S&P500とBTCは過去どのように底値をつけたか
現在は米国のインフレ抑制のために政策金利の利上げが行われています。FRBパウエル議長は景気よりもインフレ抑制を優先しており、リセッション(景気後退)は避けられない状況です。
S&P500指数は2022年は下落を続けており、2022年1QにS&P500と高い相関を示したBTCはさらに下落幅が大きくなっています。
この記事ではS&P500とBTCがどのように底値をつけるのか、過去の事例を見ていきます。
S&P500が底値を付けるのはリセッション終了前後
S&P500が大きく下落した過去のリセッションを見てみます。
上の図は2001年のITバブル崩壊時と、2007年~2008年のサブプライム問題、リーマンショック時のS&P500のチャートです。
ピンクと青の枠内がリセッションと判断されていた期間です。このタイミングでの騰落率は下の表のようになっています。
理由 | 期間 | 期間内騰落率 | 最大騰落率 |
ITバブル崩壊 | 2001年3月~2001年11月 | ▲16.8% | ▲38.3% |
サブプライム問題/リーマンショック | 2007年12月~2009年6月 | ▲41.7% | ▲57.9% |
コロナショック | 2020年2月~2020年4月 | ▲27.9% | ▲35.4% |
現在(2022年9月30日時点) | 2022年1月~2022年9月 | ▲24.5% | ▲25.1% |
※最大騰落率はリセッション期間の前後も含めて計算しています。
上のチャートを見てわかる通り、リセッション終了とともに株価が上昇するわけではありません。ITバブル崩壊時はリセッション終了後も(一時的には上げましたが)株価は下落し続け、リーマンショック時はリセッション後期から株価は回復しています。
現在のS&P500は年初来の最高値約4,800からの下落率は24%となっています。リセッションにこれから入っていくと考えればさらに下落していく可能性は高いと考えたほうが良さそうです。
仮にS&P500指数:4800からの下落率が40%の場合は約2900、下落率が50%の場合は約2400までS&P500は下落するので、現在のS&P500指数(約3600)からはまだ下落の余地が大きいと予想できます。
VIX指数(恐怖指数)との相関
VIX指数は30を超えると市場が混乱している状態だと言われており、株価の下落リスクが高くなります。
ちなみにVIX指数は、S&P500指数の予想変動範囲率を%で示したもので、以下の式で計算します。
- 予想変動範囲率(%) = VIX ÷ √12
例えばVIX指数=30 S&P500=3,500の場合、以下のレンジ内で動く可能性が高いというわけです。
- 予想変動範囲率 = 30 ÷ √12 = ±8.7%
- 変動範囲 = 3,500 × 0.087 = 304.5
- S&P500の変動予想(上限) = 3,500 + 304.5 = 3804.5
- S&P500の変動予想(下限) = 3,500 ー 304.5 = 3195.5
上のS&P500と同期間でVIX指数をみると、リーマンショック時はその動きが顕著にわかります。特に急激に動く相場ではVIX指数とS&P500は逆相関の関係になることが多く、VIX指数が低下するタイミングで株価の下落も一服する可能性が高くなります。
現在のVIX指数は上昇基調にあり、30を超えてきています。
先ほどS&P500はまだ下落の余地があることを説明しました。
米国政策金利の利上げは2023年上旬まで続くと考えられるので、株価は急速に下落するのではなく、だらだらと下落し続けると考えています。
そのため、VIX指数も急激に上がるのではなく、ITバブル崩壊時のように比較的高水準だけどそれほど高くまで上がらないということになるかもしれません。
そうした場合、VIX指数だけで判断するのは難しいかもしれませんが、50を超えるあたりまで上昇することがあれば株価下落ストップのシグナルと考えてよさそうです。
BTCが底値を付けるのは半減期1年前あたり
次はBTCです。BTCは現在下落が続いていますが、大きなイベントとして2023年末から2024年前半に半減期の実施が予想されています。過去の半減期は3度あり、以下のようなチャートの動きを示しました。
試行回数が少ないですが、過去3回に関して言えば、
- 半減期前に高値をつけ、そこから下落する
- 半減期の約1年前あたりで底値を付け、半減期を経てさらに上昇する
これを繰り返しています。半減期前の高値からの騰落率は約80~85%程度で、底値からの上昇は200%を超えています。
直近1年間のBTCのチャートは以下のようになっており、2021年年末につけた最高値からみると、現在は約72%下落しています。
4回目の半減期は2023年末から2024年の上旬ごろと予想されているため、あと1年半程度ということになります。
今回も過去の例と同様だとするならば、今後数カ月で1BTC=12,000ドル程度まで下落(最高値からの騰落率▲82%)したところが底値となる可能性が高そうです。
注意すべきは高インフレ・利上げ動向
BTCの歴史上、いまほどの高インフレ・利上げを迎えたことはありません。BTCの歴史は金融緩和の歴史とも言えます。
過去の動向に基づいて今後数ヶ月〜1年程度で底値を迎える可能性を解説いたしましたが、これほどの金融引き締めを迎えるのははじめてであり、これまでとまったく異なる価格変動をする可能性が高いと考えています。
過去の動向はあくまで一つの分析指標程度に考え、引き締めなどマクロの状況を見ながら、冷静に判断することが必要です。
S&P500、BTCともに2022年〜2023年に一度底値を迎えるか
底値を見極めるのは難しいです。S&P500が3,000を下に抜けてからはVIX指数などにも注目したいところです。
BTCは2022年から2023年ごろには一度底値をつけそうですが、ボラティリティが高いので、短期の動きには常に注意が必要です。
いずれにしてもしばらくは緊張感の続く時期になりそうです。