Nayuta Inc. CEOの栗元氏に、ビットコインの本質的な価値やエルサルバドル以外の国でもビットコインは法定通貨になり得るかなどについて伺いました。
栗元 憲一氏 プロフィール
先端SoC(SystemOnChip)のアーキテクチャ設計、回路設計、EDAソフトウェアアルゴリズムの研究開発に10年以上取り組む。2011年以降にAndroidとハードウェアを組み合わせたIoT開発を行う。その最中にブロックチェーンとIoTの組み合わせに可能性を感じ、ブロックチェーンの研究を開始。
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取材実施日
2023年4月6日
ビットコインのSoVという側面には本質的価値がある
ーービットコインについて「本質的な価値がわからないので取引しない」という投資家もいますが、栗元さんはどのように考えていますか。
まず一つはStore of Valueです。
例えば、ロシア・ウクライナ戦争でハードウェアウォレットにビットコインを入れて逃げた人も実際にいるわけですね。
これを止めるべきと主張する人もいますが、彼らをビットコインが救った事実は否定できないと思います。
ビットコインのSoVという側面には本質的価値があると考えています。
もう一つ将来可能性があるのはインフレヘッジ資産です。
今回のインフレではビットコインがインフレヘッジとして機能しなかったとは言え、まだ成熟していないという捉え方もできます。今後、インフレヘッジとして機能する可能性はゼロではないと思います。
さらに、先ほど※のTaroで中間のマネーとして活用される可能性や、RGBでスマートコントラクトができること、記録したデータを取り消すことが非常に難しいため重要なデータのアンカリングとして利用される、などがあります。
※参考:「決済や送金におけるマスアダプションの本命は裏側で動くライトニングネットワーク」Nayuta Inc. CEO・栗元氏 2/4
ただ、まだまだビットコインはどうなるかわからない部分があり、ビットコインを止めることはできないけど、価格を一気に落とすことはレギュレーターがやろうと思えばできると思っています。
10年ほど追い詰めるぐらいのことはできる力があるのではないでしょうか。
そのため、私がビットコインへの投資を誰かに強く勧めることはありません。
そのような側面もあり、取引しないという選択肢もあると思いますが、私はむしろそこに価値があると考え、実現したいと思い、Nayutaでプロジェクトの開発に取り組んでいます。
正しい議論がされてこそ、社会が正しい方向に進んでいく
ーー栗元さんは何度かエルサルバドルを訪れていますが、エルサルバドルのビットコイン法定通貨採用についてどのように見ていますか。
エルサルバドルでビットコインが法定通貨となった際、先進国のメディアからは批判的な意見が多く寄せられました。
ビットコインはギャンブルである、AMLをどうするのかといった懐疑的な見方がありましたが、AMLを完璧にすることは非常に難しいです。
例えば、エルサルバドルは銀行口座を保有する人が30%しかいませんでしたが、ビットコインウォレットの普及は50%以上にまで到達しました。
ビットコインの法定通貨採用により、ほぼ銀行口座を持つのと同じような環境を手に入れた人が多数いたということです。
自国民の30%しか銀行口座を持っていないような国においては、AMLなどの規制を厳密に行おうとした場合、その割合を増やすことは困難です。
先進国の上位国の都合であるという言い方もされていますが、一方で、誰かが強権的に何かをしないと安定が維持されないという考え方もあると思います。
何が正しいかは分かりませんが、私は正しい議論がされていないと常に感じています。
正しい議論がされてこそ、社会が正しい方向に進んでいくのではないかと思います。長年にわたって議論がされなかったことが、社会の怒りの一因になっているのかもしれません。
そもそも対等ではないのはおかしいという考え方があると思いますが、今はその転換期にきていると私は思います。
まだ課題のあるエルサルバドルのビットコイン採用
ーーエルサルバドル以外の国でもビットコインは法定通貨になり得ると思いますか。
わかりません。
エルサルバドルが法定通貨にビットコインを採用したメリットは、銀行口座を持っていない人たちがウォレットを持てたことだと考えられます。その他、国際送金の手数料削減が言われていました。
実際にはあまり使われていませんが、それでも一つの転換点だと思っています。
一方、デメリットは、例えばブケレ大統領が辞任した場合、国としてビットコインの制度がストップしてしまう可能性があることや、カストディアルウォレットの監査をどこまで精緻にできるか分からないということがあります。
何か問題が生じた場合、ビットコインは法定通貨になり得ないという批判を受ける可能性もあります。
言ってみれば、単一障害点を抱えているとも言えます。
それから、みんながビットコインを使っているわけではありません。
エルゾンテではある程度使われていますが、他の都市ではあまり使われていません。エルゾンテでビットコインが広く使われているのは、その本質がコミュニティベースであることに起因するものだと思います。
この点が本質的な意味を持っていると思います。
いずれにしても、エルサルバドルのビットコインの法定通貨化はエポックメイキングな出来事だと思うので、私は素晴らしいことだと思います。
先進国でない国の方がビットコインが早く普及する可能性は十分にある
ーーイノベーションのジレンマ的に先進国はビットコインを導入するインセンティブが弱く、そのためそうでない国々の方がビットコインが普及する可能性は早そうだと考えています。栗元さんはどのように見ていますか。
その通りだと思います。
エルサルバドルでビットコインが法定通貨化されたのは、法定通貨に米ドルが採用されていたことが大きな理由です。
自国通貨ではなく、米ドルが通貨として使われているため、自国の経済の都合で発行量をコントロールできず、相当厳しい状況に置かれていたと考えられます。
その点においてはビットコインは望ましいとも言えます。
以前のバージョンのNayutaCoreのユーザーは南米が多かったです。自国通貨が安定していないため、ビットコインのニーズが強かったことが予想されます。
根本的に、クリプトによって先進国から後進国に価値の流れが出来上がっていくと思っています。
レベルプレイフィールド的なフェアな場所を作るために、価値が流れていくと考えられます。受け取る側の人数が多いため、後進国の方が受け入れる可能性が高いでしょう。
メタバースでは無国籍のマネーが流通していてほしい
ーービットコインやイーサリアム以外で、注目している領域などがあれば教えてください。
NFTは仕組みとして面白く、可能性を感じています。
ただ、イラストの売り買いではなく、例えばIoTにおける利用の権利など、何かしらのサービスを使用する権利で活きると思います。
それをDIDで全部処理するのが良いのか、NFTの方が良い部分があるのか、自分にもまだはっきりわかりません。
DIDの方がブロックチェーンの使用リソースが少なそうに感じるので良いのではないかという直感はあります。
ただ、権利の売買マーケットまで入ってくるとPros/Consが今のところはっきり分からないので両方を勉強しています。
ーーNFTといえばOrdinalsが話題です。どのように見ていますか。
Ordinalsは色々と意見が割れていますね。
詳細は把握できていませんが、ビットコインのメインチェーンに何MBの絵を入れるのはやめて欲しいと思っています。違和感があります。
ーーメタバースについてはいかがでしょうか。
私はMeta Quest 2をビューアーとして使い、メタバースの中を歩き回ったりしていますが、メタバースそのものは非常に可能性があるものだと思っています。
時間はかかるかもしれませんが、非常に大きな経済圏を作れると思います。
ただ、世界中の人と自分のペルソナを作って会話する、そういう世界でドルや日本円といったフィアット通貨を使いたくないという感覚があります。
その世界で通じる通貨がほしいと思っていて、それはビットコインが適していると考えています。
ビットコインではないにしても、国籍がないお金であってほしいという感情があります。
ーーそれは哲学的な理由でしょうか。もしくはカウンターパーティリスクを考慮してということでしょうか。
そうではありません。
例えばMeta Quest 2を使ってVRチャットでやりとりするときに、そこに来ている人たちは国籍などを聞かない限りどこの国の人かわからないんですよね。
どこの国でもない、メタバースの住人なんです。そこにどこか特定の国の通貨が流通することに違和感があるということです。
この人は日本人、この人はアメリカ人というラベルが登場するのが嫌で、僕らはメタバースの住人だよね、みたいな感じでいきたいということです。
没入感が薄まる感覚があります。
Nayuta社の採用について
ーー人材の採用についてはいかがでしょうか。
会社の状況次第ですが、優秀な人材は常に求めています。
こうすれば勝てるというセオリーはなく、みんなチャレンジしている世界なので、ビットコインの世界観を自分で実現したい、楽しむだけではなく自分でそれを作っていきたいという方と一緒に仕事をしたいと思っています。
そういう方がいればぜひお話をしたいです。
ーー採用の職種はエンジニアが中心なのでしょうか。
いえ、どちらかと言うと、BizDevができる人を採りたいと考えています。ただ、非常に難しいんですね、ビットコインのBizDevは。そういう人材は本当に少ないです。
ーー貴社のBizDevというのは、toB展開などを担当する方ということでしょうか。
そのような業務もあります。
ただ、PMF前のスタートアップにおいては、ビットコインに関する幅広い知識を持っていて、何でもやってみようというスタンスが必要となります。そうでないと難しいです。
ーー現在在籍しているメンバーは、ビットコインに関する深い知識や情熱を持っている方ばかりなのでしょうか。
ビットコイン以外のプロジェクトにも取り組んでいたメンバーが多いのですが、ビットコインが最も分散していると考え、ビットコインが最も楽しいと感じているメンバーが多いですね。
ーー最後、読者にメッセージをお願いします。
LNは海外での注目度が高いです。
Nayutaウォレットをダウンロードして、ゲーム等のLAppsと接続したらLNとは何かということを取引所に口座を作らなくても体験できますので、ぜひ一度試してみてほしいです。こういうものなんだ、と体験、体感してほしいですね。
ーーLNを体験するにあたって、おすすめのサービスはありますか。
NayutaウォレットからLappsを開くと、接続できるゲームが出てくるので、それで試してもらうのが早いですね。
https://nayuta.co/nayuta-wallet-2022/
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