「損切りがうまくなることを目指すより、エントリーがうまくなることを目指すべき」専業トレーダー よーぶん氏 4/4

暗号資産のトレードのかたわら、自分の取り引き手法の再現性を確認するためトレードのスクールも開いているよーぶん氏。データの正しい見方を学び、トレードの根拠について自分の力で考える努力を続ければ、必ず勝てるようになると話すよーぶん氏に、負けないための考え方やこれからトレードを始める人へのメッセージなどを聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

よーぶん氏 プロフィール

休学中の大学4年生。エジプト在住。高校生の頃にトレードをはじめ、現在は専業トレーダーとして活躍。トレーダー向けのスクール、訓練所を運営し、自らのトレードの再現性を追求。エジプトの投資用・住居用の不動産を2件所有。
Twitterアカウント:https://twitter.com/youbun_trader_
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https://twitter.com/youbun_trader_/status/1585224735347986432

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損切りよりもエントリーのタイミングを重視する

――損切りがうまくできないという悩みをよく聞きますが、そういった相談があったらどう答えるのですか。

損切りがうまくなるというのは難しいですし、損切りがうまくなっても仕方がないと思います。

損切りがうまくいったというのがどういうイメージかと言えば、例えばロングのポジションを持っていたときに、急に下がり始めて、慌ててポジションを解消した。

それで、そのまま価格が下がり続けたときに、早めに切ってよかった、損失を抑えられた、ということで、損切りがうまくいったと感じる。そんなところですよね。

そういうことがデータ的によく起こるかと言えば、実際はそうそう起こらない。

それまで上昇する環境が整っていたのに、突然環境が変わって下がり続けるなどというように、マーケットが瞬時に反転するなんてことは滅多にないんです。

損切りするときというのは、たいていが、まだロングを持っていたいけれど、これ以上損失を大きくできないなどという場合です。自分が参照していたデータが変わってしまったのかもしれないし、環境が変わってしまったのかもしれないから、ここは一旦しょうがないと諦めるのが損切りなんですね。

でも、冷静に考えると、例えばロングの損切りがうまくいったと感じる場面は、そこでショートのポジションを持てば本当は儲かっていたわけです。

つまり、ショートでエントリーするタイニングを逃したということなんですよ。

――損切りがうまくいったときというのは、実は逆のポジションを取っていれば勝てていたときなんですね。

だから、損切りがうまくなるのを目指すより、エントリーがうまくなるのを目指すべきなんです。

エントリーさえうまくいけば、どこで決済しようが利益が出ます。

極端な話をすれば、下ヒゲの先っぽでロングできたら、あとはどこまで上がるか見ていればいいだけなんですから。

――エントリーする場所を間違えるから、損切りしてしまうことになる。

下がり続けている相場でも、いつかは上がるときがきます。それが明日なのか、明後日なのか、そのタイミングが問題なんです。

たとえば、二日後に上がるだろうと考えたときに、そのときまで待つのか、二日後にはどうせ上がるから今のうちに買おうと思うのかが重要です。

我慢できずに買ってしまい一時的に下げてしまったら「下がった、どうしよう、損切りしよう」となりがちで、なのでこういうときは二日後までちゃんと待つのが肝心なんです。

なので損切りはうまくするものではなく、仕方なくするもの、データをしっかり見ていれば、避けられる可能性があるというのが私の持論です。

勝つ自信をつければ“ドカン”はなくなる

――コツコツドカンで、積み上げた利益を吹き飛ばすという相談もよくあると思うのですが、こちらについてはいかがでしょうか。

毎回、許容できる損失を事前に決めておけば、コツコツドカンといったことは防げるはずです。

ただ、問題はメンタルの問題ですよね。損をすると、つい取り返そうと思ってしまって、ロットを増やして傷口を広げてしまう。

気持ちを強く持ちましょうとか、メンタル的に耐えられないようなトレードは控えましょうとか言いますけど、メンタルをコントロールするなんて、無理ですよね。

人間は弱いですから、損を取り返したいという誘惑には勝てない。だから、これは論理的に解決するしかなくて、ドカンが起きない仕組みを作るしかないんです。

そもそも、勝っているトレーダーは、一度損したくらいで取り返そうという発想にはならないんですよね。なぜなら、そのときにロットを上げなくても、いずれまた勝つチャンスが来ることはわかっていますから。

そんなことよりも破産しないようにと考えて、1回損切りしても、これくらいの負けはあるよね、また別でとればいいよねという気持ちでやっています。

そして、養分が狼狽する原因は「勝った経験が少ないから」です。成功体験の重要さがお分かりいただけましたでしょうか。

――いつでも勝てるという自信があれば、コツコツドカンもなくなる。

トレードで勝つための明確な根拠や体験があれば、コツコツドカンは防げるはずです。ただ、初心者や勝った経験の乏しい人には、それが難しい。

普通は、誰にも教わらずに勝つ方法なんてわかりませんよね。だから、どんなに素質があっても、最初の成功体験を手にすることができずに、退場してしまう人がほとんどな気がします。

それだけ、一度勝つまでが大変なんですよ。

粘り強く考え、仲間と話す機会を持つことも大切

――ほかにトレードを始めたい人、上達したい人向けのメッセージはありませんか。

粘り強く考えましょう、ということです。

よくトレードはシンプルにやりましょうとか、情報の海に溺れても意味がないとか言われますよね。エコノミストの言っていることは、しょせん後付けの理論だから、聞いても意味がないとか。

でも、そういう情報をすぐに馬鹿にするのではなくて、自分なりに情報をたくさん得たうえで、取捨選択するのが大事です。何も知らないのと、知ったうえでシンプルにするのは違う。

また、後付けすらできない人が、後付けじゃ意味ないと笑うのは間違っています。

結局は、真摯に取り組む姿勢が勝つトレーダーを目指す上で、一番大切なんだと思います。何か特殊なことをするのではなく、メンタルを鍛えるということでもなく、真剣に向き合おうぜ、ということですね。

――1人でそうやって、トレードに向き合うって大変ですよね。

1人でやるのはきついので、信頼できる人を見つけたり、仲間と一緒に取り組んだりするのがオススメです。孤独感の中でトレードを続けるのは、きついですよ。

――これまで、誰かと一緒にやった経験はあるのですか。

私は以前から、常に誰かと一緒にトレードをしていますね。1人でやってると、やっぱり視野が狭くなってしまい、自分のトレード手法が正しいのか客観的に評価できなくなってしまうことがあるんです。

それに自分が考えていることをアウトプットするのは、とても大事なことで、口に出したり文字に書き起こしたりすることで、考えも深まります。

ですから、Twitterを通じた間柄でもいいので、誰かと議論しながらトレードをしていくことは大事なことだと思います。

マクロな視点に惑わされずデータを読み解く

――最近のマーケットをどうみていますか。

私は、マーケットをあまり長期的視点では見ないようにしているんです。

もちろん、世界的なインフレの傾向とか、金融当局の利上げ方針とか、各国の金利差や金融政策による為替の変動だとか、マクロな視点での現状理解はきちんとしています。ただ、それを自分のトレードの判断材料にはしていません。

なぜかと言うとビットコインで勝つ方法は、うまい人について行くか、下手な人に逆張りするか、の2つだけだからです。

今、うまい人が買ってるから買おうとか、下手な人が買っているから売ろうとか、それはデータを見ていれば判断がつきます。

そのため、経済のマクロな動きはどうでもよくて、マクロの要因でビットコインが上がるんだったら、それを見てうまい人は買い始めるんですよ。私たちは、その人たちに付いていけばいいだけで、結果的にマクロの動きによって利益を得られる。

現在のデータだけで、大きな動きや環境はほとんど気にしていませんし、それで変に方向感を持たないようにしています。

ただ、時期的な観点から見て、なんとなく23年の半ば以降に買い場が来たら、長期で買い仕込みしたいと思っています。

それは深い考察があるわけではなく、リーマンショックやITバブル崩壊後のマーケットの低迷が、だいたい、データ的にそれくらいまでの期間で終わってるからです。大した根拠はありません。

――それで言うと、最近はマーケットも底打ちしたんじゃないかという見方もありますが、その辺りはどのように見られていますか。

底打ちしたかどうかは、結局、上がった後じゃないとわかりませんよね。それを、現時点であれこれ言っても仕方がないと思っています。

淡々とデータを見て、買える場所で買って、売れる場所で売る。それだけです。

一発、1万ドル幅を抜いてやろうというトレードはしていないので。相場の上下に合わせて細かな利益を積み上げていくのが、私のスタイルですから。

だからこそ、特に大きく動いたわけでもない、ただのレンジ相場でも、利益を出すことは可能です。

――今後やってみたいトレードはありますか。

エジプトに住んでいるせいかもしれませんが、新興国通貨に興味がありますね。

エジプトの通貨はエジプトポンドなんですが、値動きがすごいんですよ。1998年からずっと、ドルや円など主要通貨に対して下がり続けていて、その間、何回か暴落しているんです。

下がったまま、戻っていない。

エジプトポンドの2010-2022年のチャート(EGP/USD)。出典:tradingview.com

私がエジプトに住み始めた22年にも、10月末に円に対して1日で13%下落しました。

私はエジプトで不動産を買いましたが、1件は一括で、1件は分割で払っています。当然、エジプトポンド建てですから、通貨が安くなることはうれしい。

新興国の通貨は、だいたいそんなことが多いと思いますが、それには国の歴史や政治情勢などが絡んでいる。そのあたりをじっくり勉強して、時間をかけて丁寧に追っていきたいと思っています。

そして、いずれはエジプトポンドもリバウンドする時期が来るかもしれない。そうなったときのために、エジプトポンドも仕込んでおきたいと思っています。

ほかにも南アフリカのランドとか。いくつか新興国通貨に注目していきたいですね。

よーぶん氏が住んでいるエジプトの写真1。よーぶん氏撮影
よーぶん氏が住んでいるエジプトの写真2。よーぶん氏撮影

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