「ゴールドに対するシルバーやプラチナは、ビットコインとアルトコインの関係に似ている」佐々木徹氏 2/4

暗号資産やFX、商品先物取引とさまざまな投資で資産形成を図っている個人投資家の佐々木徹氏。生活基盤を運用益だけに頼ることなく、オンラインの投資講座などで確実な収入源を確保しながら、腰を据えて投資に臨んでいる。そんな佐々木氏に商品先物取引の特徴や、今の投資市場の見方などを聞いた。

佐々木徹氏 プロフィール
40代から自由な時間と収益を作るトレード教育を行っています。ビットコイン / ゴールド / 原油 / 外国為替 の取引方法が学べる「ココスタ」運営(受講生4,800名)。現役トレーダー / 米CMT検定1級保有 / ビットコイン研究所ライター / 株式会社ファム代表取締役。
https://twitter.com/CocostaGeekend

前回のインタビュー記事はこちら。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

意外と先を読みやすい商品市場

――FOMCや雇用統計、毎年8月に行われるジャクソンホール会議など、重要なイベントがあるときは、どのようなスタンスでトレードをするのですか。

指値で対応しますね。

私のトレードの手法はレンジをどれだけ正確につかめるかというところだと思っているので、1週間の値幅や過去のイベント周辺の動き、資金の出入りなどを見て、例えばゴールドなら「明日、1700ドルで始まったら誰でも拾うでしょう」みたいな分かりやすいポイントに指値を置いておく、という具合です。

イレギュラーな動きがあって、ドスンと動いて指値で拾えたらラッキー。そんなに値が動かずに刺さらなかったら、それはそれで「はい、さようなら」という感じですね。

――イベントに反応して値が動いたところを狙うという取引はしないんですね。

基本的には、うまくいけばイレギュラーな動きを拾うという感じです。最近はそればかりですが、以前は少しだけイベントを狙った取引をやっていましたね。

ただ、大きなイベントではなく、特定のアセットだけが反応する指標の発表が対象ですが。

米国の雇用統計とか、ジャクソンホール会議のようなイベントは、みんなが動いてぐちゃぐちゃになるじゃないですか。暗号資産が動けば、世界各国の株も通貨もみたいに。

そうではなくて、あまり注目されていない特定の国の指標だったら、動くのはその国の通貨や株程度です。そうした指標で、ある国の通貨がイレギュラーな動きを見せたら、ちょっと取りに行くというのはあります。ユーロポンドの為替取引なんかは好きですね。

あとは、ゴールドとかシルバーとか、プラチナなどのメタルを先物でトレードすることも多いのですが、ぶん投げや、踏み上げが入ることもあるので、そういうところのヒゲを狙いに行くというか。

指値を入れていて、刺さらなければキャンセルすればいいだけの話なんで。イベントのボラティリティを狙って、指値を10回ばらまいたら、そのうち2回引っ掛かってくれたらOKという感じです。

――イベントに関係なく、突然の暴落に備えて指値を入れておくこともあるんですか。

それはないですね。5、6年前なら、流動性の低い暗号資産の取引所などでは、突然の暴落とか、よくありましたけど。例えば100ドルぐらいで取引されていたイーサリアムが、突然2ドルになったとかね。そういうものに備えるようなことは、あまりしないですね。

――以前はそんな暴落があったんですか?

ありました。参加者の少ない取引所なんかだと、事情がよく分かっていないのか、突然、大量の成り行き売りをドーンと入れるような人がいたんですよ。

すると、誰も買いを入れていないから、下の下まで下がる。異常に長いヒゲができるということが、過去に結構ありました。確かに今後もそんなことが無いとは言えませんよね。

でも、そうした突発的なことに備えて指値を入れていると、その分の資金が使えなくなるじゃないですか。ただで指値は入れられないので。だから、指値を入れて入れっぱなしというのはしないですね。

――ゴールドやシルバーなどの貴金属も取引されているそうですが、どのような取引をしているのですか。

人によって得手不得手があって、たとえば、個別株が得意だという方も当然いるでしょう。けれど私の場合は、1社1社の決算を見ながら、それぞれの会社を1つ1つ見ていくというアプローチがあまり得意ではないんです。

インサイダー情報というか、その業界に詳しくなければ得られない情報もあると思いますし、同業者間での噂のような情報も考えると、自分にとって有利な条件はあまりないような気もします。

でも、メタルとか暗号資産だと、得られる情報はほぼ公平です。

特に暗号資産なんて、情報を入手しようと思えば、だれでもアクセスできるわけで、あとはその情報をどう理解し、考えるかだけなんです。アクセスできない情報による不利というのは基本的に生じない。

私の場合は、為替よりもゴールドなどの商品取引の方が多いんですよね。商品取引のほうが稼ぎやすいというか、負けにくいと思っています。

ゴールドとかシルバーとかプラチナとかだと、現物で毎日何トン買われているのか情報として得られるし、中国での価格とか、インドでの価格、日本の価格もすぐに分かって、ドル建ての価格との比較もすぐにできる。

実際に動いている現物があるので、現物を追っていくと、そんなに予想を外さない気がします。でも、ゴールドはあまり値動きがないので、ゴールドと連動して動くシルバーやプラチナを狙っていますね。

ゴールドに対するシルバーやプラチナは、ビットコインとアルトコインの関係に似ているんです。

ビットコインがちょっと上がると、別のアルトコインが急激に上がることがあるじゃないですか。逆にビットコインが下がると、アルトコインもつられて大きく下落するとか。

それと同じようにゴールドが上がると、シルバーやプラチナも連動して動くんです。やはり、取引規模の小さなものは、よりボラティリティが上がってグンと上がるし、下がるときはドスンと下がる傾向があるんです。

――なかでも、よく取引しているものはなんですか。

私はプラチナが好きなんですけど、プラチナは本当に分かりやすいんですよ。

商品先物取引では、約定後に反対売買されずに決済がされていない建玉数を「取組高」と言うのですが、その「取組高」を見ていると、この辺で底を打つかなとか、そろそろ天井かな、というのが分かるんです。

なにせプレーヤーがほとんど変わらずに、同じ人がずっと回しているんで。

その人たちの買いが限界に達するとそこがピークになるし、その人たちが売り尽くすと、また拾われる。そんなことを長い間、延々と繰り返してるんです。そういう分かりやすさが、自分にとって相性がいいというか、気が楽なんですね。

原油も以前はやっていたんですけど、今の原油は怖すぎて。ちょっと触れないような状態です。原油取引はお休みしています。

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米国経済に景気後退のシグナルも

――今のマーケットについてどう見ていますか。

香港を拠点としているBitMEX(ビットメックス)の共同創設者、アーサー・ヘイズ氏のブログを最近読んでいたら、いいことを書いていたんですね。彼もマネーロンダリングで有罪となってしまいましたけど、その罪滅ぼしのつもりなのか、最近いい記事を書いているんですよ。

アーサー・ヘイズ氏の対象記事

彼の記事で、なるほどと思ったのは、暗号資産と米ドルの関係です。

最近の暗号資産は、米ドルの流通量が増えれば上がるし、米ドルの量が減れば下がるという相関関係があるんです。

以前だったら、株が上がろうが、金利がどうなろうが、勝手にビットコインは上がっていたんですが、ここ2、3年ぐらいは他の市場と一緒に動くようになっていて、ビットコイン独自の動きが、だいぶ減ってきました。ですから、私も最近は金利とかドルの供給量を見るようになりました。

それで、ヘイズ氏が言うには、FRBがQEをやめて引き締めにかかっているんだけど、ドルの供給量はそんなに減っていない。

例えば、FRBは毎日、債権などを担保に民間金融機関から資金を借り入れ、市場のドルを吸い上げていて、これをリバースレポと呼ぶのですが、この額が多いと市場にはお金が余っているということになる。そうした数字などを見ると、22年6月くらいからドルの供給量が増えているというんです。

ということは、ビットコインはあまり上がってはいないけれど、下がりにくい状態になっているのは、やはりドルの供給量がかなり影響しているのではないか、ということになる。

もう一つ、米国経済で気になるのは、米国債の長期と短期の金利差ですね。

――金利差ですか。

米国債の10年国債利回りは、このところずっと3%前後で推移しているんです。3%を超えると、それ以上なかなか上がらないという状態で。

それに対して短期の2年国債の利回りが上昇していて、22年7月には長期利回りを短期利回りが上回る「逆イールド」という現象が起きた。この逆ザヤが8月にはマイナス0.5%にまで広がったんです。

逆イールドは「景気後退のシグナル」と言われていて、前回マイナス0.5%にまで広がったのは、おそらく2000年にまで遡ると思います。2000年も8月頃だったと思います。

当時はITバブルと言われる好景気が続いていましたが、その頃から株価が下がり始め、米国株は1年半後くらいには半額になってしまった。

消費者物価指数を見ても、エネルギーや食料品が上がっていますし、良くないインフレだと思います。エネルギーや食料品が上がっている状況は、かつて原油価格が100ドルから30ドルまで一気に下落したときに似ているんですよね。だから、私は原油に対しても強気になれない。

――暗号資産についてはどうですか。

暗号資産に関しては、イーサリアムがマージを予定していますよね。でも、先物の価格を見ていると、9月以降もショートの注文が多いんですよね。

普通は9月にマージが終われば、ショートで入る意味はないと思うのですが、実際は12月分くらいが最も低い。これは、みんな9月にマージが完了しないと見ているのかもしれませんね。

その先はというと、イーサリアム派の人には申し訳ないですが、ビットコインに目を向けている人が多いように思います。

2023年の4月5月ぐらいからビットコインを強気に見ている人が少しずつ増えてきているのではないでしょうか。半減期を織り込んでいるからかもしれません。

これは、あくまでも22年8月時点の市場のデータを見た限りの傾向で、また何か起きた状況が変わるかもしれないし、その通りになるとも限らない。でも、多くの人はそんなふうに市場を見ているんだということは、心に留めています。

次回は、これまでのトレードの成功談や失敗談などを聞きます。

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