Nayuta Inc. CEOの栗元氏に、クリプトでまだマーケットに織り込まれていないリスクなどについて伺いました。
栗元 憲一氏 プロフィール
先端SoC(SystemOnChip)のアーキテクチャ設計、回路設計、EDAソフトウェアアルゴリズムの研究開発に10年以上取り組む。2011年以降にAndroidとハードウェアを組み合わせたIoT開発を行う。その最中にブロックチェーンとIoTの組み合わせに可能性を感じ、ブロックチェーンの研究を開始。
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取材実施日
2023年4月6日
ChatGPTのようなAIが強くなればビットコインの価値も上がる
ーー栗元さんがビットコイナー反省会で発言していた、「ChatGPTのようなAIが強くなればビットコインの価値も上がる」について、教えてください。(参考:アジアでついにビットコインの時代が来ている? カンファレンス振り返り特別放送)
いろいろな使い方を試してみた結果、AIがこのまま発展していった場合、人間が行う複雑な問題に対する判断について、人間よりもAIが正しくできる可能性があると感じました。
AIの普及は、私が生きている間に実現する可能性があると思っています。
世の中には複雑な問題がたくさんあります。
例えば、コロナ禍において世界中のロジスティクスが大混乱に陥って、モノが全然手に入らないという事態が起きました。
その時に、全部のデータがAIに集まって「ここを捌いたら一番早く解決できるよ」と的確なアドバイスが得られる世界がありえると思っています。
そうすると、人々はAIの判断に従うのが当然のようになっていく可能性があるでしょう。
ただ、それは中央集権的な力が強くなった世界だと思います。
そのような傾向が極限まで強くなったときに、個人の自由という懸念の重要性が出てくると感じています。その点、ビットコインは中央集権とは全く逆の性質を持っています。
ビットコインをベースにした個人の権利が強い経済圏があれば、100%支配されない世界が実現できると思っています。
それは小さなコミュニティかもしれませんし、世界的なものになるかもわかりませんが、そういうことが実現しうると感じています。
もしくは誰かが最先端のAIとビットコインの非中央集権制を組み合わせた最適なシステムを作るのかもしれません。
いろいろな影響はお互いに受け合うかもしれませんが、ビットコインは中央集権とは全く逆の性質を持っているので、その意味でAIが存在感を増すことでさらに価値を持ちはじめるのではないかと感じています。
現在の世界は不完全だからこそうまく成り立っている部分が少なからずある
ーー私の予想とは違っていて面白いなと思いました。
どのような予想だったのですか。
ーースマートコントラクトとAI、APIが統合し、各判断や執行を自動化。その中で流通するべきは中立的なマネーとしてのビットコイン、という意味での主張を予想していました。
私はそこまでAIを信用していないのだと思います。
全てがかっちりスマートコントラクトで決められた社会だと、そこにうまくはまらなかった人は地獄を見ると思います。
現在の世界は不完全だからこそうまく成り立っている部分、高速に取引できないから成立している部分が少なからずあると思うんですよね。
最終的にはそういうものがどんどん減って、その割合も減ることでうまく回るような世界になっていくのかもしれないんですが。
明らかに、それを加速させることによってメリットを得る立ち位置の人も存在している一方で、そうではない人たちもいるわけで、その部分も維持されながら、いろいろ揺らぎながら進んでいかないと厳しいんじゃないかなと思います。
こういった問題に対して、ビットコインは、中央集権的な要素が極限まで強くなったときに、個人の自由を守ることができる可能性があると感じています。
すべての電力ファイナンシャル取引をLN上で行うスタートアップ企業「SYNOTA」
ーー以前はIoTプロジェクトに取り組まれていたと思いますが、クリプトとIoTが将来的にどのようにつながっていくか、そのあたりの見解はいかがでしょうか。いまでも早すぎる可能性はあるのでしょうか。
LNxIoTに関しては、アメリカで電力絡みのスタートアップが複数生まれてきています。ですので、そろそろ近づいてきているのが事実だと思います。
ただ、いまでも早すぎる可能性は十分にあると思います。
ーー電力関連のスタートアップについて詳しく教えてください。
はい、まず一つ目は「SYNOTA」という企業です。
彼らは、発電所を含むすべての電力ファイナンシャル取引をLN上で行い、請求書などのやり取りもシステム化してLNに乗せることで非常に無駄が多い部分を省く、というプロジェクトを進めています。
つまり、発電所を含めたすべての工程がシームレスに効率的に動くようになるわけです。
もう一つは、電気自動車の充電をライトニングネットワーク上で行うスタートアップです。
最も印象的な出来事はエルサルバドルのビットコインの法定通貨採用
ーー栗元さんが2013年ごろからビットコインに携わる中で、最も印象的だった出来事を教えてください。
私が最も衝撃を受けたのは2021年にエルサルバドルでビットコインが法定通貨としての採用が決まったことです。
これはビットコイン界隈の中でも賛否両論が分かれました。
そもそもビットコインはピープルズマネーで、小さいコミュニティからじわじわ大きくなっていくような発想のプロダクトです。
それがいきなり法定通貨化ということで、自由なお金に法定強制力を持たせるべきではないという人達も多数いました。言わば権威から入ってきたので驚きましたが、ある意味それぐらい存在感が出てきたということかもしれません。
タイミングが来たんだなという意味で非常に印象的でした。
ーーマウントゴックス事件のときは既にビットコインをご存じだったと思うのですが、その時はいかがでしたか。
当時はビットコインをほとんど持っていなかったので、あまり関心がありませんでした。
周りでその話をしている人たちもいたのですが、私にとっては他人事でした。
最終的にはCBDCがなくとも既存のステーブルコインで十分、という結論もあり得る
ーークリプトでまだマーケットに織り込まれていないリスクについて、なにか見えているものがあれば教えてください。
仮にクリプトに関わる人を犯罪者扱いする法律が定められた場合、しばらくは低迷するでしょう。レギュレーターはそれぐらいの影響力を持っていると思います。
ただ、クリプトを止めることは難しいと思います。
世界中の国々が協力して、価格を暴落させたりアダプションを10年単位で遅らせることはできると思いますが、止めることはできないでしょう。
長期的に見れば、相当な存在感を得る可能性が高いと思っています。
ーー今年や来年の注目領域としてステーブルコインを挙げる方が多数いらっしゃいますが、栗元さんはどのように見ていますか。
普通の決済と、インターネットの裏側で動く決済という2層の決済を比較すると、前者の領域ではステーブルコインの影響は大きいと考えられます。
現在はエコシステムのユーザーを増やす必要があるため、そういう意味で、ステーブルコインは重要な役割を果たすと思われます。
ーーCBDCについては、中国がCBDCを出すという話がありつつ、米国はUSDCなどに任せるという話もあります。栗元さんはどのように見ていますか。
CBDCを導入するのは簡単ではないと思います。非常に時間がかかるのではないでしょうか。その意味で、ステーブルコインが伸びる可能性は大いにあるでしょう。
禁止されなければ、ステーブルコインが今後も発展していくのではないかと思います。
もしかしたら、最終的にはCBDCがなくとも既存のステーブルコインで十分、という結論もあり得ると思います。
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Nayuta 栗元氏のインタビュー、4記事目では「ビットコインのSoVという側面には本質的価値がある」「先進国でない国の方がビットコインが早く普及する可能性は十分にある」などについて伺います。
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