクニカル的な過熱感は弱まっており」とは具体的にはどのように判断したのでしょうか。

シンプルにRSIを見ていますね。

ビットコインのRSIは賛否両論なところがあり、一般的にはRSIが70%を超えると買われ過ぎと言われていますが、ビットコインの場合は80%、90%まで上昇することが少なくありません。RSIが折れない限りは上昇する印象です。

本格的なブル相場が訪れるためには短期保有アドレス数が伸びなければならないが、数字は横ばい

ーーオンチェーンのデータについて、特徴的な変化や動きがあれば教えてください。

面白いほど特徴的な動きはありません。今年はビットコインの価格が2倍以上に伸びましたが、一般の個人投資家は全く増えていません。

直近の一週間でやや増えてはいますが、それでも価格の伸びと比較すれば微々たるものです。

本格的なブル相場が訪れるためには短期保有アドレス数が伸びなければなりませんが、この数字も横ばいです。

史上最高値間近にならなければ短期保有アドレスは顕著に伸びないようですが、ビットコインもドル建てでは史上最高値から30%ほど及ばずで、本格的な増加は来年からのようです。

ーー短期保有アドレス数は最近も増えていないとのことですが、過去のデータでは短期保有数が増えるタイミングはいつ頃でしょうか。

前回の史上最高値を更新しそうな勢いが出始めたタイミングで、前回のサイクルでは2020年12月の終わりの方で大きく増加しています。

▼ビットコインの短期保有アドレス数の推移。Glassnodeよりbitbankが作成

▼ビットコインの短期保有アドレス数の推移。Glassnodeよりbitbankが作成

ーービットコインの価格について4年周期で考えた際に、過去の動きと類似する推移もあれば、大きく乖離する動きもあります。どのように見ていますか。

おっしゃるとおり、特に2019年のサイクルと比較すると、2020年にコロナショックという予想しえないイベントが生じており、まったく同じように動いていません。

もし同じようなショックが起こるとすれば米国のハードランディングリスクですが、それも結局は緩和に傾くイベントとなるので、それこそ同じようなサイクルを繰り返す動きになってしまいそうではあります。

ビットコインのETF承認は固いが過去の歴史を見ても事実売りに注意

ーー前回8月のインタビューから、マーケットに対する見方やシナリオなど、更新されたものがあれば教えてください。

ETFの承認が濃厚になってきている点が一番大きいと考えています。

8月の時点では審査期限を最長まで延ばすと予想していましたが、11月に全審査結果を2024年1月に出す可能性が浮上しており、SECは承認する前提で地ならしをしているような印象を受けました。

例えば、フランクリンテンプルトンとハッシュデックスのETFの審査を前倒しにし、その2件のパブリックコメントの募集期限は1月5日になりました。

参考:フランクリン・テンプルトンとハッシュデックスのビットコインETF 米SECがパブリックオピニオン募集 | Cointelegraph

1月10日にアークインベストメントのETFの最終判断期限があるので、1月5日までにコメント全部募集し終えて、6日から10日の間に全部まとめて承認結果を出す。そういった動きに見えます。

参考:米アーク・インベスト、仮想通貨関連のETF商品群を発売へ|COINPOST

ーーそれは承認しないとしても、ということでしょうか。

承認しないのであれば、なぜ審査を前倒ししたのかわかりません。

元々、1月1日が審査期限だったものを11月に前倒ししていますが、これはこれまでなかったことなんです。タイミングが良すぎるなと感じますね。

ーー話を伺って改めてETF承認は確実に思えるものの、もう十分価格に織り込まれてそうです。

おっしゃるとおりで、第1四半期のリスクファクターの一つは事実売りです。

2017年12月にCBOEにビットコイン先物が上場された際も噂で買って事実で売られました。

参考:ビットコイン、ウォール街に上陸-先物一時26%値上がりで取引停止も|Bloomberg

2021年にコインベースがナスダックに上場した際も売られています。

これまでも事実売りは各所であったので、今回もその可能性は決して低くないと思います。

参考:コインベースがナスダックに上場!多様化するビットコイン投資の手法| マネクリ

2024年は半減期、利下げ、ETF承認に注目

ーーETFと半減期以外で2024年で注目しているイベントがあれば教えてください。

利下げの開始タイミングです。

半減期で供給が減少し、利下げで需要が増え、ETFで資金の流入ルートが増えて流入が円滑になる、この三つの好材料が噛み合えば来年は強い上昇相場になると見ています。

ーー出来過ぎのシナリオで逆に不安を感じています。

同感ですが、半減期は確実に訪れますし、ETFも先ほどの理由によりほぼ承認されると思います。利下げもほぼ確実でしょう。

なので、出来過ぎなシナリオではありますが、2024年はこの三つがメインテーマになると考えています。

ーーあまりにもみんなが傾いてるときは怖いという経験則があります。

いまそれを言っている人たちのほとんどは古参で深くビットコインに携わっている人たちで、関わりが薄い人たちはこの話をしていません。なのでそれほど恐れなくてもいいのではと思います。

米国のハードランディングリスクや中国の景気後退リスクも警戒が必要

ーー界隈では2024年は相場が盛り上がると予想している人がほとんどですが、逆に盛り上がらない可能性があるとすればどのような可能性が考えられますか。

あり得るとすれば米国の規制関連でしょうか。

バイナンスが中東のテロ組織と繋がりあったという指摘がありましたが、また本格化する可能性はあると思います。

参考:暗号資産交換業最大手バイナンスがマネロン対策違反で米政府に罰金支払い|野村総合研究所(NRI)

そのほか、テザーもまだ目をつけられているはずで、もし運営に支障が出るなどあれば、暗号資産の市場全体で流動性危機が起こるというのもあり得る。

これまでと同様、規制リスクのヘッドラインが出てくるたびに一時的に相場の重しになるというイメージを持っています。

ーーシリコンバレーバンク破綻によるUSDCショックのように、米国の景気が暗号資産に及ぼす影響についてはいかがでしょうか。

要はハードランディングリスクということだと思いますが、不動産周りでは、個人向けも企業向けも返済が滞っているという情報を各所で見かけます。

特に商業向けのローンは3月以降に減少してから回復できていないというところもあり、足元だと消費に陰りが見えてきている部分があります。

参考:米銀、第3四半期も商業用不動産ローンが重荷に | ロイター

9月に出たベージュブックという経済報告では一部の地域で消費者が貯蓄の切り崩しから借り入れする傾向に変わったと書かれていて、要は借りなければ消費ができない状況が出てきているということで、個人的には大きなネガティブ材料として注目しています。

参考:9月の米地区連銀経済報告、各地区では所得層により消費にばらつきも|ジェトロ

さらには、中国が世界経済の足かせになる可能性もまだそれほど市場は織り込んでいないはずで、潜在的なリスクとしては残っていると思います。

中国の政府がどれだけ迅速に改革を進められるかという点が一番の鍵ですが、それでもまだまだPMIも継続的に50を下回った状況ですし、不動産業界は不況です。デッドが膨らんでいて良くない状態になっています。

参考:中国製造業PMI、11月は49.4に予想外の低下 2カ月連続50割れ | ロイター

若者の失業率も悪すぎて公表できないからか、今年の8月時点で既に公表が中止になっていますし、出生率も下がってきています。

参考:中国がまたデータ公表停止 過去最悪を更新し続ける「若者の失業率」 批判をそらす狙い?SNSでは反発:東京新聞 TOKYO Web

中国経済は6-8%成長してきていましたが、来年にかけては大きくペースが落ちるはずで、ムーディーズも先日格下げしています。

そういった懸念材料が豊富な現状を鑑みると、引き続きリスクファクターとして警戒するべきだと思います。

参考:ムーディーズ、中国格付け見通し「ネガティブ」に 債務問題を懸念 | ロイター

米国も中国と多くの貿易を行っており、今後波及して足かせになる可能性は高いです。

また、最近は中国国内の金の価格にプレミアムがついているとのことで、国民も備えているような印象があります。

参考:中国マネー、金に退避 景気停滞や人民元安を懸念 – 日本経済新聞

ビットコインのETFに入ってきたお金はアルトコインに循環しない

ーーそのほか、今後の相場で注目しているものがあれば教えてください。

2024年はビットコインのドミナンスが上がると見ています。

いまは50%ですが、来年は60%、70%台まで回復すると予想しています。

ーーそれはなぜでしょうか。

アルトコインも上がる材料があるとは思いますが、これまでのICOブーム、NFTブームのような、必ずそこを経由しなければならない、なおかつ誰でも簡単にできる、といったプロジェクトは来年はあまり出てこないのではと考えているからです。

NFTゲームについては最近は国内も動きがありますが、ブロックチェーンを取り入れることによっていいゲームができる、とはまだなっていません。

いまはまだ試行錯誤の時期で、ゲーム自体がちゃんと面白くてその上でNFTの要素が加わってすごく売れる、というのはもう少し先になる感覚があります。

それに対して、ビットコインはETFが承認されればこれまでと全く異なるお金の流れができます。

いままではビットコインが上昇し、例えばICOが出てきて、ICOをやるにはイーサリアムを買わなければならずETHが上昇ということがありましたが、ETFに入ってきたビットコインのお金はそこに留まります。ほかのアルトコインに循環しないんですね。

もちろん、ビットコインが上昇しているから他のコインも買ってみようという買い圧はあるでしょうが、ビットコインとは桁が違うはずで、それに伴って、ビットコインのドミナンスが60%、70%台まで回復するという予想をしています。

循環しない資金が入ってくることでこれまでとはマーケットの動き方が変わるかもしれません。

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