「決済や送金におけるマスアダプションの本命は裏側で動くLightning Network」Nayuta Inc. CEO・栗元 憲一氏 2/4

Nayuta Inc. CEOの栗元氏に、注目しているプロジェクトや送金や決済でビットコインなどがマスアダプションするために必要なことなどを伺いました。

栗元 憲一氏 プロフィール

先端SoC(SystemOnChip)のアーキテクチャ設計、回路設計、EDAソフトウェアアルゴリズムの研究開発に10年以上取り組む。2011年以降にAndroidとハードウェアを組み合わせたIoT開発を行う。その最中にブロックチェーンとIoTの組み合わせに可能性を感じ、ブロックチェーンの研究を開始。

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取材実施日

2023年4月6日

Taroが取り組む、国境を超えた送金のプロトコル化

ーービットコインのLNまたはL2で注目しているプロジェクトを教えてください。

NostrのZapが面白いと思います。

Nostrではいいね代わりに投げ銭を送る機能を展開しています。この投げ銭の仕組みは新鮮だと思います。

将来的にエコシステムが充実すれば、フェイクニュース対策などで、多数の人からZapをもらうことが信頼性の証明となるかもしれません。

投げ銭で信頼性を獲得することによって、様々な可能性が出てくると思っています。

もう一つ、Taroが注目されています。

Taroの提案の前から、ストライク社がアメリカからアルゼンチンなどの国々に個人間で瞬時に国際送金できるサービスを提供しています。

アメリカの取引所または銀行と、アフリカの取引所または銀行の間に入り、ドルからビットコインに換え、LNを通してさらに送金先のフィアットに換えるというものです。

参考:Send GloballyがUKとヨーロッパでも利用可能に

これ自体が一つのイノベーションだと思いますが、Taroでやろうとしていることは、国境を超えた送金をプロトコル化することです。

両サイドにはレギュレーションがある国もありますが、各国のレギュレーションに従えば、誰でも参加できるようになる方向性で進んでいます。

これは非常に大きなインパクトがあると思います。

ーー興味深い取り組みです。

誰が国際送金の仕組みを作るかという話になったときに、アメリカの銀行がシステムを作って、他の国がそれを受け取るというのは何となく想像できますよね。

しかし、ニュートラルなマネーであるビットコインが仲介することで、各国の通貨を対等な関係で既に動作しているネットワークで送受金できます。

例えば、アメリカ人が10ドルを送金する場合、まずこの10ドルが10ドル分のLN上のビットコインに換わります。

その後、10ドル分のLN上のビットコインがアフリカで10ドル相当のアフリカの法定通貨に変換され、アフリカの人たちに届きます。双方にカウンターパーティーリスクが発生しません。

だまし取られることもありません。

ビットコインはこの世界で最もニュートラルなマネーであり、各国の政治的色合いが薄いマネーです。そのため、非常にインパクトがあると思っていますし、ビットコインだからこそできる部分だと思います。

ーー現在、各国のライセンスを持っている銀行や暗号資産交換所だけがストライク社と提携して各国のフィアットの窓口を担うことが可能ですが、ストライク社との提携すら必要なく国際送金の仕組みに参加できるようになるということでしょうか。

まだ全てのプロトコルが明確ではないため断言できませんが、おそらくそのようになるでしょう。

ただし、例えば為替業務ライセンスが必要になる可能性もあるので、確実ではありません。

将来的にそうなるかどうかは分かりませんが、そうなれば面白いと思います。

中間者が弱いという反転した構造に興味を持った

ーー栗元さんがビットコインに魅力を感じる理由を教えてください。一般的には価値保存ができることや供給が2100万枚に制限されていることなどが挙げられますが、栗元さんは特にどのような要素に惹かれたのでしょうか。

私が最初に衝撃を受けたのは、Decentralizedな仕組みで、理由は2つあります。

1つ目は、ビットコインがどこの国家にも依存せず、Decentralizedな状態で価値を生成することができることです。

2つ目は、送受金するときに中間者が弱い点です。

例えば、グーグルペイのようなペイメントシステムでは、中間者であるグーグルの立場が非常に強いという構造があります。

しかし、ビットコインの場合はマイナーのような中間者が厳しいマーケット競争にさらされ、送金、着金する人は中間者に支配されずにビットコインを利用することができます。

マイナーから送金や着金を止められる心配もありません。ウォレットを差し押さえられることもありません。

この反転した構造に衝撃を受けました。この仕組みは、社会の構造を変えることができると感じました。

ITシステムは社会の形を決めると考えており、IT技術によってできない社会の形は形成されません。ビットコインの技術は多くの可能性を切り開くことができると思います。

送金や決済、APIを含めた送金のマスアダプションの本命は裏側で動くLN

ーーLNの話に戻ります。ビットコインやLN、送金や決済、APIを含めた送金がマスアダプションするためにはどういうことが必要になるとお考えですか。

例えば、コーヒーを買う、ネットショッピングする、といったユースケースと、NostrのZapのような一般的に言われるペイメントと異なるアプリの裏側で動くユースケースがあると思うんですが、前者については、ステーブルコインの普及や活用が大きく影響するだろうと思っています。

ただ、本命はZapのような裏側で動く技術であると考えています。

コーヒーの購入はいまでもSuicaで済ますことができます。そのような用途において、ほんの少しの割合であってもビットコインというニュートラルなマネーが流通していること自体は社会にインパクトを与えると思っています。

ただ、個人的にはそのような用途がビットコインの決済に完全にリプレイスされるとはあまり想像していません。

従って、自分個人の大きな興味はインターネットアプリケーションの裏側で動くLNです。

キラーアプリが出てくるかどうかがマスアダプションの成否を決めると思います。

ーーLN自体は以前と比べて認知度が上がり、利用用途も増えてきたと思いますが、さらなる普及には何が必要でしょうか。

現時点では、楽しく使える場所が少なく、ギークな人たちがビットコインやネットワークそのものが好きな人たちだけが触っているという程度の成熟度です。

そのため、楽しいという体験の背後に、「これは実はLNを使っている」というようなステータスが付くぐらいにまで認知度が高まる必要があると思います。

ーー栗元さんにとって、ビットコインやLNの技術的に面白いと感じるのはどのような点ですか。

LNの面白いところは、ビットコインのファーストレイヤーの性質をなるべく保持したまま、セカンドレイヤーを作ろうとしているところだと思います。

中心が存在しないセカンドレイヤーになっているというところが面白いと思います。

分散的にビットコインを手に入れる仕組みは最初から存在していた

ーーイーサリアムについてはどのように見ていますか。

イーサリアムは昔は情報を追っていたのですが、最近は追っていません。イーサリアムのPoSについても全く把握できていません。

イーサリアムは、プレマインから始まり拡大したエコシステムであり、たくさんの過激なアプリケーションが存在しながらも価値を上げてきたイメージがあります。

ただ、分散的かと言われると、言葉の意味が違いすぎると感じてしまいます。イーサリアム財団が中心ではないと言うのですが、個人的にはそうは感じられません。

ビットコインの方が分散しているように感じますが、その代わりに進展は遅いです。しかし最終的には分散化を求める人たちが出てくると考えています。

ーー分散について、PoWとそれ以外という切り方があると思います。栗元さんはどのように見ていますか。

例えばPoWの場合、「サトシがいっぱい持っているのでプレマインと同じ」という言い方をしますが、私はそうは思えません。

サトシであったとしても、電力を使って計算機を回さないと、ビットコインを獲得することはできないのです。

PoWは誰でも参加できるため、周りからの将来期待が大きくなりビットコインの価格が上がると計算に必要な電力の価格も上がります。

そのためサトシであっても、期待値が上がった時は相当な電力を使わなければビットコインを獲得することはできません。

サトシが多くのビットコインを保有できているのは、ビットコインの価格がほぼゼロの誰も価値がないと思っていた時期にマイニングをしていたからです。つまり、分散的にビットコインを手に入れる仕組みは最初から存在していたということです。

イーサリアムのプレマインに関しては、法的にセーフであると主張はありますが、私は100%PoWのビットコインとは別種のものであると考えています。

それを同じ分散という言葉で扱うことには、違和感があります。

Cosmosはあらゆるチェーンを繋げるというビットコインと異なる独自の新たな世界観を示している

ーービットコインとイーサリアム以外で注目されているプロジェクトはありますか。

CosmosやIBCが好きですね。IBCは異なるブロックチェーン同士をつなぐという点に魅力を感じます。

多くの暗号通貨プロジェクトはビットコインの改良版とみなせると思うのですが、Cosmosはあらゆるチェーンを繋げるという、ビットコインと異なる独自の新たな世界観を示しています。

これが最終的にセキュアに社会インフラとして使われるかどうかは誰にもわからないと思いますが、新しい世界観を示しているように感じます。

ビットコインとは異なる個性的な魅力を感じます。

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Nayuta 栗元氏のインタビュー、3記事目では「ChatGPTのようなAIが強くなればビットコインの価値も上がる」「最終的にはCBDCがなくとも既存のステーブルコインで十分、という結論もあり得る」などについて伺います。

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