トレードで成功するには、常日頃準備を怠らず、それでいてトレードに決してのめり込まないことが大切だという個人投資家の佐々木徹氏。他人が実践している「勝てる手法」をむやみに追いかけるより、市場の仕組みや基本的な取引手法を学び、実際のトレードに応用していくことが必要だと力説する。そんな佐々木氏に、読んでためになった本や、トレーダーを目指す人へのアドバイスなどを聞いた。
佐々木徹氏 プロフィール 40代から自由な時間と収益を作るトレード教育を行っています。ビットコイン / ゴールド / 原油 / 外国為替 の取引方法が学べる「ココスタ」運営(受講生4,800名)。現役トレーダー / 米CMT検定1級保有 / ビットコイン研究所ライター / 株式会社ファム代表取締役。 https://twitter.com/CocostaGeekend
インタビュー・編集:内田 誠也 執筆:山本 裕司
市場の仕組みや取引方法など基本が重要
――これまで読んで参考になったという本はありますか。
アメリカの有名な投資家のラリー・ウィリアムズさんの本は読みました。いろいろな投資手法を発案した人で有名ですが、彼の数式などを勉強しておくのはいいことだと思います。
彼が書いていることを、現在の市場にそのまま当てはめられるかといえば、そうではないのですが、応用して使うことはできる。
例えば、私はビットコインのハッシュレートを見るときに、彼の数式をあてはめています。彼が発案した数式は、今では誰でも知っている基本的な知識になりましたが、自分なりの応用が利くと思います。
それ以外でいうと、「入門先物市場」という本も良かったですね。
宇佐美洋さんという金融の専門家が書いた本なんですが、先物市場の仕組みとか、価格の決まり方、ヘッジ取引の基本などが解説してあって、すごく勉強になりました。
投資手法とか特別なことが書いてあるわけではないんです。市場の取引単位を何と呼ぶか、とか、どうしてそう呼ばれるようになったのか、とか市場の成り立ちとかが詳しく書かれています。
――手法よりも基礎的な仕組みを知っておくほうが大切だということですね。
そうですね。私たち投資家は、実際にモノを売り買いしているわけではなく、いわば架空のものを取引しているわけですが、
それでも取引する以上は市場への愛着は持っていたい。
ゴールドにしても、シルバーにしても、どのように精製されるのかとか、原油は採掘されてからどのような経由を経て市場に出回るのかとか、すごく基礎的なことですが、そこまで知っておくのは良いことだと思いますね。
ほかには、あとは池水雄一さんが書かれた「THE GOLD ゴールドのすべて」という本も良かったですね。
池水さんは住友商事や三井物産などで貴金属のトレーダーとして活躍された方で「貴金属のスペシャリスト」と呼ばれています。この本もマーケットの基本を、すごくわかりやすく書いてくれています。
ゴールドの価格がETFに組み込まれることで、3倍、4倍になったという歴史とか。これはゴールドを取引している人じゃなくても、おすすめしたい本ですね。
挙げた本は、どれも急いで読んだからといって、すぐに勝てるわけではありません。池水さんは「勝つ方法があるのなら、私が教えてほしい」と書いているくらいですから。
でも、取引に必要なことがしっかり書かれている。トレードも基本をしっかり学ぶことが大切だと思います。
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自分に向いているマーケット、自分の性格と相性のいい取引対象を見つけられるかどうか
――トレードに向いている人はどんな人だと思いますか。
トレードに向いてる人といっても、みんな性格が違いますからね。
向いている人というよりも、自分に向いているマーケット、自分の性格と相性のいい取引対象を見つけられるかどうか、なのではないでしょうか。
いつもアグレッシブに行ける人がいれば、反射神経のいい人もいるだろうし。性格に合った取引手法も大事ですよね。
向いているというか、成功した人は、私の講座の受講生にも結構いますよね。成功する人というのはセンスがいいんです。私よりもセンスがいいなあ、と感じる受講生は何人もいます。
――センスがいいというのは?
利益確定がうまいという事ですね。当たり前なのかもしれませんが、利益確定するときのタイミングは重要です。
トレードって、エントリーする入口の判断は、そんなに変わらないと思うんです。誰でも、同じようなタイミングを考えている。でも利益確定のタイミングは、人それぞれ違う判断があって、それによって勝ち負けが分かれることもあります。
受講生の中には「すごいなあ」と思う人もいますよ。同じタイミングで買っても、自信ありげに「利確しました!」と言うんです。「ええ、俺はまだ持っているのに?」みたいな感じでね。
結果的に、それがほぼ正解なわけで、いやあ、両手を挙げて「降参です。かないません」と言うしかないですよね。こういうのは、生まれつきのセンスじゃないかなと思うときがあります。あとは、本人が努力しているんでしょうね。継続的な努力を怠らないんだと思います。
取引の入り口はみんな同じでも出口に正解はない
――どういうときに、利確のうまさを感じるんですか。
ビットコインでもなんでも、いつまでも伸びていきそうな雰囲気だったのに、いつの間にか気がついたらどんどん落ちているということがあるじゃないですか。
その上昇局面で、普通なら「もうちょっと、様子を見てみよう」となるところを、「もう目標は達成したから」とあっさり利益確定できるんですね。
1週間でいくら、1カ月でいくらなどと目標を決めていて、その目標をクリアしたから手じまいすると、自分で決めたルールをしっかり守れる。そういう人は強いし、センスがあると思いますね。
ただね、その自分なりのルールの上限から、もう少しだけ伸ばすのがうまいという人もいるんですよ。もちろん、失敗もあるんでしょうが、そういうセンスのある人もいる。
だから、結局はそこに正解はなくて、トレードの入り口はだいたいみんな同じで正解らしきものはありそうだけど、出口に正解はない。それで、やってみるとセンスのある、ないが表れそうかなという感じです。
だからといって、センスがないからトレードに向いていないというわけではないんですよ。勉強すれば、市場の構造を利用して取引するといったことは誰でもできることです。
結局、最後はトレードが好きかどうか、ということでしょうか。
――性格とか、トレードに対する考え方はどうでしょうか。
トレードへの取り組み方というあたりのような気がしますね。お金を稼ぎたいから、トレードで成功したいから、という気持ちが強すぎるといけないと思います。ビジネスと同じでね。
ビジネスでも、金を稼いでやろうという目的で商売などを始めると、「お客さんがお金に見えてくる」ということがあるじゃないですか。そんな雰囲気は、お客様にすぐにばれてしまうから、お客様もだんだんやって来なくなる。
だから、ビジネスにはお金を儲けたい、利益を上げたいということのほかに、自分がやっていることが誰かの役に立つとか、単純に好きなことで商売をしているという部分が必要ですよね。
半分儲けを度外視しているとか、利益そっちのけでやってると、そうした思いがお客様に伝わり、結果的に広く支持されることにつながる。
稼ぎにいこうとしてはいけない
――儲けることだけを考えていてはいけないということですね。
お金を儲けることだけが目的だと、必勝法を伝授するとか、本日のトレードのポイントを教えます、とかいったメルマガとか、SNSに安易に頼ってしまうことにもつながると思うんです。その人が書いている通りにやっていれば、儲かるはずだとね。
でも、マーケットのトレンドは瞬時に変わることがあって、実際、「今は強気」なんて書いているトレーダーだって、その1秒後には全部売ってしまってポジションを全部解消することだってあるわけですよ。
だって、マーケットの状況が変わったんだから。「マーケットの状況が変わったんだから、方針が変わって何が悪い。トレードってそういうものだろ」ということです。
そして、そうした市場のトレンドを読めずに、利益を取りに行こうとすると、そうした人を待ち構えている人たちがいて、結局は全部を持っていかれてしまう。
逆説的な話になってしまうかもしれませんが、稼ぎにいこうとするとダメなんです。ビジネスでも、もう十分にお金があるから、別に稼がなくてもいいから、好きなことを好きにやってみたい、という人が結局儲かるという話がありますよね。
ああ、それから大事なのは神頼みですね。神社に行ったり、毎朝、神棚にお供えしてお参りしたり。私も家に神棚を置いて、毎朝、「今日も一日よろしくお願いします」と挨拶をしています。
それから、トイレ掃除ですね。トイレをとにかく綺麗にして、ちゃんと神様にお参りして、稼ごうとせずに夜はちゃんと寝る。そうすると、多少、無茶な入り方をしてもバシっと決まるような気がします。要は気持ちの持ちよう、心のゆとりですね。
トレード以外の収入源を確保しておく
――トレーダーを目指す人や、うまくなりたいと思っている人にメッセージをお願いします。
何度も言いますけど、トレードだけに人生のすべてを注ぎ込まないということですね。トレードがうまくいかないときでも生活できるように収入源を確保しておくということです。
所詮トレードは水ものです。今やっている取引手法がいつまでも通用するとは限らないし、極端な話、市場そのものがなくなってしまうかもしれない。
以前、原油取引をしていたときに、週末にサウジアラビアの製油所がドローンで爆撃されて、週明けにいきなり10ドルぐらい値段が吹っ飛んだことがあったんです。このとき、私にはうまいこと利益が転がり込んできたんですが、逆だったらとんでもないですよね。
ストップロスとか、リスクヘッジなんて関係ない。トレードでは、しばしばそうした予想もしていなかったことが起きる。だから、トレードで多少損しても大丈夫だという保証が必要なんです。
このトレードに勝たなければもう終わりだという状況に追い込まると、脳は自己防衛のために都合のいい情報しか取り入れなくなるんです。子供の頃から、みんなテレビやアニメで見てきているじゃないですか。絶体絶命のピンチに追い込まれたときに、救世主がやってくるとか、いきなり覚醒して必殺技を使えるようになって一発逆転とか。
そんなことを夢見てしまうかもしれないけれど、最後の最後の大勝負に出て、息の根を止められるというのが現実なんです。トレードに失敗しても大丈夫なように、常に逃げ場所は用意しておく。これが何よりも大切だと思います。
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前回までのインタビューはこちら。