2分で10万円を溶かした初めてのFXから失敗を重ねながら安定的に利益を上げられるようになったやがてゃ氏。損をしても、取り戻すために取引を続けたほうが良いと言うやがてゃ氏に、トレードの失敗談や失敗の中から学んだことなどを聞いた。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司
やがてゃ氏 プロフィール
歴10年のトレーダー。チャートの形やファンダメンタルズを用いた分析を行い、通貨やゴールド、暗号資産を取引。IT企業の副代表やバーの経営なども行っている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/Light_Yagami_a
note:https://note.com/bakueki/
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ビットコインが下げ止まらず3,000万円の損失
――印象に残る取引の成功はありますか。
何か特別なことをして大きく勝ったといった成功体験はありませんが、ほとんどが値幅を抜くトレードになるので、1回1回のトレードでの達成感はかなりありますね。
1週間、1カ月などの期間でポジションを持つことがあって、ビットコインでいうと2万ドル抜いたとか、FXで5、6円の幅を抜いたとか、狙い通りの成果があるとやはりうれしいですね。
――印象的な失敗はありますか。
数多くの失敗をしていますし、結構覚えているものですが、最も印象的なのは2021年秋のビットコインの暴落です。
確か5万ドル割れして、そこから反転すると思っていたのですが、さらに1万ドル一気に下落するという局面でした。
それで3,000万円ほどの損失を出しました。
――それは損切りできなかったということですか。
2021年は春先に大きく下げた後、その後6万ドル以上に高騰しましたが、そのとき、5万ドルを割ったあたりで下げ止まって値を戻すと読んでいたんです。
ビットコインは1万ドルごとの節目でいったん下げ止まって戻すことが多いんです。
だから、今回もいけるだろうと思っていたのですが、5万ドルで止まらずに、そのまま1万ドル分、一瞬にして飛んでしまいました。
もちろん損切りはしたんですけど、下落の速度が速くてとても追いつかなかった。判断も少し遅れましたね。
botの注文を利用して損切りの損を小さくする
――ストップロスは入れていなかったのですか。
僕は寝るとき以外、ストップロスは入れないんです。ストップロスをかけると、成り行きで全ポジションを投げることになるので。
そうではなく分割して決済したほうが、被害が少なくなることが多いんです。
例えば、ポジションを100枚持っていたとしたら、100枚を一気に決済するのではなく、10枚ずつ10回に分けたほうが滑らない。
仮に板の一番上の注文が40枚あったとしたら、そこで100枚投げると足りない60枚分はその下以降の注文を食ってしまいますよね。
でも10枚ずつ決済すると、botらしき新規の注文が入って来て板の枚数が維持されるんです。
一瞬の取り引きなので、10枚ずつ連打することになるんですが、それをやると100枚一気に決済するよりは、損失を抑えられる。損切りするときは、いつもそういうやり方をします。
ただ、このときは板の飛び方が大きく、まとまった枚数を投げたくないという気持ちが先行したこともあって、躊躇している間にあれよあれよという感じで下げて損失が膨らんでしまいました。
いつものやり方が裏目に出た形になりました。
大きいボラティリティで損を出した時はそのボラのスキャで損を取り返す
――数千万単位の損失がでたときは、どうやってメンタルを保つのですか。
まあ、しゃあないな、みたいな感じですね。判断自体は間違ってなかったから別に悔やんでもしょうがないよねと。
最初の頃なら10万20万でも落ち込んだんでしょうが。損失自体には、何も感じませんね。
損失を出した後もガンガン取引します。
さっき言った下に大きく下げるような相場などは、短期のボラティリティが高いので1,000万2,000万ぐらいの損失なら、すぐにスキャルピングで埋められることが多いので。
このときも2日くらいで取り戻しました。
――大きな損失を出した直後でも、いつも通りのトレードができるんですか。焦ってミスしたりしないのでしょうか。
いつもはスイングで取引してますが、5分で1万ドル落ちるようなボラティリティの高い局面では、スキャルピングのほうが儲かります。
すぐに1,000ドル2,000ドルとピュンピュン動くんで5,000ドルぐらいの値幅は抜けますよね。
スキャルピングも久しぶりになると勘が鈍ってうまくいかないこともありますが、失敗したり成功したりを繰り返して、一連のトレードを通してプラスで終えられることが多いです。
22年の相場でいえば、日銀の為替介入のときのような突発的にボラティリティが高くなったような局面は得意にしています。
損失の経験の中から負けるパターンを自覚する
――損失を出した後に取り返そうと熱くなって余計に損失を重ねてしまう人もいますが、そういう人はどう対策をしたらよいのでしょう。
経験を積むしかないでしょう。
損を重ねていくうちに、この動きはいつも負けているパターンだと分かるようになってくるので、そのパターンを避けたり、逆の行動を取ったりすれば勝てるようになるはずです。
僕は体で覚えるというか、感覚に頼るところがあるので、休むより、とりあえず経験を重ねたほうが良いと思いますね。
よく、損をした後は取り戻そうとしちゃいけない、いったん頭を冷やしたほうがいい、と言いますが、僕はあえて取り戻しにいったほうが良いと思っています。
やらないことには、どうして自分が熱くなるか、熱くなったときの自分の精神状態もわかりません。
僕も取引を重ねて自分の負けパターンを自覚するようになってからは負けなくなりましたね。そこからは、びっくりするくらい安定して利益を出せるようになりました。
――自分の弱点や負けパターンを知るために、取引の記録や振り返りをノートに残したりするんですか。
僕は取引結果をまとめないし、振り返りもほとんどしません。取引ツールに保存されている取引履歴を見ることはありますが、それをじっくり振り返ったり分析したりはしません。
しっかり記録している人も多いし、初心者にノートを勧める人もいますが、僕はあまり意味を感じないですね。
同じ相場は2度と訪れないので、いつも新たな局面にその都度、対応していかなければならないので。
直感的に、この相場では勝てそう、今は苦手な局面だと判断することが大切なので、感覚を磨くことが大切だと思っています。
損切りのラインは日足を見て決める
――損切りが苦手な人も多いと思うのですが、どうしたら損切りがうまくなるのでしょうか。
損切りが苦手な人はエントリーポイントと損切りのラインが近すぎるような気がします。
通常、相場は上がったり下がったりを繰り返しながらトレンドを形成していきますから、方向性さえ合っていれば、一時的に下がっても、いずれは利益が増えていくはずです。
しかし、損切りラインが近ければ、反転する前に損切りになってしまう。
日足レベルで見て、安値更新するあたりを損切りのラインにすればいいのに、5分とか15分、1時間の足で安値更新するあたりにラインを置いている。このため、日足レベルで支えているラインが守られているのに、損切りしてしまうんです。
こうした人はエントリーポイントを厳選するか。ストップを置く位置を堅い水平線に変えた方がいいのではないかと思います。レバレッジをかけすぎて、そこまで持てない人もいると思いますが。
――一気に勝とうとして、レバレッジをかけすぎてしまう人についてはいかがでしょうか。
そういう考えになるのもわかるんですが、だったら、もっと時間軸を短くして反転したときに半分だけ投げるようにするとか、工夫をしないと資金が手元に残らないような気がします。
大局の安値を割ってくることもありますけど、そこまで割れたら諦めもつくでしょう。
コツコツドカンは2種類ある
――コツコツドカンで負けることについてはいかがでしょうか。
負け方にもよりますが、コツコツドカン型の負け方は大きく分けて2つあって、損切りせずにナンピンを繰り返して最後に大きく負けるのと、苦手相場になったとたんに狼狽してドカンとやってしまう2つのパターンしかないと思います。
このうち、ナンピンを重ねるタイプは救いようがないですね。ナンピンをしても無駄だということを、自分で気付くしかない。
ナンピンをする人はたいてい、根拠もないのにナンピンしているんですよ。ちゃんと計算して、このポイントを抜けたら切ろうと考えながらロットを積んでいったら、損切りしたときの損失は予想が付きますよね。
想定の範囲内の損失でとどまるので、ドカンと大損することはありません。
ですから、ナンピンする癖のある人がコツコツドカンから抜け出すには、まずは損失額を計算して損切りしても想定内の損失で済むようにする。相場の流れが変わって狼狽する人は、自分が苦手な相場を把握しておくということです。
特にナンピンで負けるのは、もったいないですよね。
――短期取引でもナンピンをする人は多いのでしょうか。
短期でもいますよ。節目割れでここでリバウンドするだろうと思って買ったのに、全然戻らないというときに、頭の中はリバウンド前提なので損切りを全く考えていないという場合などですね。
そして、もう一段下がっても、買ったポイントまでは戻すと信じているので、ポジションを積み増すんだけど、まったく反発しない。
このパターンのナンピンは、たいてい助かりません。
――そういう方はどのように対処するといいのでしょうか。
そういう人は、時計を見ながら時間を意識してトレードしたほうがいいと思います。
たとえば、15分足を見ながら逆張りでトレードする場合、13時29分にポジションを取ると、その直後の13時30分に足が1本できますよね。
そこの安値に損切りのラインを置いてチャートの動きを見ていくと、とりあえずは損切りのタイミングが遅れるということはなくなりますよね。
これは足ができる直前にエントリーするのが大切で、13時16分とか、足ができた直後にエントリーしてしまうと、次の足ができるまでの14分間に上下に揺さぶられたり、オーダーが厚くなったりするので、直前がいいんですね。
失敗を重ねていくなかで自分の弱点や得意なパターンを知ることが大切だと言うやがてゃ氏。次回はトレードに向いている人の特徴やトレードを始めたい人へのメッセージについて聞きます。
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