「マイナスに耐えられないので100%勝てる取引しかやらない」アービトラージ botter QASH氏 2/4

botを使ったアービトラージ取引によって、5年間で約1億円の利益を上げたQASH氏。アービトラージ以外の取り引きには興味が低く、暗号資産の暗号資産のトレードはほとんどしないという。「勝つ取引しかしたくない」というQASH氏にトレードを始めたきっかけや、取引に対する考え方などについて話を聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

QASH氏 プロフィール

2017年よりアービトラージを主体とした取引を行うBotter。大学院在学時に後輩からビットコインの存在を教えてもらい、QuoinexでビットコインではなくQASHという仮想通貨を購入、2ヶ月で原資5000円を1000万円以上にする。2021年ごろからbotを用いたアービトラージを主体として取引を初め、2022年に累計利益1億円達成。メジャーなチェーンからマイナーなチェーンまで至る所でBOTを動かし、利益を追い求めている。
Twitter:https://twitter.com/qash_NFT
ブログ:https://qash-tit.hatenablog.com
Note:https://note.com/qash

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1コイン10円の暗号資産5,000円分からスタート

――最初にトレードを始めたきっかけを教えてください。

始めたのは2017年で大学院生の頃です。当時、セラミック系の材料の研究をしていまして、修士2年のときに1年後輩からビットコインのことを教えてもらいました。

教えてもらうと言っても「最近、ビットコインっていうものをやっているんですよ」という感じで。それで「なんだかおもしろそうだな」と興味を持ってQASHという暗号資産を買いました。

――QASHを選んだ理由は何ですか

ビットコインなどに比べて、1トークンあたりの価格が断然安かったからですね。QASHが発行されたのが2017年11月、私が買ったのは12月です。当時は1QASHが20円くらいでした。

この通貨なら元手が5,000円でも、結構買えるだろうと思って始めました。初心者にありがちの発想ですよね。

取引5日目に取引所間のレート差に気付き、5,000円が1,000万円に

――最初はどのような取引をしていたのですか

1日目2日目はスキャルピングみたいな感じで、短期で買ったり売ったりを繰り返していました。すると、いきなりフラッシュクラッシュというか、突然の急落に出くわして、そこで、たまたまうまく取引できたんです。

それで5,000円が4万円になりました。

「これはヤバい」ということになって、もっといい取引がないかと思いながら続けていたら5日目くらいに、取引所内でも価格が異なることに気付いたんです。

私が主に使っていた取引所では米ドルだけでなく、日本円や豪ドルでも取引できました。取引所の為替レートが少し狂っていたので、他の取引ペアと乖離が生じていたんです。

だから、日本円でQASHを買って、それを豪ドルにしてから、さらにビットコインに換えた後に日本円に戻すといった具合で利鞘を稼げた。稼ぐと言っても、0.1%以下なんですが、確実に儲かる。

それを知ってから5カ月ほどずっと、その取引をやっていました。

原資5,000円から、それをぐるぐる回して動かした額としては延べ20億円にもなりましたが、取れるのは0.1%以下なので、利益としては手数料を引いて1,000万円を超えるくらいでした。

――それを5か月ほどやって、なぜやめてしまったのですか

実は2017年12月から1月までの約2ヶ月だけでも1,000万くらい稼いでいたのですが、その後、どんどん相場が縮小していって稼げなくなったんです。

ちょうどその頃は、暗号資産が暴落していった時期で、レート間の乖離も大きくなりがちで取引の機会も増えていたのですが、3月4月頃には参加者も減って取引量も減ってしまい、乖離がほとんどなくなったんです。

それに乖離があったところで強いbotも参入してきて、手動では到底敵わないようになってきました。労力に見合ったリターンを得られないので、やめてしまったという感じです。

18年4月に就職したこともあって、そこから2年くらいは全く暗号資産に関わっていません。トレードには全く興味がなかったので、会社から給料をもらって普通に生活をしていました。

NFTゲームで価格の歪みを見つけbotでのアービトラージを開始

――botの運用を始めたのはいつ頃からですか。

入社2年目の頃に機械学習とかDXとかいう言葉がはやり出して、少し興味を持ってプログラミング言語のPythonを勉強しだしました。そして2020年くらいですけど、Numerai(ヌメライ)という暗号資産のプロジェクトに参加しました。

ヘッジファンドが関わっている暗号資産を用いたプロジェクトなんですが、株式市場を予測する機械学習モデルを世界中から募集し、コンペ形式で競争を行っていて、良いモデルを提供した全員がNMRトークンを受け取れます。

私も「プログラミングの勉強にもなる」と思ってコンペに参加して2年間で50万円くらい受け取りました。このときは、まだbotを使った運用までは行っていなくて、運用を始めたのは21年8月からです。

――botを使って、やめていた運用を再開するようになったきっかけはなんですか。

CryptoBladesというNFTゲームですね。

プレーヤーがキャラクターを購入して武器を装備し、モンスターと戦うというゲームなんですが、戦闘で勝ったり、キャラクターや武器を売ったりするとSKILLというトークンをもらえるんです。ゲーム自体は単純で面白味はあまりないのですが、トークン目当てで多くの人が参加していました。

出典:https://www.cryptoblades.io/

イベントもあって、新規ボーナスでキャラクターを無料で買えることもあるので、ウォレットを変えつつキャラクターを売って、トークンを増やしBNBに変換するといったことをしていたんです。

そのうちに、ときどきマーケットでとんでもない安値でキャラクターが売られていることに気付きました。当然、それを買って高く売れば儲かりますよね。

でも、手動では買えないんですよ。同じことを考える人は大勢いるので、相手がbotを使っていれば絶対に買えない。そこで私もbotを使い始めました。

マイナスになるのが耐えられず100%勝てる手法を模索

――今のbotを使った手法にたどりついたのはいつ頃ですか。

今の手法を始めたのは、2021年の8月くらいですが、その前に、MM(マーケットメイク)botを作ったこともありました。

売り板と買い板の上下に指値して、両方が成約した際の価格差で利鞘を稼ぐものなのですが、これが全然勝てなくて、全くダメでした。

今の手法にただりついたのは、活躍しているbotterのツイートやブログなどを読んだのがきっかけです。2020年ごろにHohetoさん、UKIさんの記事を読んだのが個人的には大きかったです。

▼当時QASH氏が参考にしたHoheto氏の記事

2人はbotterなのですがアービトラージだけではなくトレードを行っている方で、統計的手法を使っているのが勉強になりました。

統計的に勝てるようなエッジを見つけて、それに合わせて取り引きをしたらbotでもちゃんと勝てることを、これまで全く勝てなかった私でも理解できた。

その考え方を私はさらに発展させて、100%勝てる方法を目指してきたというわけです。

――あくまでも100%勝てることを目指したわけですね。

統計的に勝つということは、勝てるときも負けるときもあって、全体を見ればプラスになるという考え方ですよね。

でも、私はマイナスになるのが耐えられないので、100%勝てることしかやらない。

アービトラージの勝ち負けは、トランザクションが成立するかどうかで決まります。トランザクションが成立すれば利益は約束されているわけです。

だから、原理的に取り引きでマイナスになることはありえない。もちろん、送金手数料や通信料でマイナスになるということはありますが。

絶えず勉強や調査が必要な「過労所得」

――勝つためには勉強が欠かせないと伺いました。

そうですね、常に勉強していないと、すぐに取り残されてしまうと思います。

私の場合は兼業でやってるので、仕事や生活の時間を考えると、工夫をしないと勉強する時間も段々足りなくなってきます。

娘が生まれたばかりで子育てもありますので、仕事から帰って来て、娘の面倒を見た後、botのチェックやブロックチェーンの調査をして、勉強もして、となると寝るのは2時、3時、翌朝は7時過ぎに出勤するので、体がなかなか持たない。

今は養命酒を飲んで、気付けしながら、なんとかやっているという感じです。ドーピングみたいなものですよね。

――勉強や調査などには1日に何時間くらい費やしているのですか。

1日に2、3時間できれば、というところです。

家にいる時間だけでは足りないので、通勤中に車を運転しているときなども、botの運用について考えるときもあります。

「今日はどういう戦略でやろうか」とか、プログラムのコードを頭の中で考えてみるとか、できるだけ時間を無駄にしないようにしています。

調査はさすがに運転中にはできないので、そうした家でしかできないことにすぐに取りかかれるように準備しておく。そんな感じですね。

土日も特に予定がなければ、基本的には暗号資産に関わることをやっていて、ほぼ毎日が暗号資産漬けです。

いざ、相場が完全に冷え込んで、何もすることが無くなったら、どうしようかと思います。娘が小さいので、子育てに時間を費やしますかね。

――振り返ってみて、botの運用がうまくいった理由は何だと思いますか。

成功している人の真似をしたことではないかと思います。成功している人は、どういうことをやっているのか、どうやって利益を積み上げてきたのかを、ネットなどで調べて、同じ方向性で勉強をしてきた。

強い人のやり方をただ真似するというのではなく、強い人がやっていることを理解して、それをいったん自分の中に落とし込んで、自分なりの勝つためのルートを作って、そこに向かって努力する。

自分がやってきたのは、そういうことでしたが、きっとそれが正しい努力の方向ではないかと思います。

これらは投資やトレード全般に当てはまることかもしれませんが、botの運用でいえば、エッジを探すことは重要ですし、もちろんプログラミングの能力も大切です。こうしたことにも取り組んできました。

投資やトレードを不労所得なんて言ったりもしますが、botの運用に関してはやることが多すぎて、それをしっかりやらないと勝てない。不労所得ならぬ「過労所得」ですよ。

プログラミングの習得やマーケットの勉強、地道な調査などで大きな利益を手にしたQASH氏。次回は成功談や失敗談など記憶に残る取引などについて話を聞きます。

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