「メディアの圧力によって買い進められる局面はもはや安全ではない」グローバル・マクロ トレーダー平田氏 2/4

2年間、仮想通貨市場の動きを見続けたうえで、2019年からトレードを始めた個人投資家の平田氏。コロナ禍による暴落後に大量の仮想通貨を買い、大きなリターンを得た。どのようにしてトレードを拡大し、利益を上げていったのか、取引の成功談や失敗談を通じて、トレード手法や考え方について平田氏に聞いた。

平田氏プロフィール
インベストデイズ合同会社 代表
国内理系大学院(物理系)卒業後、国内大手金融機関(IT戦略部門、投資銀行部門)に勤め、その後、独立した個人投資家。勤めの間で個人でトレードを勉強し、独立後、2020年の暗号通貨のバブル相場で数千万円のリターンを得る。
大手証券会社行の経験を活かし、経済歴史の書物や調査分析レポートなどを中心に情報収集し、世界各国の中央銀行、中央政府、大企業の戦略を読み解くのが得意。現在は暗号資産、株式、コモディティ、為替、国債など広くトレード。
中長期のロングポジションと短期の売買を行い、常にどのような相場でもリスクを限定し利益を出すようなトレードを得意とする。
記事はこちら。https://burry.co.jp/articles/tag/hirata/
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

コロナショック時に暗号資産を売買してリターンを得る

――これまでを振り返って、あのときはうまくいったというトレードはどのようなものですか。

一つのトレードが成功したといっても、再現性があるかどうかは別の問題なので、他の方の参考になるかは分からないのですが……。高いパフォーマンスを得られたときといえば、やはり、コロナの暴落時のトレードですね。暴落時に資金を突っ込んだ判断は結果論としては正しかったと思います。

当時は、連日、世界のコロナ感染者数が報道されていて、テレビをつけると、感染を防ぐためにこんな事をしなさい、あんな事をしなさいと言っているという状況でした。

世の中といえば、マスクがない、感染を防ぐためにできるだけ外出は控えるという状況で、アメリカの株式市場では株の暴落が止まらなくて、何度もサーキットブレーカーが発動されて、取引が中断される。

その渦中で、仮想通貨に資金を突っ込んだ。そのときの自分の情動は、比較的良いパフォーマンスを生み出せたと思います。

その他で言えば、コロナ暴落時のトレードに比べたら金額は小さいですが、あまり大きくない規模のアルトコインで印象的なトレードがあります。

他の通貨と比べて大きく急落していて、ボリンジャーバンドやRSIをみても明らかに売られ過ぎだったんですが、一時的に資金を入れて、どこまで上がるかはちょっと見当がつかないので、指値で売りを入れておくという売買はやりましたね

あんまり良いやり方ではないんですが、席を外していても、いつの間にか上がっていて、利益が確定しているという方法です。場合にもよりますけど、こうしたやり方は再現性があるので、他の人の参考になるかもしれません。

平田氏が売買したコロナショック時を含む2020年3月前後のBTC/USDのチャート。3月時に大きく下げ、その後、4ヶ月で元値以上の価格まで戻している。出典:tradingview.com

――コロナ感染拡大時のトレードについて聞きたいのですが、ニュースになり始めた頃から、チャンスがあるかもしれないと思っていたのですか。

コロナ感染症のニュースと言うよりも、チャートを追っていました

1月くらいから下がり始めていて、少しずつ買っていたんですが、もう一段の暴落があれば突っ込もうと思っていました。そして3月になって暴落し、私的に「今下がり切った」と判断したのが、ちょうど米国市場でサーキットブレーカーが働き、連日ニュースで経済危機が報じられている時期でした。

そこの2日間で、大量の資金を投入しました。

だから、ニュースを見て何かを感じたというよりも、チャートの動きを見て判断した。そのきっかけが、コロナ禍による経済危機だったということですね。

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メディアの動向を見て2021年の暗号資産のブル相場でうまく売り抜ける

――21年4月から5月にかけての暴落では、うまく売り抜けたと聞きました。

当時は、2020年10月ぐらいから急騰し始めて、一時的に値を下げながらも上昇する状態が数カ月続いて、さらにもう一段大きく吹き上がったんですよね。このとき、長期で持っているコインがあったので、どこかで売り抜けようとタイミングを探していました。

そのときは毎日、チャートを見るというよりも、ニュースなどで世間の動向を見ていました。

平田氏が売り抜けたという2021年4月前後のBTC/USDのチャート。出典:tradingview.com

例えば渋谷駅前に街頭広告がありますよね。

GMOグループなどが仮想通貨の宣伝をしていますが、広告を出すには数億円かかるわけです。そういったものが、どれくらい街にあふれているのかを見に行っていました。それがピークに達したとき、買い相場もピークを迎える可能性が高いので。

そのほか、テレビのニュースを見て、朝、テレビ東京の「Newsモーニングサテライト」で仮想通貨が取り上げられていた、夜の経済ニュースでも仮想通貨の話が出てきた、ということになると、もういよいよピークアウトを迎えるな、と。

渋谷駅構内のGMOコインの広告。インタビュアー撮影。2021年6月29日。

そうした状況から、そろそろ売らなくては、となったのが3月以降ですね。そして、決定的だったのがイベントです。インターネットなどで仮想通貨関連の有料イベントをやっていますが、確かコインデスクの世界イベントだったと思います。

1万円か1万5000円かの参加料を払って視聴したんですが、レイ・ダリオが登壇して対談をしたんですね。レイ・ダリオの講演となれば、相当金がかかっていますよ。これは、相当な金を掛けたイベントだなと思い、いよいよ売り抜ける決意を固めました。

でも、ピークを迎えるときは、たいてい最後の上昇が一番伸びるので、値動きを見ながら1カ月か2カ月ぐらいかけて、すべて売ってしまいました。その後、暴落が始まったので、結果的にはうまくいきましたね。

急落した直後に買ったものの、意外と上がらないので売ってしまったということもあったので、完全に値動きを読んでいたわけではなくて、たまたまうまくいったということですね。

仮想通貨に限らず、相場が上昇しきった段階から、さらに買い進める人の動機を考えたら、それはメディアなんですね。「メディアが取り上げていたから買う」という。そして、メディアの圧力によって、買い進められる局面はもはや安全ではない。

眠れなくなるほど不安になったので、これ以上は不安に耐えられないと思って、売る決意をしました。

――普段からニュースや広告、イベント内容などをチェックしているんですか。

そうですね。民放のニュース番組で誰が対談するのか、イベントに誰が登壇するのかといったことはすべてチェックして知っています。レイ・ダリオの対談のときは、思った以上しっかり話していたというのもポイントでした。

日本だけではなく、イギリス、フランス、アメリカに加え、インドなど新興国の国々も含めて配信されるわけですから、世界中に影響を及ぼす。そうした世界情勢も見ながら判断しています。

そして、世界的に大きな市場の一つである日本の首都・東京、その中でもITの中心は渋谷なわけです。だから、渋谷の街角も見る。渋谷の街に、仮想通貨のCMが流れ、ポスターやチラシもベタベタ貼られていると、いよいよだなと怖さを感じるわけです。

トレードでコインを持っている間はずっと怖いんですけどね。上昇が始まると、いつピークアウトするかと怖さは常にあるのですが、その怖さがMAXに達すると「これ以上は持てない」と判断する。CNNなどでも仮想通貨を取り上げたニュースが大量に報じられるようになると、耐えられなくなるということですね。

「勝つ」という95%の確信があり、負けても大損しないという状況でないと取引をしない

――印象的な失敗談はありますか。

失敗した経験はありすぎて、どれを挙げればいいのか分からないくらいです。

買ったコインが大きく下がってしまって、しばらく様子見てても大丈夫だろうと思って持ち続けていたんですが、そのコインに関する悪いニュースが出て、さらに下がってしまったんです。

これで、もう耐えられないと思って損切りしてしまったんですが、その1週間後に元の値に戻ってしまった。そんなふうに損切り後に、いきなり急騰するというのはしょっちゅうですね。みなさん、同じような経験をしていると思うんですが。

後は、気を付けなくてはならないと思っているのが、自分が決めたルールを守るということです。

誰でも、投資に使える資金量を決めていると思います。今いくら現金を持っていて、どれぐらい今週使えるのか、利益が出たらどうするのか、なんとなく想定しているでしょう。

私も決めているのですが、気づいたら、そうしたルールを破っていることがある。自己管理ができてないんですね。そこが自分の下手なところで、課題だと思っています。

――トレードがうまくいくようになったきっかけや気づきはどのようなものでしょうか。

最初は全く利益が出なかったですね。トレードの時間軸を広げることによって、最終的に無理やりプラスで終わらせるという卑怯なやり方をして損失を抑えていたというだけで。想定と違う値動きをすることがしょっちゅうで、なんとかプラスで終わらせましたが、勝負としては完全に負けている状態でした。

その中で、値動きに対してレンジで取っていくっていう形で、少しずつ損失を小さくしていって、利益を出していくという感じでした。履歴を見ると、多分半分ぐらい負けているはずです。

それでも、勝ったときのごく一部で大きな利益を出していたので、トータルでプラスになっているという感じで、それがそのまま取引のスタイルとなっていきました。それは、取引を繰り返して、勉強しながら身に付けていった手法で、そのやり方が定着したのは始めてから1年ぐらいですかね。

ただ、それは私の場合、そうだったというだけで、どれくらいトレードに集中するか、事前にどれくらいの知識を持っているかによって変わってくるので、人それぞれだと思います。

――トレードをする際に心がけていることはありますか。

損をしないことですね。損をしなければ生き残ることができます。ですから、「いまだったら入れそうかな」ぐらいの気持ちでは買いませんね。「勝つ」という95%の確信があり、負けても大損しないという状況でないと取引をしない。

すごく臆病な性格だと思います。なぜなら、自分の考え方は常に間違っていると思っていますから。過信して資金を突っ込みすぎることや、損切りが遅くなることも避けたいと思っています。

――最悪の場合でも長期保有できるようファンダメンタルズの良いコインを選ぶというのも、大負けしないためなんですね。

そうです。

これまでを振り返ってみると、最初は資金入れずにずっと相場を眺めて読む力をつけて、自分でも調べ切ってからトレードを始めたことや、小さな金額からトレードをしていって利益を積み上げていくやり方を取ってきたことなど、勝ち負けにのめり込まなかったという部分はありますよね。トレードで早く大きな利益を得ることよりも、実力をつけることを優先させてきましたし。

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前回のインタビューはこちら。

平田氏、執筆のトレードの振り返りに関する記事はこちら。