投資家、富裕層向けに海外移住、海外法人設立のサービスを提供するOWL Investmentsの小峰氏とCygnosの三原氏に、事業をはじめた経緯やタイ移住についてお話を伺いました。

お二人はCygnos主催、講師を小峰氏で「クリプト移住セミナー」を実施している経緯があり、今回一緒にお話を伺いました。

インタビュイー プロフィール

小峰 孝史氏

米系法律事務所Sidley Austinの東京オフィス・香港オフィスに勤務、TMI総合法律事務所所属時に香港駐在。2018年より現職。主として日本の富裕層向けに香港やその他の海外の税制上のメリットを生かす投資スキーム作り・移住をサポートしている。
Twitter：https://twitter.com/tkomine921 会社：https://owl-investments.com/

三原 弘之氏

2014年、ビットバンク株式会社へ社員第一号として参画し、執行役員COOとして国内最大級の仮想通貨取引所へ成長させる。現在は海外クリプトヘッジファンドの戦略へ分散投資する日本初のファンド、Cygnos Crypto Fund を運営。Twitter：https://twitter.com/h3hara Cygnos：https://fund.cygn.com/ https://oversea.cygn.com/

海外移住や海外法人設立のほか、マイニングもサポート

ーーいま取り組まれている事業について教えてください。

小峰：主には、海外移住サポート、法人設立サポート、マイニングの三つです。

マイニングについては自社所有のマシンでのマイニングとお客様所有のマシンの稼働の二つに取り組んでいます。

参考：OWL Investments

ーーいまの事業をはじめた経緯について教えてください。

小峰：今に至るまでに2回の転機がありました。

大手の法律事務所で仕事をしていた頃は、大企業の顧客ばかりだったんですね。でも、香港に来てからIPOやM&Aの案件に取り組む中で、会社のオーナーさんの税金やお子様の教育の相談を受けることが増えました。その中で、会社の大小にかかわらず、トップの人と直接話す方が面白いと考えるようになりました。

また、香港での業務や居住が長いことから、外国のビザや住所、法人を持っていることによってどうやってメリットを出すのか、などにも詳しくなったんですね。

そこで、独立して中小企業のオーナーさん向けの海外移住や海外法人設立、オフショア法人活用などのサポートを行うようになりました。

クライアントとの会話をきっかけに、ロシアでのマイニングを開始

ーー自社でマイニングについてサービスを提供されているとのことで、取り組みの経緯について教えてください。

小峰：はい、二回目の転機である暗号資産ですね。

ビットコインを知ったのはマウントゴックス事件の頃でした。最初は「怪しいのかな？」とは思っていたのですが、オックスフォード大学時代のクラスメートだったウィンクルボス兄弟が米国で暗号資産取引所のジェミニを設立したのを知り、「怪しいものではなさそうだな」というくらいの印象でした。

その後、2017年4月1日に日本で暗号資産交換業者に対する登録制の導入などに関する改正資金決済法が施行されました。

参考：資金決済に関する法律

この改正資金決済法が施行され、日本では無登録で暗号資産を取り扱えなくなった関係で、日本で暗号資産を取り扱っていた人たちが香港に来て、香港のホテルでICOのミートアップなどが実施されるようになったんですね。

参考：規制避け、香港でビットコインのミートアップ開催【フィスコ・ビットコインニュース】

それで私に、香港や中国、フィリピンなどのレギュレーションに関する調査依頼が来るようになり、暗号資産関係のお客様が増え始めました。

そういったサポートをしていく中で、ある日、あるクライアントから北海道でマイニングをやるという話を聞きました。

私が、もっと電気代が安いロシアでやったらどうでしょうという話をすると、「小峰先生は自分でやったことないからそう簡単にやれる保証はないでしょ」という話になった。

そう言われると悔しくて、じゃあ自分でやってみるかとロシアで始めたのがきっかけです。

ーーそこからずっと継続してロシアでマイニングをされているのですね。

小峰：そうですね。

マイニングマシンは香港のとなりの深圳で製造していることが多く、電気街でマイニングマシンが売られていて、そういったところにアクセスしやすかったというのもあります。

それで中国でマシンを仕入れて、それをロシアに持っていってマイニングするというところからスタートしました。

既にロシアで稼働しているマイニングマシンはそのまま稼働させていますが、ウクライナ戦争もあり新規のマシンを輸送することがむずかしくなっており、いまは、新規のマイニングはラオスでやるようになっています。

ーーマイニングのサポートというのは具体的にどのようなことを提供されているのでしょうか。

小峰：弊社で仕入れたマイニングマシンをお客様に販売し、そのマシンを弊社でラオスに運んで稼働させる、マシンをメンテナンスする、といったところまでサポートしています。

マイニング関連は詐欺も多いため、弊社では、お客様が現地に訪れて稼働状況を見ることも可能で、マシンのシリアルナンバーなどもお伝えするようにしています。

暗号資産の投資家の海外移住もサポート

ーーマイニングなどいろいろなサービスをされていますが、一番多い相談はどういったものでしょうか。

小峰：相談ベースだと法人設立、海外移住が多いです。ただ、海外移住は実行するためのハードルが高いので、実際に行う人の割合はそれほど高くはないですね。

お客様としては事業をやっている人、不動産や株式の投資をやっている人からの相談が多いです。

ーーいわゆる億り人、暗号資産投資で一気に資金を得たという人からの依頼もあるのでしょうか。

小峰：そういうお客様もいらっしゃいます。特に海外移住のご相談はそういったお客様からのご相談が多いです。

暗号資産以外のお客様は、日本で事業を持っている方が多く、簡単には移住できないんですね。

それに対して、いわゆる暗号資産の億り人の方々というのは、若く単身で、事業を持っていることも少なくフットワークが軽い。なので相談自体も多いですし、相談から実際に移住に至るケースも多いです。

ーーサポートされる海外移住先はどこの国が多いのでしょうか。

小峰：タイが多いです。その次に、香港、マレーシア、シンガポールなどをサポートさせていただくことが多いです。

ーードバイは入らないのですね。

小峰：弊社ではドバイの移住サポートの実績はないですね。

三原：ドバイは少し前まではお金持ちが移住する先としての認知はあまりなかったんですが、暗号資産やガーシー、情報商材界隈からブームになってきていて、最近増えてきているというのが現状です。

小峰さんに限らず、海外移住をサポートしている事業者の方も、あまりドバイには送ってない印象がありますね。

タイ、シンガポール、香港への移住について

ーー移住先としてタイが一番多いのは住みやすいからでしょうか。

小峰：住みやすく移住者の評判もいいですし、ビザが取りやすいというのも大きな理由です。

タイはタイランドエリートというビザを数百万円で買えばいいのですが、香港やシンガポールでは、お金を払えば取れるビザというのがありません。

これらの国でビザを取得するには、現地の就職先を見つけるか、自分で現地法人を設立しその取締役としてビザを取得するしかなく、結構ハードルが高いんですね。

現地法人の設立に関しては、会社を作って、会社の体裁を整えたりするのに費用がかかり、その人の経歴も一定要求されるわけです。

こういう経歴でこういう会社を作ります、みたいなストーリーを作らないといけないわけですけれども、それがなかなか難しい人も多く、香港やシンガポールでビザを取るのは難しい。

特にシンガポールは近年非常に難しくなっている印象があります。

シンガポールでビジネスをしたいという人であれば、シンガポールは非常にいい場所だと思います。しかし、単に暗号資産の億り人として海外に移住するということであれば、シンガポールである必然性はないと思います。

三原：シンガポールは事業がないなら、家族構成や本人の嗜好にもよりますが、ある程度贅沢したいのであれば最低10億円はないとしんどいなと感じますね。

10億円を全てプライベートバンクで運用して、はじめて生活できる資金が回るぐらいの水準です。プライベートバンクで運用できる資産が3億円しかないとなると、暮らせるお金に限りがあり充実した生活は送りづらいでしょう。

暗号資産で儲かってシンガポールに移住されている方は数十億円持ってきている人が多い印象です。

個人で若くて独身ならそれほど必要ないですが、奥様やお子様がいると少なくとも10億円はないと厳しいでしょう。

ーー例えば、個人資産は1億円ですが、自分が保有している法人や事業から生活できる程度の給与所得がある場合は、シンガポールに移住することは現実的でしょうか。

小峰：一人暮らしで慎ましやかに生活するということであれば、シンガポールで資産が1億円なくても生活はできると思います。タイであれば資産5,000万円でも移住されたお客様はいらっしゃいます。

三原：ドバイも金額的には行けます。

ドバイは物価が高く外食費も高いのですが、生活費は意外と安い。なので田舎に家を借りて、スーパーで食材を買って調理してと、若い方は自炊している人が多い。そういう意味では生活できなくはないです。

税金も個人は完全にゼロで、DeFiの取引が多い人などはいい環境でしょう。

ただ生活のしやすさはタイとは異なりますし、そこまで切り詰めてドバイに移住したいかというのはあります。

小峰：ドバイでひたすら切り詰めて住むというのは、それはそれで過酷な感じがしますね。

ーーアジア以外、例えばヨーロッパの国などはいかがでしょうか。

小峰：ヨーロッパは文化圏が明らかに異なるので、日本人だとアジア圏内ほどの住みやすさを感じるのはむずかしいと思います。

人種的な見た目だけでなく、例えば、コンビニがない、日曜日はお店が閉まっているなど、文化においてもかなり違いがあります。

ミャンマー以西は結構事情が異なってきますね。

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インタビューの2記事目では、海外での法人設立や居住者認定のリスクなどについてお話を伺います。

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移住に関する記事はこちら。